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2018年07月12日

早期離床はどのように行う?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、早期離床の進め方について解説します。

これだけはおさえておこう

  • 早期離床を行う前に,患者さんの状態や,輸液ルートドレーン類などの挿入状況などを把握しておく必要があります.
  • 早期離床は,チームで取り組む課題です.
  • 患者さんの状態に合わせて,段階的にモビリゼーションを行う必要があります.

〈目次〉

早期離床を進める前にすること

早期離床の安全性は多くの文献4, 5)で言われていますが,リスクマネジメントは必要です.

それは,患者さんの全身状態の把握と,挿入されている輸液ルートやドレーン類などの状況を確認することです(表1).

表1患者さんの身体を動かす前に確認しておくこと

患者さんの身体を動かす前に確認しておくこと

 

①患者さんの全身状態の観察

患者さんの身体を動かすことは,患者さんにとって運動負荷になり,バイタルサインが崩れることもあるかもしれませんし,疼痛や呼吸困難感などといった苦痛を伴ったりする場合もあります.

苦痛が生じると,患者さんに離床に対する否定的な意識をもたせてしまうことになります.

実施前の状況と比べて,実施中や実施後の状況に変化がある場合は,状況によってはその介入を中止する必要があるかもしれません.また,その情報をもとに翌日の介入を検討します.実施前,中,後と患者さんの自覚症状の聴取とモニタリングが必要になります.

端坐位実施の前に注意をしたいのは,深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓(pulmonary embolism:PE)です.

DVTの場合には,下肢の腫脹,鈍痛,足関節の背屈時に腓腹筋部に疼痛を訴えるホーマンズ(Homans)徴候などの所見がみられます.これらの所見がある場合は,四肢エコーでDVT がないことを確認する必要があり,離床が遅れることになります.

重症患者さんは自由にベッドから降りたり歩いたりできないので,禁忌がない限り,DVT予防のために,安静臥床中からフットポンプや皮膚障害に注意しながら弾性ストッキングなどを使用しましょう.

 

②輸液ルートやドレーン類などの挿入状況の確認

輸液ルートやドレーン類などの挿入されている部位,挿入されている長さ(マーキングなど),刺入部の固定方法などを確認し,患者さんの身体が動いた後に,これらが部分的にでも抜去されていないか細心の注意が必要です.

また,離床の開始前から,これらのルートやドレーンの必要性を話し合い,不必要であれば,医師に抜去を検討してもらいましょう.

 

離床にはチームで取り組もう

患者さんのそばでいつも患者さんの状態をモニタリングしているので,全身観察は看護師の得意な部分だと思います.

でも,患者さんにどのようなモビリゼーションを開始してよいのか? 運動の開始タイミングはどうしたらよいのか? どのようなメニューがよいのか? このようなことは,医師や理学療法士と話し合う必要があります.

ICUでは,多くの職種が出入りしますが,それぞれに専門領域があります.

これらの資源を統合して,最大限の患者成果につなげる必要があります.また,筋力の低下した患者さんを端坐位にしたり,立位をとったりする場合には,それを介助する人数が必要です.

Morrisらの行った,人工呼吸管理中の患者さんを対象にした早期モビリゼーションと一般ケアとの前向き比較研究4)では,モビリゼーションチームを作り,モビリゼーションプロトコルを用いています.このチームは,ICU看護師,看護助手,理学療法士で構成され,図1のように役割分担がされていました.

図1早期離床プロトコル

早期離床プロトコル

なお,この研究では,患者さんを担当する看護師は別におり,プロトコルに則ってモビリゼーションをしてよいか判断しています.レベルⅢ以上の端坐位や椅子への移動に関しては,モビリゼーションチームの介入に加え,理学療法のタイミングで実施し,人数を確保していることがわかります.

 

one point

早期離床の安全スクリーニング基準(実施しない基準)と中止基準は,ABCDE バンドルを行った論文に紹介されています.

 

患者さんの状態に合わせて段階的にモビリゼーションを行う

図1のプロトコルにもあるように,最初は,鎮静薬の使用によって患者さんに意識がなくても実施できる負荷の少ない他動運動や体位調整から開始します.

 

①他動運動・自動運動

患者さんに負担がない他動運動は,いつでも実施できると思います.時間が経つと関節拘縮などの影響により疼痛を伴うかもしれません.専用の装置が必要になりますが,重症患者さんがベッド上で他動的・自動的にエルゴメーターを使用することで,退院時の運動機能に改善が認められています10)

しかし,実際には,このような装置はなかなかないと思いますので,四肢や頸部などを徒手的に他動運動をするか,患者さんの自動運動を手を添えて介助するか,患者さんの自動運動を促す必要があります.

 

②体位調整

体位調整は褥瘡予防の観点からも2 時間程度の間隔で実施します.

体位調整によって,換気血流比不均衡分布が変化し,呼吸状態の変化があるかもしれません.許容できる場合もありますし,変化が一時的な場合もありますので,すぐに元に戻すのではなく,様子をみることで,体位調整前に戻ることが多くあります.

体位調整前に,聴診や,人工呼吸器のモニタリングデータや当日の胸部X線写真などを基にフィジカルアセスメントをして,どのような変化が起こるか予測しておくことが重要です.

 

③頭部挙上~坐位

30~45度の頭部挙上は,人工呼吸器関連肺炎予防バンドル11)の1つとしても組み込まれていますが,急な頭部挙上は循環動態への影響も懸念されますので,慎重に行う必要があります.徐々に頭部挙上を進め,ベッド上坐位の体勢を取ります.坐位が取れるところがレベルⅡになります.

ベッド上で坐位を取る時には注意が必要です.

ベッド上坐位は,横隔膜が低下するため,呼吸が楽になると考えられますが,上半身だけ上がることになると,腹部が横隔膜を圧迫し,呼吸に影響を及ぼすかもしれません.

そこで,その圧迫を解除するために端坐位になり,下肢を床の上に下ろします.これはレベルⅢになります.レベルⅣでは,椅子まで移動し坐位をとります.

坐位になったからといって安心してはいけません.

せっかく椅子や車椅子へ移動して,坐位になったとしても,もちろん,坐りっぱなしではいけません.どうしても時間とともに猫背の姿勢になってしまい,首や背中が前に曲がってきてしまいます.

できるだけ患者さんに姿勢を整えてもらえるように背筋を伸ばして坐ってもらいます.そうすることで,背筋など抗重力筋を鍛える必要があります.

 


[引用・参考文献]


[Profile]
山田  亨 (やまだ とおる)
邦大学医療センター大森病院特定集中治療室
急性・重症患者看護専門看護師

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

著作権について

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