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2018年06月07日

せん妄はどうやって予防する?発症したらどうする?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、せん妄の予防と対応について解説します。

〈目次〉

せん妄の予防と対処の基本

せん妄の予防は非薬物療法が基本です.一定の効果のある薬物療法はなく,せん妄予防に対する薬物療法に根拠はありません.

せん妄が発症した場合も,非薬物療法を優先します.発症に影響したと考えられる原因の除去や改善に努めることを最優先し,精神症状に対しては,対症療法として薬物療法が行われます.

せん妄の発現や重症化を抑え,せん妄期間を短縮するには,原因に対する迅速な管理がきわめて重要です.

 

せん妄に対する非薬物療法

患者さんへの毎日の細かなかかわりがせん妄を予防します.

せん妄に対する非薬物療法の視点は,医療者の介入によって改善可能なせん妄のリスク因子,つまり,環境要因,急性病態を改善し,認知機能や感覚を維持・回復させることです(表1).

表1せん妄に対する非薬物療法

せん妄に対する非薬物療法

 

睡眠環境を改善したり,見当識障害を是正したり,せん妄発症原因となる薬剤の使用を極力回避したりすることで,せん妄を減らすことができます.そして,ICU の重症患者さんでは,不動にさせず,とにかく離床させることが重要です.

 

1)睡眠の促進

さまざまな環境要因によって睡眠障害が生じると,せん妄は発症しやすくなります.そのため,睡眠の質をよくすることが重要です.

夜間の睡眠を妨げるのは,騒音や光のほか,検査,バイタルサインなどの測定,採血,薬剤投与といったさまざまな処置です.

これらの阻害要因をなるべく低減することが必要です.さまざまな改善方法があります5)が,ICU で活用できそうなものをいくつか紹介します.

  • 午後10時前に部屋の照明を暗くし,カーテンを閉める
  • 廊下の照明を午後10時までには暗くする
  • 不必要なアラームを防ぐ
  • 部屋の温度を適正にする
  • 看護処置をまとめて行う
  • 要望に応じて穏やかな音楽を流す

 

2)認知機能,見当識の維持・改善

認知機能,見当識の維持・改善はせん妄の発症予防によいことが示唆されています6).具体的には,スタッフの名前やスケジュールを書く,眼鏡をかける(視覚の促進),補聴器をつける(聴覚の促進)などが考えられます.

患者さんに装着されている医療機器を直視させてあげてください.急変し深く鎮静され,意識が消失した患者さんが目覚めた時,気管挿管されが出ない状態で,「ICU に入院している」「人工呼吸管理されている」など口頭で説明しただけでは,患者さんは理解できるはずもありません.

入院前の日常生活で行っていた感覚を取り戻させることも見当識の維持・改善に効果的です.時計とカレンダーを設置して日時を意識させる,自宅で使っていた毛布やクッション,家族の写真を置くなどもよいでしょう.

 

3)家族を含めた介入

せん妄の予防は,患者さんの家族にも協力してもらうとよいでしょう.そのためには,家族にせん妄やその予防方法などについて理解してもらうことが大切です.

家族の協力を得ることで,時計やカレンダーの設置,眼鏡や補聴器の提供,写真やクッションなど家族のものを置いてもらうことができますし,家族から患者さんに対してオリエンテーションをしてもらうなどもせん妄予防につながると考えられます7)

 

4)早期離床

ICUにおける重大な合併症の1 つに,ICU-AWという全身の筋力低下を生じる神経・筋障害があります.さまざまな原因がありますが,安静臥床は大きな要因となります.

せん妄があると鎮静が必要になります.また,せん妄は日常生活の活動性の低下を起こします.結果,安静臥床状態になり,全身が脆弱化し,ICU-AWの原因となります.そして,不活発になり,認知機能が低下し,さらにせん妄を発症しやすくなります.

つまり,早期にリハビリテーションを開始し,離床していくことが,せん妄や関連する合併症の予防になります

 

せん妄を発症したらまず原因を探る

せん妄には,症状を起こしている原因が必ず存在するため, まずその原因を検索し,除去できるものは対応します.最後に薬理的な介入を考慮します.

せん妄の患者さんに,低酸素血症やアシドーシス,血糖コントロール不良,低血圧などの生理学的要因があった場合,それらを改善すれば,せん妄も改善される可能性があります.

 

また,環境・体位などによるストレスや不安が原因の可能性もあります.

とくに,同一体位の時間が長くなっていたら体位を変えてみます.同一体位自体がストレスでせん妄になっているかもしれません.

気管挿管され発声できないことが苦痛でせん妄になっていることもあります.文字盤や筆談ができるメモ用紙などを用意し,意思の表出を促します.

疼痛があれば鎮痛薬が有効です.

ミダゾラムなどのベンゾジアゼピン系の鎮静薬はせん妄の原因となります.肝機能障害や高齢者など薬剤が蓄積しやすい患者さんの場合,さらに注意が必要です.投与中止後の離脱症状としてもせん妄は起こります.

抗ヒスタミン薬は抗コリン作用が現れやすいことから,高齢者の使用などせん妄症状に十分注意が必要です.

 

one point

せん妄だからといって安易に鎮静薬を投与・増量・ボーラスすると,せん妄になった原因がわからなくなり危険です.

ICUの場合,低酸素血症やアシドーシスなどの生理学的な要因であることが多いからです.術後であれば,尿道カテーテルがキンク(よじれる・曲がる)しており,「膀胱が充満していた」ためせん妄になったなんてこともありえます.

また,鎮静薬は意識を消失させることで鎮静させているので,せん妄に対して鎮静薬で鎮静しても,意識が戻れば再びせん妄になることもしばしばあります.

 

せん妄の精神症状への薬物治療

繰り返しますが,せん妄に対して一定の効果のある薬物療法はありません.

せん妄発症に影響したと考えられる原因の除去や改善に努めることを最優先し,薬物療法は対症療法として行われます.

経口内服が困難な症例で興奮やせん妄に対して,ハロペリドール(セレネ―ス)の注射薬が用いられることがあります.

 

1)幻覚・妄想

基本的に抗精神病薬(メジャートランキライザー)が使用されます.抗精神病薬には定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬があり,副作用の少なさから,非定型抗精神病薬が使用されます.

代表的な非定型抗精神病薬にはリスペリドン(リスパダール),オランザピン(ジプレキサ)などがあります.

 

2)焦燥・攻撃性

幻覚・妄想への使用と同じく,基本的に抗精神病薬であるリスペリドン,オランザピン,そして,クエチアピン(セロクエル)などが使用されます.また,カルバマゼピン(テグレトールなど),パルプロ酸(デパケンなど)が使用されることもあります.

近年では,漢方として抑肝散が使用される例も増えています.抑肝散は神経過敏で興奮しやすく,怒りやすい,イライラする,眠れないなどの精神神経症状を訴える人に用いられる漢方薬です8)

 

3)抑うつ

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)(パキシル,ルボックス,ジェイゾロフト),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)(トレドミン)などが使用されます.

 

4)睡眠障害

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(表2)が用いられますが,せん妄症状の出現,ふらつき,転倒などに注意が必要です.リスペリドンなどの抗精神病薬やトラゾドン(レスリンなど)が使用されることがあります.

表2ベンゾジアゼピン系,非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の動態

ベンゾジアゼピン系,非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の動態

[黒山政一編著:ひと目でわかる同効薬比較表,p.14-19,じほう,2009 を参考に作成]

 


[引用・参考文献]


[Profile]
剱持 雄二(けんもつ ゆうじ)
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU 集中ケア認定看護師

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

著作権について

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