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2018年05月03日

抑制は患者さんにどのような影響を与える?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、抑制が与える影響について解説します。

これだけはおさえておこう

  • 抑制は患者さんや家族にとって「苦痛」です!
  • 抑制はせん妄を悪化させ,せん妄の悪化はさらなる抑制へとつながり,時に悪循環へと陥ります.

〈目次〉

精神的苦痛と尊厳の侵害

医療者が安全のためと考えても,患者さんにとって抑制により行動が制限されることは,不安,怒り,屈辱,あきらめといった精神的苦痛とストレスをもたらします.

危険な行動を制限する抑制は,危険でない行動も同様に制限しています.個人の尊厳は傷つけられ,身体的自由や表現の自由(自由権),人格権,生存権といった基本的人権が侵害されます.

親しい人が抑制されている姿を目にする家族もまた,ショック,混乱,怒り,悲しみ,罪悪感,後悔に苛まれます.自分が抑制されている姿を家族に見られることは,患者さん本人のさらなる精神的苦痛にもなります.

 

皮膚などの外的損傷

抑制によって体位が制限されて褥瘡が形成されたり,抑制帯による局所の皮膚損傷を起こしたりすることがあります.

抑制帯による損傷は,抑制帯の不適切な使用によっても起こりえますし,抑制に抗あらがう動きによってももたらされます.後者の場合は,よりひどい皮膚損傷や,時に筋や骨の損傷につながります.

 

各種の廃用

可動域の制限は,筋力の低下や関節の拘縮,骨の萎縮,末梢神経障害につながりますし,時に痛みを伴います.

また,体位の制限は主に臥床状態を強いることになり,心肺機能の低下,無気肺肺炎起立性低血圧,便秘,失禁,自律神経障害,浮腫,深部静脈血栓症,尿路感染,認知機能の低下といった廃用症候群や活動耐性の低下を引き起こします.

 

せん妄

抑制は,急性の脳機能障害であるせん妄を引き起こし,また,悪化させます.

過活動型のせん妄の場合,せん妄がまた抑制の必要性の判断を生むことになり,負の連鎖に陥ることにもなります.

図1抑制とせん妄の負の連鎖

抑制とせん妄の負の連鎖

 

安心(という言葉)

抑制はさまざまな身体的・精神的苦痛をもたらすものであり,避けるべきものです.

しかし一方で,「大切なチューブを無意識に抜いてしまうのが怖い」ということで,自ら抑制を望む患者さんや家族も,少数ですがいます.

確かに,睡眠中の体動の激しい幼児に各種のドレーンが挿入されているような場合,緩やかに体幹抑制を行うことにより,本人・家族ともに安心して穏やかな睡眠が得られるケースもあります.

ただし,本人・家族の「安心のため」という発言は,抑制をしかたないことと認め,肯定的に受け入れようとした結果の言葉かもしれません.

また,抑制しなければ安心してもらえないという状況も見つめ直す必要があります.

 


[Profile]
武内 龍伸 (たけうち たつのぶ)
藍野大学医療保健学部看護学科

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

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  • 1.お茶碗につがれたご飯が自力で食べにくい場合はおにぎりにするなど、患者さんに合わせた工夫をする。
  • 2.身体の安静のためにできるだけ長く尿道留置カテーテルを挿入しておく。
  • 3.患者さんから「なんとなく食欲がない」という訴えがあっても、一時的なものなので特別な対応はしない。
  • 4.患者さんから「動きたくない」と訴えがあれば、なるべくリハビリは行わないようにする。
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