2018年02月15日

鎮静とは?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、鎮静について解説します。

これだけはおさえておこう

  • 苦痛や不安は患者さんに悪影響をきたすため,緩和する必要があります.
  • 鎮静薬を使用することだけが鎮静ではなく,患者さんに寄り添い,患者さんのニードに応え続けていくことが鎮静につながります.

〈目次〉

 

鎮静とは,患者さんを眠らせること?

鎮静とは「患者さんを眠らせること」というイメージをお持ちでしょうか?

鎮静は,患者さんを眠らせることでもありませんし,患者さんを人工呼吸器の設定やICU の環境に合せるために動けなくすることでもありません.

鎮静(sedation)とは,患者さんの苦痛や不安を和らげることです.このことから,痛みという苦痛を取り除く鎮痛も,広い意味で鎮静に含まれると言えます.

 

重症患者さんは,さまざまな苦痛や不安を感じている

前項(鎮痛とは?)で,ICU や人工呼吸管理下の重症患者さんは,さまざまな痛みを感じていることを述べましたが,痛みの他にも,さまざまな苦痛や不安を感じています.

たとえば,気管チューブ留置の違和感や発声できないことへのいらだち,慣れない治療環境によるストレス,体位調整(同一体位の持続による弊害を除く体位すべてを意味する.体位変換も含む)や口腔ケアなどのケア・処置を受けるストレス,今後の治療や予後への不安などがあります.

 

one point

集中治療を受ける患者さんの最もストレスフルな経験は,気管チューブに関するものという報告があります(Van de Leur JP et al:Discomfort and factual recollection in intensive care unit patients. Crit Care 8(6):R467-R473, 2004).

 

鎮静はなぜ必要か?

苦痛や不安が緩和されないと患者さんの身体的・精神的ストレスが増加してしまいます.身体的・精神的ストレスは安静や睡眠を阻害し,酸素消費量・基礎代謝量の増加や,人工呼吸器との不同調につながるおそれがあります.

また,痛みだけではなく,身体的・精神的ストレスも不穏やせん妄を誘発することが知られています.

このようなことから,重症患者さんの苦痛や不安を緩和し,安静や睡眠を維持・改善することは,とても重要なことと言えます.

 

鎮静とは鎮静薬を使用すること?

鎮痛の主な手段は,鎮痛薬の投与になります.それでは,鎮静の主な手段も,鎮静薬を使用することでしょうか?

確かに,重症患者さんの管理で,鎮静薬がルーチンで投与されている施設が多いと思います.しかし,鎮静薬の多くは眠らせる効果はなく,意識を消失させているだけで,根本解決にはなりません.また,鎮静薬による鎮静には副作用や弊害があります.したがって,できるだけ鎮静薬を使用しないようにし,使用するにしてもできるだけ浅い鎮静で管理することが推奨されています.

また,no sedation(あるいはanalgesia-based sedation)といって,医療用麻薬を用いて十分な鎮痛を行えば鎮静薬は必要なくなる,という考え方もあります(もちろん,すべての場面についてではありませんが).

このように,重症患者さんの管理において,現在のところ鎮静薬は極力使用しない方向にあります.もし,患者さんの苦痛や不安を鎮静薬以外の非薬物的な方法で安全かつ効果的に取り除くことができるのなら,その方法が第一選択になります.

したがって,患者さんの苦痛が何によって生じているのかを明らかにしつつ,それが鎮痛薬や非薬物的な方法によって緩和するのか,しないのかを検討したうえで,最もよい方法を選択するのが目指すべき鎮静管理です.

 

one point

上記のような患者さんの苦痛や不安の緩和を目的とした鎮静の他に,精神疾患がありライン類の抜去や転落などのおそれがある患者さんや,頭蓋内圧コントロールや喘息重積発作の抑制が必要な患者さんなど,安全確保や治療上で鎮静薬による鎮静を要するケースがあります.

本連載では,そのような特別なケースではなく,鎮静の必要性が流動的な重症患者さんにおける鎮痛・鎮静管理を中心に解説していきます.

 


[Profile]
剱持 雄二
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU 集中ケア認定看護師

*所属は掲載時のものです。


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

著作権について

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