年齢や性別などにより、食事摂取基準が異なるのはなぜ?|食事援助

 

『看護技術のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は年齢や性別による、食事摂取基準の相違に関するQ&Aです。

 

大川美千代
群馬県立県民健康科学大学看護学部准教授

 

年齢や性別などにより、食事摂取基準が異なるのはなぜ?

平成17年4月から用いられる『日本人の食事摂取基準』は、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、エネルギー・栄養素欠乏症の予防、生活習慣病の予防、過剰摂取による健康障害の予防を目的とし、エネルギーおよび各栄養素の摂取量の基準を示すものです。

 

エネルギーについて1種類(推定エネルギー必要量)、栄養素について5種類(推定平均必要量、推奨量、目安量、目標量、上限量)の指標が設定されています。栄養摂取過剰の予防や生活習慣病予防に重点を置いている点などが、同様にエネルギーや栄養素を摂取する基準としてこれまでに用いられてきた栄養所要量と違う点といえます。

 

推定エネルギー必要量は、個々の基礎代謝量をベースに、3段階に区分された身体活動レベルと組み合わせて算出することができます(成人の場合)。

 

基礎代謝量は性別、年齢によって異なり、身体活動レベルもそれぞれ異なるため、推定エネルギー必要量は異なってきます。また、個人で必要な健康の維持・増進の程度が異なることから、栄養素の推定平均必要量、推奨量、目安量、目標量、上限量も異なります。

 

一般に推定エネルギー必要量は一定の年齢を越えるとともに低下しますが、これは基礎代謝量が低下するためです。

 

memo基礎代謝量

基礎代謝量とは、睡眠、安静など、活動をしない時でも最低限必要とされるエネルギーです。つまり、人間が生きていくために必要な最低限のエネルギーのことです。

 

これに、身体活動レベルに応じた数値を掛けたものが、1日に必要とされる推定エネルギー必要量です。

 

エネルギー必要量の推定には、エネルギー摂取量ではなく、エネルギー消費量から接近する方法が広く用いられている(図1)。

 

二重標識水法は2週間程度の(ある程度習慣的な)エネルギー消費量を直接に測定でき、その測定精度も高いため、エネルギー必要量を推定するための有用な基本情報を提供してくれる。

 

図1エネルギー必要量を推定するための測定法と体重変化、体格(BMI)、推定エネルギー必要量との関連

エネルギー必要量を推定するための測定法と体重変化、体格(BMI)、推定エネルギー必要量との関連

 

 

図2食事摂取基準の各指標(推定平均必要量、推奨量、目安量、上限量)を理解するための模式図

食事摂取基準の各指標(推定平均必要量、推奨量、目安量、上限量)を理解するための模式図

 

不足のリスクが推定平均必要量では0.5(50%)あり、推奨量では0.02〜0.03(中間値として0.025)(2〜3%または2.5%)あることを示す。

 

上限量以上を摂取した場合には、過剰摂取による健康障害が生じる潜在的なリスクが存在することを示す。そして、推奨量と上限量との間の摂取量では、不足のリスク、過剰摂取による健康障害が生じるリスクともにゼロ(0)に近いことを示す。 
目安量については、推定平均必要量ならびに推奨量と一定の関係を持たない。しかし、推奨量と目安量を同時に算定することが可能であれば、目安量は推奨量よりも大きい(図では右方)と考えられるため、参考として付記した。目標量については、推奨量または目安量と、現在の摂取量中央値から決められるため、ここには図示できない。

 

表1エネルギーの食事摂取基準:推定エネルギー必要量(kcal/ 日)

エネルギーの食事摂取基準:推定エネルギー必要量(kcal/ 日)

 

  1. 身体活動レベルは、低い、ふつう、高いの3つのレベルとして、それぞれⅠ、Ⅱ、Ⅲで示した。
  2. 主として70〜75歳ならびに自由な生活を営んでいる対象者に基づく報告から算定した。
  3. 妊婦個々の体格や妊娠中の体重増加量、胎児の発育状況の評価を行うことが必要である。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護技術のなぜ?ガイドブック』 (監修)大川美千代/2016年3月刊行/ サイオ出版

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