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2018年01月31日

認知症の薬物療法・ 非薬物療法

『エキスパートナース』2016年7月号より転載。
認知症の薬物療法・非薬物療法について解説します。

金盛 琢也
聖路加国際大学大学院 看護学研究科 老年看護学 助教 (老人看護専門看護師)

〈目次〉

 

はじめに

認知症に対する薬物療法は、中核症状に対する薬物療法と、BPSD(行動・心理症状)に対する薬物療法に大別されます(図1)。

図1アルツハイマー型認知症に対する薬物療法

アルツハイマー型認知症に対する薬物療法

 

なお、認知症の種類により対応が異なるため、本稿では「アルツハイマー型認知症」を中心に取り扱います。

 

 

中核症状に対する薬物療法

中核症状(記憶障害、見当識障害、実行機能障害、失行・失認等)に対する薬物療法では、本邦ではコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)とメマンチンが保険適用です(表1)。

表1中核症状に用いられる薬剤

中核症状に用いられる薬剤

 

 

1コリンエステラーゼ阻害薬

①作用機序

認知症患者では脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンが減少することで、記憶障害などの症状が起こると言われています。コリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)を阻害することにより、アセチルコリン量を増加させ、記憶障害等の進行を遅らせる効果が示されています。

 

②用法

『認知症疾患治療ガイドライン』1によれば、代表的なコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルの用法は、「軽度~中等度のアルツハイマー病患者」に対しては1日3mgから開始し、1~2週間使用して副作用がみられなければ5mgに増量し継続することが推奨されています。また、「重度のアルツハイマー病患者」に対しては1日5mgで4週間以上継続し、副作用がなければ10mgに増量して継続することが推奨されています。

なお、ドネペジルの効果は投与12週後から認められるため、効果の判定は3~4か月間投与後に行うことが望ましいとされます。

また、ドネペジルは食事による吸収への影響は認められないため、患者や介護者の都合に合わせた時刻に服用してよいとされています。

 

③剤形

内服薬(ドネペジル、ガランタミン)と貼付剤(リバスチグミン)があります。

貼付剤のメリットには、薬の成分が皮膚からゆっくりと吸収されるため血中濃度の変動が少なくなり副作用が出にくいこと、副作用が出現した際に貼付剤を剥がすことでそれ以上の薬の吸収を阻止できること、薬の使用が確認しやすいことなどがあります。

認知症患者では薬をきちんと使用できているか不安なことも少なくありませんが、そのような場合には貼付剤を用いてみるとよいでしょう。

一方、高齢者では皮膚が乾燥していることが多く、貼付剤による皮膚炎が起こりやすくなります。前日に貼付剤を貼付する部位に保湿剤を塗布しておくなどの予防策が有効です。

 

 

 

2メマンチン

①作用機序

認知症患者では、脳内の興奮性の伝達物質であるグルタミン酸が継続的に放出されることで、記憶障害が引き起こされていると言われています。メマンチンは、グルタミン酸受容体を阻害し、過度なグルタミン酸の流入を抑制することで、記憶障害を緩和させる効果が示されています。

 

②用法

メマンチンは、「中等度~重度のアルツハイマー病患者」への有効性が認められています。また、コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)との併用も認められており(図2)、重度のアルツハイマー病患者では併用することが推奨されています。『認知症疾患治療ガイドライン』1によれば、1日5mgから開始し、副作用がなければ1週間ごとに5mgずつ増加し、1日1回20mg服用を維持することが推奨されています。

図2アルツハイマー病の病期別の治療薬剤の選択アルゴリズム

アルツハイマー病の病期別の治療薬剤の選択アルゴリズム

 

 

BPSD(認知症による行動・心理症状)に対する薬物療法

幻覚や妄想、焦燥性興奮といったBPSDに対する薬物療法では、非定型抗精神病薬(リスペリドン、オランザピンなど)や抑肝散などが一般的に使用されています。

なお、認知症者ではこれらの薬剤によって過鎮静、低血圧、脱力による転倒、便秘などの副作用を起こしやすいため、BPSDへの薬物療法は適切なケアを行っても症状が強く、患者や周囲に危険が及ぶ場合に限定する必要があります。BPSDへの対応は適切なケアを基本とし、薬物療法はやむを得ない場合にのみ、少量の薬剤を短期間だけ投与することを前提に、投薬計画を立てて実施しましょう。

表2BPSD(適切なケアを行っても症状が強いとき)に用いられる薬剤

BPSD(適切なケアを行っても症状が強いとき)に用いられる薬剤

文献2・p.782より作成)

 

 

 

 

非薬物療法

ケアと薬物療法を補完する形で、さまざまな非薬物療法が行われています。『認知症疾患治療ガイドライン』1によれば、いずれの非薬物療法も中核症状の進行を抑制する効果は示されていませんが、個々の患者の嗜好に合わせた非薬物療法はBPSDの軽減に有効であるとされます。

なお、いずれの療法も認知症の人が“楽しんで行っている”場合にはよい効果が期待できますが、周囲が強制して行うことは避けたほうがよいでしょう。

代表的な非薬物療法をいくつか紹介します。

1回想法

回想法

  • 回想法は、比較的保たれている長期記憶を利用して、知的機能や心理的機能を維持・向上させるもの
  • 自己の過去を回想し話すことで、脳機能が活性化され、また自分が尊重されていることを実感することで不安や焦燥感が軽減する効果があると言われている
  • スタッフの認知症者に対する理解が深まり、質の高いケアの提供にもつながるとも言われる

 

2リアリティオリエンテーション

リアリティオリエンテーション

  • 日常生活のなかでさまざまな機会に日時、場所、周囲の事物などを指摘する方法
  • 見当識の改善が期待できる一方で、現実との無理な直面化により、情緒不安定になることもある

 

3音楽療法

音楽療法

  • 認知症の人に対する音楽療法は、非言語的コミュニケーションの促進により言語的コミュニケーションが困難な認知症の人への介入をめざすもの
  • 笑顔が増える、徘徊が減るなど、BPSD減少への効果が期待されている

 

4その他

その他

  • 運動療法ウォーキング、筋力トレーニング、体操ほか)、学習療法(漢字・計算ドリルほか)など、多様な非薬物療法が行われている

 

 


[引用文献]

  • 1.「認知症疾患治療ガイドライン」作成合同委員会 編,日本神経学会 監修:認知症疾患治療ガイドライン2010コンパクト版2012.医学書院,東京,2012.
  • 2.犬塚伸,天野直二:認知症治療の最前線
  • 3.認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)における薬の使い方.Geriatric Medicine 2011;49(7):781-785.

[Profile]

金盛琢也
金盛 琢也(かなもり たくや)
2013年聖路加看護大学大学院博士前期課程修了。東京ふれあい医療生協梶原診療所勤務(老人看護専門看護師)を経て、2014年より現職。在宅医療を受ける高齢者の急性期ケアを専門に研究・教育活動を行う。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2016照林社
[出典]エキスパートナース2016年7月号

P.40~44「認知症の薬物療法・非薬物療法」

著作権について

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