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2017年10月23日

インフルエンザ【疾患解説編】|気をつけておきたい季節の疾患【19】

来院された患者さんの疾患を見て季節を感じる…なんて経験ありませんか?
本連載では、その時期・季節特有の疾患について、治療法や必要な検査、注意点などを解説します。また、ナースであれば知っておいてほしいポイントや、その疾患の患者さんについて注意しておくべき点などについても合わせて解説していきます。

 

インフルエンザ

 

インフルエンザの症状_インフルエンザの主訴

 

小谷祐樹
日本赤十字社和歌山医療センター集中治療部

 

〈目次〉

 

インフルエンザってどんな疾患?

インフルエンザが毎年流行するのは赤血球凝集素が突然変異するため

インフルエンザは、毎年冬に世界中で流行するウイルス感染症です。
日本では毎年1,000万人が感染すると言われています。原因は、インフルエンザウイルスで、流行を起こすのはA型とB型の2種類です。

インフルエンザウイルスの表面には、赤血球凝集素とノイラミニダーゼの2つのとげがあります。インフルエンザウイルスがヒトの細胞内に入るには、赤血球凝集素が重要です。一方で、一旦細胞内に入ったインフルエンザウイルスが増殖した後に、周りの細胞に感染を広げていくには、ノイラミニダーゼが重要になります。

インフルエンザが毎年流行するのは、ヒトの細胞に侵入するための赤血球凝集素が毎年突然変異を起こすためです。特に、鳥インフルエンザが突然変異を起こしヒトに感染するようになると、ヒトに感染したことのない赤血球凝集素を持ったインフルエンザウイルスが出現します。そのため、インフルエンザが大流行します。このように、ある感染症が大流行することを「パンデミック」と呼びます。過去には1918年のスペインかぜや2009年の新型インフルエンザが有名です。

 

インフルエンザの症状

インフルエンザの症状は、典型的には、1~2日の潜伏期間を経て、突然の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感といった全身症状が発症します。その後、呼吸器症状を伴うことが多く、鼻汁、咽頭痛、咳嗽が見られます。7~10日間程度持続します。

また、まれではありますが、小児を中心に、薬の服用の有無にかかわらず、突然走り出したり、飛び降りたりといった異常行動が見られることがあります。

ただしインフルエンザの症状の出方はさまざまで、高齢者では症状が出にくいことがあります。上述した通り、インフルエンザの典型的な症状は発熱、咽頭痛、関節痛ですが、高齢者の場合は、食欲低下や筋力低下、目眩といった、ありふれた症状だけでインフルエンザを発症する場合もあります。

 

インフルエンザの身体所見

インフルエンザに特異的な身体所見は少ないです。皮膚の紅潮や、頸部のリンパ節腫脹、咽頭発赤が見られる場合があります。

 

インフルエンザの検査所見

インフルエンザでは、血液検査や画像検査で特徴的なものは少ないです。インフルエンザ疑いの患者に日本でよく行われる検査では、インフルエンザ迅速診断キットがあります。

検体は、咽頭や鼻腔のぬぐい液か、鼻汁を用います。結果は15分程度で出ます。ただし、インフルエンザを発症している全員が陽性になるわけではなく、また発症初期であればウイルス量が少ないため陰性になることもあります。つまり、「インフルエンザ迅速診断キットが陰性でも、インフルエンザが完全に否定できるわけではない」ということには、注意が必要です。

 

インフルエンザの診断

インフルエンザは冬に流行するのが特徴です。そのため、インフルエンザを診断するために重要なのは、時期や流行状況です。
インフルエンザの流行地域で、発熱、関節痛、といった典型的症状を持った患者に対しては、インフルエンザを鑑別に挙げ、病歴聴取や診察、迅速診断キットを用いて診断します。
一方で、特に高齢者では前述したように、非典型的な症状しか起こさない場合があります。そのため、流行時期・地域で高齢者が来院した場合はいつもインフルエンザの可能性を考えておく必要があります。

さらに、繰り返しますが、迅速診断キットは完璧な検査ではないため、発症したばかりの時期に陰性であった場合でも、疑わしければ、時間を空けて再検査を行う場合があります。

 

インフルエンザの合併症

肺炎

インフルエンザの合併症で最も多いものが肺炎です。小児や高齢者で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息など、肺に基礎疾患のある患者、後天性免疫不全症候群(AIDS)やステロイド常用など、免疫不全がある患者などが肺炎を起こしやすいとされています。

インフルエンザに合併する肺炎は、インフルエンザウイルスそのものによる肺炎(インフルエンザ肺炎)と、別の細菌によって起きた肺炎(二次性細菌性肺炎)の2種類があります。

 

インフルエンザ肺炎

インフルエンザウイルスが肺に直接感染した際に起こります。頻度としては低いですが、非常に重症化しやすいです。

二次性細菌性肺炎

インフルエンザの経過中に、一旦良くなりかけた発熱や呼吸器症状が、再度悪くなるというのが、二次性細菌性肺炎の特徴です。インフルエンザウイルスが、肺の上皮細胞を傷つけたり、鼻腔や咽頭の細菌の数を増やしたりすることが、発症の原因と考えられています。

二次性細菌性肺炎の原因細菌としては、肺炎球菌が最も多く、次いで、ブドウ球菌が続きます。ブドウ球菌が原因の場合、通常は市中感染ではまれとされる、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による肺炎が多いのが問題視されています。なぜなら、MRSAによる肺炎は勢いが強く、一旦罹ってしまうと、たとえもともと健康だった若年成人でも死亡する例が多いためです。

 

脳炎・脳症

小児のインフルエンザでは、脳炎・脳症の報告があります。ただし、いまだに脳炎・脳症を起こす原因については不明です。インフルエンザの経過中に痙攣、意識障害を起こし、一旦発症すると予後が悪いことが知られています。

 

インフルエンザの治療法

インフルエンザ治療薬

インフルエンザは、基本的に自然治癒する病気です。日本では、ノイラミニダーゼ阻害薬とアマンタジンが治療薬として用いられています(表1)。

 

表1インフルエンザ治療薬の特徴・主な副作用

インフルエンザ治療薬の特徴・主な副作用

アマンタジン塩酸塩以外はノイラミニダーゼ阻害薬
文献1を参考に作成

 

ただし、アマンタジンは、インフルエンザB型にはまったく無効であること、高い確率で耐性ウイルスが出現すること、香港型インフルエンザA型には90%以上耐性であることから、近年は使用頻度が少ないです。従って、ここからはノイラミニダーゼ阻害薬について詳しく述べていきます。

先にも述べましたが、インフルエンザウイルスがヒトの細胞内に入り、増殖し、周囲の細胞に感染を広げる際に重要となるのが、ノイラミニダーゼです。ノイラミニダーゼ阻害薬を使うことで、インフルエンザウイルスを死滅させ、感染の拡大を防ぎます。

これまでの臨床試験の結果からは、ノイラミニダーゼ阻害薬が適切に使用されれば、インフルエンザによる症状が1~3日短くなることが知られています。「適切に」というのは、主に発症から48時間以内のことを指します。逆にそれ以降にノイラミニダーゼ阻害薬を使用しても、使用しない場合と比べてほとんどメリットがないと言われています。海外のガイドラインでは、重症もしくは重症化の危険性が高い場合にノイラミニダーゼ阻害薬が推奨されています。

日本では、主にザナミビル水和物(リレンザ®)、オセルタミビルリン酸塩(タミフルリレンザ®)、ペラミビル水和物(ラピアクタリレンザ®)が使用されます。
ザナミビルは吸入薬であり、気管支喘息患者では喘息発作を起こす危険がありますが、耐性ウイルスはほとんどありません。内服薬のオセルタミビルは消化器系の副作用があり、耐性ウイルスが1~5%と言われています。静注薬のペラミビルは経口摂取困難な患者も使用できます。

 

インフルエンザの予防

インフルエンザワクチン

インフルエンザの予防として重要なのは、ワクチンです。ワクチンは、インフルエンザウイルスの赤血球凝集素に対する抗体をつくり、増やすことで、インフルエンザにかかりにくくしたり、かかったとしても症状を軽くしたりします。

インフルエンザに感染すると重症化が予想される患者や、インフルエンザに感染すると周囲に感染を拡大させやすい医療従事者などへのワクチン接種は重要です。副反応は局所反応としての接種した部位の発赤、腫脹、疼痛が1~2割で、全身反応としての発熱や倦怠感はまれです。

 

インフルエンザの感染対策

インフルエンザは、主に飛沫感染と接触感染により感染が広がります。まずは手洗い、うがいを徹底し予防することが重要です。また、病院内にインフルエンザの患者、インフルエンザが疑われる患者がいる場合は、個室管理にし、ほかの患者との接触を防ぐ必要があります。もし、インフルエンザの患者と接触した患者がいた場合は、ノイラミニダーゼ阻害薬の予防投与が推奨されています。

なお、学校保健安全法によると、インフルエンザの出席停止期間は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」と定められています。

 

インフルエンザは、多くの場合、自然治癒しますが、流行期には患者数が多く、感染力が強い感染症です。流行時期、流行地域では、インフルエンザの可能性をいつも考えて、対応することが重要です。

救急外来や病棟でインフルエンザを疑う患者は、個室に入れ、ほかの患者と接触しないようにしましょう。また、院内での大流行を起こさないように、インフルエンザ患者の周囲の接触者に予防投薬を行いましょう。

 


[参考文献] 


[監 修]
辻本登志英
日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部長 救急部副部長

芝田里花
日本赤十字社和歌山医療センター 副看護部長 救命救急センター看護師長


[Design]
高瀬羽衣子


 

著作権について

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