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2018年01月24日

認知症は、うつ状態・ せん妄とどう異なるか|認知症・うつ状態・せん妄の鑑別のポイント

『エキスパートナース』2016年7月号より転載。
認知症とうつ状態・せん妄の違いについて解説します。

 

吉岡佐知子
松江市立病院看護局副看護局長

 

〈目次〉

 

はじめに

診療報酬の改定によって、認知症ケアにかかわる多職種チームでの取り組みが高く評価されることになりました。

臨床の認知症ケアの質向上がおおいに期待されますが、その一方で、認知症はうつ状態やせん妄と症状が似通っていることから、どうとらえるか迷い悩むことも少なくないと思います。

実際、認知症と老年期のうつ病、せん妄はそれぞれ密接に関連することから、鑑別は決して容易ではありません。しかし、診断が異なれば治療やケアが変わるため、鑑別のためのポイントを知っておくことはとても重要です。

ここでは、「認知症」「うつ状態」「せん妄」について、関連性と合わせ、ベッドサイドで活用できる鑑別のポイントを紹介します。

 

認知症とうつ状態を見分ける

1認知症とうつ状態との関連

うつ状態とは、「非常に疲れた状態、エネルギーが停滞、喪失し、前を向けない状態。また疲れた状態であるにもかかわらず、焦り、不安、緊張などのために休息できない状態で、これらが混在している」1状態です。

うつ状態と認知症の鑑別が難しい要因の1つとして、以下の2つの“似ている”病態が挙げられます。
仮性認知症:注意・集中力や判断力が低下する認知症のようなうつ状態
アパシー:活動性の低下や興味・関心が喪失するうつ状態のような認知症の症状

また、認知症にうつ病や抑うつ症状が高率に合併すること2なども挙げられます。

臨床症状として共通点のある両者ですが、仮性認知症のように、うつ状態の軽快とともに改善する治療可能なものもあるため、認知症との鑑別はとても重要です。あわせて、両者が合併することも念頭に置き、うつ状態やうつ病の存在を確認し、治療やケアにつなげることも大切です。

 

2認知症とうつ病(うつ状態)の鑑別のポイント

表1アルツハイマー型認知症と老年期うつ病の鑑別

アルツハイマー型認知症と老年期うつ病の鑑別

文献3・p.175より引用、一部改変)

 

①症状に対する苦痛の訴えの有無

「 活動性や意欲の低下」「周囲のできごとへの無関心な様子」は、認知症でも、うつ病やうつ状態でも認める症状です。しかし、認知症とうつ状態ではこれらの症状に対する“苦痛の訴え方”が異なります。

認知症の場合は症状に対する深刻さが少なく、執着していないように見えるのが特徴といえます。たとえ症状への苦痛はあっても客観的にはとらえにくく、症状に対する苦痛はどちらかというと家族に強く認めます。

一方、うつ状態やうつ病の場合は、「もの忘れがひどい」「何もできない」と本人自身が深刻にとらえていることが多く、それをとても苦痛に感じていることが特徴です。また高齢者のうつ状態やうつ病では、活動性や意欲の低下の訴えはなく、胸の痛みや息苦しさ、身体のだるさなど身体の不調を訴えることも少なくありません。原因不明の身体の不調の訴えがある場合は、うつ状態やうつ病の可能性が強く疑われ、認知症との鑑別に役立ちます。

 

②質問に対する態度

ベッドサイドでの患者さんとの会話が、鑑別のヒントになることもあります。

認知症の人の場合、質問に答えられなくてもうまく取りつくろえたり、家族にじょうずに助けを求めたりすることができます。

うつ状態やうつ病の場合は、答えられそうなことでも、考えることを放棄するように「わかりません」と繰り返すことがよくあります。

自己評価がとても低くなるのが、うつ状態の大きな特徴です。

 

<うつ病の見分け方ポイント>

「うつ病」では、患者の自己評価がとても低くなるのが特徴

うつ病(うつ症状)の見分け方ポイント

 

認知症とせん妄を見分ける

1認知症とせん妄との関連

臨床では、“落ち着きがない”“場所や時間の感覚が鈍くなる”“怒りっぽくなり、ときに荒っぽくなる”など、突然の患者さんの変化に対して、「急に認知症になった」「認知症が悪くなった」と誤解されることが少なくありません。

多くの場合、このような突然の変化はせん妄と考えられます。せん妄は、急な環境の変化や手術などを契機に、特に高齢者に多く発症しますが、実際、認知症や脳梗塞など脳の器質的な脆弱性を基盤に発症することもひんぱんで、またせん妄のエピソードが認知症発症に先行することもあるため、認知症とせん妄の見きわめを困難にしています。

ただし、せん妄も、うつ状態やうつ病と同じように治療やケアによって回復が望めることから、両者の鑑別は非常に重要となります。

 

2認知症とせん妄の鑑別のポイント

表2認知症とせん妄の鑑別

認知症とせん妄の鑑別

文献4・p.2412より引用、一部改変)

 

①せん妄では“突然に、まるで人が変わったような”変化

認知症で最も発症頻度の高いアルツハイマー型認知症と比較すると、せん妄は急性の発症であり、日内変動があるのが大きな特徴です。

ベッドサイドでせん妄患者に遭遇した際の印象は、「突然に、まるで人が変わったような」となることです。日中はとても穏やかに過ごしていたのに、夜になると急に表情が険しくなり、治療やケアにも非協力的で、ときに言葉を荒らげ暴力を振るう。しかしまた朝になると穏やかな様子に戻る、といった変化が代表的です。

認知症にせん妄が重なることもしばしばですが、その場合も、急な変化として現れることが多く、せん妄のケアや治療の対象となります。

認知症でも穏やかに過ごすことは可能です。それを念頭に、「認知症だからしかたがない」ではなく、入院前の生活や状態を適切に把握し、せん妄の改善をめざしたチームアプローチが欠かせません。

 

②第5のバイタルサインとしての“せん妄”

高齢者の場合は、全身状態の悪化や苦痛の表れとしてせん妄は発症する、といっても過言ではありません。
 

身体的な状態が危機的であったり、緩和されない苦痛がある場合もせん妄が起こることを知っておくと、認知症との鑑別に役立つでしょう。

 

<せん妄の見分け方ポイント>

「せん妄」では、身体の危機的な状況、苦痛の増強によって現れるのが特徴

せん妄の見分け方ポイント

 

 

 

認知症とうつ状態、またせん妄との鑑別のポイントを紹介しました。

三者の鑑別は決して容易ではありませんが、認知症に軸足を置いて理解を深めたうえで、うつ状態やせん妄の特徴を知ることが鑑別の助けになります。

また、うつ状態やせん妄も、認知症と合併することはひんぱんにあります。

“認知症ではないようだから”とチームアプローチから除外するのではなく、今その患者に必要なケアや治療が提供できるよう見きわめていくことが、ベッドサイドでケアするわれわれ看護師の大切な役割でもあります。

 

 


[引用文献]

  • 1.平井孝男:第2章・うつ状態とは.平井孝男,うつ病の治療ポイント―長期化の予防と対策,創元社,東京,2004:38-39.
  • 2.馬場元:認知症と鑑別を要する精神症状―うつ病.月刊薬事 2015;57(11):27-32..
  • 3.長谷川洋:第3章2・認知症とうつ病の違い.長谷川和夫,長谷川洋 編,よくわかる高齢者の認知症とうつ病,中央法規,東京,2015:172-176.
  • 4.長谷川浩:認知症を疑ったら―所見の取り方と鑑別の進め方.レジデントノート 2013;15(13):2411-2417.

本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2016照林社

P.36~39「認知症はうつ状態・せん妄とどう異なるか」

[出典] 『エキスパートナース』 2016年7月号/ 照林社

著作権について

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