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2018年01月17日

中核症状・ BPSD (認知症による 行動・心理症状)とは何か|認知症の病態と診断

『エキスパートナース』2016年7月号より転載。
中核症状・BPSDについて解説します。

 

得居みのり
聖フランシスコ会姫路聖マリア病院地域連携室室長/看護師長

 

〈目次〉

 

 

「認知症」とは

認知症」という名称は疾患名ではなく、状態を表す名称です。例えば、「下痢」という状態をもたらす原因としてさまざまな疾患が存在するように、「認知症」という状態をもたらす原因疾患は多岐にわたります。

認知症はその原因疾患や疾患の重症度によって出現する症状が異なり、対応の方法も異なります。

 

 

認知症の診断

認知症疾患の診断では通常、現病歴既往歴の聴取、全身の診察、神経学的診察ののち、各種検査が行われます。

 

1聴取

認知症疾患の患者では、本人が症状を自覚していないことも多いため、もの忘れ生活の自立度社会機能精神症状などの情報を、家族や介護者からも詳細に聴き取ることが重要になります。

 

2神経心理検査

神経心理検査は認知機能の評価のために特に重要な検査とされ、よく使用されるものに、mini-mental state examination(MMSE)や、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)があります。

MMSEは30点満点中「23点以下」、HDS-Rは30点満点中「20点以下」で“認知症の疑いあり”と判定されますが、感覚器の機能や教育歴・職歴等の影響を受けることもあるため、得点のみで認知症の有無を判断せず、検査中の患者の動作や受け答え、検査項目中の失点のみられ方などに注目して判断する必要があります。

 

3画像検査・検体検査

「MRI」や「CT」などの画像検査も認知症の確定診断に用いられ、脳の萎縮の状態を評価するとともに、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、硬膜下血腫、正常圧水頭症などの器質的な病変を確認します。

さらに、検査設備がある場合には、「脳血流SPECT」「FDG-PET」などの核医学検査を行い、脳の血流や糖代謝を測定して脳機能を評価することもあります。
 

甲状腺機能障害、ビタミンB1・B12 欠乏症、糖代謝異常、高アンモニア血症、感染症(脳炎、髄膜炎等)などが疑われる場合は鑑別診断のために、血液や脳脊髄液の検査が行われます。

 

4鑑別すべき疾患

アルコールや薬物の影響、せん妄、うつ病、妄想性障害などによる症状は認知症と間違われやすいため、それらの症状との鑑別も必要とされます。

 

 

認知症の中核症状とBPSD(認知症による行動・心理症状)

認知症疾患の症状は大きく「中核症状」(認知機能障害)と「行動・心理症状[memo]」(behavioral and psychological symptoms of dementia、BPSD)に分けられます(図1)。

memo行動・心理症状(BPSD)

以前は「周辺症状」と言われていたもの

図1認知症の中核症状/行動・心理症状(BPSD)

認知症の中核症状/行動・心理症状(BPSD)

 

認知機能障害には記憶障害、失語、失行、失認、遂行機能障害等が含まれ、認知症疾患の患者には必ずいずれかの症状が認められます。

BPSDには易刺激性、焦燥・興奮、脱抑制、行動障害、妄想、幻覚、うつ、不安、多幸感、アパシー、夜間行動異常、食行動異常などが含まれます。

BPSDは、患者にみられている認知機 能障害に、本人が不安やストレスを感じるような状況が重なった結果、心理的な反応や行動の障害として出現することが 多く、元来の本人の性格や成育・生活歴 に加えて、身体の健康状態、環境、他者 のかかわりのあり方などが大きく影響しています。 

入院中の患者のBPSDについては、「身体的な苦痛を緩和する」「環境調整を行う」「安心感を与えるのかけ方や対応の 方法を工夫する」ことなどによって、症状の予防や改善を試みることができます。

 

 

認知症の原因となる主な疾患・症状

認知症の原因は、身体的な疾患を含めると100種類以上にものぼると言われています。

脳の病変である疾患の代表的なものとしては、表1が挙げられます。

表1脳の病変に伴う主な認知症

脳の病変に伴う主な認知症

 

ここではなかでも、変性疾患である「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」の症状について説明します。

 

1アルツハイマー型認知症

図2アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症

 

①メカニズム

アルツハイマー型認知症は、脳の変性が「海馬」「海馬傍回」などエピソード記憶にかかわる部位から始まるため、疾患の初期から記憶障害が認められます。

 

②症状

特に、“自ら経験したできごとを思い出せない”という状態から、物の置き場所がわからない、同じことを繰り返し話す、服薬管理が困難であるなどの症状がみられ、周りの人に気づかれることがあります。

前頭葉の機能が障害されはじめると、遂行機能(目標を設定する、計画を立てる、遂行する)に障害がみられて、段取りや要領が悪くなる、場当たり的な行動をとるなどの症状がみられることがあります。

 

③進行

脳の変性が頭頂葉や側頭葉に拡大するにしたがって、視覚構成障害(視空間操作の障害)、計算障害、書字障害、言語障害などの認知機能障害がみられるようになります。視覚構成障害によって“道迷い”もみられます。

アルツハイマー型認知症では、意欲低下、うつ、妄想、幻覚、徘徊、興奮などのBPSDが認められることが多いものです。特に妄想は半数以上の患者に認められるとされ、財布や通帳、印鑑などを盗られたと訴える“物盗られ妄想”が多くみられます。

疾患が進行するにつれて、徘徊、興奮、易刺激性などが目立つようになります。

 

2レビー小体型認知症

図3レビー小体型認知症

レビー小体型認知症

 

①メカニズム

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで多くみられる変性疾患性認知症です。

特殊なタンパク質であるレビー小体が脳の大脳皮質や脳幹に多数集積することで、神経細胞の破壊・減少が起こり、認知症の症状へとつながります。

 

②症状

特徴的な症状として、認知機能の変動、幻視、妄想、パーキンソン徴候がみられます。特に幻覚・妄想は、レビー小体型認知症においては中核症状といえます。

認知機能の変動は、「最もよいときには記憶や了解もよく、日付や場所も正確に答えられたりしていたのが、悪くなるとまったく話が通じず、周辺環境の理解もまったくできなくなるような、別の世界にいるような、せん妄と言わざるを得ないような様子」とされるような状態が認められます。

認知機能の変動は日内変動と日間変動として認められ、その現れ方は患者によって異なり、このような状態を、「スイッチが入ったり切れたりするようだ」と表現する家族もあります。
 

幻視は具体的で鮮明で詳細であることが特徴的で、“人、小動物、虫などが見える”ということが多いようです。一部の患者には病識があり、「他の人には見えないみたいだけれど、自分には見える」などと言うこともありますが、病識がない場合は、妄想に発展したり、幻視に反応して行動した結果、事故につながったりすることもあります。

パーキンソン症候では、安静時の振戦は少ないものの、姿勢反射障害と歩行障害が多いという特徴があり、このことからも転倒・転落事故の危険性が高くなります。

図4パーキンソン症候によって起こる姿勢反射障害と歩行障害

 

 

3前頭側頭型認知症

図5前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症

 

①メカニズム

前頭側頭型認知症は、前頭側頭葉変性症に属する疾患の1つです。
 

前頭葉と側頭葉の萎縮によって認知症が起こり、それぞれの部位が司る機能(感情コントロール、理性的行動、言葉の理解など)の低下が認められます。

 

②症状

特徴的な症状としては、社会行動・感情・日常生活の変化が認められます。

感情・情動の変化として、多幸的、不機嫌、無表情、他者との疎通性が得られにくいなどの症状がみられます。また、脳の前方連合野から辺縁系の抑制が消失することから、衝動的・本能的に行動する脱抑制の状態がみられ、万引きや窃盗と間違えられて他者とのトラブルとなるような患者もみられます。

前方連合野から大脳基底核への抑制の消失により、毎日決まった時間に決まった行動をとるといったような常同行動が生じますが、一方では集中力に欠き、行為を持続して続けることができなくなる状態がみられます。

前頭葉内側面の機能低下により自発性低下の症状がみられますが、病初期には常同行動や落ち着きのなさと共存してみられることが多く、「通常は何もせずに寝ているが、決まった時間になると周りの制止もきかずに外に出かけていく」などという状態で症状が出現します。また、これらの症状によって遂行機能の障害が生じやすくなります。

食行動異常としては、甘いものを多量に食べるといった嗜好の変化、食欲の増加、十分に咀嚼せずに嚥下する、一定の食品や料理に固執するといった食習慣の変化などがみられます。

言語障害としては、同じ言葉を反復する、いつも同じ内容の話題を話すなどの症状がみられることがあります。

 


[参考文献]

  • 1.辻省次,河村満 編:アクチュアル 脳・神経疾患の臨床̶認知症・神経心理学的アプローチ.中山書店,東京,2012.
  • 2.池田学 編:認知症̶臨床の最前線.医歯薬出版,東京,2012.

本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2016照林社

P.30~35「中核症状とBPSD(認知症による行動・心理症状)とは何か」

[出典] 『エキスパートナース』 2016年7月号/ 照林社

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