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2017年08月28日

アナフィラキシーショック【疾患解説編】|気をつけておきたい季節の疾患【16】

来院された患者さんの疾患を見て季節を感じる…なんて経験ありませんか?
本連載では、その時期・季節特有の疾患について、治療法や必要な検査、注意点などを解説します。また、ナースであれば知っておいてほしいポイントや、その疾患の患者さんについて注意しておくべき点などについても合わせて解説していきます。

→アナフィラキシーショック【ケア編】はこちら

アナフィラキシーショック

 

アナフィラキシーショックの症状_アナフィラキシーショックの主訴

 

山田裕樹
日本赤十字社和歌山医療センター集中治療部

 

〈目次〉

 

アナフィラキシーショックってどんな疾患?

アナフィラキシーとは、「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」であり、さらに「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」アナフィラキシーショックと定義されています(1)。短時間で呼吸停止または心停止に至ることがあり、初期対応が特に重要な疾患の一つです。

夏から秋にかけては、アシナガバチやスズメバチの働きバチが羽化して個体数が増え、ハチによるアナフィラキシーの好発時期と言えます。ハチ毒に対する反応ですので、ハチの種類は問われません。アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチなど、いずれのハチであっても、刺傷部の疼痛、発赤、腫脹などの局所症状だけでなく、アナフィラキシーの全身症状を伴うことがあります。

ハチ刺傷の0.3~3%にアナフィラキシーが報告されていますが(2)、実際にはもっと多いことが推測されます。職業との関連が指摘されており、林業、農業、ゴルフ場、建設業、造園業や、イチゴ農家、養蜂農家では多くの人がハチ刺傷歴を有しています。また、ハチ刺傷のアナフィラキシーによって、わが国では毎年十数名~二十数名の死亡報告があります。

アナフィラキシーの発症には、後で述べるようにさまざまな誘因がありますが、どのような誘因であってもアナフィラキシーの症状は共通していますので、その病態について解説します。

 

アナフィラキシーショックの病態

多くはIgEが関与した免疫学的機序により、皮膚・粘膜、呼吸器、循環器、消化器など複数系統にさまざまな症状が現れます(13)。

 

皮膚・粘膜

皮膚熱感、紅潮、掻痒、発疹、血管浮腫などの症状が現れたり、口唇や舌・口蓋に痒みやヒリヒリした痛み、浮腫を認めたり、金属のような味覚を自覚したりすることもあります。これらの皮膚・粘膜症状はアナフィラキシー患者の80~90%に認められ、診断をする上で役立ちますが、皮膚・粘膜症状を認めないからといってアナフィラキシーが否定される訳ではないことに注意が必要です。

 

呼吸器・循環器

呼吸器には、鼻や喉頭の掻痒や充血、鼻汁、くしゃみ、嗄声、喘鳴、発声障害などの症状が現れ、アナフィラキシー患者の最大70%に認められます。循環器には、失神、気分不良、胸痛、頻脈、徐脈、ショック、心停止などの症状が最大で45%の患者に認められます。
これら呼吸器、心血管系への影響により、呼吸停止または心停止する症例では、発症から呼吸停止または心停止まで、薬物で5分、ハチで15分、食物で30分と報告されており(1)、短時間で初期対応しなくてはいけません。

 

消化器

消化器には、腹痛、嘔気、嘔吐、下痢、嚥下障害などの症状が、最大で45%に認められます。多くはありませんが(最大で15%)、中枢神経系にも不安、拍動性頭痛、不穏、不動性めまい、トンネル状視野といった症状が見られることがあります。

 

アナフィラキシーの誘因

頻度に地理的差異はあるものの、表1のような誘因が多く報告されています。誘因を特定するには、発症からさかのぼって数時間以内の飲食物摂取歴、薬物使用歴、アレルゲン暴露歴について詳細に聴取することが大切です。

 

表1アナフィラキシーの誘因

アナフィラキシーの誘因_アナフィラキシーの原因

 

アナフィラキシーショックの処置・治療法

基本的な考え方

アナフィラキシーショックは呼吸不全と循環不全が短時間で発生、進行し得る病態です。気管挿管、人工呼吸、急速輸液、循環作動薬投与などが必要になるかもしれません。アナフィラキシーショックを疑った場合には、迅速に対応できる環境で患者を診察することが大切です。

 

初期治療

バイタルサインの確認、応援の要請、アナフィラキシーの診断

アナフィラキシーショックを疑った場合には、まず呼吸を観察しましょう。喘鳴があれば緊急事態です。後に述べる「重症例の治療」を参照してください。
そのほか、循環、意識、皮膚を評価しましょう。アナフィラキシーの診断には皮膚・粘膜症状が役立ちますが、皮膚・粘膜症状を認めないアナフィラキシーの患者に注意が必要です。危機的なバイタルサインの場合だけでなく、病勢の悪化に備えて診療支援を要請しましょう。可能であればアレルゲンを除去します(疑われる薬剤の中止など)。

 

薬物治療(アドレナリンの筋肉注射)

大腿中央部の前外側にアドレナリン0.01mg/kg(最大量:成人0.5mg、小児0.3mg)を筋肉注射します。必要に応じて5~15分ごとに再投与します(図1)。

 

図1アドレナリン自己注射薬(エピペン®

アドレナリン自己注射薬_エピペン

左はエピペン®0.15mg、右はエピペン®0.3mg

 

絶対的な禁忌はありませんが、心室性不整脈、高血圧、肺水腫、急性冠症候群、頭蓋内出血などの有害作用に注意しましょう。ただし、これらの有害作用はアドレナリンを投与しなくてもアナフィラキシーの患者に発生し得ることが知られています。

 

memoアドレナリン自己注射薬(エピペン®)

アナフィラキシー患者が事前に処方されている場合は、患者本人あるいは介助者によってアドレナリン自己注射薬を筋肉注射することで症状の改善を認めています。

 

アドレナリン以外の薬物治療

ヒスタミンH1受容体拮抗薬(クロルフェニラミン静脈投与、ジフェンヒドラミン静脈投与、セチリジン経口投与など)などで、掻痒感、紅潮、蕁麻疹、くしゃみ、鼻漏が軽減するとされています。また、β2アドレナリン受容体刺激薬(サルブタモール吸入投与など)には喘鳴咳嗽息切れを軽減する効果があるとされますが、ヒスタミンH1受容体拮抗薬もβ2アドレナリン受容体刺激薬も気道閉塞やショックを防止、改善することはなく、救命効果はありません

ステロイド(ヒドロコルチゾン静脈投与またはメチルプレドニゾロン静脈投与、プレドニゾン経口投与、プレドニゾロン経口投与など)は、遷延性または二相性アナフィラキシーの防止、緩和に使用されることがありますが、作用発現に数時間を要します。また、その効果は立証されていません。

 

仰臥位、酸素投与、輸液

患者を仰臥位にして30cm程度下肢を拳上します。喘鳴、呼吸苦の訴えがあるときは少し上体を起こしましょう。突然立ち上がったり座ったりした場合、数秒で急変することがあります。呼吸器症状を認めるときは高流量酸素投与を行います。また、血圧低下を認めるときは細胞外液(生理食塩水など)を急速輸液します。成人の場合、5~10mL/kg(体重50㎏なら250~500mL)小児の場合10mL/kgを10分間で投与します。

 

memoハチ刺傷部の局所処置

ハチの針が刺入してから毒液が放出されるまではわずか数秒しかかかりません。そのため、刺入直後に指などではじいて針を取り去ることはハチ毒への暴露量を減らすことにつながります。数分以上経過した場合でも、針による別部位の損傷を避ける目的で針を取り除きます。多くの場合、針の刺傷部には疼痛、発赤、腫脹などの局所症状を認めます。腫脹は2~3時間で軽減しますが、1~2日間続くこともあります。
局所処置には決まった方法がありませんが、痛みを和らげる目的で刺傷部を冷却することは有効です。毒を吸い取ろうとして刺傷部に口をつけることは二次性感染症の原因となるため、してはいけません。痒みを和らげる目的でステロイド軟膏を塗布することもあります。

 

重症例に対する治療

重症例では、数分間で呼吸停止、心停止に至る可能性があります。気道確保が困難な場合には気管挿管あるいは外科的気道確保を行い、遷延する低血圧に対してはアドレナリンの静脈投与やその他薬剤の静脈投与を追加することがあります(4)。

呼吸不全に対する気道確保、人工呼吸

患者の舌および咽頭粘膜が腫脹し、血管浮腫および多量の粘液分泌があると、喉頭や上気道の解剖学的指標が分かりにくく、気管挿管は困難になることがあります。気管挿管する場合は、経験豊富な医師を呼びましょう。また、上気道閉塞によって換気できない場合には輪状甲状膜穿刺などの外科的気道確保を躊躇してはいけません。

 

難治性ショックに対する循環作動薬

アドレナリン筋肉注射および急速輸液によってもショックが遷延する場合は、十分なモニタリング下にアドレナリンの静脈投与を行うことがあります。β遮断薬を内服していてアドレナリンへの反応が乏しい場合にはグルカゴン、アトロピンを投与することがあります。また、状況により、その他の循環作動薬(ドパミン、ドブタミン、ノルアドレナリン、バソプレシン)を投与することもあります。

 

再発予防

アナフィラキシーの既往がある患者の定期的なフォローアップは、アナフィラキシー発症リスクを減らし、再発予防に有用とされています。患者が退院する際には、アナフィラキシーへの対応を教育し、今後も誘因への暴露が予想される場合は、アドレナリン自己注射を処方し、使い方を指導します。
ハチの場合、山間部で生活している場合や、職業柄ハチに遭遇する可能性が高い場合は、アドレナリン自己注射の処方・指導をします。

また、アレルギー専門医への受診を促し、アレルゲンの特定と回避あるいは免疫療法による治療を検討しましょう。ただし、ハチ刺傷に対する免疫療法は本稿執筆時点で保険適応ではありません

 

アナフィラキシーショックは呼吸不全と循環不全が短時間で発生、進行しうる病態です。皮膚所見を参考にしながら、まずは疑うことが診療のスタートです。重症例の呼吸困難を見つけるよう心がけましょう。気管挿管などの処置が必要になれば迅速に対応できる環境で患者を診察することが大切です。

 



[監 修]
辻本登志英
日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部長 救急部副部長

芝田里花
日本赤十字社和歌山医療センター 副看護部長 救命救急センター看護師長


[Design]
高瀬羽衣子


 

著作権について

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