褥瘡予防対策は病院の義務!看護師が知っておくべき3つのこと

体位変換などの褥瘡予防措置は、療養上の世話となります。したがって、褥瘡が発生した際に看護師が訴訟で問われるケースも考えられます。
褥瘡予防措置を適切に行い、訴訟トラブルを避けるためには、①「褥瘡予防・管理ガイドライン」の遵守、②褥瘡対策の診療計画の立案、③訴訟を防ぐ看護記録-の3点に注目する必要があります。

 

 

大磯義一郎谷口かおり
(浜松医科大学医学部「医療法学」教室)

 

訴訟では適切な褥瘡予防措置がとられていないと判断されてしまい、看護記録に2時間ごとの体位変換の記録がなかったことが問題となりました。

 

看護記録は、看護行為を示す証拠となることがよく分かりました。

 

褥瘡予防に何が必要か確認してみましょう。

 

褥瘡予防、管理ガイドライン

褥瘡は床ずれとも言われており、昔からよく聞かれる言葉です。皮膚への長時間の圧迫により、一時的な発赤から持続的な発赤へと移行し、真皮、皮下と損傷が深くなり重症化します。褥瘡の管理を誤ると、感染症などに移行する恐れがあり、死亡に至るケースや入院の長期化につながります。褥瘡は、局所の圧迫に加え、全身状態が悪いと短時間で発生し、重症化しやすいため、褥瘡を予防し、早期発見できることが最も効果的な褥瘡対策であると考えられます。
「褥瘡予防・管理ガイドライン」は、科学的な根拠に基づいた褥瘡の診断や、褥瘡予防・管理の方法を判断するための指針となりますので、遵守するようにしましょう。

 

「褥瘡予防・管理ガイドライン」

日本褥瘡学会は、2005年に「科学的根拠に基づく褥瘡局所治療ガイドライン」を発表しました。その後、予防や発生後のケアの項目を追加し、改訂版とも言うべき「褥瘡予防、管理ガイドライン」を2009年に発表しました。ガイドラインの目的は、褥瘡管理にかかわる全ての医療者が、それぞれの医療状況において褥瘡の予防管理をめぐる臨床決断を行うあらゆる局面で活用するため、現時点で利用可能な最良のエビデンスに基づいた治療やケアを提示することです。

 

褥瘡対策の診療計画の立案

2012年度の診療報酬改定から、褥瘡患者管理加算と同等の体制を取ることが入院基本料の施設基準となりました。要件の中に、「適切な褥瘡対策の診療計画の作成や実施及び評価の体制がとられていること」とされ、「褥瘡対策に関する診療計画書」(図1)が必要となりました。その中には、褥瘡予防に対する看護計画も含まれていて、患者さんの日常生活自立度、全身状態の評価など、褥瘡発生のリスクに応じて必要な判断がされている証拠となります。

 

図1褥瘡対策に関する診療計画書

 

訴訟を防ぐ看護記録

事例で示したように、2時間ごとの体位変換の記載が、看護記録としてなかったために原告の主張が認められています。
褥瘡予防措置に対して、看護師さんが「褥瘡予防・管理のガイドライン」を遵守し、どのように患者さんの看護計画を立てて実施したかという看護記録が必要となります。褥瘡対策に関する診療計画書が看護計画となり、「2時間ごとの体位変換を実施した」という看護記録は、電子カルテであれば実施項目に入力したものを、電子化されていない紙媒体であれば、表1のように、チェックリストに簡略化したものを看護記録とすれば、ケアの統一にもなりますし、訴訟を防ぐ看護記録となります。

 

表1体位変換表の一例

 

まとめ

看護ケアにおいても科学的根拠が必要になってきます。そのために「褥瘡予防・管理のガイドライン」が作成され、患者さんの個別性に合わせた効果的な褥瘡予防ができるようになってきました。しかし、どのような褥瘡予防措置を行っていても、それを示す看護記録がなければ、実施したことにはならないので、簡便に記録できるように工夫し、正式な看護記録として残しておきましょう。

 


[引用・参考文献]
1)一般社団法人日本褥瘡学会.在宅褥瘡予防・治療ガイドブック.第3版.照林社,2015,186.
2)一般社団法人日本褥瘡学会 教育委員会 ガイドライン委員会.褥瘡予防の・管理ガイドライン(第4版).褥瘡会誌.17(4),2015,487-557.
3)一般社団法人日本褥瘡学会.褥瘡関連項目に関する指針.照林社,2014,p106. 

 

[次回]

第3話:Q&Aでわかる褥瘡になりやすい患者さん

 

⇒『ナース×医療訴訟』の【総目次】を見る

 


[執筆者]
大磯義一郎
浜松医科大学医学部「医療法学」教室 教授
谷口かおり
浜松医科大学医学部「医療法学」教室 研究員

 


Illustration:宗本真里奈

 


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