ウィーニング時に注意することは?|小児の人工呼吸管理

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。

 

今回は「ウィーニング時の注意点」に関するQ&Aです。

 

三浦規雅
東京都立小児総合医療センターPICU主任

 

ウィーニング時に注意することは?

 

基本は成人と同様です。しかし、より計画的なウィーニングと、小児の特性を理解した観察が求められます。

 

〈目次〉

 

ウィーニングの開始基準と中止基準

長期間のウィーニングは呼吸筋疲労を招くため、日中にウィーニングを進め、夜間に人工呼吸器条件を戻して休息させるなど、計画的に進める必要がある。

 

小児における推奨されるウィーニングのための基準値はないが、開始基準は成人と共通と考えることができる(表1)。

 

表1ウィーニング開始基準

 

1前提条件

  1. 原疾患が治癒または改善傾向にある
  2. 気道分泌物の除去(、喀出など)が可能である

2開始基準

  1. 酸素化が十分である:PEEP≦8cmH2O、PaO2/FIO2≧150Torr
  2. 血行動態が安定している:HR≦140/分、循環作動薬が使用されていないか、少量のみ(ドパミン5μg/kg/分程度)。致死的な不整脈がない。心筋虚血のサインがない
  3. 意識状態が安定している:持続鎮静している場合、鎮静中断が問題なく行える。指示動作が可能である。施設で用いている鎮静スコアで覚醒状態である
  4. 電解質・塩酸基平衡に異常がない(例:重度の呼吸性/代謝性アシドーシス、カリウム値の以上がない)

日本集中治療医学会ICU機能評価委員会:人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010改訂版:6.より引用

 

小児における推奨されるウィーニング中止のための基準値はないが、中止基準の一例を示す(表2)。

 

表2ウィーニング中止基準の一例

 

1呼吸状態

  1. 頻呼吸、徐呼吸、無呼吸
  2. 呼吸パターンの悪化、努力呼吸増悪
  3. 酸素化不全、換気不全
  4. 一回換気量の不足、分時換気量の不足
  5. 不十分な咳嗽反射
  6. 胸部X線所見の増悪(無気肺、胸水、肺炎像など)

2循環動態

  1. 循環不全徴候の出現(頻脈、徐脈、低血圧尿量異常、末梢冷感、冷汗など)
  2. 致死的な不整脈の出現、心電図の異常

3意識状態

  1. 不穏
  2. 覚醒遅延
  3. けいれんの出現

 

小児における抜管の指標として、国立成育医療研究センターで用いている呼吸機能検査の基準値を示す(表3)。

 

表3抜管の指標(国立成育医療研究センター)

 

項目 基準 未達成時の意義
啼泣時肺活量
(crying vital capacity:CVC)
CVC≧15mL/kg コンプライアンスが低い病態を示唆
最大吸気圧
(maximum inspiratory pressure:MIP)
MIP≧−35cmH2O 覚醒不十分、神経筋障害、横隔神経麻痺などを考慮
最大吸気流速
(peak inspiratory flow rate:PIFR)
PIFR≧4mL/秒/cm(身長 気道抵抗が高い病態を示唆

中川聡:小児の人工呼吸からのウィーニング.ICUとCCU 2005;30:11-15.を参考に作成

 

小児の特性

1呼吸仕事量の増大

乳幼児の一回換気量は少ないため、呼吸器回路、Yピースや気管チューブは死腔となる。

 

細い気管チューブの使用は、気道抵抗を増加させる。

 

ウィーニングによる圧サポートの減少は、呼吸仕事量を著しく増加させる。

 

2トリガー困難

小児は、一回換気量が少なく、呼吸回数が多いため、人工呼吸器が自発呼吸をトリガーすることは、しばしば困難となる。

 

一般に、感度が高い流量トリガーを選択するが、リークの存在や心拍動によるオートトリガーによる頻呼吸や、感度を鈍くするとトリガーフェイラーにより呼吸筋疲労を生じるため、自発呼吸が適切にトリガーされているか観察し、調整することが求められる。

 

3鎮静・鎮痛

鎮静薬は、中枢性の呼吸抑制をきたすため減量する。しかし、長期投与後の急激な減量・中止は、離脱症候群を引き起こすため、計画的な漸減が必要である。

 

ウィーニング中の事故抜管の危険性を減少させ、患者の苦痛を最小限に抑えるためにも、必要最小限の鎮静薬投与は必要である。

 

鎮痛薬も、中枢性の呼吸抑制をきたすため減量する。しかし、強い疼痛は呼吸運動を抑制し、咳嗽力を低下させて痛みによる啼泣や筋緊張を生じ、ウィーニングを妨げる要因となるため、必要に応じて十分な鎮痛を考慮する必要がある。

 


[文献]

  • (1)日本集中治療医学会ICU機能評価委員会:人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010改訂版.http://www.jsicm.org/pdf/2010VAP.pdf(2014年11月18日閲覧)
  • (2)中川聡:小児の人工呼吸からのウィーニング.ICUとCCU2005;30:11-15
  • (3)谷昌憲他:小児呼吸不全患者の管理.急性・重症患者ケア2012;1:214.
  • (4)宮坂勝之訳編:日本版PALSスタディガイド.エルゼビア・ジャパン,東京,2008:120-121.
  • (5)志馬信朗,橋本悟,問田千晶:小児ICUマニュアル改訂第6版.永井書店,大阪,2012:79.
  • (6)木原秀樹:呼吸理学療法.救急・集中治療2010;22:339.
  • (7)久保実:低血糖小児科臨床2000;53:2217-2223.
  • (8)Lucas da Silva PS, de Carvalho WB. Unplanned extubation in pediatric critically ill patients: a systematic review and best practice recommendations. Pediatr Crit Care Med 2010; 11: 287-294.
  • (9)六車崇:人工呼吸器からのウィーニング.救急・集中治療2010;22:411-416.
  • (10)植田育也編:小児の呼吸管理Q&A.救急・集中治療2010;22:297-305.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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