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2018年09月30日

早期経口摂取の注意点は?|術後の栄養管理

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。
今回は「早期経口摂取」に関するQ&Aです。

井上透
大阪市立総合医療センター消化器外科副部長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

早期経口摂取の注意点は?

腸閉塞や蠕動麻痺がないかなど、腹部の状態をよく観察することが重要です。

〈目次〉

 

消化管の閉塞や蠕動麻痺がないかを確認

術後患者の悪心・嘔吐・腹部膨満などの症状に注意し、特に問題がなければ、術翌日に飲水の開始から始めます。

さらに食事開始は、患者の症状だけでなく腹部の状態をよく観察することが重要となります。術後のX線検査も重要な情報です。

できるだけ早期離床を促し、可能な範囲で歩行することも、消化管運動を活発にすることが知られています。

消化管の閉塞や蠕動麻痺を疑う所見(表1)、(図1)がなければ、排ガスが認められなくても、食事を開始します。

表1消化管で注意が必要な所見

  • 悪心・嘔吐の症状が見られる場合
  • 著明な腹部膨満が見られる場合
  • 腹部X線画像でイレウス像が見られる場合
    ( 麻痺性のこともあれば、閉塞性のこともある)
  • 消化管吻合を伴う手術では縫合不全が疑われる場合
    (発熱・強い腹痛・ドレーンからの濁った排液など)

 

図1消化管の閉塞、蠕動麻痺を疑うX線所見

消化管の閉塞、蠕動麻痺を疑うX線所見

 

これらの所見が見られた 場合は、食事を開始せず医師に確認しましょう。

 

注意すべき点として、術後早期には手術による侵襲により、腸管の運動麻痺によるイレウス(腸閉塞)が認められることがあります。

腹膜炎の術後などは、炎症に伴う麻痺がほとんどの場合に認められますし、通常のがんや大腸がんの術後であっても、(図1)に示すような麻痺性イレウスを呈することがあります。

クリニカルパスどおり食事開始ができない症例にいかに対応していくかが、消化器手術術後においては重要です。

 

腸蠕動が回復していれば食事は開始できる

1.排ガスは重要な確認方法だが、必須ではない

消化管の腸蠕動が回復し、消化管に通過障害がないことの確認方法の1つとして、排ガスを確認するのは重要なことです。

しかし、本人の意識なく排ガスしていることもあれば、飲水や食事をすることで消化管運動が改善し、排ガスや排便が食事開始後に見られることもあるため、排ガスを確認していなくても食事摂取を開始することはできます。

 

2.食事開始の時期は、少しずつ早まってきている

消化器の術後管理において、クリニカルパスによる管理が主流となった現在においては、医師および看護師が特に意識なく、飲水から食事という経口摂取の開始をパスどおりに行うことがほとんどです。

しかし、ひと昔前は術後の腸管蠕動の回復は48~72時間経ってからといわれていました。そして、食事も排ガスをはじめとした腸蠕動の回復の確認を待ってから行い、食事内容も段階的に、流動物から固形物へゆっくりと上げていくことが通例でした。

しかし、低侵襲手術といわれる腹腔鏡手術が普及し、鏡視下手術では消化管蠕動の回復が早いことが報告され、食事の開始時期は少しずつ早まってきました。開腹術でも鏡視下手術でも、現在では消化管の術後2日目や3日目には食事開始となるクリニカルパスが多く見られます。

さらに近年注目されている新しい周術期管理であるERASプロトコル(周術期管理を変える"ERAS"とは?参照)の中心の1つとなるのが“術前術後の患者の絶食期間をいかに短くするか”ということです。

できるだけ消化管による栄養吸収を行わない時期を短くすることで、腸管免疫の低下を防ぐことが重要と考えられており、術後翌日からの栄養補助食品を投与することが項目の1つとなっています。

このように、“食事ができるようになってから食事を開始する”というよりは、少量でも食事開始という負荷を消化管に与えることで腸管機能を早期に回復させることが、術後管理において重要であることが示されてきています。

 


[文献]


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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