1. 看護roo!>
  2. 看護・ケア>
  3. 人工呼吸ケアのすべてがわかる>
  4. なぜ、人工呼吸管理中に栄養管理を行うの?

2019年03月19日

なぜ、人工呼吸管理中に栄養管理を行うの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。

今回は「人工呼吸管理中の栄養管理」に関するQ&Aです。

なぜ、人工呼吸管理中に栄養管理を行うの?

生命を維持するためには、酸素や水、そして栄養の補給が必須です。これは、人工呼吸管理中でも同様です。

 

〈目次〉

 

人工呼吸中の栄養管理

人工呼吸器を装着している状況でも、ヒトは生命を維持するために酸素や水、そして栄養を必要とする。

 

生命維持に必要なエネルギー量

1健常者の場合

特に活動していない状態でも、呼吸・循環・体温維持や調節などで消費されるエネルギーが存在する。これをBMR(基礎代謝率)という。

健常者のBMRを推定式で算出する方法にHarris-Benedict(ハリスベネディクト)の式が用いられる(表1)。この式に則って、60歳男性、身長160㎝、体重60㎏を計算すると1285kcal/日の基礎エネルギー消費量が算出される。

表1Harris-Benedictの式

Harris-Benedictの式

BEE(基礎代謝量)(kcal/日)

  • 男性:66.47+[13.75×体重(kg)]+[5.0×身長(㎝)]−[6.76×年齢(年)]
  • 女性:655.1+[9.56×体重(kg)]+[1.85×身長(㎝)]−[4.68×年齢(年)]

 

1日の必要エネルギー量(kcal/日)

  • BEE×活動係数×傷害係数

 

活動因子 活動係数
寝たきり(意識低下状態) 1.0
寝たきり(覚醒状態) 1.1
ベッド上安静 1.2
ベッド外活動 1.3~1.4
一般職業従事者 1.5~1.7

 

傷害因子 傷害係数
飢餓状態 0.6~0.9
術後(合併症なし) 1.0
小手術 1.2
中等度手術 1.2~1.4
大手術 1.3~1.5
発熱(1℃ごと) +0.1

 

この基礎エネルギー消費量分のエネルギーを外から取り入れなければ、自身のからだをエネルギー素材として消費していくことになる。

外から栄養補給が行われなければ、24時間以内に肝臓で蓄えられていたグリコーゲンは枯渇し、次いで脂肪がエネルギーとして消費されていく。さらにエネルギーの供給がなければ骨格筋や内臓にあるタンパクが消費されていく。このような状態が進むと免疫力低下や創傷治癒遅延、臓器障害へと進行していく。

体内の脂肪を除いた体重をLBM(除脂肪体重)という。LBMが70%を下回ると窒素死(nitorogen death/ナイトロジェンデス)という状態になり、死に至るとされている(図1)。

図1LBMの減少と窒素死(nitorogen death)

 

2急性期患者の場合

Harris-Benedictの式で算出したBMRは健常者を対象としている。人工呼吸管理中の急性期の患者は、何かしらの侵襲により代謝はさらに亢進している。この代謝の亢進は体内の脂肪組織や骨格筋、内臓タンパクから作られたエネルギーが使われている。

そのため、侵襲によりダメージを受けた体が元の状態に向かうための準備として適切な栄養管理を行わなければならない。

 

略語

  • BMR(basal metabolic rate):基礎代謝率
  • LBM(lean body mass):除脂肪体重
  • BEE(basal energy expenditure):基礎代謝量

[文献]

  • (1)飯干泰彦,岡田正:腸粘膜萎縮の病態とその対策静脈栄養時にみられる腸粘膜の形態学的変化.JJPN1995;17:459-462.
  • (2)氏家良人,海塚安郎,佐藤格夫,他:急性呼吸不全による人工呼吸患者の栄養管理ガイドライン2011年版.人工呼吸 2012;29:75-120.
  • (3)McClave SA, Martindale RG, Vanek VW, et al. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM)and AmericanSociety for Parenteral and Enteral Nutrition(ASPEN). JPEN 2009; 33: 277- 316.
  • (4)Clinical Evaluation Research Unit:Practice Guideline 2013, http://www.criticalcarenutrition.com(2014年11月18日閲覧).
  • (5)Singer P, Berger MM, van den Berghe G, et al. ESPEN Guidelines on Parenteral Nutrition: intensive care. Clin Nutr 2009:28:387-400.

[Profile]
清水孝宏
那覇市立病院看護部/集中ケア認定看護師


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

[出典] 『新人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

著作権について

この連載

  • 人工呼吸管理中の目標カロリーは、どうやって決める? [04/02up]

    『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。 今回は「人工呼吸中の目標カロリー」に関するQ&Aです。 目標カロリーは、どう決める? 間接熱量計によって目標カロリーを算出する方法もありますが、「25kca... [ 記事を読む ]

  • 人工呼吸中の栄養管理方法には、どんなものがあるの? [03/26up]

    『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。 今回は「人工呼吸中の栄養管理方法」に関するQ&Aです。 栄養管理方法には、どんなものがあるの? 経腸栄養と静脈栄養が主な栄養管理の方法です。 経腸ならば経... [ 記事を読む ]

  • なぜ、人工呼吸管理中に栄養管理を行うの? [03/19up]

    『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。 今回は「人工呼吸管理中の栄養管理」に関するQ&Aです。 なぜ、人工呼吸管理中に栄養管理を行うの? 生命を維持するためには、酸素や水、そして栄養の補給が必須で...

  • 徒手的呼気介助って? [03/12up]

    『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。 今回は「徒手的呼気介助」について説明します。 徒手的呼気介助って? 徒手的呼気介助とは、徒手的に胸郭運動を他動的に介助することである。 胸郭を呼気時に圧迫すること... [ 記事を読む ]

  • 在宅での呼吸リハビリテーションの内容は? [03/05up]

    『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。 今回は「在宅での呼吸リハビリテーション」に関するQ&Aです。 在宅での呼吸リハビリテーションの内容は? 患者が安心して在宅生活を送るために行われるすべてのサ... [ 記事を読む ]

もっと見る

関連記事

いちおし記事

電池切れ|マンガ・ぴんとこなーす【226】

夜勤明けあるある!夜勤ハイがずっと続くと思いきや… [ 記事を読む ]

【イラストで解説!】消化器系の解剖生理

胆汁は胆嚢から放出されます。では、胆汁を作るのはどこでしょう? [ 記事を読む ]

看護師みんなのアンケート

ここを褒めて!あなたの褒めてほしいポイントは?

投票数:
1286
実施期間:
2019年05月28日 2019年06月18日

TV番組、毎週どれだけ録画してる?

投票数:
1268
実施期間:
2019年05月31日 2019年06月21日

院内のジンクス教えて!

投票数:
1110
実施期間:
2019年06月04日 2019年06月25日

4番目に大切な人は?

投票数:
1082
実施期間:
2019年06月07日 2019年06月28日

「採血が難しい血管」選手権!

投票数:
1004
実施期間:
2019年06月11日 2019年07月02日

勤務先にめずらしい福利厚生、ある?

投票数:
877
実施期間:
2019年06月14日 2019年07月05日

エンゼルケアどこまでやっている?

投票数:
1515
実施期間:
2019年06月18日 2019年07月09日
もっと見る

今日の看護クイズ 挑戦者4025

COPDの動向について、正しいものはどれでしょうか?

  • 1.日本においてCOPDの原因は、大気汚染によるものが主因である。
  • 2.2015年のWHO調査では、COPDは世界の死因の10位以内には入っていない。
  • 3.喫煙率が低下しているため、世界的に今後10年間でCOPDの患者さんは減少する。
  • 4.日本ではCOPD死亡者の半数以上を80歳代が占めている。
今日のクイズに挑戦!