家族などの面会に、ガウンの着用やガウンテクニックは必要?|感染対策

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。
今回は「家族などの面会時」に関するQ&Aです。

 

宮原聡子
大阪市立総合医療センター医療安全管理部主査
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

家族などの面会に、ガウンの着用やガウンテクニックは必要?

 

必要ないと考えられます。むしろ確実な手指消毒のほうが重要です。

 

〈目次〉

 

面会時のガウンやエプロンは不要

患者と家族などの面会時のガウンテクニックやエプロンの着用について、該当する研究や、具体的にガイドラインに詳細が記されたものは見受けられませんでした。しかし、ICUや一般病棟においても、家族の面会には「ガウン」の着用や「ガウンテクニック」は必要ないと考えられます。

 

標準予防策としてガウンやエプロンが必要なのではないかと考える方もいるかもしれませんが、基本的には、患者の家族や面会者は、私たちケア提供者のように他患者に接触する機会がないからです。

 

入院患者は、疾患や投与されている薬剤によって免疫機能が低下している状態にあります。医療者は多くの患者の処置やケアを行っており、感染を伝播してしまう可能性があるため、患者から医療者、医療者から他患者への感染の機会を防ぐためにエプロンやガウンを必要とします。

 

しかし、面会者は1個人に対する面会であり、他患者への接触はありません。そのため、ガウン・エプロンを着用しても、他患者への感染性微生物の伝播に関して大きな役割は果たさないため、不必要といえるでしょう。

 

ガウンより確実な手指消毒を

一方、手洗いの重要性は、『医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン』でも明確に記載されています。院内感染の多くは、医療器具の汚染や患者の皮膚創傷部位などに付着している細菌に、医療者の手が接触することが要因であるとされています(1)。

 

面会者に関しては、他患者との接触はありませんが、感染源を持ち込む可能性があります。面会者の免疫機能に異常がなければ、たとえ保菌していても発症しませんが、入院患者は免疫機能が低下している場合が多く、感染を起こすと重篤化してしまう可能性もあります。また逆に、感染源を持ち帰らないように、手指衛生を行うことは必要といえるでしょう。

 

手指洗浄の目的は、汚れや一過性の微生物などを除去することにあります。手指にある肉眼で確認できないような汚れは、擦式消毒用アルコール製剤を用いて手指消毒を行い、肉眼的に確認できる汚れに対しては、石けんと流水で除去した後に擦式消毒用アルコール製剤を用いて手指消毒を行うことが推奨されています(表1)。

 

表1手指衛生の方法と、必要な場面

手指衛生の方法と、必要な場面

 

これらのことから、面会者は「ガウン」の着用や「ガウンテクニック」を行う必要はないと考えられ、むしろ、手指消毒を確実に行ってもらうことのほうが重要といえます。

 

面会者に風邪などの症状が ある場合はどうすればよいでしょうか?

 

感染症状のある場合は、面会を差し控え、どうしても面会しなければならないのであれば、サージカルマスク(不織布製のマスク)を使用することが望ましいです。ガーゼマスクはフィルター効果が十分でないため、感染対策にはなりません。

 

コラム医療者のエプロン・ガウン着用の意義

医療者がガウン等を着用する意味

・ 患者からケア提供者へ、ケア提供者から患者への感染防止の意味で必要になります。

 

・ 患者の粘膜や創傷部位、カテーテルなどに 接触するときに、皮膚や着衣を保護する目的で着用します。

 

CDCガイドラインでの扱い

・ 普遍的に手袋やガウンを着用するという勧告はありません。

 

・ 多剤耐性菌の予防策については、患者と医療者の接触の程度や他の患者のリスクなどに従い、日常生活の全面介助が伝播を予防するために適切な防護用具を使用するとされています。

 


[文献]

  • (1)大久保憲,小林寬伊監訳:医療現場における手指 衛生のためのCDC ガイドライン.メディカ出版. 大阪,2003:91-92,133.
  • (2)大湾知子,藤田次郎編:もっといい方法がみつか る 目からウロコの感染対策. 南江堂, 東京, 2012:8-23.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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