ICU-AWってなに?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。
今回は「ICU-AW」に関するQ&Aです。

 

下地大輔
東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科

 

ICU-AWってなに?

 

ICU-acquired weaknessの略で、人工呼吸器管理を要する重症な患者に発生する神経筋合併症のことです。

 

〈目次〉

 

ICU-AWとは

ICU-AWは、CIP(重症疾患多発ニューロパチー)、CIM(重症疾患多発ミオパチー)、CINM(重症疾患多発ニューロミオパチー)の3つに分類される表1)。

 

表1ICU-AWの分類

 

CIP
重症疾患多発ニューロパチー
  • ニューロパチーが症状の主体
  • 一次性軸索損傷
  • 感覚神経よりも運動神経優位
  • 血栓性、虚血性の神経障害メカニズム
CIM
重症疾患多発ミオパチー
  • ミオパチーが症状の主体
  • 筋線維の萎縮と空胞変性
  • ミオシンの喪失
CINM
重症疾患多発ニューロミオパチー
  • CIPとCIMの両方の特徴を併せもつ

 

ICU-AWを呈する患者の多くは、臨床所見として、廃用症候群とは明らかに異なる脱力や筋萎縮、感覚障害を呈する。

 

しかし、実際は敗血症やSIRS(全身性炎症反応症候群)などの全身性炎症、不動、安静などに続発し、タンパク分解の亢進による神経軸索や筋細胞の変性を伴う病態である(図1)。

 

図1ICU-AWの病態


 

 

 

発生頻度は、7日間以上人工呼吸器管理下にある患者では25~47%、重症敗血症患者では60~100%5, 6と高い数値を示している。

 

鎮静とICU-AW

ICU-AW発症リスクが高い人工呼吸器装着患者や重症患者が鎮静をかけられている場合、ICU-AWの早期発見は難しい。そのため、可能であれば1日1回鎮静を中断する時間をつくり(DIS)、覚醒下での自動運動を確認する機会を設けることが望ましい(『人工呼吸中の鎮静管理のポイントは?』)。

 

ケアのなかで、患者の自動関節運動(図2)や体動において筋力低下を疑うような所見があれば、ICU-AWを念頭に置きながらリハビリテーションを行う。

 

図2自動関節運動

 

略語

 

  • CIP(critical illness polyneuropathy):重症疾患多発ニューロパチー
  • CIM(critical illness myopathy):重症疾患多発ミオパチー
  • CINM(critical illness neuromyopathy):重症疾患多発ニューロミオパチー
  • SIRS(systemic inflammatory response syndrome):全身性炎症反応症候群
  • DIS(daily interruption of sedative)

[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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