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2017年04月06日

上室性頻拍

『循環器ナーシング』2011年9月号<基礎から学び看護に活かす心電図不整脈の3ステップ>より抜粋。
上室性頻拍について解説します。

 

Point

  • 心室頻拍の心電図は,異所性のP波が規則的に高頻度に出現するのが特徴である.
  • 房室結節リエントリー性頻拍の心電図は,QRS幅の狭い頻脈を認め,QRS波のなか,あるいは直後に逆行性P波を認める.
  • 開心術後に心房頻拍を認めることがあり,術後の早期回復のためには,不整脈の早期発見と治療が重要である.
  • 治療には,DCショック,カテーテルアブレーション,迷走神経反射,抗不整脈薬の投与が実施される.

眞茅みゆき
(北里大学 看護学部)

 

〈目次〉

 

はじめに

このコラムでは,心房頻拍(多源性心房頻拍),心臓術後心房頻拍,房室結節リエントリー頻拍(AVNRT),WPW症候群における房室エントリー頻拍(AVRT)について解説します.

 

上室性頻拍の典型的心電図

心房頻拍

基本波形

  • 異所性のP波が規則的に高頻度で出現します.
  • レートが1分間に150回程度であれば,1:1で心室に伝導しますが,異所性のP波が多数出現すると,2:1伝導になることがあります(図1).

図1心房頻拍の心電図波形

心房頻拍の心電図波形

 

多源性心房頻拍

基本波形

  • 洞調律のP波とは異なる,2種類以上のP波を示します(図2).

図2多源性心房頻拍の心電図波形

多源性心房頻拍の心電図波形

 

房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)

基本波形

  • QRS幅の狭い頻拍を認めます(図3).

図3房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)の心電図波形

房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)の心電図波形

 

  • AVNRTの多くは通常型で,通常型では逆行性P波はQRS波に重なって認めないことが多いです.稀有型では,逆行性P波がQRSより遅れて出現します.

 

房室エントリー頻拍(AVRT)

基本波形

  • 非発作時は,QRS波形の前にデルタ波を認めます.
  • 発作時には,ST部分に逆行性P波を認めます(図4).

図4房室リエントリー頻拍(AVRT)の心電図波形

房室リエントリー頻拍(AVRT)の心電図波形

 

上室性頻拍の病態と症状

頻拍性不整脈の発生機序

頻脈性不整脈の発生機序には,「リエントリー」「異常自動能」「トリガードアクティビティ(撃発活動)」があります.

 

リエントリー

リエントリーは,心筋内で心筋興奮が持続的に旋回することで,頻拍を誘発します.リエントリーが成立するためには,①リエントリー回路が存在すること,②緩徐伝達部位が存在すること,③一方向性ブロックが生じることが必要とされています.

図5にリエントリーの模式図を示しています.

図5リエントリーの模式図

リエントリーの模式図

 

Aは,興奮の流れが二手に分かれ,一方の経路には伝導障害があり,伝導時間が遅延します.さらにこの2つの伝導は衝突し,消滅します.Bでは,伝導障害の部分で,2つの興奮が衝突しています.Cでは,二手に分かれた興奮のひとつが,もう一方の興奮と逆行して分岐点に戻り,再び元のルートを流れます.このような形のリエントリー回路が存在し,頻拍性不整脈の主な機序になっています

 

異常自動能

異常自動能は,洞結節より下位の正常自動能が異常に亢進したり,正常では自動能を有さない組織から脱分極が示され,本来の洞結節からの自動能を超える心拍を発生させることを示しています(図6-B).

図6異常自動能・トリガードアクティビティの模式図

異常自動能・トリガードアクティビティの模式図

 

トリガードアクティビティ

トリガードアクティビティは,細胞内でのカルシウムイオンの増加が異常なタイミングで起こることで誘発されます.心筋細胞の活動電位は,イオンチャネルを通じて細胞内にナトリウムが流入し,これがきっかけとなり,細胞内のカルシウムが増加することで生じます.

とくに頻拍性不整脈は,前の活動電位が終わったのち,カルシウムイオンが増加することにより生まれる,遅延後脱分極と呼ばれる新たな活動電位(脱分極)により誘発されます(図6-C).

 

各不整脈の病態と症状

心房頻拍

心房頻拍の特徴

心房頻拍は,心房細動,心房粗動,発作性上室性頻拍と比較すると,高頻度に起こる不整脈ではないですが,治療を必要としないものから,早急に治療を開始したほうがよいもの,また,薬剤に反応しやすいものから難治性のものまで幅広い臨床像を示します(1).

 

心房頻拍の機序

心房頻拍は,心房内リエントリー,トリガードアクティビティ,自動能亢進のいずれも関与しうる頻拍で,心房細動に移行しやすいとされています.頻拍の多くは,心筋症,心筋梗塞,弁膜症などの器質性心疾患に伴うことが多いですが,原因不明の場合もあります.

ジギタリス中毒を機に発症することもあります.また,先天性心疾患術後など心臓術後には,心房内リエントリー性頻拍が認められることがあります.心房切開,人工心肺の脱血カニュレーション,パッチ形成などがかかわっているとされています.

 

心房頻拍の自覚症状および血行動態

突然あるいは徐々に比較的規則正しい動悸発作が出現し,徐々に軽減する場合が多いとされていますが,失神を伴う場合もあります.病歴を聴取する際,発作の開始と停止がはっきりしない場合もあります.症状の有無,程度とともに,脈拍血圧呼吸状態の観察および全身状態の観察を行います.

 

心臓術後心房頻拍

心臓術後心房頻拍の特徴

開心術では,心房・心室切開線,体外循環用カニュレーション瘢痕,手術に伴う心筋の損傷などの侵襲が加わることにより,それらの回復期慢性期に不整脈が引き起こされることが知られています(2).心臓手術後の早期の回復やQOLの向上のためには,このような不整脈の早期発見と治療が非常に重要です.

 

心臓術後心房頻拍の機序

術後の頻拍の機序は,前述したリエントリーによるものです.リエントリーが起こるには,リエントリー回路が存在すること,リエントリーの開始に伴い一方向性ブロックが発生することなどが必要です.手術により加えられた切開創や,手術で使用されたパッチそのものがリエントリー回路となり,侵襲を受けた心筋そのものもリエントリーを起こす原因となります.

 

心房頻拍を起こしやすい手術
  • 人工心肺を使用する手術
  • 心房中隔欠損症閉鎖術
  • 僧帽弁置換術および形成術
  • 心房細動に対するmaze手術
  • チアノーゼ性心奇形に対するFontan手術

 

房室結節リエントリー頻拍

房室結節リエントリー頻拍の特徴

房室結節リエントリー頻拍(atrioventricular nodal reentrant tachycardia;AVNRT)は,房室リエントリー頻拍とともに主要な上室性頻拍のメカニズムのひとつです.男性より女性に多いとされています.

 

房室結節リエントリー頻拍の機序

通常の心房興奮は,伝導時間の短いfast pathwayを経由してヒス束へ伝導しますが,心房興奮が短い間隔で生じた場合には,fast pathwayが不応期となるため,伝導時間が長く不応期の短いslow pathwayを伝導します.

slow pathwayの伝導時間が十分に長く,この間にfast pathwayが不応期から回復すると,slow pathwayを伝導してきた興奮はfast pathwayを逆行性に伝導して心房を興奮させ,さらにこのときslow pathwayが不応期から回復していれば,fast pathwayを逆行してきた興奮は再びslow pathwayを順行性に伝導することが可能となり,この繰り返しによりAVNRT(房室結節リエントリー頻拍)が生じます.

 

房室結節リエントリー頻拍の症状

突然発症する動悸で,開始と停止が明確に自覚できるのが特徴です.また,頻拍中の心拍が乱れないのも特徴です.頻拍開始の初期症状として,めまいやふらつきなどが生じますが,頻拍が安定すると症状は消失します.発症時は,心電図を記録するとともに,患者の意識状態やバイタルサインを確認します.

 

房室エントリー頻拍

房室エントリー頻拍の特徴

房室エントリー頻拍(atrioventricular reentrant tachycardia;AVRT)は,ウォルフ・パーキンソン・ホワイト(Wolff-Parkinson-White;WPW)症候群に合併して発症する頻拍発作です.

 

房室エントリー頻拍の機序

この頻拍の機序を理解するうえで,副伝導路に関する知識が必要になります.AVRTには,心房と心室を直接結ぶ副伝導路(ケント束)が関与しています.正常の場合,心房と心室との電気的刺激の接続は房室結節を介して行われますが,副伝導路が存在する場合は,洞結節から発せられた電気刺激が副伝導路を通るため,正常な電気刺激とは異なる回路が存在することになります.

この副伝導路は,順行性(心房→心室)に伝導する場合は心室が早期に興奮し,PR間隔の短縮,QRS幅の延長,Δ波の存在などの所見を認めます.また逆行性(心室→心房)にのみ伝導する場合は,潜在性WPW症候群と呼ばれます.

 

房室エントリー頻拍の症状

突然発症する動悸で,開始と停止が明確に自覚できるのが特徴です.また,頻拍中の心拍が乱れないのも特徴です.頻拍開始の初期症状として,めまいやふらつきなどが生じますが,頻拍が安定すると症状は消失します.発症時は,心電図を記録するとともに,患者の意識状態やバイタルサインを確認します.

 

上室性頻拍の治療

房室結節リエントリーあるいは房室回帰が原因の場合は,房室結節の伝導を抑制することで発作を停止させることができます.

このとき,β遮断薬やカルシウム拮抗薬が使用されます.また,副伝導路の不応期延長あるいは伝導抑制も頻拍抑制に有効で,カリウムチャネル遮断薬やナトリウムチャネル遮断薬の効果が期待できます.

薬物治療は,発作の停止と発作間欠期(慢性期)の再発予防にわけて考えます(3).

ほとんどの発作性上室頻拍はカテーテルアブレーションで根治できますが,まれにアブレーションが不成功に終わる例やアブレーションを希望しない例では,抗不整脈薬による発作の予防が行われます.発作の頻度が低く,短時間で停止して自覚症状が軽微な例では,発作間欠期の治療は必要としません.

 

上室性頻拍の発作の停止

上室性頻拍の発作を停止するにあたり,緊急的な対策の必要性の有無を見極めることが重要です.

 

緊急的な停止を要する場

発作の停止を急ぐ必要がある場合には,DCショックや高頻度ペーシングにより発作を停止させます.

 

緊急的な停止を要しない場合

緊急的な発作停止の必要がない場合には,迷走神経反射や抗不整脈薬による停止を試みます.

迷走神経反射

薬物治療に先立ち,反射性の迷走神経緊張を試みます.息こらえ(Valsalva手技),顔面を冷水に浸す(顔面浸水),嘔吐反射,深呼吸,頸動脈洞マッサージ(頸動脈の血管雑音のないことを確認し,まず右側から試み,無効なら左側を試みる),トレンデレンブルグ体位などが有効なことがあります.

眼球圧迫は,網膜剥離の危険があり,また疼痛をきたすので,勧められません.Valsalva手技以外の手技の有効性は,それほど高いものではないと報告されています(Valsalva手技;54%,右頸動脈洞マッサージ;15%,顔面浸水;15%など)(3).

 

抗不整脈薬静注

迷走神経緊張が無効な場合には,ATP(10 mgを1〜2秒.ただし保険適用外)あるいはカルシウムチャネル遮断薬(ベラパミル5mg,ジルチアゼム10mg,いずれも5分前後で)静注を試みます.これらにより90%以上の例の発作を停止できるとされています.ベラパミルは比較的心拍数が遅い発作(心拍数<186/分),ATPは心拍数が速い発作(>166/分)の停止に有効です.

ベラパミルは,血圧低下例や左室機能低下例,β遮断薬投与例,心房細動の既往のある顕性WPW症候群,小児には使用しません.

以上の治療で発作が停止できない場合には,房室結節リエントリー性頻拍あるいは房室回帰性頻拍以外の頻拍の可能性が高いため,ナトリウムチャネル遮断薬の投与を試みます.

 

抗不整脈薬単回経口投与 (pill in the pocket)

発作頻度が低く,発作時の血行動態は安定していながら自覚症状が強い患者では,継続的な抗不整脈薬による予防の代わりに,発作時に患者みずからが抗不整脈薬を頓服して発作を停止させる対応もあります.薬物治療にもかかわらず発作が停止しない場合には,DCショックあるいは高頻度ペーシングを実施します.

 

上室性頻拍の慢性期の治療

高い有効性と安全性を持ってカテーテルアブレーションによる根治療法が可能なため,発作頻度が高い場合や発作時の症状が強い場合,QOL低下が著しい場合,薬物治療が無効あるいは副作用のため使用できない場合などにはアブレーションを勧めます.

発作の持続時間が短く,症状の軽い例では,積極的な再発予防は必ずしも必要ではありません.積極的な再発予防が必要でない場合を除いては,アブレーションを希望しない場合やアブレーションが不成功に終わった場合では,抗不整脈薬による再発予防を行います(3).

 

心機能が中等度以上低下している場合

ナトリウムチャネル遮断薬が使用されます.ただし,房室結節リエントリー性頻拍の場合には第1選択薬はジゴキシンとなり,ナトリウムチャネル遮断薬は第2選択薬となります.

 

心機能が正常〜軽度低下の場合

房室結節リエントリー性頻拍や潜在性WPW症候群の房室回帰性頻拍

房室結節の伝導を抑制するβ遮断薬,カルシウムチャネル遮断薬,ジゴキシンが使用されます.

 

WPW症候群(顕在性)および心房内リエントリーなど

上室頻拍発作から心房細動への移行が起こりうるので,そのような場合には,ジゴキシンやカルシウムチャネル遮断薬の予防的投与は行わず,カリウムチャネル遮断作用のある薬剤を使用します.自動能亢進による心房頻拍に対しては,一般に抗不整脈薬の再発予防効果が弱いので,アブレーションが適応されます.

 

まとめ

上室性不整脈では,機序を含めた病態や心電図波形を理解したうえで,発症時の症状を詳細に聴取することが,診断の一助になります.また症状発症時には,患者の心理的支援を行い,QOLの低下を防ぐことが重要です.

 


[引用・参考文献]


[著者]
眞茅みゆき
北里大学 看護学部

 


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2011 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2011年9月号

P.63~「上室性頻拍」

著作権について

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