加温加湿の方法は?どう選択するの?|人工呼吸ケア

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。
今回は「加温加湿の方法と選択」に関するQ&Aです。

 

露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)

 

春田良雄
公立陶生病院臨床工学部技師長

 

加温加湿の方法は?どう選択するの?

 

人工回路と加温加湿器回路の2種類があります。それぞれの特徴をふまえ、患者の状態に併せて選択します。

 

〈目次〉

 

人工鼻回路

人工鼻は、体温で温められた呼気(水蒸気)をフィルターでとらえ、次の呼吸で戻すことによって、加温加湿効果を得るものである(図1)。

 

図1人工鼻回路

人工鼻回路

 

受動的な加温加湿であり、電源が不要で、気道熱傷の危険もないなどの理由から、最近は人工鼻回路が標準的になっている。

 

気道分泌物が粘稠で、人工鼻まで到達する場合、フィルターが根詰まりを起こし、換気できなくなる。

 

リークのある患者は、十分に呼気がとらえられないため、加温加湿効果が減少する。

 

分時換気量が多いと、呼気流速が速いことで呼気が冷却され、加温効果が減少する。

 

人工鼻は呼気を再呼吸させるシステムであるため、二酸化炭素が貯留しやすい患者、フィルターが呼気抵抗になるような呼吸筋疲労がある患者、呼吸仕事量を減少させたい患者は適応ではなくなる。

 

加温加湿器回路

加温加湿器は、人工呼吸器の回路の吸気側に接続して使用する。チャンバーと呼ばれる容器に入れた滅菌蒸留水を温めることで、送気するガスに水分を含ませる(相対湿度100%に加湿する)システムで、人工鼻よりも加温加湿性能は高い。

 

加温加湿器で相対湿度100%に加湿されたガスは、部屋の温度によって患者の口元に達するまでに冷やされる。結露は、冷やされて空気中に溶け込めなくなった水分が水となって回路に付着したものである。

 

加温加湿器回路には、回路が複雑であること、電源が必要であること、気道熱傷のリスクがあること、常に加湿用蒸留水が必要であることなど、デメリットがある。

 

対象に禁忌はないため、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者のように、二酸化炭素の貯留や呼吸仕事量を減少させたいときは、加温加湿器回路を選択する。

 

加温加湿方法の選択

適切に加温加湿されているか評価することが大切である(表1)。

 

表1適正な加温加湿評価の指標

適正な加温加湿評価の指標

 

人工鼻回路を使っている際、分泌物が粘稠なときは表2のようなことがないか観察したうえで、どちらの回路がいいのか、メリット/デメリットと患者の状態から判断する。

 

表2分泌物が粘稠なときの観察ポイント

分泌物が粘稠なときの観察ポイント

 

加温加湿回路でも、以下に示す理由から、加湿しているつもりが、じつは乾燥させてしまっていることもあるためである。

 

  1. 熱線が回路の外側にあるタイプでは、加湿効率が低くなる。
  2. 室温が低い場合は、回路が冷却されて相対湿度が下がる。
  3. 重症患者は、弛張熱(日差1℃以上)であることが多い。体温設定は受動ではないため、体温の変動とともに、必要な湿度が変化する。

略語

 

  • ARDS(acuterespiratorydistresssyndrome):急性呼吸窮迫症候群
  • COPD(chronicobstructivepulmonarydisease):慢性閉塞性肺疾患

本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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