2018年11月18日

切開排膿ドレナージ

ドレーン・カテーテル・チューブ管理

ドレーンカテーテル・チューブ管理完全ガイド』より転載。
今回は切開排膿ドレナージについて説明します。

《切開排膿ドレナージの概要》

主な適応
表層(粉瘤など)、深部(筋間、腹膜前腔など)に貯留した膿瘍で、抗菌薬投与後も軽快しない場合
目的
切開排膿後、切開部がすぐに閉鎖して膿瘍腔内に膿が遺残するのを防ぐ
合併症
出血、感染
抜去のめやす
排膿がなくなり、感染がコントロールされたとき
観察ポイント
切開排液時:排液の量、性状、出血の有無、においなどに注意する
ケアのポイント
開放式:ガーゼの抜去・迷入に注意し、ガーゼ交換時は感染に注意する
閉鎖式:ドレーンの抜去・屈曲、接続部のゆるみに注意し、テープ固定法を工夫する
患者指導 :表層膿瘍は外来管理が多いため、ガーゼ交換や異常時の対応などセルフケアを指導する

 

〈目次〉

切開排膿ドレナージの定義

膿瘍とは体内に感染が生じ、身体の免疫によって対処できずに膿がたまった状態である。

膿瘍ができる部位は、表層、深部、体腔内に分けられる(表1)。

表1切開排膿ドレナージの対象(腫瘍部位の深度別)

切開排膿ドレナージの対象(腫瘍部位の深度別)

 

原因として一次的な感染症と、術後感染症である手術部位感染(SSI)がある。いずれの部位でも、膿瘍を形成し抗菌薬投与など保存的治療で軽快しない場合は、切開排膿ドレナージが必要になる。

表層膿瘍の場合は局所麻酔下に切開排膿ドレナージを行うが、深部膿瘍の場合は筋間や腹膜前腔に達しており、部位、広がりによっては全身麻酔が必要になる。

切開排膿したあとに、膿が膿瘍腔に遺残しないように、ドレーンを一定期間留置することが多い。

本記事では、切開排膿ドレナージとドレーン留置について述べる(体腔内の膿瘍ドレナージについては、他記事参照)。

 

切開排膿ドレナージの適応と禁忌

  • 対象:表層(粉瘤など)、深部(筋間、腹膜前腔など)に貯留した膿瘍。
  • 診断:視診、触診による感染徴候(発赤、疼痛、熱感など)。
  • 画像:超音波、CTなど。
  • 検査白血球数好中球数、CRPなど。
  • 適応:抗菌薬投与で軽快しない場合。
  • 禁忌:出血傾向のある患者、もしくは抗血小板薬、抗凝固薬を使用している患者。ただし、感染コントロールが優先される場合もある。

 

切開排膿ドレナージの挿入経路と留置部位

切開部がすぐに閉鎖して膿瘍腔内に膿が遺残しないように、ドレーンを留置する。

使用するドレーンには、開放式と閉鎖式のタイプがある。

開放式ドレーンの代表的なものは、ペンローズドレーン(図1-①)である。膿瘍腔の深さによっては、三孔先穴ドレーン(図1-②)や、込めガーゼ(図1-③)を使用することもある。

閉鎖式ドレーンの代表的なものは、マルチスリット型ドレーン(図1-④)がある。閉鎖式の場合は、低圧持続吸引システムのための吸引器(リザーバー)を同時に使用する(図1-⑤、⑥)。

図1ドレーンの種類(一例)

ドレーンの種類(一例)

 

1表層膿瘍の場合

  1. 外来で切開排膿を行い、通院で管理することが多い。準備の一例を図2に示す。
  2. 膿瘍直上に局所麻酔を行う。
  3. メスで切開し(図3-①)、ペアンで膿瘍腔を開放する(図3-②)。
  4. 排膿後、込めガーゼまたは開放式ドレーンを留置する(図3-③)。

図2切開排膿ドレナージの使用物品(一例)

切開排膿ドレナージの使用物品(一例)

 

図3表層膿瘍に対する切開排膿ドレナージ

表層膿瘍に対する切開排膿ドレナージ

 

2深部膿瘍の場合

術野が深くなるため、手術室で処置を行い、術後は入院管理することが多い。

手技の詳細は後述する(図4)。

図4深部膿瘍に対する最新・閉鎖吸引持続洗浄式ドレナージの一例(43歳男性)

深部膿瘍に対する最新・閉鎖吸引持続洗浄式ドレナージの一例(43歳男性)

 

切開排膿ドレナージの合併症

出血

皮膚を切開するため、出血のリスクがありうる。

外来で切開排膿することが多いため、救急外来受診など出血が続くときの対処を指示する。

 

切開排膿ドレナージの利点と欠点

利点:抗菌薬内服で経過をみるよりも、早く治癒する。

欠点:皮膚切開という侵襲があり、術後も創が閉鎖するまで処置が必要である(外来管理での自己処置が可能)。

 

切開排膿ドレナージの症例掲示

深部膿瘍に対する最新の閉鎖吸引持続洗浄式ドレナージを以下に紹介する。

  • 症例:43歳男性
  • 主訴:発熱、右下腹部痛
  • 現病歴:10歳代後半に急性虫垂炎に対し手術施行。37歳時、手術創部に晩期膿瘍を形成し、切開排膿ドレナージ施行。
    腹痛、発熱を主訴に当院救急外来を受診した。
  • 検査データ白血球12700/μL、CRP19.1mg/dLと上昇。
  • 造影CT:右下腹部に皮下から腹膜前腔に広がる膿瘍の所見(図4-①、②)。
  • 手技:手術室において局所麻酔下で小切開にて排膿(図4-③)した。
    低圧持続吸引システムに洗浄用のアトム多用途チューブを沿わせたシステムを作成し(図4-④)、膿瘍腔に留置した(図4-⑤)。
    ドレーンには低圧持続吸引システムを接続し、アトム多用途チューブからは生理食塩水を20mL/時で滴下し持続洗浄した。
  • 経過:順調に経過し、第5病日に洗浄を終了し、第7病日退院となった。
  • まとめ:深部膿瘍に対し、小切開による排膿、閉鎖吸引持続洗浄システムによるドレナージは有力な選択肢と考えられる。

 

切開排膿ドレナージのケアのポイント

1管理・観察

ドレーン挿入時の介助

使用物品(図2)を準備する。

切開排膿時は患者に動かないよう説明を行い、協力を得る。

カーテンを閉めるなど、プライバシーの保護に努める。

 

観察

開放式ドレナージと閉鎖式ドレナージのケアを表2に示す。

排液の量:どの程度の排液が出てくるのか確認する。

排液の性状:性状、出血の有無、においなどにも注意する。

ドレーン刺入部:発赤、腫脹、熱感など感染徴候がないか観察する。

バイタルサインや検査データなどを確認し、異常の早期発見ができるようにする。

表2ドレナージ方式とケアのポイント

ドレナージ方式とケアのポイント

 

疼痛管理

痛みの評価:ドレーン刺入部痛、腹痛、経時的変化などの有無を観察する。

疼痛スケール:主観的なスケールとしてvisual analogue scale(VAS)、numeric rating scale(NRS)、フェイススケール(→『肛囲膿瘍ドレナージ』参照)などがある。客観的なスケールとして、behavioral pain scale(BPS)、Critical-Care Pain Observation Tool(CPOT)などがある。

 

2感染対策

標準予防策の徹底

ガーゼ交換時はもちろん、ドレーン周囲の操作を行う場合には、手指衛生を実施し、標準予防策を徹底する。

 

ドレーン刺入部の清潔保持

ガーゼ交換のほか、必要に応じてフィルムドレッシング材を使用する。

 

3精神的ケア・指導

ドレーン挿入・留置による苦痛の緩和

ドレーン挿入の目的を患者や家族に説明する。ドレーン留置により、活動が制限されてしまうため、どのように動いてよいのか具体的に指導を行っていく。

 

外来患者の場合

ガーゼ交換のタイミング、清潔操作などを指導する。また、出血、疼痛増強、発熱、などの異常があれば、早めに受診するように伝える。

 


[Profile]
脊山泰治
東京都立墨東病院肝胆膵外科医長
有吉節代
東京都立墨東病院看護部(HCU病棟)主任看護師、集中ケア認定看護師

*略歴は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

[出典]『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』(編著)窪田敬一/2015年7月刊行

ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版

著作権について

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