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2017年05月31日

胃瘻(PEG)のスキントラブルの観察

病院から在宅まで PEG(胃瘻)ケアの最新技術

『病院から在宅までPEG(胃瘻)ケアの最新技術』より転載。

今回はPEGにおけるトラブルの観察について説明します。

 

Point

  • スキントラブルの原因は、PEGカテーテルによる機械的損傷、瘻孔からの排出液による化学的損傷、感染による損傷が中心。
  • スキントラブル発生時には、創傷治癒の概念を取り入れた外用剤の塗布や、硝酸銀液による肉芽組織の焼却が行われる。
  • スキントラブルが重篤化すると死に至る危険もあるため、日ごろから適切なスキンケアを実施し、予防につとめることが重要。

 

〈目次〉

 

はじめに

今までまったく経口摂取できなかった患者が、胃瘻によって栄養摂取可能になると、その後の療養生活にきわめて良好な影響をもたらします。しかし、患者のQOLのすべての面が、胃瘻によってよりよい状態になるわけではありません。

瘻孔周囲の疼痛や感染などのスキントラブルは比較的多く、QOLを損なう大きな要因となります。日ごろからのスキンケアが重要です。

 

胃瘻のスキントラブルの種類と対応

胃瘻(PEG)のスキントラブルには、どんなものがあるでしょうか。

今回は、Bonnie Sue Rolstaらの分類(Peristomal skin complications)1に当てはめ、①機械的損傷、②化学的損傷、③感染による損傷、④免疫学的反応、⑤原疾患による皮膚病変に分けて解説していきます。

1機械的損傷(図1

図1機械的損傷(圧迫痕)

機械的損傷(圧迫痕)

 

外力による身体への損傷を「機械的損傷」といいます。PEGの場合は、PEGカテーテルによる瘻孔周囲の損傷(圧迫痕)が主となります。PEGカテーテルの形状によって現れ方が異なるため、注意が必要です。

 

ボタン型PEGカテーテルの場合

特にボタン型では、瘻孔周囲に、カテーテルの体外部分に一致した皮膚の圧迫痕が見られます。さらに悪化し、線維化した状態に至ることもあります。

ボタン型では、栄養状態の改善とともにカテーテル長(シャフト長)が瘻管より短くなることがよく見られます。このため、体重の増加とともにカテーテル長も増加させ、圧迫痕の出現を予防します。

 

チューブ型PEGカテーテルの場合

チューブ型では、容易にストッパーを動かせるため、圧迫痕の出現を防ぐことができます。しかし、これを怠ると、ストッパーの形状に一致した褥瘡様の病変が生じることがあります。

 

2化学的損傷(図2

図2化学的損傷

化学的損傷

 

胃酸などの体内物質を含む化学的物質による損傷を「化学的損傷」といいます。

PEGを中心に、PTEG(percutaneous transesophageal gastro-tubing:経皮経食道的胃管挿入術)、PEG-J(percutaneous endoscopic gastro-jejunostomy:経皮内視鏡的空腸瘻)、PEC(percutaneous endoscopic colostomy:経皮内視鏡的盲腸瘻造設術=減圧瘻)など、すべての栄養瘻・減圧瘻において、瘻孔周囲は瘻孔からの排出液によって化学的損傷を受けます。

PEGからは、胃酸を含む胃液の流出があります。PTEGからは、主に唾液や口腔内に溜まった液体が流出します。空腸瘻からは、膵液や胆汁を含む消化液が流出します。

これらの漏出液は、“こよりティッシュ”やスポンジなどを使ってできるだけ吸収し、瘻孔周囲を汚染しないように保護することが重要です。

 

3感染による損傷(図3

図3瘻孔感染

瘻孔感染

 

瘻孔周囲に見られる細菌感染は膿瘍に至る場合もあり、真菌による感染例では死亡例も報告されています2。ただし、筆者は、PEGなどで起こる瘻孔周囲に重症感染を経験したことはありません。

しかし、瘻孔周囲が発赤し、圧痛などがないかを常に観察することが重要です。瘢痕により、長期にわたって疼痛が生じる可能性があります。

 

4免疫学的反応

もともとSLE(systemic lupus ery-thematosus:全身性エリテマトーデス)などの膠原病に罹患している患者や、アトピー反応、接触性皮膚炎などを起こしやすい患者では、考慮すべき皮膚症状といえます。

 

5原疾患による皮膚病変

SLEなどの膠原病、マイコーシスフンゴイデス(菌状息肉症)などの皮膚原発腫瘍など、皮膚に病変が起きる原疾患がある患者の場合は、胃瘻の造設自体を、事前に十分検討すべきと考えます。

 

創傷評価の視点を活かした瘻孔周囲スキントラブルの対応

褥瘡を中心とした創傷のアセスメントと治療の選択は、新たな概念の導入により大きく進展しています。胃瘻を中心とした瘻孔のマネジメントにおいても、こうした知識の応用が重要と考えます。

「TIME」は、Shultzらにより創案された創傷評価の概念です(表13

表1TIMEという考え方(意訳)

TIMEという考え方(意訳)

TIMEによる創傷治癒の遅延要因を以下に示します。

  • 壊死組織がある(Tissue non-viable or deficient)
  • 感染がある(Infection or inflammation)
  • 乾燥しすぎ、または湿潤しすぎ(Moisture imbalance)
  • 断端の状態が悪い(Edge of wound)

これらをコントロールすることで、創傷の治癒を促します。

 

1スキントラブルへの対応

PEGの瘻孔周囲にも、壊死組織・潰瘍化・肉芽組織が生じることがあります。これらに対し、さまざまな軟膏や被覆材が用いられますが、その選択について、図4のように使い分ける方法があります4

図4TIMEに基づく外用剤・創傷被覆材の使い分け

TIMEに基づく外用剤・創傷被覆材の使い分け

 

ただし、PEGの周囲にゲーベン®クリーム(スルファジアジン銀)など、壊死巣除去を目的とした軟膏を用いることはほとんどありません。なぜなら、瘻孔周囲に生じるスキントラブルは、胃液などに曝されて起きる過剰な炎症性の肉芽組織がほとんどだからです。

この場合は、図4の「E」に相当するオルセノン®軟膏(トレチノイントコフェリル)などを選択するか、むしろ、リンデロン®-VG(ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩)などのステロイド軟膏によって、ほとんどの過剰な肉芽組織が消退します。

 

2硝酸銀による肉芽組織の焼却

軟膏など外用薬による治癒が困難な場合には、硝酸銀液(20%)を用いて、過剰な肉芽組織の焼却(凝固)を行います(図5)。

図5硝酸銀による過剰な肉芽組織の焼却方法

硝酸銀による過剰な肉芽組織の焼却方法

 

過剰な焼却を防ぐため、あらかじめ希釈用の生理食塩水を入れた注射器を用意してから、焼却を開始します。硝酸銀液により白濁した組織は、容易に脱落します。

焼却後、リンデロン®-VG軟膏などを塗布し、終了します。ガーゼによる保護も1日程度でよく、翌日から入浴なども可能です。在宅などにおいても容易に施行することができます。

なお、腐食剤である硝酸銀液の使用は最小限とし、使用後はすぐに余分な液を希釈して洗い流すことが重要です。また、素手で扱うと術者の皮膚も腐食される可能性があるため、十分な注意が必要です。

以前は電気メスなどによる切除も行われていましたが、ディスポーザブルの電気メスが使用される今日では、コストがかかりすぎるという難点があります。

***

瘻孔感染による死亡例が報告されていることからもわかるように、瘻孔のスキントラブルが重症化すると、死に至る場合もあります。最も重要なのはスキントラブルを未然に防ぐことですが、最近では創傷治療の新たな進歩もあり、より効果的な加療が可能となりつつあります。

また、セキューラ®POなど皮膚保護材の進歩や、フィブラスト®スプレーなどbFGF(basic fibroblast growth factor:塩基性線維芽細胞増殖因子)などを用いた製品の発売に伴い、さまざまな外用剤が販売されています。しかし、保険適用外のものもあり、使用に際しては工夫が必要です。

これらの新たな治療方法をさらに学び、患者に還元していきましょう。

 

事例:瘻孔周囲の疼痛から胃瘻を閉鎖した例

胃瘻における瘻孔周囲は、さまざまな障害が多様に寄せ集まり、混在しています。以下に、胃瘻周囲の疼痛からカテーテルの除去、瘻孔の閉鎖術を行った例を、病理所見を含めて紹介します。

 

患者の情報

80歳代の女性。脳梗塞による嚥下障害により、2年前に胃瘻を造設し、当院に転院。瘻孔周囲に疼痛を伴っていた。

図6

 

嚥下障害が改善され、経口摂取が可能となり、意識障害も改善されたころ、「カテーテルを取って欲しい」と希望されました。このため、胃瘻を閉鎖することとなりました。 カテーテルを抜去したあと、数日を経過しても瘻孔がまったく閉鎖せず(図6①)、胃の内容が常に漏出するため、瘻孔閉鎖術を施行しました(図6A・B)。このとき、瘻孔周囲を一塊にして筋層まで切除し、縫合しました。

 

***

カテーテルを除去した直後から疼痛も消え、患者は絶えず笑顔になりました。このことからも、それまでがいかに不快であったかが想像されます。

瘻孔管の切除後は周囲の皮膚炎も消退し、疼痛などもまったく見られなくなりました。

この症例が、すべての胃瘻患者の組織像を代表するわけではありませんが、こうした外見の瘻孔周囲には、臨床でもよく遭遇します。

胃酸の分泌が腹壁のきわめて近傍で起こっている可能性があるため、より頻繁に漏出液を処理しなければならないことが示唆されました。

 

 


[Profile]
生江裕子
札幌しらかば台病院看護部長
湯浅博夫
札幌しらかば台病院副院長

*略歴は掲載時のものです。

 


[引用・参考文献]


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2010照林社

[出典]『病院から在宅までPEG(胃瘻)ケアの最新技術 第一版』(監修)岡田晋吾/2010年2月刊行

病院から在宅までPEG(胃瘻)ケアの最新技術 第一版

著作権について

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