シスプラチン+ペメトレキセド療法(看護・ケアのポイント)/肺がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、肺がん肺癌)の患者さんに使用する抗がん剤「シスプラチン+ペメトレキセド療法」について、看護・ケアのポイントについて紹介します。

 

第1話:『シスプラチン+ペメトレキセド療法(化学療法のポイント)/肺がん

シスプラチン+ペメトレキセド療法

 

久保寿夫
(岡山大学病院 腫瘍センター)

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:ペメトレキセドは1週間前から前処置が必要。忘れていませんか?
  • ポイントB:シスプラチンは抗がん剤の中でも嘔気・嘔吐の王様。制吐対策をしっかりしよう!
  • ポイントC:シスプラチンによる腎機能障害には注意が必要。水分摂取をしっかり勧めよう!

 

〈目次〉

 

必ず覚えて! シスプラチン+ペメトレキセド療法の注意点

投与前の注意点

投与前に、腎機能に問題がないか(クレアチニンクリアランス≧60mL/分が目安)、もう一度確認しましょう。そして、ペメトレキセド(アリムタ)投与の1週間以上前に葉酸、ビタミンB12が開始されているか確認しましょう。

 

また、患者さんの発熱の有無や、食事・排便・睡眠の状況などを確認しましょう。

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法のポイントA

  • ペメトレキセドは1週間前から前処置が必要。忘れていませんか?

 

投与中の注意点

シスプラチン(ランダ)、ペメトレキセド(アリムタ)はともに炎症性抗がん剤に分類されますので、血管外漏出により発赤や痛みを生じることがあります。投与時に痛みや腫れ、違和感などがないかをよく観察してください。もし、血管外漏出を発見した場合には、直ちに点滴を止め、主治医に報告しましょう。抜針の際には、できるだけルート内の薬剤を注射器で吸引してから抜針してください。

 

また、シスプラチン(ランダ)による急性腎障害を予防するためには、投与直後から2時間の間に強制利尿をかけることが重要です1)。シスプラチン(ランダ)投与後から約2時間の尿量、尿回数、体重変化に注意し、尿量が少ない場合などは主治医に報告しましょう。

 

投与後の注意点

嘔気・嘔吐には急性のものと遅発性のものがあります。時期によって追加する制吐剤の種類も変わってくるので、どのタイミングでの嘔気・嘔吐かしっかり把握するようにしましょう。2日目(Day 2)以降にも経口ステロイドやアプレピタント(イメンド)が処方されている場合は、飲み忘れる事がないように注意しましょう。

 

水分が十分に取れない場合には、点滴が必要になる場合もあります。飲水量や体重変化など、水分バランスの管理をしっかり行いましょう。

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法のポイントB

  • シスプラチンは抗がん剤の中でも嘔気・嘔吐の王様。制吐対策をしっかりしよう!

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法のポイントC

  • シスプラチンによる腎機能障害には注意が必要。水分摂取をしっかり勧めよう!

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法時の申し送り時のポイント

シスプラチン(ランダ)投与時の水分管理が問題なく行えたか必ず伝えましょう。嘔気・嘔吐の程度がどの程度であったか、飲水による水分補給が可能であったか、点滴や利尿剤の追加が必要であったかなどを伝えるようにしてください。

 

申し送り例

1サイクル目のシスプラチン+ペメトレキセド療法を行った患者さんです。葉酸、ビタミンB12による前投薬は投与1週間前より開始されております。シスプラチン(ランダ)投与後の尿量が少なく、体重増加もあったので、当日のみ利尿剤が追加になりました。
嘔気・嘔吐については、投与日はありませんでしたが、4~7日目にかけてGrade 3の嘔気があり、飲水量も少なかったので、輸液が追加されています。特に腎機能の悪化はありません。次コースからはアプレピタント(イメンド)の投与期間を延長するようです。血液検査では、好中球減少もGrade 2までと比較的軽度でした。

 

シスプラチン+ペメトレキセド療法時の看護記録に記載すべきこと

来院時の発熱の有無、食事・排便・睡眠の状況などについて確認して記載しましょう。

 

前投薬が行われていることの確認、シスプラチン(ランダ)投与後の尿量、尿回数、体重の変化、水分摂取量を必ず記載しましょう。また、血管穿刺部位の発赤や疼痛の有無についても確認の上、記載しておきましょう。

 

患者ケア・看護ケアはココを押さえる

これまで、シスプラチン(ランダ)使用時には、急性腎障害予防の目的で1日2.5~5Lの輸液を10時間以上かけて行っていました。しかし、2015年に『ショートハイドレーション法の手引き』が作成され1)、1.6~2.5Lに輸液量を減らし、点滴時間も4時間~4時間30分に短縮することができ、外来治療も可能となりました。ショートハイドレーション法を安全に行うためには、制吐剤の適正な使用と水分バランスの管理が重要になります。飲水量や体重のチェックなど特に注意して観察するようにしましょう。

 

また、発熱時の対応について患者さんに理解してもらうことは非常に重要です。発熱時には病院に問い合わせをして、予約外でも外来受診した方がよいのか確認するよう、患者さんに指導しましょう。

 

脱毛の頻度は11.9%と比較的低いですが、必要に応じて医療用ウイッグの紹介などを行いましょう。

 

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[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
久保寿夫
岡山大学病院 腫瘍センター

 


*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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