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2017年01月27日

低体温症【ケア編】|気をつけておきたい季節の疾患【2】

来院された患者さんの疾患を見て季節を感じる…なんて経験ありませんか?
本連載では、その時期・季節特有の疾患について、治療法や必要な検査、注意点などを解説します。また、ナースであれば知っておいてほしいポイントや、その疾患の患者さんについて注意しておくべき点などについても合わせて解説していきます。

→低体温症【疾患解説編】はこちら

低体温症

 

偶発性低体温で気をつけておくキーワード

 

佐野成美
聖路加国際病院 救急看護認定看護師

 

 

〈目次〉

 

1来院時のポイント

まずはバイタルサインと救命処置を行う

低体温症の患者さんが来院したら、まずはバイタルサインを測定し、経時的に観察して記録に残します。観察ポイントは表1のとおりです。ABCDEで覚えましょう。

表1低体温症患者さんの観察ポイントと準備すること

低体温症患者のABCDE_低体温症患者の確認ポイント

 

低体温症は早期の復温と合併症の予防・対応が中心ですが、まずはバイタルサインの安定化が重要です。救命処置が必要ならば優先して行います。

memo低体温症の患者さんには愛護的に接する

深部体温32℃以下の場合、VF(心室細動)が起こりやすく、ベッドへの移動や体位交換でもVF出現のトリガーとなる可能性があります。患者さんへの看護ケア時などにはバイタルサインに注意して愛護的に(優しく)行います。

 

体温管理

体温測定は膀胱温測定センサー付きの膀胱留置カテーテル挿入や直腸温測定を行い、深部体温を持続的にモニタリングします。

memo患者さんの様子やバイタルサインに注意!

低体温症の患者さんには、モニタリング(心電図血圧・深部体温・呼吸回数・酸素飽和度)は必ず行い、患者さんの様子やバイタルサインの変化に終始注意していきます。特に中等度~高度(重度)低体温症の場合、身体への高度な侵襲や復温時の合併症のリスクは高いです。

患者さんの状態やバイタルサインに合わせ、復温方法を医師に確認します。復温は早急に行いましょう。

 

体温の測定方法と信憑性

低体温症の患者さんの体温は、深部体温で測定します。深部体温とは、身体の中心部分の体温です。

深部体温測定のゴールドスタンダードは、スワンガンツ(Swan-Ganz)カテーテル挿入による血液温度測定ですが、侵襲的で時間もかかるため、初療時、迅速に深部体温を把握しなければならない場合には適しません。また、食道温を測定する方法もありますが、プローベを留置しておくことにより、患者さんに不快感を与えることがあります。さらに通常、私たちが使用する腋窩温度は、外部の環境に影響されやすいため、正確な体温測定を行う際には適しません。

以上のことから、膀胱温・直腸温が最も簡易的で迅速に使用できる体温です。特に膀胱温は血液温度との誤差も比較的少ないとされており、信頼性が高い数値です。また、鼓膜温は専用のプローベを鼓膜まで到達させて測定した場合のみ(直接鼓膜温度測定)、深部体温を反映する数値として取り扱えますが、家庭でも使える赤外線式鼓膜温度測定器での測定値では、誤差が大きく、深部体温を測定するには適していません。

 

病歴・既往歴聴取

診療は基本的に医師が主体で進めていきますが、緊急時にはチームでの協力も大事です。看護師も患者さんの観察や情報収集を積極的に行い、気が付いたことがあれば医師とコミュニケーションをとりながら、患者さんにとってより適切な処置が早い段階で行われるようにしていきましょう。

基礎疾患がなく、雪山での遭難や冷たい水中に長時間いたというような、低体温になる原因が明らかに環境因子のみの場合では、復温とその際の合併症への対処を中心に行っていきます。

しかし、低体温症を引き起こす患者さんは、例えば「一人暮らしの高齢者脳梗塞を発症し、半身麻痺のために動けず時間がたった」「低血糖による意識障害で動けなかった」というように、先行する疾患のため、寒い環境から動けなかった場合や、低体温になりやすい内因性疾患(甲状腺機能低下症、敗血症、副腎不全、栄養失調、薬物作用など)が隠れている可能性があります。
日ごろ、救急医療の現場で遭遇する低体温症の患者さんは、そういったパターンの方が多いと思われます。低体温症が基礎疾患によるものであれば、根本的にそちらの治療も同時に進めていく必要があるので、症状・環境・病歴聴取から、低体温症になった原因を推測し対応していきます。

 

2復温時のポイント

復温時の注意点

患者さんの手足が冷たいと、つい手先・足先を温めてあげたくなりませんか? でも、低体温症の患者さんには身体の深部を温めることが先決です。

低体温症の患者さんを体表面から加温するとAfter drop(後述)が起こることがあるため、特に中等度以上で加温パッドや温毛布などで体外から温める時は、体幹を中心に温めていきます。また、それに加えて加温輸液など深部の加温を積極的に行います。

輸液で加温効果を得るには、輸液ボトルのみを温めた輸液投与では、外気温により輸液温が少し冷めてしまうので、効果があまり期待できません。
より効果的に行うためには、輸液加温装置を使用するほうが、加温された輸液を確実に投与できます。輸液の温度は医師、もしくはそれぞれの施設の方法を確認しましょう。

低体温症患者さんは、皮膚の感覚が鈍くなっていることもあり、熱さを感じにくいことがあります。体外から温める場合は低温やけどにも注意し、皮膚の様子を定期的に観察しましょう。

 

復温時の合併症

低体温が高度であれば低体温による症状の出現や合併症のリスクも高くなります。

Afterdrop

末梢血管が温めれられて拡張したことで、末梢の低温の血液が中枢に流入し、再度深部体温が低下する現象です。

Rewarming shock

復温することで末梢血管が拡張し、相対的循環血液量の減少が起きた結果、低血圧となることです。

不整脈

低体温により心筋の感受性が高まり、容易にVF(心室細動)を起こします。またAfterdropによっても誘発されます。

 

3傷の有無の観察

患者さんが低体温症に陥る際に、長時間同一体位でいた場合、褥瘡を形成している可能性があります。また、さらに凍傷を起こしている可能性も考えられます。凍傷は、受傷直後に重症度を的確に判断することが難しく、時間の経過により分かってくることが多いです。凍傷になっている部分をお湯で解凍する方法もありますが、まずは全身の復温を優先させましょう。

 

4環境を整える

低体温症患者さんの治療中は、室内の温度変化にも注意します。温度調節が可能であれば、通常より暖かいと感じる程度に室内温度を上げ、ドアの開閉などで、冷気が患者さんに当たらないように気を付けます。

 

ナースの視点

1褥瘡や凍傷は継続管理を行う

低体温症患者さんの褥瘡や凍傷は、治癒や悪化の経過を評価していく必要があります。そのため、創部の場所や最初の状態がどのようだったかを、画像や記録に残すなどして、次に担当する看護師に確実に申し送りするようにしましょう。

 

2精神面での問題は早期に対応

低体温の受傷状況によっては、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を残す場合もあります。不安・不眠・フラッシュバックや頭痛など、何らかの身体の不調の有無がないかを観察します。もし、そのような傾向が見られたら、早期に心療内科の介入や精神看護専門看護師など院内のリソースを活用しましょう。

 


[参考文献]

  • (1)田島知郎編.ジェネラリストのための外来初療・処置ガイド.東京,医学書院.2016,312.
  • (2)堀 進悟ほか.相川直樹監.救急レジデントマニュアル:第5版.東京,医学書院,2015,517.

[監 修]
辻本登志英
日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部長 救急部副部長

芝田里花
日本赤十字社和歌山医療センター 看護副部長


[Design]
高瀬羽衣子


著作権について

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