2017年03月05日

内視鏡手術時のドレーンの処置

ドレーン・カテーテル・チューブ管理 完全ガイド

『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド』より転載。

今回は内視鏡手術時のドレーンの処置について説明します。

 

Point

  • 腹部における代表的な内視鏡手術である「腹腔鏡手術」は、傷が小さく目立たず患者に与える影響も少ないため、“低侵襲手術”と呼ばれ、手術件数も飛躍的に増加しつつある。
  • ドレナージ方法・留置部位は、開腹手術と大きな違いはないが、ポート孔よりドレーン留置を行うことが多い。
  • ドレーンの排液量・性状の観察、ルートの管理が術後ケアで重要なポイントである。

 

〈目次〉

 

内視鏡手術時に行われるドレナージ

内視鏡手術は低侵襲であるため、術翌日からの歩行が可能で、創部の痛みが少ないことが特徴の1つである。術後管理においても早期離床が実現できる。

腹腔鏡手術は、患者の体内にカメラを挿入して詳細な手術を行うため、拡大視効果が得られ、開腹手術と比べ出血量が少ないという特徴がある。

消化器外科領域の手術では、開放式ドレナージを選択している施設は約5~6%と低く、多くは閉鎖式ドレナージを選択している1

感染予防のため、閉鎖式ドレナージのなかでも陰圧で吸引するドレナージ(低圧持続吸引システム)の使用と、できるだけ早期の抜去が推奨されている2

腹腔内感染や縫合不全などの合併症を併発すると、ドレーン交換や洗浄などの処置が必要となり、長期にわたりドレーンの留置が必要となる場合もある。

 

内視鏡手術時のドレナージ方法

ドレーン挿入の原則は、皮膚から目的部位に最短距離でストレートに挿入することである。内視鏡手術ではポート孔を利用できることから、ドレーンを挿入するための創を新たに設けることはほとんどない。この点が、開腹手術との違いである。

術式によってドレーンを留置する部位は異なるが、開腹手術と同様に腹腔内に体液が貯留しやすい部位となる。消化器外科領域別の代表的な術式と基本的なドレーン留置部を図1に示す。

図1内視鏡手術における代表的な術式とドレーン挿入部

内視鏡手術における代表的な術式とドレーン挿入部

 

使用するドレーンの種類や挿入する本数に関しては、術式、手術所見などによって変わることがあるため、一定の決まりはない。筆者らの施設では、閉鎖式低圧持続吸引システムによるドレナージを使用している。

大腸癌同時性肝転移に対し、腹腔鏡下S状結腸切除術および肝部分切除術を施行した症例を例に、内視鏡手術の具体的なドレナージ法を概説する(図2)。本術式におけるドレーン挿入は合計2本となった(図3)。

図2内視鏡手術におけるドレナージの例(大腸癌同時性肝転移に対し、腹腔鏡下S状結腸切除術および肝部分切除術を施行)

内視鏡手術におけるドレナージの例

 

図3術後創部(外面)

術後創部(外面)

 

ドレーン管理の注意点と実際

消化器外科手術は、領域別にきたしやすい術後合併症が異なるため、起こりうる合併症をあらかじめ予想して、表1の点に注意して管理する。

表1ドレーン管理における注意点

ドレーン管理における注意点

 

ドレーンに対する患者への説明や教育は非常に重要であり、患者と良好な関係を保ち、ドレーンへの理解と協力を得ることが必要である。

ドレーン管理では排出された体液の性状や量が臨床上大切であり、看護のポイントとして、注意深く観察し記録することで、その変化にいち早く気づくことが重要である。

 

1ドレーンの性状

ドレーンからの正常な排液の色は、滲出液の混じった「淡血性」あるいは「淡黄色」である。

異常な排液の色には、「濃赤色」「黄色」「灰白色」「白色」「便汁」などがある。

 

2ドレーンの排液量

排液量が多ければ体液喪失につながるため、バイタルサインにも注意が必要である。また、排液がドレーン挿入部脇から滲出液が漏れてくる場合がある。

排液量のカウントを行い、交換回数などもあわせて排液回収バック内の量に加えて報告する。

ドレナージ不良の場合も同様に、ドレーン挿入部脇から滲出液が漏れることがある。最近では、低圧持続吸引システムによるドレナージを行う機会が多いが、排液バックに容量上限まで排液が貯留したり、排液をカウントする際に持続吸引をかけ忘れるとドレナージが効かなくなる可能性があるため、排液バックの取り扱いに習熟しておく必要がある。

 

3術後早期の注意点

術直後、特に気をつけなければならない合併症は「術後出血」である。通常は時間とともに色調が薄くなるが、ドレーンから濃赤色(血性)の排液が持続的に流出している場合は、出血を疑うサインである。

バイタルサインとともに排液量の変化をチェックし、明らかな出血がつづく場合には医師と連携を図る。

 

4術翌日からドレーン抜去までの注意点

術翌日から1週間程度のうちは、特にドレーン排液の「性状の変化」に注意する。

黄色の場合は「胆汁漏」、白色では「リンパ漏」、灰白色では「膵液瘻に伴う感染」などの可能性がある。また淡黄色で排液量が多い場合は、「腹水の流出」を考慮する。消化管吻合を伴う手術の場合に、ドレーンから粘液調の排液や便汁を認めた際は「縫合不全」などを疑う必要がある。

感染を伴うと、排液の色調変化とともに独特の「臭気」を発することがある。

 

5離床時の注意点

ルートの管理(固定)

ドレーンルートの管理も、看護のうえで重要な役割を占める。ドレーンルートが他の点滴ラインとともにきちんと整理されていると、離床をよりスムースに導く。

術後の離床に伴う体動や汗などが原因で、固定するテープが剥がれやすくなるため、ガーゼ交換時にドレーンが抜けないようにしっかり固定されているかを確認する。

ドレーンは自然に抜けないように皮膚と糸で固定されているが、ドレーン留置が長期にわたる場合は、固定の糸が脱落する場合もあるため、注意が必要である。

腹帯などでドレーンルートが折れ曲がり排液不能になっていることもある。屈曲しないようにテープ固定の位置を変えるように処置する。

 

スキンケア

開放式ドレーンの場合は、消化液が皮膚に付着するとスキントラブルを起こすことがある。ドレーン周囲に皮膚の発赤が見られた場合には、皮膚保護材をドレーン周囲に貼付する。

 

排液バックの位置

受動的閉鎖式ドレーンの場合は、ドレーン挿入部より排液バックが低い位置になるようにする。また、排液バックが挿入部より高い位置にあると、排液が腹腔内に逆流する可能性があり、ドレナージ不良や逆行性感染の原因となる。

 


[Profile]
片桐敏雄
東邦大学医学部外科学講座一般・消化器外科学分野助教
大塚由一郎
東邦大学医学部外科学講座一般・消化器外科学分野講師
金子弘真
東邦大学医学部外科学講座一般・消化器外科学分野教授

*略歴は掲載時のものです。

 


[引用・参考文献]


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

[出典]『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』(編著)窪田敬一/2015年7月刊行

ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版

著作権について

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