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2016年12月02日

一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)|知っておきたい臨床で使う指標[12]

臨床現場で使用することの多い指標は、ナースなら知っておきたい知識の一つ。毎回一つの指標を取り上げ、その指標が使われる場面や使うことで分かること、またその使い方について解説します。

根本 学
埼玉医科大学国際医療センター 救命救急科診療部長

 

一酸化炭素
ヘモグロビン(COHb)

一酸化炭素(carbon monoxide;CO)はヘモグロビンとの結合性が酸素(O2)の200~300倍も高く、血液中では一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)となり、酸素化ヘモグロビン(O2Hb)から酸素の解離を妨げることで組織への酸素供給を低下させ、頭痛めまい嘔吐などの中毒症状を引き起こします。その状態を一酸化炭素中毒(CO中毒)と呼び、COHbはその血中濃度により重症度を図る指標です。

〈目次〉

 


COHbを主に使う場所と使用する診療科

COHbは一酸化炭素中毒(CO中毒)が疑われる患者の診療や治療法選択に使用され、主に救急外来の血液ガス分析装置により測定されます。

 

COHbで何がわかる?

血中のCOHb濃度により、一酸化炭素中毒(CO中毒)の重症度がわかります。
一酸化炭素中毒(CO中毒)は、大気中のCO濃度、血中COHb濃度によって見られる症状が異なります(表1)。COHb濃度の基準値は2%未満です。

表1CO濃度(ppm)、血中COHb濃度(%)および症状

COHb濃度、一酸化炭素中毒、CO中毒,

文献12参照、一部改定

 

さらにプラスα一酸化炭素中毒(CO中毒)は気付かないうちに陥っている?!

一酸化炭素(CO)は酸素の供給が不十分な環境での燃焼、つまり不完全燃焼が生じると発生する常温・常圧下で無色・無臭・無刺激性の気体です。そのため発生していることに気付きにくく、症状も軽い頭痛やめまいから始まり、いつの間にか意識消失し、最悪、死に至る場合もあります。

 

COHbをどう使う?

血中のCOHbの濃度により、表1のような症状が見られます。
COHbは血液ガス分析装置での検査結果でわかりますが、検査結果が出る前に、表1のような症状と、患者さんが発見された状況を聞くことで、一酸化炭素中毒(CO中毒)を疑うことができます。

 

一般家庭では屋内での木炭コンロの使用や炭火焼き、ガス湯沸かし器や灯油ストーブ等の不完全燃焼により急激に一酸化炭素(CO)の発生量が増加することで中毒症状が出現します。
また、炭鉱や閉鎖された地下空間あるいは巨大なタンク内などでは一酸化炭素(CO)が蓄積して事故が発生する危険が高いことから、労働安全衛生法に基づく規則では、作業空間におけるCO濃度に関して基準が設けられています。

 

こういったことから、患者さん本人や家族、あるいは関係者から状況を聞き出し、一酸化炭素中毒(CO中毒)を疑ったら、すぐに酸素投与の準備をすることが重要です。

 

COHbを実際に使ってみよう

症例1

68歳の男性。木造の自宅が火災に遭い、消防隊員によって救助された。熱傷はなさそうだが頭痛と嘔気を訴えていたため、救急車で搬送された。
救急外来で実施した動脈血ガス分析でCOHb値は38%であった。
この患者の診断名は?

答え:一酸化炭素中毒(CO中毒)

COHb値の正常値は通常2%未満であるため、一酸化炭素中毒と判断できる。火災による有毒ガスを吸入している可能性が高く、気道熱傷(inhalation injury)として取り扱う必要がある。

→COHbを確認

 

症例2

24歳の男性と22歳の女性。頭痛と気分不快を主訴に救急車で搬送された。パルスオキシメーターで測定されたSpO2値は正常で、血圧心拍数、体温も問題なさそうであった。
スノーボードを楽しんだ後、エンジンをかけた車内で少し仮眠を取っていたという。二人とも健康で既往歴もない。診断上、必要な検査は何か?

答え:動脈血ガス分析

風邪の症状に似ているが、「スキー場」、「エンジン」、「車内」は重要なキーワードである。車のマフラーの排気口が雪によってふさがれてしまうと排気ガスが車内に流入して一酸化炭素中毒を引き起こす危険がある。
また、パルスオキシメーターはO2HbとCOHbを識別することはできないため、診断には動脈血ガス分析を行い、COHb値を測定する。

→COHbを確認

 

症例3

58歳の男性。車内で意識を失っているのを警備員が発見し救急搬送となった。救急隊員の話では、車内に使用された七輪があり、遺書らしいメモ書きがあったという。
救急外来で実施した動脈血ガス分析の結果、COHb値は68%であった。直ちに行うべき処置は何か?

答え:100%酸素投与

一酸化炭素は体内で代謝されることはほとんどないため、呼吸によって排泄しなければならない。COHbは純酸素を投与することで酸素化ヘモグロビン(O2Hb)に置換されることから、気管挿管下に人工呼吸器を用いた陽圧換気で100%酸素投与を開始する。

 

COHb濃度は適宜測定し、COHb値が正常範囲(10%以下)になるまで酸素投与は継続する。一酸化炭素はヘモグロビン以外に脂肪組織や脳組織に蓄積されるため、排泄には時間を要することもある。
また、COHb濃度が25%以上や治療開始が遅れたものでは、間歇型一酸化炭素中毒を呈することもあるため、注意が必要である。

→COHbを確認

 


[文 献]

  • (1)森 博美ほか編著.工業用品・金属・ガス類 一酸化炭素..急性中毒情報ファイル,第4版.東京,廣川書店.2008,345.
  • (2)日本中毒学会編.3.工業用品:2)有毒ガス 一酸化炭素.急性中毒標準診療ガイド.東京,じほう.2008,507-8.

著作権について

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