2017年01月06日

酸素療法の害ってあるの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。

今回は「酸素療法の害」に関するQ&Aです。

酸素療法の害ってあるの?

酸素中毒、気道浄化の障害、吸収性無気肺、COナルコーシスなどがあります。酸素による害には、・胸痛・肺の硬化などを発現する酸素中毒や、吸収性無気肺などがあります(2)(表1)。

 

〈目次〉

 

表1酸素療法の害

  1. 酸素中毒
  2. 気道浄化の障害
  3. 吸収性無気肺
  4. COナルコーシス

 

酸素中毒

酸素中毒は、活性酸素(フリーラジカル)による細胞・組織の障害が主要因である。

活性酸素は正常細胞の酸化還元反応により産生されるため、生体には活性酸素を排除する抗酸化防御機構(アンチオキシダント)が備わっており、細胞・組織の障害が起こらないようになっている。

何らかの理由で活性酸素が過剰に形成され、抗酸化防御能を超えた場合には、タンパク質・脂質・DNAが変性して細胞障害や細胞死をきたす。⁃酸素中毒は吸入気の酸素分圧(PO)と吸入時間に影響され、酸素濃度は関与しない。

 

気道浄化の障害

酸素中毒により、上記以外に気道の線毛の基底細胞も障害され、線毛運動が低下し気道浄化が障害される。

 

吸収性無気肺

大気を吸入した場合、肺胞に酸素が入り、毛細血管との間で拡散が行われても、肺胞内には窒素が残るため、肺胞は虚脱しない。

高濃度の酸素を吸入すると、窒素が酸素に入れ替わってしまう。そのため、肺胞内の酸素が拡散によって血管内に吸収されると、肺胞内ガスがなくなり、肺胞が虚脱して無気肺が発生する。

 

COナルコーシス

COナルコーシスは、体内へのCO蓄積によって生じるCO中毒で、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などⅡ型呼吸不全の患者で起こる。

Ⅱ型呼吸不全の患者は、常に高二酸化炭素血症の状態にある。つまり、CO高値による呼吸中枢刺激が抑制されており、低酸素刺激によってのみ呼吸調節が行われているのである。

この状態で高濃度酸素を投与すると、低酸素刺激が改善されて呼吸調節が行われなくなってしまうため、呼吸停止、意識障害、呼吸性アシドーシスを生じる。

 

合併症の予防法

酸素中毒や吸収性無気肺の予防には、酸素濃度を管理(一般的にはFIO2 0.6以下)し、POの異常な上昇を可能な限り避けることが求められる。

POの管理には、血液ガス測定が必要であるが、ヘモグロビン酸素解離曲線からSpOとPaOの関係性が予測できる。

SpOが100%に維持された場合、PaOの値を予測できなくなる(PaOが100以上であっても、SpOの上限は100%であるため)。そのため、酸素療法中は、SpO2100%以下になるように酸素濃度を調整し、過剰な酸素投与を予防し、適切な酸素療法を患者に行う。

 

COLUMN酸素化って?

酸素化とは、ガス交換の際、拡散によって酸素を受け取った血液が、静脈血から動脈血へと変化することを指す。

酸素化の指標となるのは、A-aDO2(肺胞気-動脈血酸素分圧較差)、RI(呼吸係数)、M-index(修正呼吸係数)、P/F比(酸素化係数)、Q̇s/Q̇t(シャント率)などである。なかでも、P/F比は、簡便に計算できるため、臨床でよく使用されている。

(道又元裕)

酸素化の指標

 

略語

  • PO(partial pressure of oxygen):酸素分圧
  • COPD(chronic obstructive pulmonary disease):慢性閉塞性肺疾患
  • SpO(saturation of percutaneous oxygen):経皮的酸素飽和度

[文献]

  • (1)田勢長一郎:酸素療法・酸素療法の適応と中止.丸川征四郎,槇田浩史 編,呼吸管理・専門医にきく最新の臨床,中外医学社,東京,2003:58-60.
  • (2)瀧健治:呼吸管理に活かす呼吸生理 呼吸のメカニズムから人工呼吸器の装着・離脱まで.羊土社,東京,2006:95.
  • (3)Kallstrom TJ. AARC Clinical Practice Guideline:Oxygen thrapy for adults in the acute care facility-2002 revision & update. Respir Care 2002; 47: 717-720.
  • (4)宮本顕二:インスピロンQ&A「より安全にお使い頂くために」 Q10.日本メディカルネクスト株式会社.(2014年11月18日閲覧).

[Profile]
露木菜緒
杏林大学医学部付属病院HCU/集中ケア認定看護師
塚原大輔
日本看護協会看護研修学校集中ケア学科専任教員/集中ケア認定看護師


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

[出典]『新人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(編集)道又元裕/2016年1月刊行

新 人工呼吸ケアのすべてがわかる本

著作権について

この連載

  • 低流量システムと高流量システムは、 どう違うの? [01/13up]

    『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。 今回は「低流量システムと高流量システム」に関するQ&Aです。 低流量システムと高流量システムは、どう違うの? 酸素ガスの供給量が、患者の一回換気量より多いか... [ 記事を読む ]

  • 酸素療法中は、何を観察し、どう評価するの? [01/10up]

    『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。 今回は「酸素療法での観察と評価」に関するQ&Aです。 酸素療法中は、何を観察し、どう評価するの? バイタルサインと呼吸状態だけでなく、チアノーゼなど循環不全... [ 記事を読む ]

  • 酸素療法の害ってあるの? [01/06up]

    『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。 今回は「酸素療法の害」に関するQ&Aです。 酸素療法の害ってあるの? 酸素中毒、気道浄化の障害、吸収性無気肺、CO2ナルコーシスなどがあります。酸素による害...

  • 酸素療法の目的は? どういう患者が適応なの? [12/27up]

    『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。 今回は「酸素療法の目的・適応」に関するQ&Aです。 酸素療法の目的は? どういう患者が適応なの? 酸素療法の目的は、低酸素血症の改善です。適応は、PaO2が... [ 記事を読む ]

  • NPPVの中止や離脱の基準は?注意点は? [12/16up]

    『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。 今回は「NPPVの中止や離脱の基準」に関するQ&Aです。 NPPVの中止や離脱の基準は? 注意点は? 呼吸不全の状態、患者の状態や自覚症状などを評価し、中止... [ 記事を読む ]

もっと見る

関連記事

  • 原発性線毛機能不全症候群(PCD)の疾患解説 [08/22up]

    この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。 ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です! よ... [ 記事を読む ]

  • 他疾患が原因で発症した間質性肺炎患者さんの聴診音 [10/04up]

    この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。 ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です! よ... [ 記事を読む ]

  • 肺活量測定が呼吸機能測定に欠かせないのはなぜ?|呼吸器に関するQ&A(3) [04/18up]

    『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。 今回は「呼吸」に関するQ&Aの3回目です。 〈前回〉 深呼吸をすると呼吸が楽なのはなぜ?   〈目次〉 1.肺活量測定が呼吸機能測定に欠かせないのは... [ 記事を読む ]

  • 声を聴診する特殊な口腔聴診 [08/23up]

    聴診器を使用する際のコツや、疾患ごとの聴診音のポイントについて、呼吸器内科専門医が解説している『聴診スキル講座』ですが、ここでちょっと一息。 ここでは、本編とは別に、聴診に関する豆知識やグッズを紹介します。 コラムの第3話は... [ 記事を読む ]

  • 正常な呼吸音の特徴|基礎編(6) [04/19up]

    聴診器を使用する際のコツや、疾患ごとの聴診音のポイントについて、呼吸器内科専門医が解説します。 構成は、聴診器の使い方から呼吸器の構造を解説した【基礎編】と、疾患の解説と筆者が臨床で遭遇した症例の聴診音を解説した【実践編】の2部に... [ 記事を読む ]

いちおし記事

過去のいじめで

浜田師長のいじめの後遺症で今も苦しむ看護師と面会するもも子。そこで語られたこととは… [ 記事を読む ]

神経所見のとり方

感覚障害を診察する場合、①左右差、②上肢と下肢の差、③近位部と遠位部の差に注意し、評価します。 [ 記事を読む ]

人気トピック

もっと見る

看護師みんなのアンケート

「看護師になりたい」と伝えた時、親はどういう反応だった?

投票数:
914
実施期間:
2018年04月06日 2018年04月27日

腰椎穿刺検査後の安静、どうしてる?

投票数:
770
実施期間:
2018年04月10日 2018年05月01日

一番好きな看護方式はどれ?

投票数:
777
実施期間:
2018年04月13日 2018年05月04日

ゴールデンウィーク、今年は何日?

投票数:
700
実施期間:
2018年04月17日 2018年05月08日

ドラマ『ブラック・ペアン』どの医師が好き?

投票数:
314
実施期間:
2018年04月24日 2018年05月15日

院内恋愛、もしするならどの職種がいい?

投票数:
664
実施期間:
2018年04月20日 2018年05月18日
もっと見る

今日の看護クイズ 挑戦者562

65歳男性のAさんは、1年前より徐々に排尿困難を自覚するようになり、来院しました。検査の結果、前立腺特異抗原(PSA)8.3ng/mLで前立腺右葉にガンを認めたため、手術目的で入院となりました。入院3日後、根治的前立腺全摘除術が行われ、膀胱尿道吻合部にドレーンを1本、膀胱内留置カテーテル(固定水10mL)が留置されています。術後2日目にAさんから「手術してからずっと尿意が続いている。管を抜いてほしい」と訴えがありました。受け持ちであるあなたの対応として最も正しいのは次のうちどれでしょうか?

  • 1.本人の希望を尊重し、膀胱留置カテーテルを抜去した。
  • 2.管が太いために違和感が強いのだろうと判断し、細い膀胱留置カテーテルに入れ替えた。
  • 3.尿意の原因は尿管カテーテルの閉塞であると判断し、まず下腹部を押して尿の排泄を促した。
  • 4.抜去できない理由を説明し、Aさんに協力を依頼した。
今日のクイズに挑戦!