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2017年03月09日

院内感染対策

『WOC Nursing』2015年9月号<創傷と細菌感染を考える>より転載。
院内感染対策について解説します。

Point

  • 手指衛生はアルコール性手指消毒剤を優先し,5つのタイミングに基づいて実施する
  • 創傷処置は清潔・不潔が交差しないよう手順を標準化する
  • 個人防護具は,着用よりも外し方とタイミングが重要である

四宮 聡
(箕面市立病院 チーム医療推進部 ICT,ICT担当副部長)

〈目次〉

はじめに

病院だけではなく,医療を提供するすべての施設に医療関連感染(院内感染)が発生するリスクが存在します。近年問題となっている耐性菌は,耐性機構も複雑化しています。また,創傷部位から耐性菌が検出されることも珍しくありません。

感染制御の観点から創傷処置や創管理を鑑みると,これらは接触の程度も高く,伝播リスクが高い医療行為であるという認識を持たなくてはなりません。そして,感染制御の基盤となる標準予防策が遵守できていなければ,耐性菌の制御は困難です。

耐性菌制御は,日常の感染対策レベルの延長線上にあるため,感染対策のレベルを維持・向上させるための継続的な指導と啓発を施設全体で実施する必要があります。

本コラムでは,創傷管理をするうえで必要な感染対策の知識と,院内感染を制御するための活動の実際を紹介します。

 

感染対策の基本

標準予防策

感染症の有無や医療施設の特徴にかかわらず,医療を受けるすべての者に実施すべき対策として標準予防策があります。

これは“汗を除く,体から排出されるすべての物質(血液・体液・排泄物)には感染性がある”と考えて感染対策を行うという概念です。

したがって,血液や体液に触れる(可能性も含む)処置はもちろんのこと,粘膜に触れる場合も感染のリスクがあると考えた対策の実施が必要です。また,感染性があっても検査陰性を示すウィンドウ期や間欠的に検出されることも多い耐性菌が存在することを考慮すると,検査結果に依存した対応は,職員・患者の双方にとって危険です。

医療従事者は,最低限この概念を理解しておく必要があるため,感染対策チーム(以下,ICT)が中心となって研修・啓発を行いましょう。

 

手指衛生

正しい手指衛生は,方法・量・タイミングがすべて適切な場合を指しますが,繁忙な現場で正しい手指衛生を常に実施することは非常に難しいと認識しておきましょう。

現在はスタンダードとなった「手指衛生の第一選択はアルコール手指消毒剤」という考えは,2002年に米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention;CDC)の手指衛生ガイドラインで提唱されたものであり,実はそれほど歴史は長くありません(1)

アルコール手指消毒剤が手指衛生の第一選択となったのは,アルコール手指消毒剤が,流水手洗いよりも業務効率が高いことや,殺菌効果が高く,手荒れも低減できることが報告されている背景があるためと考えられます(2)(3)。流水による手洗いを優先しなければならない場面は,手にみえる汚れが付着している場合と,アルコールに効果が期待できない病原体(Clostridium difficileなど)の関与を疑う場合です。

適切なタイミングで手指衛生を行うためには,まず空間的な区分を理解することが重要です。

世界保健機関(World Health Organization;WHO)によると,医療施設の空間は患者ゾーン,医療エリアの2つに分けられます(4)

患者ゾーンは,患者およびその周囲を指し,個室であればドアを,総室であればカーテンを境界として捉えるとわかりやすいでしょう。医療エリアは,患者ゾーン以外の場所を指します。

この空間的な考え方は,創傷処置を実施する場合にも大切です。包交車をベッドサイドに持ち込み,不衛生な手指や,使用途中の手袋で包交車から物品の出し入れを行うと,包交車が汚染を受け,媒介源になる可能性があるためです。

次に,現在世界的に取り入れられている“5 moments”を理解するとよいでしょう(図1)。

図1手指衛生の5つのタイミング(5 moments)

手指衛生の5つのタイミング(5 moments)

 

文字通り5つのタイミングに基づいて手指衛生を実施します。これらは,先ほどの空間的境界に菌を持ち込まない,持ち出さないためのタイミングです。

 

個人防護具

個人防護具は,医療者の曝露防止と院内感染対策の双方から不可欠なものです。

とくに手袋は,創傷や粘膜に触れる場合以外にも,耐性菌検出例のように接触感染対策が必要な場合は患者に触れるだけであっても着用する必要があります。また,フェイスシールドは洗浄や吸引など,体液の飛散が予想される際に着用します(図2)。

図2創処置時の防護具

創処置時の防護具

洗浄する場合はフェイスシールドが必要

 

これらの防護具を確実に着用するためには,処置を行う場所(病室または処置室付近)に設置するなど,使用しやすい環境の整備が必要です(図3)。

図3総室内に設置された防護具ホルダー

総室内に設置された防護具ホルダー

 

個人防護具に関するポイントとして,汚染を拡大させない外し方と外すタイミングが重要です。手袋・エプロンなどは必ず内表にして外すよう研修などで習得します(図4(5)

図4手袋・エプロンの外し方

手袋・エプロンの外し方

 

さらに,処置で着用した防護具はその場で外すことを徹底しましょう。手袋を着用したままでPHS対応やカルテ入力,包交車の物品を取るなどの行動をとると,患者ゾーンの菌を環境へ付着させ,院内感染の温床を作る原因になります。

 

環境対策

多剤耐性菌をはじめとする院内感染対策において,環境管理の重要性が再認識されています。医療環境へ一度菌が付着してしまうと,長期にわたって環境に生存することがわかっています(表1(6)

表1菌種別の環境における平均生存日数(文献5より一部改変)

菌種別の環境における平均生存日数(文献5より一部改変)

 

そのため,病室の環境整備や日常清掃は感染対策の一部であると認識しましょう。とくに,医療者・患者の手がよく触れる場所を「頻回接触部位」と呼び,環境整備の際は重点的に清浄化に努めることが重要です。

 

報告体制の確認と整備

早期対応ができる報告体制

多剤耐性菌は,院内感染対策を行ううえでとくに注意すべきものです。感染症・保菌にかかわらず,検出が認められれば速やかに感染対策を開始することが必要です。

通常,細菌検査室から検出報告が行われますが,具体的に誰に・どのようなタイミングで行われているかを確認すべきでしょう。

もし,主治医(医師)のみへの報告に留まっているのであれば,必要な対策を開始するのが遅れることもあるため,検出病棟と感染対策チーム(以下,ICT)を報告対象に追加します。それによって,迅速で円滑な対応が可能になります。

箕面市立病院(以下,当院)では,主治医・病棟・ICTへ連絡が入る体制となっており,さらに迅速な対応が必要な病原体(多剤耐性緑膿菌やC. difficile毒素など)が検出された場合は,電話で感染対策専従者に報告されます。また,検出報告を受けた病棟は必要な感染対策をとりますが,ICTはその対策の実施状況を確認し,適宜アドバイスを行っています。

 

アウトブレイク(集団感染)の察知と対応

同じ病棟での発生であれば,検出数の増加からアウトブレイクを察知できますが,同じ耐性機構でも菌種が異なる事例や複数部署にわたっての検出では察知が困難な場合があります。

アウトブレイクは,まず「おかしい」と疑うことが重要です。その後は強化対策をとり,終息を目指します。「おかしい」と気づきやすいのは,病院を横断的に活動しているチーム,つまり細菌検査室と連携することが多いICTであると思われます。

アウトブレイクは病院の危機的状況であるため,日ごろからチーム間のコミュニケーションを心がけ,風通しのよい組織風土を作っておく必要があります。

当院では,菌種(耐性機構)ごとに1病棟で発生する検出数に基準を設け,それ以上の発生を認めた場合は,疫学調査と強化対策を行うよう規定しています

 

創傷処置と感染対策

創傷処置は,耐性菌の伝播と職業感染リスクが高いのが特徴です。また,同じ処置であっても,手術創・縫合創と開放創・感染創や耐性菌検出では院内感染のリスクもそれぞれ異なります。さらに,診療科や部位,大きさ,病状,検出菌により使用する物品や方法が異なるため,標準化は容易ではありません。

創傷処置に関する感染対策は,施設ごとにマニュアルで規定されていると思いますが,日本形成外科学会からも指針が出されており,一連の流れを参照するのに有用です(7)。創傷処置に関する感染対策のポイントを表2に示します。

表2創傷処置時における感染対策の注意事項

創傷処置時における感染対策の注意事項

 

当院では,外科系診療科の創傷処置標準化に取り組みました。従来は,医師1人で処置を行うこともあり,清潔と不潔が交差した手順で,感染対策の遵守が低いという課題がありました。また,器材の紛失も散見されました。

そこで,外科とICTで協議し,創傷処置を標準化することにしました。具体的には,朝の診療科カンファレンス中に主治医が処置患者リストに記載し,病棟担当医がリストに基づいて看護師と処置に回るルールとしました。処置の手順は図5を参照してください。

図5箕面市立病院の創傷処置の流れ

箕面市立病院の創傷処置の流れ

 

導入時は,時間調整や手順に慣れないようでしたが,次第に浸透し,ペアでの実施を徹底できるようになりました(図6)。

図6創傷処置の実際

創傷処置の実際

 

スムーズに実施できることを確認後,その他の外科系診療科にも対象を拡大しました。

 

感染対策に関する周知と啓発

複数の機会をフル活用

これまで紹介してきた感染対策や創傷処置の標準化も,現場で実施されなければ意味がありません。しかし,施設で規定した方法を遵守・維持することは容易ではないことも事実です。

感染対策は,実施が求められる部署や職種,人数が多いため,複数の機会をフル活用しなければ周知・啓発が追いつきません。当院では,主に職員メール,ランチョンセミナー,リンクナース会,eラーニングシステム,職員全体会を利用しています。

 

周知・啓発の実際

周知

マニュアルの変更などのように,広く周知するだけでよい場合は,職員個人に一斉送信でメールを送ります。そして,説明や注意点などを直接伝える必要がある場合は,ICTランチョンセミナーの機会を使います。

このセミナーは,第1・3週の水曜日に12時30分から30分間行われており,毎回テーマを変えて定期開催しています。開始当初は平均20〜30名の参加でしたが,現在は50〜60名の参加があり,職員へ直接啓発・注意喚起ができる貴重な機会となっています。創傷処置をテーマとしたときは,医師が創の治癒と管理方法を説明し,当院の創傷処置マニュアルの動画を流しながら注意点を紹介しました。

また,リンクナース会は,質問や課題・現場からの要望を集約してマニュアル改訂に活かしたり,注意点を再確認したりする場として活用しています。さらに,eラーニングシステムでは閲覧履歴と実施状況が把握できるため,必ず周知すべき内容がある場合は,所定の研修資料の閲覧を義務づけることもあります。

 

啓発

これらの周知方法に対し,啓発は地道な活動の繰り返しです。創傷処置や手術部位感染患者の処置に同行するなかでアドバイス・指導を行い,OJTに取り組んでいます。

 

おわりに

院内感染の防止は,手指衛生や個人防護具の着脱などの日々行っている対策をいかに遵守するかにかかっています。

1つ1つの対策は決して難しくありませんが,多職種の連携を通じて組織風土を醸成し,感染制御に取り組む必要があります。

 



[Profile]
四宮 聡(しのみや さとし)
箕面市立病院 チーム医療推進部 ICT,ICT担当副部長
1979年生まれ。2013年 東京医療保健大学大学院 修士課程 修了。2001年 箕面市立病院 勤務,2007年 感染管理認定看護師資格 取得。現在はチーム医療推進部ICTに所属し,専従者として感染管理に携わっている。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2015 医学出版
[出典]WOC Nursing2015年9月号

WOC Nursing2015年9月号

P.68~「看護師による院内感染対策」

著作権について

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