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2017年06月27日

結核性胸膜炎の疾患解説

この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。

今回は、胸膜疾患である「結核性胸膜炎」について解説します。

 

皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科講師)

 

結核性胸膜炎という名前から想像はつくと思いますが、この疾患と関係性が高い疾患は何でしょうか?

これは簡単です。ずばり、結核ですね!

わかりやすかったですね。正解です。
結核菌の感染が原因で、結核性胸膜炎になります。

結核って聞くと、隔離が必要だったり、とても怖い感じがします。

確かに、結核は怖い病気ですが、結核に感染したらかといって、すぐに発症するとは限りません。
結核には、1次結核症と2次結核症があり、発症しない場合もあるんです。
また、肺結核を合併している場合は別ですが、結核性胸膜炎だけでは人に感染する危険はありません。

 

〈目次〉

 

結核性胸膜炎の基礎知識

結核性胸膜炎の発症には、いくつかのパターンがあります。

代表的な例は、結核に感染し、そのまま結核性胸膜炎になる場合(胸膜直下の肺結核の胸腔への穿破など)です。もう一つは、一度、結核に感染したけど発症しなかったが、ある日、体のなかに潜んでいた結核(潜在性結核)が再燃してしまい発症する場合です。結核性胸膜炎の患者さんでは、このどちらか2つのパターンによって発症します。

結核性胸膜炎の患者さんに、肺病変(肺結核)が見られない場合は、胸水貯留として認識されます(『胸水の疾患解説』参照)。

また、結核性胸膜炎は、比較的若いヒトに多くみられます。

 

memo貯留している胸水の量は肺の約半分

ある報告によると、胸水が1/3未満貯留している患者さんは34%、胸水が1/3~2/3貯留している患者さんは最も多くて47%、胸水が2/3以上貯留している患者さんは18%、というX線所見の結果があります(図1)(1)。

図1胸水の貯留量と患者の関係

胸水の貯留量と患者の関係

胸水の貯留が1/3未満の方は34%、1/3~2/3の方は47%、2/3以上の方は18%です。
1/3~2/3程度の胸水が貯留している患者さんが、最も多くいました。

 

いずれにしても大量の胸水が貯留している場合(X線を撮ってみて、肺野の1/3~2/3が胸水で埋まっている場合)には、結核性胸膜炎を考えなくてはいけません。

 

結核性胸膜炎の原因・病態生理

結核性胸膜炎は、肺結核に伴って生じる場合もあります。そのため、肺結核に合併した胸水の患者さんの場合は、結核性胸膜炎の可能性が高くなります。

通常、結核性胸膜炎は、肺野病変と同じ側面に出現します。肺結核の好発部位は、肺の上葉や、下葉の上部に多いとされています。そのため、結核性胸膜炎の患者さんは、図2の位置に胸水が溜まっている可能性が高いです(2)。

図2肺結核が好発する部位

肺結核が好発する部位

肺結核は、肺の上葉(青色の範囲)や下葉の上部(黄色の範囲)に多く発生します。

文献2を参考に作成)

 

結核性胸膜炎は、単独で生じる場合の方が多いですが、肺結核に伴って生じる結核性胸膜炎もありますので注意しましょう。

 

memo患者さんが肺結核の場合は隔離が必要

患者さんに肺結核の疑いが見られると、すぐに患者さんを陰圧室に隔離対応する必要があります。隔離後、喀痰検査を行い、これを3回繰り返します。検査の結果、抗酸菌(結核菌)塗抹が陽性であれば、専門病院へ転院します。

結核菌を検出するための検査には、塗抹検査や培養検査があります。表1のように、塗抹検査や培養検査が陽性であれば、肺結核と診断されます。

表1塗抹検査や培養検査で陽性とされる数値

 
塗抹検査 5,000~10,000個/mL
培養検査 10~数百個/mL

塗抹検査が陽性の場合は、1mLあたりの結核菌の個数が、5,000~10,000個と極めて多い状態を意味します。

 

なお、塗抹検査が3回とも陰性であれば、隔離を解除して問題ありません。

 

1次結核症と2次結核症

結核は、結核菌に曝露されたヒトのうち、30%のヒトで感染が成立します。そのなかで、10%のヒトがそのまま結核を発症します。これを1次結核症と呼びます(図3)。

図31次結核症と2次結核症の発症の違い

1次結核症と2次結核症の発症の違い

1次結核症は、結核菌に感染した方のうち、10%の方が発症します。
2次結核症は、結核菌に感染しても発症しなかった90%の方のうち、数年後~生涯の間、5~10%の方が発症します。

 

しかし、感染しても発症しない90%のヒトは、発病はしていないが体内に結核菌を持った状態になります。これを、潜在性結核症と呼びます。この潜在性結核症は、最初の2年間で5%のヒトが発症し、その後の生涯のうちで5%が発症します。これを2次結核症と呼びます。

患者さんが、免疫力が低下する状態(例:免疫抑制薬やステロイドの投与、低栄養、高齢化、腎不全糖尿病など)に陥っている場合、体内で休んでいた結核菌が再活性化し、2次結核症が起こりやすくなるので注意しましょう。

 

結核性胸膜炎の症状

結核性胸膜炎の症状は、発熱や咳嗽、病変がある肺の胸痛などがあります。通常、肺結核の病状は緩徐な進行ですが、結核性胸膜炎の症状は、比較的急性の経過を示すものもあります。

また、胸水貯留のスピードは、数週間かけて進行するものから、数日で相当量の胸水が溜まる場合もあり、さまざまです。

なお、胸痛の症状は、咳嗽より先に現れることが多くあります。

 

結核性胸膜炎の治療

結核性胸膜炎の主な治療法は薬物療法で、代表的な治療薬には、下記4種類があります。

①リファンピシン(RFP、商品名:リファジン®

②イソニアジド(INH、商品名:イスコチン®

③ピラジナミド(PZA、商品名:ピラマイド®

④エタンブトール(EB、商品名:エブトール®)、またはストレプトマイシン(SM、商品名:ストレプトマイシン®

①と②を6ヶ月、③と④を最初の2ヶ月投与するという、4剤での併用療法が標準の治療法です。

 

聴診時に気をつけるポイント

結核性胸膜炎の患者さんでは、背部の中・下肺野を聴診することが重要です。胸水の貯留による聴診音の消失や減弱に注意して聴診しましょう(図4)。

図4結核性胸膜炎の患者さんに行うべき聴診の位置

結核性胸膜炎の患者さんに行うべき聴診の位置

背部の中・下肺野を中心に聴きましょう。

 

ナースへのワンポイントアドバイス

結核性胸膜炎は、結核感染の5%を占めます。平均年齢47歳という論文もあるので、年齢が若くて、胸水貯留の患者さんを見た場合は、必ず結核性胸膜炎の可能性を考えましょう。

肺結核を伴わない結核性胸膜炎単独の病態であれば、患者さんを隔離する必要性はありません。

また、結核性胸膜炎の患者さんが著しくやせていった場合(るい痩)は、HIV感染症などの合併も考慮しましょう。

 

Check Point

  • 結核性胸膜炎は、肺結核に合併した胸水の患者さんに多いが、単独でも起こる。
  • 結核には、結核菌に感染してまもなく発症する1次結核症と、感染後、長期間経って発症する2次結核症がある。
  • 結核性胸膜炎の患者さんを聴診する場合は、背部の中・下肺野を中心に聴こう。

 

[関連記事]

  • ⇒『聴診スキル講座』の【総目次】を見る

 



[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科講師

[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授


Illustration:田中博志


著作権について

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