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2017年01月14日

癌に関するQ&A

疾患に関するQ&A

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

今回は「癌」に関するQ&Aです。

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

癌ってどんな病気?

癌は、遺伝子(DNA)の変異によって細胞が癌化(悪性腫瘍化)し、無制限に増殖したものです。癌によって、組織や器官が破壊されます。癌は、心疾患や脳血管疾患を抜いて、日本人の死因の第1位です。

 

良性腫瘍と悪性腫瘍はどう違うの?

腫瘍とは、異常な増殖性細胞で構成される病変です。腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍に分かれます。両者の最も大きな違いは、転移の有無と増殖の仕方です(表1)。

表1良性腫瘍と悪性腫瘍の特徴

良性腫瘍と悪性腫瘍の特徴

 

良性腫瘍は転移しませんが、悪性腫瘍は転移することがあります。増殖状況は、良性腫瘍は周囲組織を押しのけるように膨張しながら増殖します。そのため、周囲組織の破壊が少なく、周囲組織と明確に区別できるので摘出も容易です。

一方、癌は膨張するとともに、周囲組織に浸潤(しんじゅん)しながら発育します。そのため、周囲組織を破壊し、癌を完全に摘出するには広範囲に切除しなければなりません。癌の治療が困難な理由は、このような癌の特徴にあります(図1

 

図1良性腫瘍と悪性腫瘍の増殖の様式

良性腫瘍と悪性腫瘍の増殖の様式

(江口正信、水口國雄ほか:病理学。改訂版、クイックマスター・ブックス、p. 79、医学芸術社、2007より改変)

 

memo1癌の別称

癌は悪性腫瘍、悪性新生物とも呼ばれる。

 

memo2「癌」と「がん」

漢字の「癌」は上皮性悪性腫瘍(癌腫)をさし、平仮名の「がん」は非上皮性悪性腫瘍(白血病悪性リンパ腫、肉腫など)を含む全悪性腫瘍をさすことがありますが、がんは悪性腫瘍全般をさし、癌という字が難しいため「癌」も「がん」と表記されることもあります。

 

癌はどのように発生するの?

癌の発生には、癌遺伝子と癌抑制遺伝子がかかわっています。

癌遺伝子は正常な細胞にも存在しますが、何らかの刺激を受けると細胞を癌化させます。癌抑制遺伝子は、細胞の癌化を防ぐ遺伝子です。癌遺伝子が刺激されたり、癌抑制遺伝子が傷つくと、やがて細胞が癌化して癌細胞になります。その過程は2段階に分けて考えられています。

第1段階はイニシエーション(最初の過程)と呼ばれ、2つの遺伝子が傷つき、細胞が変異する段階です。変異した細胞は「変異細胞」「癌の芽細胞」などと呼ばれています。遺伝子が傷つく原因は、放射線、ウィルス、タバコなどの発癌物質です。

第2段階は、プロモーション(増殖が促進される過程)と呼ばれ、変異細胞から癌細胞に変わる段階です。変異細胞は、高脂肪食やタバコなどの癌化を促進するものにさらされると、癌細胞になると考えられています。

健康な人にも、癌細胞は常に発現しています。ところが、必ずしも癌を発症しないのは、リンパ球を中心とした免疫系(システム)が癌細胞を排除しているからです。免疫攻撃力より癌細胞の増殖力が強いと、癌細胞は排除されず、無制限な分裂・増殖を繰り返し、腫瘍を作ります。

 

癌はどのように転移するの?

癌の転移の方法には、3つの種類があります。

第1に、リンパ行性転移です。これは、癌細胞がリンパ管に侵入し、リンパ液によって運ばれて起こる転移です。最初は、発生した臓器(原発巣)の局所リンパ節に転移し、進行するに従って、リンパ液の流れに沿って次のリンパ節に広がっていきます。

第2に、血行性転移です。これは、癌細胞が血管に侵入し、血液の流れによって運ばれて起こる転移です。原発巣周辺の臓器だけではなく、遠隔転移することもあります。

第3に、播種(はしゅ)性転移です。これは、癌が腹腔内や胸腔内に遊離し、そのときに癌細胞が剥がれ落ちて腹膜や胸膜に付着して起こる転移です。癌細胞が種をまいたように広がるので播種性といいます(図2)。

 

図2癌細胞の転移のメカニズム

癌細胞の転移のメカニズム

(堤寛:画像詳解 完全病理学−総論。p. 126 、医学教育出版社、2005より改変)

 

memo3ウィルヒョウリンパ節転移とシュニッツラー転移

ウィルヒョウリンパ節転移とは、癌などの左鎖骨上窩リンパ節転移のことである。腹腔内のリンパ液が胸管を通り、左静脈角で鎖骨下静脈に開口しているためその周囲に転移しやすい。

シュニッツラー転移とは、腹腔内臓器の癌が腹膜播種を起こし、ダクラス窩に転移した状態である。

 

癌の進行度はどのように分類されるの?

全身の癌の進行度は、TNM分類が広く用いられています。

T(tumor)は原発部位の腫瘍の大きさ、周囲組織への浸潤の程度で、T0からT4までの5段階で表します。N(Node)はリンパ節への転移の程度で、N0からN3までの4段階で表します。M(metastasis)は遠隔転移の有無で、M0(無し)M1(あり)で表します。

たとえば、腫瘍の大きさや浸潤の程度が2段階、リンパ節への転移の程度が1段階、遠隔転移がない場合は、「T1NOMO」となります。

また、「早期癌」「進行癌」「末期癌」という分類もよく使われています。早期癌は一般的に小さな癌で、転移も少なく、治療により治癒が期待できる癌のことです。

進行癌は、周囲組織への浸潤・破壊が大きく、広範囲に転移がある癌のことです。末期癌は、進行が著しく治癒が望めない癌のことで、全身状態も著しく悪化します。

 

memo4病期分類

病期Ⅰ:原発部位に局限した癌で、転移はない。

病期Ⅱ:原発臓器内ないし周辺臓器に拡大しているが、転移はない。

病期Ⅲ:リンパ節転移はあるが、遠隔転移はない。

病気Ⅳ:遠隔転移がある。

 

癌の診断に用いられる検査は?

癌の診断に用いられる検査には、画像検査、内視鏡検査生検組織診・細胞診、腫瘍マーカーなどがあります。

画像検査は、X線検査、CTスキャン、超音波検査、MRI(磁気共鳴画像)などです。画像検査では、癌の有無や位置、病変の状況などがわかります。

内視鏡検査は、消化器、気道、尿路系などの癌の診断に用いられます。ファイバースコープなどを挿入して直接病変を観察するほか、同時に細胞も採取できます。

生検組織診・細胞診は、内視鏡検査時や切開、穿刺などで病変の組織・細胞を採取し、顕微鏡で観察する検査です。癌の有無や性質や悪性度などもわかり ます。

腫瘍マーカーは、腫瘍などによって産生される物質で、血液、尿中、腫瘍組織中から検出されます。癌の診断や経過観察に役立つ物質です。しかし、腫瘍マーカーの値は補助的なもので、高値だったからといって癌の診断につながるものではありません。腫瘍マーカーには、多くの臓器の癌に陽性を示すものと特定の臓器の癌に陽性を示す臓器特異性があるものとがあります(図3)。

 

図3各種臓器の癌と腫瘍マーカー

各種臓器の癌と腫瘍マーカー

(江口正信編著:検査値早わかりガイド。新訂版、p.230、サイオ出版、2014より改変)

 

癌の治療法にはどんなものがあるの?

手術療法、化学療法、放射線治療が癌の治療法の3本柱です。癌の発生部位、進行度などによって、これらの治療法を組み合わせて行われます。

手術療法は、癌を切除する方法です。これまでは再発を防ぐために、腫瘍周囲の組織をできるだけ広範囲に切除するのが望ましいと考えられていました。しかし近年は、術後のQOLを低下させないために、切除範囲は最低限にし、他の治療法を組み合わせることで再発を防ぐ傾向にあります。

化学療法は、細胞傷害性を持つ薬物によって、癌細胞を死滅させる治療法です。通常は全身的な効果を得るために、経口や点滴で投与されます。白血病は化学療法が主体になります。その他の癌では、広範囲に転移している場合や術後の再発予防のために行われます。術前に化学療法を実施して癌を小さくし、手術を行うこともあります。癌を養っている動脈に注入する局所療法もあります。

ホルモン依存性の癌である乳癌や前立腺癌では、ホルモン療法が有効であるといわれています。乳癌はエストロゲンプロゲステロンに、前立腺癌はテストステロン(アンドロゲン)に依存して増殖します。

そのため、乳癌のホルモン療法には、抗エストロゲン剤であるタモキシフェン、下垂体のゴナドトロピン分泌を抑制するLH-RHアゴニスト、閉経後の患者にはアロマターゼ阻害薬が用いられます。前立腺癌に対しては、LH-RHアゴニストの注射が用いられます。いずれも性ホルモンレベルを低下させる薬物です。

放射線治療は、放射線(X線、α線、β線、γ線など)を癌に照射し、癌細胞を破壊する療法です。周囲の正常な組織も同時に破壊されますが、子宮頸癌や皮膚癌などの表在性の癌では、手術とほぼ同じ効果が得られます。一般的には、腫瘍を小さくするために術前に照射したり、術後の再発予防のために用いられます。

 

抗癌薬の副作用にはどんなものがあるの?

抗癌薬によって異なりますが、おもな副作用は、骨髄抑制、 悪心・嘔吐下痢、便秘、脱毛、腎障害、心筋障害、末梢神 経障害などです。起こりやすい副作用と、副作用の出現時期はわかっ ていますから、事前に対策を講じることができます。

 

放射線治療の副作用にはどんなものがあるの?

放射線治療の副作用は、放射線宿酔(しゅくすい)、骨髄抑制、皮膚障害です。

放射線宿酔は、悪心・嘔吐、食欲不振、全身倦怠感、頭痛などの症状が出現します。全身照射した場合、治療中から治療後数日の間に発現することが多いです。

骨髄抑制は、骨髄の造血機能が障害される副作用です。部分的な 放射線治療だけの場合はそれほど問題になりませんが、全身照射している患者や化学療法と併用している患者の場合は注意が必要です。血小板数5万/μL以下、白血球数2,000/μL以下になれば、放射線治療を継続するかどうか検討されます。

皮膚障害では、発赤、脱毛、色素沈着、汗腺障害(発汗の低下による皮膚の乾燥)などがよく見られる症状です。線量が多い場合は、水疱やびらんが生じることもあります。治療開始から3〜4週間後に現れます(表2)。

 

表2癌の放射線治療による副作用の出現時期

癌の放射線治療による副作用の出現時期

 

癌の看護のポイントは?

癌の疑いで検査を受けるとき、癌と診断されたとき、治療を開始するとき、転移が見つかったときなど、患者は大きな不安を抱えています。それぞれの段階で、十分な説明が必要です。

病気や治療に関する説明は医師が行いますが、疑問点があっても医師には直接聞けない患者もいます。そのような場合は看護師が渡しをします。看護師は常に共感的・支持的態度で接することが大切です。

 

⇒〔病気のなぜ?〕記事一覧を見る


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

この連載

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