胃内からエコーを当てる超音波内視鏡(EUS)と管腔内超音波(IDUS)

画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。
今回は、技術が進歩した新しいエコー検査である「胃内からエコーを当てる超音波内視鏡(EUS)と管腔内超音波(IDUS)」についてのお話です。

 

加藤真吾
(横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室)

 

医療の世界は、技術の発展などで、日々、めざましく進歩しています。
もちろん、エコーの技術も発展しています。

 

最新の技術が使われているエコー検査ってあるんですか?

 

あります!
たとえば、の内部からエコーを当てて、診断したり、治療に生かしたりもしているんです。

 

すごい! 身体の外からじゃなくて、中からエコーを当てるなんて、まったく発想が逆ですね。
どうやってエコーを当てていく技術なんですか?

 

実は、内視鏡を使用するんです。
最新のエコー検査を、メリットとデメリットも併せて、詳しく解説します。

 

〈目次〉

 

腹部エコーで描出が難しい部位にエコーを当てる方法

腹部エコーでの腹部臓器の描出が難しくなる原因の一つに、胃内の空気が関係しています(『エコー(超音波)の性質と特徴』参照)。特に、胃の背側にある膵臓の尾部は、胃内に空気があるため、腹部エコーでの描出が難しくなります。

 

この問題を解決するために、内視鏡の先端にエコーのプローブを付けて、胃の中からエコーを当てるという検査方法があります。内視鏡室の業務に従事している看護師さんや、消化器内科の病棟で勤務している看護師さんであれば、この超音波内視鏡検査という検査方法について聞いたことがあるかもしれません。

 

腹部エコーより描出力に優れている超音波内視鏡検査(EUS)

超音波内視鏡は、胃内からエコーを当てるため、胃内の空気が問題になることはありません。このため、超音波内視鏡であれば、胆嚢や胆管だけでなく、腹部エコーでは見えない膵臓の一部を描出することができます。さらに、腹部エコーよりも詳細な情報を得ることが可能になります。

 

また、超音波内視鏡で描出した腫瘍性病変を、経内視鏡的に針を刺して組織を得る、超音波内視鏡下穿刺術(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration:EUS-FNA)という検査も一般的になってきています(図1)。

 

 

図1腫瘍性病変に行う超音波内視鏡下穿刺術(EUS-FNA)

 

腫瘍性病変に行う超音波内視鏡下穿刺術(EUS-FNA)

 

超音波内視鏡を使用して、病変部に穿刺針を刺して組織を採取します(生検)。

 

この検査法は、膵臓の腫瘍や、消化管粘膜下の腫瘍などが、良い適応になります。経皮的なアプローチでは得られない組織を得ることのできるEUS-FNAは、腫瘍に対する診断の世界を大きく変えました。

 

胆管内から直接エコーを当てる管腔内超音波検査(IDUS)

エコーはプローブと観察の対象物と近ければ近いほど、その威力を発揮します。エコー検査のなかには、超音波内視鏡検査(EUS)よりも、さらに対象物に近寄ったものがあります。

 

それは、EUSと同様、内視鏡時にエコーを用いる「管腔内超音波検査(intraductal ultrasonography:IDUS)」と呼ばれる検査です(図2)。

 

 

図2胆管内腫瘍の診断を行う管腔内超音波検査(IDUS)

 

胆管内腫瘍の診断を行う管腔内超音波検査(IDUS)

 

A:十二指腸乳頭部から総胆管に超音波プローブを挿入し、胆道内部から胆管・胆嚢を観察します。
B:超音波プローブは、内視鏡の鉗子口から挿入する細いプローブで、先端部に超音波(エコー)を送受信する装置が付いています。
C:超音波内視鏡で、胆道内部から胆管・胆嚢を確認しているエコー像のシェーマ図です。

 

IDUSは、内視鏡の中を通る細長い棒の先に超小型の超音波プローブを付けて、これを経内視鏡的に胆管内に挿入し、胆管内腫瘍などの診断を行います。胆管内から直接エコーを当てることで、CTなど、ほかの画像検査では得られない細かい情報を得られるのが特長です。

 

検査のメリットは大きいが、侵襲度の面ではデメリット

このように、有用性がとても高い内視鏡関連のエコー検査ですが、一方で、デメリットもあります。それは、これらの検査を施行するためには、必ず内視鏡検査を受けなければならないことです。

 

エコー検査は、患者さんへの侵襲が少ないことがメリットの一つでしたが、上記の2つの検査では、内視鏡検査を受ける必要があるため、患者さんの侵襲が少ないとは言えません。

 

しかし、これらの検査が優れた検査法であることには変わりはありません。また、どのような検査にもメリットとデメリットがあるので、これらを理解して、正確に患者さんに伝えることが重要です。

 

 

Check Point

  • 超音波内視鏡検査は、描出が難しい部位にも、胃内からエコーを当てて確認できる優れた検査法です。
  • 低侵襲性がメリットのエコー検査に比べ、超音波内視鏡検査は内視鏡を受ける必要があるため、侵襲性があります。
  • 超音波内視鏡下穿刺術(EUS-FNA)や、胆管内から直接エコーを当てる管腔内超音波検査(IDUS)など、新しい技術が登場しています。

 

 


[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室

 


Illustration:田中博志

 


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