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2016年10月13日

弾性ストッキングによる皮膚障害の予防と対策

『WOC Nursing』2014年5月号<足の褥瘡を識る>より抜粋。
弾性ストッキングによる皮膚障害の予防と対策について解説します。

 

Point

  • 弾性ストッキング着用の適応と禁忌を判断する
  • 弾性ストッキング着用前の確認事項を理解する
  • 予防的スキンケアの必要性を理解する

松本衣代
(神戸大学医学部附属病院 看護部 皮膚・排泄ケア認定看護師)

野口まどか
(神戸大学医学部附属病院 看護部 皮膚・排泄ケア認定看護師)

丸尾 郁
(神戸大学医学部附属病院 看護部 皮膚・排泄ケア認定看護師)

寺師浩人
(神戸大学医学部附属病院 形成外科 教授)

 

〈目次〉

 

はじめに

深部静脈血栓症(deep vein thrombosis;DVT)予防のためには,弾性ストッキングの着用が有用です。しかし,一方で弾性ストッキング着用による医療機器関連圧迫創(褥瘡)が問題となっています。効果的に弾性ストッキングを使用するためには正しく選択し,正しく着用することが大切です。

正しく選択するためには,弾性ストッキングの種類や特徴を知っておく必要があります。そのうえで,病態によって,圧迫圧,タイプ(ハイソックスタイプ,ストッキングタイプ,パンストタイプなど),着脱の容易さ,装着時の不快感などを考慮します。

弾性ストッキングによる圧迫創は,適応を誤ると浅い傷にとどまらず,足趾の切断に至る可能性もあります。着用前に確認すべき点は何か,着用することにより創傷を作らないようにするための正しい着用方法を確認しておきましょう。

 

弾性ストッキング着用の適応と禁忌

弾性ストッキングを着用する目的にはDVTの予防と,静脈疾患やリンパ浮腫の治療があります。予防と治療では弾性ストッキングの圧迫圧や構造が違います。

圧迫圧は,予防目的では15〜20 mmHg,治療目的の場合は15〜40 mmHgのものが多くあります。構造の違いは,DVT予防用の弾性ストッキングには,皮膚の色を直接観察できるよう,つま先なしタイプかモニターホールがついていることです。モニターホールの部分から足先が出ていて,第1足趾,第5足趾外側が圧迫され皮膚障害が起こることがあるため注意が必要です。

 

弾性ストッキング着用の適応

静脈疾患の治療

静脈瘤やDVT後遺症の下肢の疼痛・潰瘍の治療のために使用します。

圧迫を加えることで静脈環流が改善し,潰瘍の治癒や下肢の疼痛の軽減につながります。

 

DVT予防

手術後の安静や血液凝固異常で血栓が形成されるとDVTが起こりやすくなります。その血栓が遊離して肺動脈を閉塞すると肺塞栓症が起こり,突然死の原因となります。

弾性ストッキングを着用することで筋のポンプ作用(ふくらはぎの筋肉の収縮で下肢の静脈を圧迫して血液をしぼり出す作用)と,静脈弁機能(下肢に血液が溜まるのを防止する逆流防止機能)を改善することができます。

 

リンパ浮腫の治療

リンパドレナージというマッサージ法と弾性ストッキング装着の圧迫療法を組み合わせることで有効な治療となります。

 

弾性ストッキング着用の禁忌

下肢の動脈血流が低下している末梢動脈性疾患(PAD)やバージャー病などの患者への使用は,原則として禁忌です。下肢に一定の圧力を加えることで静脈環流やリンパ還流の改善を図る反面,動脈を圧迫することにもなるからです。

また,やせて骨が突出している患者,骨変形のある患者の場合,突出している部位の圧力が強くなり皮膚の血流障害により局所のびらんや潰瘍を生じる可能性があるため注意が必要です。

 

神戸大学医学部附属病院での事例

患者は,悪性関節リウマチと末梢動脈性疾患のため当院形成外科で両足趾切断後の状態でした。

両眼白内障の手術のために入院し,局所麻酔で手術を受けています。その手術直前に両下肢に弾性ストッキングを着用し術後1〜2時間で除去しています。

術中より疼痛がありましたが,患者は我慢して訴えず,術後に右足趾皮膚色不良を自覚しました。もともと,足背・後脛骨動脈は触知もドプラでの聴診もできない状態でした。その後,第1足趾,第5足趾は切断となりました(図1)。

図1弾性ストッキングの着用基準見直しの契機となった事例

弾性ストッキングの着用基準見直しの契機となった事例

 

この事例を経験し,当院では弾性ストッキングの着用基準を見直しました。

 

弾性ストッキング着用前の血流の確認

前項の事例を受けて検討された弾性ストッキング着用前の確認事項を紹介します(表1図2)。

表1弾性ストッキング着用前のチェックポイント

弾性ストッキング着用前のチェックポイント

図2弾性ストッキング着用前の確認事項

弾性ストッキング着用前の確認事項

 

後脛骨動脈・足背動脈を触知します。両動脈とも触知できれば,着用「可」としています。どちらかが触知できなければ,ドプラ血流計で確認し両動脈ともに聴取できれば着用「可」です。

後脛骨動脈は主に足底側,足背動脈は足背側を栄養しているため,どちらも触知あるいは聴取できることがとても重要です。どちらかでも触知・聴取できない場合は,着用を「不可」としています。

 

皮膚障害予防のためのスキンケア

弾性ストッキング着用前に,下肢の皮膚の状態(乾燥,色調,皮膚温,創傷の有無など)を確認します。着用を開始した後も弾性ストッキングの圧迫や蒸れによる皮膚障害が発生していないか,皮膚の観察,清潔,保湿のケアを行う必要があります。

とくにドライスキンの場合,健康な皮膚がもつバリア機能が低下しているため,外部からの摩擦や刺激により皮膚障害を生じやすい状態になっています。そのため,適切にスキンケア用品などを使用し保湿する必要があります。

 

弾性ストッキングによる皮膚障害の実際と対策

骨突出部の保護

図3をみてください。

図3骨突出部の保護

骨突出部の保護

るい痩があり,骨突出部に強い圧力がかかり,発赤が生じています。この場合,骨突出部の保護のために保護材を貼りがちですが,突出部がさらに高くなり骨突出部にかかる圧力が強くなります。

そのため対策としては,骨突出部の両サイドにクッション性のある素材の保護材を貼付し骨突出部の圧迫を軽減することを推奨します。また,骨突出部にかかる摩擦やずれから皮膚を保護するため,保湿することも重要です。

 

足部の皮膚障害

図4をみてください。

図4足部の皮膚障害

足部の皮膚障害

 

弾性ストッキングによる圧迫がかかりやすい部位に発赤が生じています。一部中央が黒色で,深部の損傷が疑われる状態になっています。

足部は皮下脂肪層が薄く外力が骨に伝わりやすい部位であるため,深部に損傷が及びやすくなります。皮膚色が黒色に変化したり,潰瘍ができたりする前に,皮膚の異常を発見し対処することが重要です。

対策としては,毎日弾性ストッキングを脱いで皮膚の状態,動脈の触知を行い異常の早期発見に努め,異常が発見された場合は弾性ストッキングの着用を中止します。

 

ストッキングの皺に一致した皮膚障害(図5

図5ストッキングの皺に一致した皮膚障害

ストッキングの皺に一致した皮膚障害

上端が丸まっていたため,その部位に強い圧迫が加わり,傷になっています。ストッキングを着用するとき,必要以上にストッキングを伸ばし過ぎると,長さが余ってしまい皺になったり,上の部分が丸く固まりになってしまったりします。引っ張りすぎないように着用するのがコツです。

図6に着用方法を整理しました。

図6弾性ストッキングの装着方法

弾性ストッキングの装着方法

 

この症例では,アキレス腱部に皮膚障害が発生しています。これは,その部位にできた弾性ストッキングの皺に一致してできていました。皺ができないように着用後ストッキングの上からマッサージするように撫でるときれいに着用することができます。

また,履き方だけでなく,サイズが適切かを確認することも重要です。着用前にサイズを計測し,適切なものを選択します。浮腫などによりサイズが変化する場合もあります。サイズが合わなくなったときは,適切なサイズのストッキングに変更するか,弾力包帯に変更するなどの対策が必要です。

 

弾性ストッキングのサイズ選びについて

弾性ストッキングを選ぶ際は,足関節の太さを基準にサイズを決めます。製品により規格が異なるため(表2),製品ごとのサイズ表で確認し,サイズを決めなければいけません。

表2製品によるサイズの違い(足関節部,cm)

製品によるサイズの違い(足関節部,cm)

おわりに

近年,さまざまな医療機器の装着により生じる医療機器関連圧迫創が問題となっています。とくに弾性ストッキングによる創傷では,足趾切断など重篤な状態に陥る危険性があります。

治療,予防のために必要で有効な機器を,安全に使用することが大切です。着用前,着用中の確認を確実に行い,患者の足と体をケアしましょう。

 


[引用・参考文献]

  • (1)平井正文・岩井武尚(編):新 弾性ストッキング・コンダクター.へるす出版,pp68-76,2010
  • (2)日本フットケア学会(編):フットケア 第2版 基礎的知識から専門的技術まで.医学書院,pp78-88,2012.
  • (3)井口 巴ほか:深部静脈血栓症予防用具に起因する圧迫創予防ケアの検討〜弾性ストッキングと間欠的空気圧迫装置の膝関節付近と踵部における圧測定調査より〜.日本褥瘡学会誌,15(4):484-491,2013.

[Profile]
松本衣代(まつもと きぬよ)
神戸大学医学部附属病院 看護部 皮膚・排泄ケア認定看護師
1992年 神戸大学 医療技術短期大学部 卒業,同年 神戸大学医学部附属病院 入職。2006年 WOC看護認定看護師資格 取得。消化器外科病棟,手術室,形成外科外来勤務,褥瘡対策専従看護師を経て,現在,看護外来で主にストーマケアを担当。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]WOC Nursing2014年5月号

WOC Nursing2014年5月号

P.74~「DVT予防のための弾性ストッキングによる圧迫創対策」

著作権について

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