くも膜下出血に関するQ&A
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『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。
今回は「くも膜下出血」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
〈目次〉
- 1.くも膜下出血ってどんな病気?
- 2.くも膜下出血って何が原因なの?
- 3.くも膜下出血ではどんな症状が出現するの?
- 4.くも膜下出血の合併症は?
- 5.くも膜下出血の特徴的な検査所見は?
- 6.くも膜下出血にはどんな治療が行われるの?
- 7.再破裂を防ぐ手術にはどんな方法があるの?
- 8.水頭症にはどんな治療が行われるの?
- 9.くも膜下出血の看護のポイントは?
くも膜下出血ってどんな病気?
くも膜下出血は、脳の血管が破綻してくも膜下腔に出血し、血液がくも膜下腔の髄液に混入した状態です。脳梗塞や脳出血に比べると発症率は低いですが、死亡率は高いです。
くも膜下出血って何が原因なの?
くも膜下出血の原因で最も多いのは、脳動脈瘤の破裂です。脳動脈瘤は、血管壁が弱い部分が高血圧や血流の影響で拡張されて発生します。脳動瘤が発生しやすい部位は、脳底部の大きな動脈の分岐部で、ウイリス動脈輪の前半部です。脳動脈瘤の破裂のほか、脳動静脈奇形なども原因になります。
くも膜下出血ではどんな症状が出現するの?
くも膜下出血では、脳動脈瘤の破裂直後に、突然、激しい頭痛が生じます。この症状がくも膜下出血の特徴です。
また、髄液に血液が混入して頭蓋内圧が亢進するため、悪心・嘔吐が出現し、髄液に流れ込んだ血液が髄膜を刺激するために、項部(うなじ)が硬くなって前屈できなくなる項部硬直などが現れます(図1)。
図1髄膜刺激症状
くも膜下出血は脳内出血ではないため、原則的には局所の神経症状は出現しませんが、血腫が脳内に及んだ場合は、片麻痺などが出現します。
くも膜下出血の合併症は?
くも膜下出血に引き続いて起こる合併症に、再出血(再破裂)、脳血管攣縮(れんしゅく)、水頭症があります。
出血後、血管壁にフィブリンなどが付着して一時的に止血されますが、血圧の上昇などにより、再出血します。再出血が起こりやすいのは、発症当日と発症後7〜14日です。再出血すると、その約50%が死亡します。
脳血管攣縮は、一過性に血管が収縮・弛緩(しかん)する状態です。発生機序はまだはっきりわかっていませんが、出血後4〜14日の間に発生しやすくなります。脳血管攣縮により、脳梗塞を併発することがあります。
水頭症には、出血直後から数日以内に発生する急性水頭症と、出血から1か月後ぐらいに発生する正常圧水頭症があります。水頭症とは、脳内に髄液が貯留し、脳室が拡大している状態です。
急性水頭症は、頭蓋内圧亢進をきたし、脳ヘルニアに進展することもあります。正常圧水頭症は、ゆっくりと水頭症が進行した状態で、脳圧は正常ですが、歩行障害、尿失禁、認知症などの症状が現れます。
くも膜下出血の特徴的な検査所見は?
くも膜下出血では、MRI検査において、出血部位が白く描出されます。その所見でくも膜下出血であることがわかります。手術のために脳動脈瘤の位置を調べる必要があるときには、脳血管造影検査が実施されます(図2)。
くも膜下出血にはどんな治療が行われるの?
くも膜下出血の治療では、発症直後は、脳動脈瘤の再破裂と頭蓋内圧亢進の予防を目的に、ベッド上安静にして血圧コントロールが行われます。意識状態が良好で、血管攣縮が見られない場合には、出血後、できるだけ再破裂を防ぐ手術が行われます。
術後は、脳血管攣縮を防ぐために、トリプルH療法が行われます。トリプルH療法とは、循環血液量の増加hypervolemia、血液希釈hemodilution、人為的高血圧hyperdynamic、の状態にし、脳血流をできるだけ維持する治療法です。
再破裂を防ぐ手術にはどんな方法があるの?
開頭手術により、動脈瘤の頚部にクリップをかけて血流を遮断するクリッピング術があります。クリッピング術が困難な場合には、接着剤などで動脈瘤をおおうコーティング術(ラッピング術)が行われます。動脈瘤の部位によっては、動脈瘤の上下を結紮して血流を遮断し、バイパス路を確保するトラッピング術が実施されます。
また、大腿動脈からカテーテルを挿入し、動脈瘤にコイルを詰めて再破裂を防ぐコイル塞栓術という治療法があります(図3)
水頭症にはどんな治療が行われるの?
急性水頭症には脳室ドレナージ、正常圧水頭症にはシャント術などが行われます。シャント術とは脳室(あるいはくも膜下腔)にチューブを挿入し、髄液を腹腔などに流す手術(図4)です。
くも膜下出血の看護のポイントは?
くも膜下出血の看護においては、発症直後から手術が行われるまでは、血圧を低く保ち、悪心・嘔吐、頭痛などの症状を緩和することがポイントです。術後、トリプルH療法が行われるにあたっては、正確な薬物の与薬と全身管理を行い、脳血管攣縮の早期発見に努めることが重要です。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版