甲状腺機能低下症に関するQ&A

 

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は「甲状腺機能低下症」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

甲状腺機能低下症ってどんな病気?

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン:T3、サイロキシン:T4)の合成・分泌が減少し、甲状腺機能が低下した病態です。

 

内分泌疾患のなかでは、甲状腺機能低下症の割合が高く、100〜200人に1人の割合で見られます。また、男女比は1:10以上と女性に多くみられます。

 

甲状腺機能低下症の原因疾患は何?

甲状腺機能低下症のおもな原因疾患は、甲状腺に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)が産生される橋本病(慢性甲状腺炎)です。

 

自己抗体はウイルス感染などが影響します。自己抗体が産生されると、甲状腺は慢性炎症を引き起こして破壊されていくため、甲状腺ホルモンの産生・分泌が低下します。

 

また、クレチン病も原因疾患の1つです。これは、先天的な甲状腺低形成やホルモン合成障害により、新生児期に甲状腺機能低下症となる疾患です。クレチン病は、成長発達遅滞が生じないよう早期に発見・治療する必要があります。

 

甲状腺機能低下症ではどんな症状が出現するの?

甲状腺機能低下症の特徴的な症状は、粘液水腫による眼瞼や下肢の浮腫です(図1)。また、脱力感、疲労感、寒がり、発汗減少、体重増加、食欲低下など、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)と反対の症状が出現します。

 

橋本病(慢性甲状腺炎)は、これらの症状に加え、甲状腺が腫れる(甲状腺腫)、そのために声帯が影響を受けて声がかすれるといった症状も現れます。クレチン病の特徴は、低い、大きい舌、かすれた泣き声、目の周囲の腫れ、手足の冷汗、臍ヘルニアなどです。

 

図1甲状腺機能低下症の症状

甲状腺機能低下症の症状

 

(山田幸宏編著:看護のための病態ハンドブック。改訂版、p.307、医学芸術社、2007より改変)

 

甲状腺機能低下症ではどんな検査が行われるの?

血液検査で、甲状腺ホルモン(FT3、FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体を測定します。

 

甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの値が低下し、ネガティブフィードバック機構により、TSHの値が高くなります。

 

また、抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体のいずれかが陽性になれば、橋本病(慢性甲状腺炎)と診断されます。

 

甲状腺機能低下症にはどんな治療が行われるの?

甲状腺機能低下症の治療には、血中の甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモンの値が正常になるように、不足している量の甲状腺ホルモン薬を内服します。甲状腺ホルモン薬の内服によって、甲状腺機能低下症は改善されますが、内服を中止するともとに戻ることがあります。血液検査の結果を見ながら薬の量を増減させたり、薬を中止するかどうか判断します。

 

甲状腺機能低下症の看護のポイントは?

甲状腺機能低下症では、服薬が長期に及ぶことが多いため、服薬の必要性を説明し、理解してもらいます。また、継続的に、かつ確実に服薬できるような工夫を患者と一緒に考えましょう。

 

服薬が長期に及ぶことで、患者は「病気は治るのだろうか」と不安になることがあります。服薬によって、ほとんどの症状が改善すること、日常生活に制限がないことなどを説明し、不安を解消しましょう。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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