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2016年09月08日

マッカンドー鑷子|鑷子(4)

手術室にある医療器械について、元手術室勤務のナースが解説します。
今回は、『マッカンドー鑷子』についてのお話です。
なお、医療器械の歴史や取り扱い方については様々な説があるため、内容の一部については、筆者の経験や推測に基づいて解説しています。

 

黒須美由紀

 

〈目次〉

 

ピンポイントで組織を把持できる鑷子(ピンセット)

形状はスリムでも、軽い力でしっかりと組織を掴める

マッカンドー鑷子(マッカンドーせっし)とは、いわゆるピンセットのことです。マッカンドー鑷子の特長は、先端の把持部が細く、比較的軽い力でも組織をしっかりとピンポイントで掴める点です(図1)。つまり、狙った組織を力強く把持することができる鑷子です。

図1先端部が細いマッカンドー鑷子

先端部が細いマッカンドー鑷子

先端部が細くできている。

 

使用用途は表層に近い組織

マッカンドー鑷子は、全長が短いため、表層に近い組織で使用されることが多い鑷子です。そのため、患部が表層に近い形成外科や歯科口腔外科、皮膚科などでよく使用されています。また、救急外来の縫合セットに入っていることもあります。

 

マッカンドー鑷子の誕生秘話

マッカンドー鑷子はニュージーランド生まれの形成外科医が開発

手術器械には、人名と思しき名前が付いているものが多く存在しています。このマッカンドー鑷子も、人名由来という点から調べていくと、「この人が鑷子開発に関係しているのでは?」と思わせるような医師が確かに存在しました。

その医師は、ニュージーランド生まれの形成外科医のアーチボルド・マッカンドー (Archibald McIndoe:1900-1960)という人物です。日本語読みでは「マッキンドー」、あるいは「マカンド」とも訳されることがありますが、その翻訳名が製品名になっているメーカーもあるようです。

 

memoDr.マッカンドーは近代形成外科の父 Dr.ギリスの一番弟子

第一次世界大戦をきっかけに、形成外科の領域は発展していきました。当時の形成外科領域には、「近代形成外科の父」と呼ばれる偉大な医師がいました。その医師が、Dr.ギリスです。

Dr.ギリスには複数人の弟子がいましたが、弟子の中でも、傑出した才能を持った一番弟子だったのが、Dr.マッカンドーだったと言われています。

 

負傷兵の治療に尽力した革新的な技術を持った医師

第二次世界大戦では、大量の液体燃料を積んだ航空機での戦闘によって、多くの兵士が深刻な怪我を負いました。兵士の多くは、熱傷の治療や、顔面・四肢の再建を必要としていました。

当時、Dr.マッカンドーは、イギリス空軍で形成外科コンサルタントに任命されていました。Dr.マッカンドーが考案した、深刻な熱傷に対する治療法は、現在でも実際に行われているため、当時から非常に革新的な医師だったと推測できます。

また、Dr.マッカンドーの技術は華麗で、迅速だったとも言われています。Dr.マッカンドーは、繊細な操作が必要とされた形成外科手術を数多く行う中で、これまでに存在していた鑷子に改良を重ね、自分の手技にあった鑷子を開発していったのではないかと、筆者は考えています。

 

memoDr.マッカンドーは看護につながる思想の持ち主

Dr.マッカンドーは、負傷したパイロットの傷を癒すためには、外科的な治療だけでなく内面の治療が必要だと考えました。この内面の治療とは、精神的リハビリのことで、Dr.マッカンドーはリハビリに最善を尽くしました。

このDr.マッカンドーの行動は、現代の看護にもつながる発想です。

 

マッカンドー鑷子の特徴

サイズ

マッカンドー鑷子のサイズは、メーカーにもよりますが、15.5cm~16.5cmです。

 

形状

ほかの鑷子類と同じようにΛ型です。持ち手部分から把持部に渡って、細い造りになっていて、有鈎(鈎状の突起がある)と無鈎のものがあります(図2)。

図2マッカンドー鑷子の先端部

マッカンドー鑷子の先端部

A:有鈎、B:無鈎。

 

材質

マッカンドー鑷子はほかの鋼製小物同様、ステンレス製です。メーカーによっては、持ち手部分に絶縁体のコーティングが施されているものもあります。

 

製造工程

①材料入荷→②検品・矯正→③バネ付け→④抜き型(おおよその形を抜く)→⑤打ち型(筋などを型打ちする)→⑥マーク入れ(ブランドロゴや医療承認番号を打刻)→⑦折曲・溶接→⑧研削・整形→⑨研磨→⑩検品・包装。

以上のように、一般的な鋼製小物(主にステンレスやチタンで製造された手術や外科的処置用の器械)と同様の工程で製造されています。

なお、上記の④、⑤の工程は、種類によっては、数回繰り返すこともあります。

また、工程⑥(マーク入れ〈打刻〉)は、鑷子の内側にマークを入れる場合で、製品やメーカーによっては、工程⑨(研磨)の後に、外側からマーク入れ(腐食やレーザーマーキング)を行う場合もあります。

 

価格

マッカンドー鑷子の1本あたりの価格は、4,000円~7,000円程度のものが多くなっています。中にはコーティングの違いなどで12,000円程度するものもあります。

 

寿命

マッカンドー鑷子の寿命は、明確に決まっているわけではありません。鋼材そのものの寿命はもちろんですが、どのような組織をどのように把持したのか、電気メスを使った止血に使われていたか、洗浄や滅菌の過程での扱われ方によっても変わってきます。

 

マッカンドー鑷子の使い方

使用方法

マッカンドー鑷子は、先端まで細身にできていることで、少しの力でも組織を傷めることなく、ピンポイントでしっかり把持することができます。これが、マッカンドー鑷子の大きな長所です。

この長所を活かした使用方法の一つが、鑷子を介した電気メスの高周波電流による熱凝固止血です(図3)。

図3マッカンドー鑷子の使用例

マッカンドー鑷子の使用例

マッカンドー鑷子に電気メスを当てることで、電気がマッカンドー鑷子を介して伝わり、凝固止血します。

 

これは、細い血管や小範囲出血の場面に適しています。出血点をマッカンドー鑷子で把持した後に通電させることで、周辺組織への影響が少なく、確実かつ安全に止血できます。

 

類似器械との使い分け

マッカンドー鑷子とよく似たほかの鑷子類との使い分けのポイントは、どういう組織を把持するか、という点が大きいでしょう。

全長の短い鑷子で、先端が細めの鑷子といえばアドソン鑷子です。アドソン鑷子は、皮膚縫合(真皮縫合)に使われることの多い鑷子です(図4)。

図4マッカンドー鑷子とアドソン鑷子の違い

マッカンドー鑷子とアドソン鑷子の違い

A:マッカンドー鑷子は全体的に細いのが特長です。
B:アドソン鑷子は短く、先端部が細いのが特長です。

 

先端にいたる部分が細身で、全長の長いマッカンドー鑷子は、アドソン鑷子の使用範囲である皮膚表面より、深くて狭い手術創にも進入でき、操作することが可能です。

 

禁忌

マッカンドー鑷子の禁忌はありません。鑷子類に限らず、操作や目的に合った器具を選択することが大切です。

 

ナースへのワンポイントアドバイス

外観は特徴的でも先端部の有鈎・無鈎には気をつけよう

マッカンドー鑷子は、持ち手部分からの外観に特徴があるため、ほかの器械と取り間違えることはあまりないかもしれませんが、先端部の有鈎・無鈎の形状の取り間違いには注意が必要です。

同じ手術中、同時に有鈎・無鈎のマッカンドー鑷子の準備が必要になった場合は、器械盤の上での置き方を工夫したり(向きを変えるなど)、有鈎のものは出さずにしておくなど、取り間違いや無用な切創事故を防ぐようにしましょう。

 

使用前はココを確認

使用前は、ほかの鑷子類と同様に、まずは噛み合わせを確認します。有鈎のものは鈎部分に欠損や破損がないかも確認します。不具合があったものは、使用できません。

 

術中はココがポイント

器械出しナースはマッカンドー鑷子の先端を持ち、ドクターの親指と人差し指の間に鑷子の背の部分を軽く押し当てるようにして渡します(図5)。

図5マッカンドー鑷子の渡し方

マッカンドー鑷子の渡し方

マッカンドー鑷子の先端部は閉じた状態で、ドクターの親指と人差し指の間に鑷子の背の部分を軽く押し当てます。

 

渡す時は、マッカンドー鑷子の先端は閉じた状態にしておきます。マッカンドー鑷子は先端が細くなっていますので、器械出しナースの指(グローブ)に引っ掛けてしまうことを防ぎます。

 

使用後はココを注意

使用前に確認したのと同様に、外見上の不具合と噛み合わせを確認します。特に、有鈎タイプのものは、鈎部分に欠損や破損がないかを必ず確認します。万が一、問題があれば、術野の確認が必要です。

問題がなければ、ドクターの次の指示に従って器械出しができるように、付着物を拭き取っておきましょう。

 

片付け時はココを注意

洗浄方法

洗浄方法の手順は、ほかの鑷子類の洗浄方法と同じです。

(1)手術終了後は、必ず器械のカウントと形状の確認を行う
(2)洗浄機にかける前に、先端部に付着した血液などの付着物を、あらかじめ落しておく
(3)感染症の患者さんに使用後、消毒液に一定時間浸ける場合、あらかじめ付着物を落としておく
(4)洗浄用ケース(カゴ)に並べるときは、ほかの鑷子類と区別できるように置く

 

滅菌方法

高圧蒸気滅菌が最も有効的ですが、滅菌完了直後は非常に高温になっているため、ヤケドをしないように注意しましょう。

 

 


[参考文献]


[執筆者]
黒須美由紀(くろすみゆき)
総合病院手術室看護師。埼玉県内の総合病院・東京都内の総合病院で8年間の手術室勤務を経験


Illustration:田中博志

Photo:kuma*


協力:高砂医科工業株式会社


著作権について

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