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2016年08月22日

膵炎(すいえん)に関するQ&A

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

今回は「膵炎」に関するQ&Aです。

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

膵炎ってどんな病気?

膵臓は、消化酵素を多く含んだ膵液を十二指腸に向かって外分泌し、インスリンやグルカゴンという血糖に関与するホルモンを内分泌しています(図1)。

図1膵液の流れ

膵液の流れ

 

正常な状態では、膵液に含まれている消化酵素は、十二指腸に至って初めて活性化します。ところが、何らかの原因で消化酵素が膵内で活性化し、組織を自己消化して炎症を起こした状態が膵炎です。

膵炎は、急性膵炎と慢性膵炎に分類されます。

急性膵炎は、消化酵素による自己消化の結果、膵組織に浮腫、壊死、出血が生じます。多くは浮腫型で完全に治癒しますが、一部は出血・壊死性の膵炎となり、重症化します。重症急性膵炎は、多臓器不全を合併し、死に至ることもある重篤な疾患です。

慢性膵炎は、長期にわたる炎症の繰り返しにより、膵実質の破壊と線維化が起こります。その結果、外分泌・内分泌が低下します。線維化した細胞はもとに戻りません。

 

膵炎って何が原因なの?

急性膵炎は、40%がアルコールの過剰摂取、20%が胆石、25%が原因不明の突発性です。慢性膵炎は、アルコールの過剰摂取が60%と最も多いです。

正常な状態では、膵液は膵管を経て、膵頭で総胆管と合流し、大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)括約筋が弛緩して十二指腸に流れ込みます。

ところが、胆石が生じると膵管や総胆管が閉塞され、膵液が逆流して膵管内圧が上昇します。また、アルコールにより十二指腸乳頭括約筋が攣縮を起こし、膵液が逆流して膵管内圧が上昇します。その結果、膵酵素の活性化が生じます。また、アルコールにより膵液が過剰分泌されることも原因です。

memo1膵液に含まれる消化酵素
  • 糖質分解酵素:アミラーゼ
  • 脂質分解酵素:リパーゼ
  • タンパク質分解酵素:トリプシン、キモトリプシン

 

急性膵炎はどんな症状が出現するの?

急性膵炎で最もよく出現する症状は、急激に起こる上腹部の激しい腹痛です。その他、悪心・嘔吐、発熱、頻脈血圧低下(重症例ではショック)、テタニー症状(手指や口唇のふるえ)、麻痺性イレウス、呼吸障害などが見られます。

 

慢性膵炎はどんな症状が出現するの?

慢性膵炎は、臨床症状のない潜在期と臨床経過から①代償期、②移行期、③非代償期の3つの時期に分類されます(図2)。代償期には、腹部・背部の疼痛が見られますが、組織の線維化が進むと痛みは軽減します。

非代償期に入ると、細胞の線維化が進むため、外分泌(消化液の分泌)が低下し、消化吸収障害による脂肪便、慢性的な下痢体重減少などが生じます。また、内分泌(インスリン、グルカゴンの分泌)も低下するため、高血糖低血糖症状が出現します。

急性増悪時には、急性膵炎と同じ症状が出現します(図3)。

図2慢性膵炎の臨床症状

慢性膵炎の臨床症状

 

図3急性膵炎と慢性膵炎の病態

急性膵炎と慢性膵炎の病態

(武田英二監:栄養学。新クイックマスター、p.177、医学芸術社、2007より改変)

memo2膵臓の内分泌

インスリンは、肝臓筋肉などに作用し、血中のグルコースブドウ糖)を細胞内に取り込む働きがある。したがって、インスリンが分泌されないと、血糖値が上昇する。
グルカゴンは、肝臓に作用し、グリコーゲンを分解したり、糖新生を起こし、グルコースを血中に放出する働きがある。したがって、グルカゴンが分泌されないと、血糖値が低下する。

 

膵炎の特徴的な検査所見は?

急性膵炎は、血清アミラーゼ、血清リパーゼなどが上昇し、発症後1〜2日でピークに達します。腹部超音波検査やCT検査では、膵臓の腫大、輪郭の不明瞭化などが認められます。

慢性膵炎は、代償期は血清アミラーゼ、血清リパーゼなどの軽度の上昇が認められ、進行に伴って基準値以下になります。腹部超音波検査やCT検査では、石灰化が認められます。また、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)を行うと、膵管の拡張が見られます。

memo3内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)

口腔から内視鏡を挿入して十二指腸乳頭に到達させ、造影剤を注入して、胆管と膵管を観察する検査。

 

急性膵炎にはどんな治療が行われるの?

急性膵炎の場合、膵臓の安静をはかるために絶飲食とし、輸液により水分と栄養を補給するのが原則です。

絶飲食の期間が短期間の場合は末梢静脈より水分、糖質、電解質が補給されます。長期間に及ぶ場合は中心静脈より、十分なエネルギーとアミノ酸の補給が必要となります。

また、酵素による自己消化を防ぐ抗酵素薬、胃酸の分泌を抑制するH2受容体拮抗薬が与薬されます。激しい腹痛には、副交感神経遮断薬や麻薬などを用いて緩和します。

絶飲食により腹痛の症状が軽減すれば、徐々に経口摂取を開始します。

 

慢性膵炎にはどんな治療が行われるの?

急性再燃期には、急性膵炎と同様に膵臓の安静をはかるために絶飲食となり、輸液で管理されます。

代償期は、症状の改善に伴い、徐々に経口摂取が開始されます。経口摂取では、糖質とタンパク質を十分に摂取し、脂質の摂取量は1日30〜40gとします。また、消化酵素薬が与薬されます。

非代償期は、再燃は少なくなるため、脂質摂取量の制限は緩和され、1日40〜50gとなります。しかし消化吸収障害があるため、消化吸収のよいものを摂取し、消化酵素薬を用います。

慢性膵炎では、膵内分泌全体が荒廃しているため、インスリンだけではなくグルカゴンの分泌量も低下しています。そのため、血糖値のコントロールも必要です。

 

膵炎の看護のポイントは?

急性膵炎は、絶食の必要性を患者が理解できるように説明することや、不安や苦痛を軽減することがポイントとなります。

慢性膵炎は、再発を予防するために、定期的な受診、規則正しい生活、食事療法などの指導行います。経過が長くなるため、根気よく治療できるように援助します。

 

⇒〔病気のなぜ?〕記事一覧を見る


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

 

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

この連載

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