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2016年08月31日

糖尿病に関するQ&A

看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

今回は「糖尿病」に関するQ&Aです。

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

糖尿病ってどんな病気?

糖尿病(diabetes mellitus;DM)は、膵臓から分泌されるインスリンの分泌不全、あるいは標的組織での作用不全によって、高血糖状態になる代謝疾患です。高血糖状態が長期間続くと、様々な症状や合併症を引き起こします。

 

血糖値って何のことなの?

血糖値とは血中のグルコースブドウ糖)濃度のことです。正常な状態では、血糖値は常に70〜110mg/dLに調整されています。この調整は、インスリンとグルカゴンなどのホルモンによって行われています(図1)。

糖質を摂取すると、血糖値が上昇します。すると、膵臓ランゲルハンス島β細胞からインスリンが分泌されます。インスリンには、①肝臓や筋肉でのグルコースの利用を促進する、②グリコーゲン、脂質の合成を促進する、③糖新生を阻害するという働きがあります。その結果、血糖値を低下させます。生体では、血糖値を低下させるホルモンはインスリンのみです。

グルカゴンやアドレナリンなどは血糖値の低下を防いでいます。空腹時に血糖値が低下すると、膵臓ランゲルハンス島α細胞からグルカゴンが、副腎髄質からアドレナリンなどが分泌されます。これらのホルモンには、グリコーゲンの分解や糖新生を促進させる働きがあり、その結果、血糖値の低下を防いでいます。

図1インスリンの分泌

インスリンの分泌

(山田幸宏編著:看護のための病態ハンドブック。改訂版、p.321、医学芸術社、2007より改変)

 

高血糖って何が原因なの?

高血糖は①インスリンの分泌消失、②インスリンの分泌低下、③インスリンの作用不全の3つが原因です。

インスリン分泌の消失は、ランゲルハンス島β細胞の大部分が破壊され、インスリンが産生されなくなることが原因です。破壊の原因は、遺伝的素因やウイルス感染自己免疫の関与が考えられています。

インスリン分泌の低下は、糖の大量摂取が原因です。つまり、糖を大量摂取すると、血糖値を下げようとしてβ細胞は一生懸命にインスリンを分泌します。すると、やがてβ細胞は疲弊(ひへい)して、インスリンの分泌量が少なくなります。遺伝的素因も関係しています。

インスリンの分泌量が正常でも、肥満などがあるとインスリンの働きが悪くなり、グルコースが細胞内に取り込まれなくなります。これがインスリンの作用不全で、インスリン抵抗性といいます。

尿病は、その原因により、1型糖尿病と2型糖尿病に分類されます。

インスリン分泌の消失によって発症するのが1型糖尿病、インスリン分泌の低下やインスリンの作用不全によって発症するのが2型糖尿病です。2型糖尿病では、インスリン抵抗性が多く見られます。

 

糖尿病ではどんな症状が出現するの?

糖尿病は多尿口渇(こうかつ)、多飲、体重減少、ケトアシドーシスなどが出現します。

1型糖尿病も2型糖尿病も、出現する症状はほぼ同じですが、2型糖尿病は早期で軽症の間はほとんど症状が現れません。そのため、進行してから発見されることがよくあります。

メモケトーシス

体内にケトン体アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸)が増加する状態。進行するとケトアシドーシスになる。

 

糖尿病により多尿、口渇、多飲になるのはなぜ?

高血糖が持続すると、糸球体で糖質が多量に濾過(ろか)され、濾過液の浸透圧が上昇し、尿細管での水分とナトリウムの再吸収が抑制されます。その結果、水分とナトリウムの排泄量が著しく増えるのです。このように、浸透圧の上昇が原因で尿量が増加することを浸透圧利尿といいます。

尿量が増加すると身体は脱水状態になるため、激しい口渇を感じ、水分を多量に摂取するようになります。

 

糖尿病により体重が減少するはなぜ?

細胞がグルコースを利用できないため、筋肉のタンパク質や脂肪が分解されてエネルギー源に利用されます。そのために体重が減少します。

 

ケトアシドーシスってどういうものなの?

ケトアドーシスとは、血中にケトン体が過剰に蓄積し、血液のpHが酸性に傾いた状態のことです。エネルギー源にするために脂肪の分解が亢進し、脂肪の分解産物であるケトン体が増加することが原因です。

ケトアシドーシスの症状は、意識障害脱水症状呼吸数が減少し、深く大きな呼吸が持続するクスマウル大呼吸などです。

 

糖尿病には合併症はあるの?

糖尿病性腎症糖尿病性網膜症糖尿病性神経障害を起こします。これらは糖尿病の3大合併症です。

高血糖が長期間続くと、血管障害である大血管症と細小血管症が生じます。大血管症とは動脈硬化のことです。細小血管症は、細小血管の血管壁に肥厚(ひこう)、脆弱(ぜいじゃく)化、透過性の亢進などが現れるもので、これらが糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害の原因です。

糖尿病性網膜症を発症すると、初期には目のかすみや点状出血が起こり、さらに視野狭窄(きょうさく)、眼底出血、視力障害などが出現します。

糖尿病性神経障害を発症すると、手足の冷感やしびれなどが現れます。また、神経障害に血行障害や感染などが加わり、足に潰瘍や壊疽(えそ)を起こすことがあります。その場合、下肢切断に至ることも多く、QOLが著しく低下します。

 

糖尿病の特徴的な検査所見は?

糖尿病の特徴的な検査所見はやはり血糖値の上昇です。空腹時や食後2時間後の血糖値を測定するほか、75gOGTT(75gブドウ糖負荷試験)、HbA1Cグリコヘモグロビン)を測定します。

75gOGTTは、空腹時と、ブドウ糖75gを溶かした水を飲んでもらった30分後、1時間後、2時間後の血糖値を測定する検査で、インスリンの反応も調べます(表1)。HbA1Cは、ヘモグロビンとブドウ糖が結合したものです。赤血球の寿命から、過去1〜2か月の平均血糖値を知ることができます。

表1空腹時血糖値および75gOGTTによる糖尿病の判定基準

空腹時血糖値および75 gOGTT による糖尿病の判定基準

(日本糖尿病学会、糖尿病治療ガイドライン2014-2015)

 

メモ空腹時血糖値とHdA1c 値の基準値

・空腹時血糖値:60 〜100 mg/dL

・HbA1C(NGSP)値:4. 3〜5 . 5%

 

糖尿病にはどんな治療が行われるの?

血糖値のコントロールと合併症の予防を目的に、食事療法、運動療法、薬物療法が行われます。

2型糖尿病の場合は、まず食事療法と運動療法を行い、それでも血糖値がコントロールできない場合に薬物療法を導入することが多いです。

 

糖尿病の食事療法ってどうするの?

標準体重と生活活動の強度から、患者個々の摂取エネルギー量を求め、そのエネルギー量を超えないように、栄養素をバランスよく摂取するのが基本です(表2)。制限しなければいけない食品や栄養素はとくにありません。

3大栄養の配分は、糖質55〜60%、タンパク質15〜20%、脂質20〜25%程度が適正です。

表2糖尿病患者の食事療法

糖尿病患者の食事療法

 

糖尿病にはなぜ運動療法が必要なの?

運動療法は、食事療法とならんで重要な治療法です。なぜなら、エネルギー消費によりインスリンの節約ができます。また、エネルギー消費により肥満の予防もできますし、インスリン受容体の増加によるインスリン抵抗性の改善も期待できます。

ケトーシスを有する人、重篤な糖尿病性の網膜症や末梢神経障害を有する人、糖尿病性壊疽を起こしたことがある人、心臓血管障害を伴っている人などは慎重に運動療法を行いましょう。

 

糖尿病の薬物療法にはどんな薬が使用されるの?

糖尿病の治療に使用する薬物には、経口薬と注射薬のインスリン製剤があります。

1型糖尿病はインスリン治療が行われます。2型糖尿病は、食事療法と運動療法を行っても血糖値をコントロールできない場合に経口薬を使用し、経口薬で十分な効果が得られない場合はインスリン治療が必要となります。

経口薬には、血糖降下薬、食後過血糖改善薬、インスリン抵抗性改善薬があります。

血糖降下薬には、ランゲルハンス島β細胞のインスリン分泌を促進することで血糖値を下げるスルホニル尿素系薬や、腸管における糖の吸収阻害やインスリン作用改善などにより血糖値を下げるビグアナイド系薬(メトホルミン)があります。

食後過血糖改善薬(α-グルコシダーゼ阻害薬)は、糖質の消化酵素であるα-グルコシダーゼを阻害し、糖質の分解・吸収を抑制・遅延させることで、食後の急激な血糖上昇を抑えます。

インスリン抵抗性改善薬、チアゾリジン薬(ピオグリタゾン)は、インスリン抵抗性を改善することで、末梢組織への糖の取り込みを促進し、血糖値を下げます。

インスリン製剤には、作用の発現時間、持続時間などから、超速効型、速効型、中間型があります。正常なインスリン分泌には、常時分泌される基礎分泌と食後急激に分泌される追加分泌があります。このような分泌を考慮し、インスリン製剤の種類、回数、量が決められます。

最近、2種類の経口糖尿病薬が使用されるようになりました。DPP-4阻害薬は血糖依存症のインスリン分泌促進とカルカゴン分泌抑制作用があり、SGLT2阻害薬の腎での再吸収阻害による尿中ブドウ糖排泄促進作用があります。  

 

糖尿病の看護のポイントは?

糖尿病の治療には、食事療法と運動療法を継続することが重要です。一人ひとりの患者の生活背景を把握し、継続できるように支援することが看護のポイントになります。

血糖値の良好なコントロールは合併症の予防にもつながるため、目標を定めて行います(表3)。

インスリン療法が必要になった場合は、決められた量を決められた時間に自分で注射する必要があります。患者が正しく自己注射できるように指導しましょう。また、合併症の有無を調べるために、定期検診を勧めることも大切です。

表3血糖コントロールの指標

血糖コントロールの指標

 

メタボリック症候群

メタボリック症候群とは、運動不足やエネルギーの過剰摂取などによって内臓脂肪が蓄積し、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧が重なって起こっている病態のことをいう。原因は、内臓脂肪から分泌されるアディポサイトカインという物質の分泌異常である。 

アディポサイトカインには悪玉と善玉があります。悪玉アディポサイトカインは、炎症、動脈硬化、血栓、インスリン抵抗性、高血圧を引き起こす。一方、善玉アディポサイトカインは、インスリンの作用を高めたり、動脈硬化の進行を抑制する働きがある。内臓脂肪が過剰に蓄積すると、善玉アディポサイトカインの分泌量が減少し、高血糖、脂質異常症、高血圧を引き起こす。 

メタボリック症候群が問題とされているのは、高血糖、脂質異常症、高血圧が動脈硬化の原因になるからである。すなわち、内臓脂肪の蓄積が動脈硬化につながり、虚血性心疾患脳血管障害を起こす可能性がある。 

なお、メタボリック症候群の診断基準は、日本肥満学会、日本動脈硬化学会など8学会がまとめ、2005年4月に発表された(表4)。

表4メタボリック症候群の診断基準

メタボリック症候群の診断基準

  • CTスキャンなどで内臓脂肪量測定を行うことが望ましい。
  • ウエスト径は立位、軽呼気時、臍レベルで測定する。脂肪蓄積が著明で臍が下方に偏位している場合は、肋骨下縁と前上腸骨棘の中点の高さで測定する。
  • メタボリックシンドロームと診断された場合、糖負荷試験が薦められるが、診断に必須ではない。
  • 高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症、高血圧、糖尿病に対する薬剤治療を受けている場合は、それぞれの項目に含める。
  • 「動脈硬化疾患診療ガイドライン2007」(2007年4月、日本動脈硬化学会作成)では、高脂血症は脂質異常症と名称を変え、LDLコレステロール(140mg/dL以上)、HDLコレステロール(40mg/dL未満)、中性脂肪(150mg/dL以上)の3項目で評価することになった。そのなかでも特に、LDLコレステロール値が重要視されている。
  • 糖尿病、高コレステロール血症の存在は、メタボリック症候群の診断から除外されない。

 

⇒〔病気のなぜ?〕記事一覧を見る


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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