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  4. ECS|JCS、GCSの利点をあわせて考案された意識レベルの評価指標

2016年06月28日

ECS(エマージェンシー・コーマ・スケール)|知っておきたい臨床で使う指標[3]

臨床現場で使用することの多い指標は、ナースなら知っておきたい知識の一つ。毎回一つの指標を取り上げ、その指標が使われる場面や使うことで分かること、またその使い方について解説します。

根本 学
埼玉医科大学国際医療センター 救命救急科診療部長

 

ECS(Emergency Coma Scale)

今回紹介するECSは、日本神経救急学会と日本脳神経外科救急学会が中心になって考案された意識障害の評価指標の一つです。
意識障害の評価指標には、世界的に使用されているGCS(Glasgow Coma Scale)と日本で広く使用されているJCS(Japan Coma Scale)とがありますが、ECSはJCSにGCSの良いところを取り入れて考案されました。

〈目次〉

 


ECS(Emergency Coma Scale)

ECS(Emergency Coma Scale;エマージェンシー コーマ スケール)

 

ECSを主に使う場面と使用する診療科

ECSはGCSやJCSと同様に病院前救護(プレホスピタル)や救急初療室集中治療室など多くの場所で使用することができます。
しかし、正直なところ、まだまだ普及しているとは言えない状況です。

脳卒中病院前救護(Prehospital Stroke Llife Support;PSLS)コースや脳卒中初期診療(Immediate Stroke Life Support;ISLS)コースではOSCE(Objective Structured Clinical Examination;客観的臨床能力試験)の意識レベル評価にECSを取り入れています。

 

ECSの特徴

ECSの特徴は自発的な開眼・発語または覚醒しているといえる動作(合目的な動作)のなかでどれか一つを観察できるかで意識レベルを評価するため、GCSよりも容易で、JCSのような評価者によるばらつきが生じることはありません。

 

ECSの使い方

意識状態を大きくⅠ桁:「覚醒している」、Ⅱ桁:「覚醒できる」、Ⅲ桁:「覚醒しない」の3つに分け、それぞれについて細かな観察を行うことで評価します。
ここまではJCSと大きな違いはありませんが、ECSではさらに、覚醒しているのであれば発語は正しくできるのか覚醒できるのであればどのような刺激で覚醒できるのか覚醒しないのであれば刺激に対してどのような反応をするのか、について確認していきます。

 

ECSを実際に使ってみよう

症例1

24歳の男性。交通事故で搬送されてきた。
呼びかけで開眼せず、大きな声で呼びかけながら痛み刺激を加えると、かすかに開眼するがすぐに目を閉じてしまう。
「う~、う~」と唸っているだけで会話は成立せず、痛み刺激部位を払いのける動作が見られた。
ECSを使って意識レベルを評価してください。

答え:ECS 20(JCSでは30、GCSではE3 V2 M5)

呼びかけで開眼しないことから、覚醒していない状態、すなわち自発開眼はないと判断できるのでⅡ桁。
次に呼びかけでは開眼せず、大きな声で呼びかけながら痛み刺激でかすかに開眼することから20と判断する。

→ECSを確認

 

症例2

56歳の女性。いつもと様子が違うのに家族が気付き自家用車で救急外来を受診した。
自発開眼はしており、自分の名前は言えるが生年月日や日時、場所は答えられない。離握手など簡単な命令にはかろうじて応じることができる。
ECSを使って意識レベルを評価してください。

答え:ECS 2(JCSでは3、GCSではE4 V4 M6)

自発開眼していることからⅠ桁。日時や場所が言えない、すなわち見当識障害があるため2と判断する。

→ECSを確認

 

症例3

78歳の男性。高血圧性脳出血の診断で気管挿管され集中治療室に入院となった。
日勤者からの申し送りで意識レベルはECS 10であったが、午後10時過ぎに意識レベルを評価したところECS 200Fであったためすぐに当直医師に連絡した。
このときの患者の状態は?

答え

ECSが200であることからⅢ桁、つまり刺激しても覚醒しない状態で「F」と判断されていることから、痛み刺激で脇を閉めて屈曲する運動が見られる、すなわち除皮質姿勢を示している状態。JCSでは200、GCSではE1 V1 M3。

→ECSを確認

 

さらにプラスαJCS、GCS、ECSの使い分け

JCS、GCS、ECSと意識レベルを評価するのに評価指標が3つもあるとどれを使えばいいのか迷いますね。
実際、多くの場面では、救急隊はJCS、救急医はGCSで評価していると思います。また、集中治療室ではGCSで、一般病棟ではJCSでということもあるでしょう。

 

3つの評価指標にはそれぞれ利点・欠点があるので、どれが一番良い指標かは決めることはできません。
どれを使用しても大きな違いはないので、まずは自分が一番使いやすいと感じる指標から初めてよいと思います。そして慣れてきたらほかの2つの指標でも評価するとよいでしょう。

 

ただし、英語の論文を書くのであれば、世界標準であるGCSは外せないことを覚えておきましょう。

 

 

 


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  • 1.患者に朝と夜に体重測定を行ってもらい、1日で摂取できる水分量を伝え、それをうまく配分、コントロールできるよう看護師が教育的な援助を行う。
  • 2.水に集中している意識がほかのものに向くよう、作業療法やレクリエーションなどを導入し、気分転換を図るよう援助する。
  • 3.コップを看護師が管理し、飲水量を厳しくチェックする。それでも飲水が止まらず体重がプラス5kgになれば、保護室で隔離を行い、水分摂取を強制的に制限する。
  • 4.Aさんは、昼食後の体重が基礎体重よりプラス5%を超えており、意識障害も疑われるため、血液検査を考慮する。
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