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2016年08月15日

術前の呼吸訓練は必死に行わないとだめ?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。

今回は「術前の呼吸訓練」に関するQ&Aです。

術前の呼吸訓練は必死に行わないとだめ?

術前呼吸訓練は必要ですが、やりすぎはかえって逆効果です。

〈目次〉

 

呼吸筋の疲労が合併症につながる恐れも

術前の呼吸訓練は、疲れが出ない程度に行うことはもちろん必要です。術前の呼吸訓練が術後呼吸器合併症の減少のために重要であることは、言うまでもありません。

しかし、手術直前まで必死に呼吸訓練を行うことで、逆に呼吸筋の疲労を招く可能性があります。特にCOPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)患者の場合は、もともと呼吸筋に負担がかかっており、不適切なリハビリにより筋疲労増悪や筋疲労回復遅延が起こる可能性があるため、過度の訓練は注意が必要です。

 

呼吸訓練のメリット・デメリット

術前呼吸訓練によって、肺炎や呼吸不全などの術後呼吸器合併症が減少し、また在院日数も減少したという論文がいくつか報告されています(文献1,2)。ただ、具体的にどの程度行うとよいのかという基準(術前の訓練期間、1日当たりの訓練時間や回数など)については、依然として結論が出ていないのが現状です。

胸腹部手術(特に胸部手術)においては、横隔膜・呼吸筋への手術侵襲が加わるうえに、麻酔・人工呼吸器の使用によって、術後無気肺を生じやすくなります。無気肺は、肺炎や呼吸不全の誘因になるといわれているので、呼吸筋が疲労していると、肺胞虚脱から無気肺を起こす危険性が高まり、その結果として術後呼吸器合併症の発生につながることが考えられます。

これらをデータで示した論文はありませんが、呼吸訓練のやりすぎがかえって悪影響を及ぼす可能性があることは、覚えておいたほうがよいでしょう。

 

どんな方法で呼吸訓練を行うか?

実際の訓練方法は、①呼吸訓練器による呼吸訓練、②腹式呼吸と深呼吸、③痰の排出、などの練習を、1日3回・1回20~30分間行う施設が多いようです(図1)。

図1呼吸訓練の例

呼吸訓練の例

呼吸筋の疲労が合併症を招くことを念頭に、患者に合わせて回数・時間を決定する。

 

術前呼吸器合併症の有無や、年齢などに応じて、疲れない程度の回数・時間を設定し、訓練期間としては、手術前日まで1週間程度続けることが大切です。

 

呼吸訓練にはエビデンスがないのですか?

決定的なエビデンスはありません。
しかし、有効とする報告も多く、術後肺合併症のハイリスク患者においてはリスクを半分に低下させるという報告もあるため、特に高齢者や呼吸機能低下が見られる場合には呼吸訓練をしたほうがよいでしょう。

 


[文献]


[Profile]
吉井真美
大阪市立総合医療センター消化器外科


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

[出典]『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(編著)西口幸雄/2014年5月刊行

術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100

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50代の女性。呼吸回数24回/分。血圧80/40mmHg。脈拍120回/分。
橈骨動脈微弱で末梢冷感あり。声かけに容易に反応あり。『お腹が痛い』と話している。
右上腹部打撲痕および、右腹部圧痛あり。

  • 1.生理学的評価では循環に異常があるため、カテゴリーは赤。解剖学的評価は腹部圧痛、右上腹部打撲痕があることから、カテゴリーは赤となる。
  • 2.意識レベルは低下していないため、生理学的評価ではカテゴリーは黄。解剖学的評価は、右上腹部に打撲痕があるため、カテゴリーは黄となる。
  • 3.橈骨動脈微弱のため、生理学的評価ではカテゴリーは赤。解剖学的評価は、右上腹部打撲痕があることから、カテゴリーは黄となる。
  • 4.呼吸回数24回/分、意識レベル清明で生理学的評価は黄色のため、最終的な優先順位のカテゴリーは黄となる。
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