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2016年09月04日

動悸に関するQ&A

症状に関するQ&A

『看護のための症状Q&Aガイドブック』より転載。

今回は「動悸」に関するQ&Aです。

動悸を感じる患者からの訴え

  • 心臓がドキドキします」
  • 「胸に違和感があります」

〈目次〉

 

動悸って何ですか?

緊張のあまりドキドキした、激しい運動をした後に心臓の鼓動が激しくなった・・・。こんな経験は、誰にでもあると思います。しかし大抵、しばらく休めば落ち着きます。

これに対して動悸(どうき)とは、何も特別なことがないのに、「心臓がドキドキする」「心臓が脈打つ」「胸に違和感がある」と感じる症状をいいます。

つまり、いつもは意識することのない心臓の拍動に違和感をおぼえたり、不快感として自覚したりする症状が動悸です。

 

動悸の原因は何ですか?

動悸の多くは、心臓の拍動の異常によるものです。心臓は規則正しく収縮を繰り返していますが、心拍数が急に速くなったり、遅くなったりするなど、心臓のリズムが乱れた時、または心臓の収縮力が強まった時に、動悸として感じられます。

心拍の異常を引き起こす原因としては、貧血や肺の疾患による酸素不足、バセドウ病更年期障害などによるホルモンバランスや自律神経系の乱れがあげられます。

また、身体的な異常はないのに、不安神経症やうつ病などの精神的な要因から、動悸が起こることもあります。

〈動悸に関連する症状〉

〈動悸に関連する症状〉

 

心臓の動きと動悸との関係は?

はじめに心臓が血液を送り出す仕組みを復習しましょう。

心臓は、収縮によって内部の血液を押し出し、拡張して血液を溜め、また収縮することによって溜まった血液を押し出すという、ポンプの働きをしています。このように収縮と拡張を規則正しく繰り返すことにより、血液が身体の隅々にまで行きわたります。

図1心臓の動きと動悸との関係

心臓の動きと動悸との関係

この心臓の規則正しい動きを生み出すのは、心臓自らが出す電気的刺激です。発生した電気的刺激は、決められた通り道を伝わり、心臓全体に伝えられます。その通り道のことを刺激伝導系といいます。

洞結節(どうけっせつ)で発生した電気的刺激は、結節間伝導路→房室結節→ヒス束(そく)→左脚(さきゃく)、右脚(うきゃく)→プルキンエ線維を通り、心室に伝えられます。刺激伝導系が正しく働くことにより、心臓は収縮するべき時に収縮して血液を送り出し、拡張するべき時に拡張して血液を溜めることができるのです。

ところが、何らかの原因によって電気的刺激がスムーズに伝わらないと、心拍数が増減したり、規則正しい心臓のリズムが乱れたりして、動悸を自覚するのです。この刺激伝導系の異常による心臓のリズムの異常が、不整脈です。

用語解説刺激伝導系

心筋細胞の間では、ネクサスと呼ばれる特殊な構造により、1か所で生じた興奮が瞬時に隣り合う心筋細胞に伝えられ、多くの心筋細胞があたかも1つの細胞のように収縮します。

でも、心臓全体が一気に興奮してしまったら、ポンプ機能をうまく果たせないですよね。実際には、心房と心室の心筋は結合組織で境界されていて心筋細胞同士の連絡はないため、心房の心筋細胞の興奮が直接心室に伝わることはありません。刺激伝導系だけが、心房と心室の興奮を伝達することができます。

刺激伝導系は、直径30〜60μmの特殊な太い心筋線維(普通の心筋線維は直径15μm以下)です。洞結節で生じた興奮が、この線維を通じて順序よく、心房、心室と伝えられていくことが、心臓の規則正しい収縮を可能にしています。

 

心拍数が増減すると動悸をおぼえるのはどうして?

心拍数とは、1分間の心臓の収縮数のことです。

心拍数は通常、脈拍をとってカウントします。安静時の脈拍数は、成人では1分間に60〜70回です。脈拍が増えても減っても、動悸として自覚されます。

脈拍数50回/分以下の徐脈の状態になると、心臓は全身への酸素供給量を維持するために、1回の収縮でたくさんの血液を送り出そうとして、収縮力を強めます。すると、心臓の拍動を強く感じ、動悸を自覚するのです。

一方、脈拍数100回/分以上の頻脈になると、心拍数が増えるため、心臓の拍動に違和感をおぼえ、動悸が起こります。

徐脈を起こす不整脈としては、洞結節での電気的刺激の発生が障害される洞不全、電気的刺激が心房から心室にうまく伝わらない房室ブロック、頻脈になる不整脈としては、洞結節での電気的刺激の発生が増加する洞性頻脈、心房が無秩序に収縮する心房細動などがあげられます。

 

心臓のリズムが乱れる疾患ってどんなものがあるの?

心臓のリズムが乱れる疾患として、代表的なものに、期外収縮や心房細動などの不整脈があげられます。

図2期外収縮と心房細動

期外収縮と心房細動

期外収縮とは、心臓の洞結節とは別の場所から、やや早いタイミングで心臓に電気が流れる現象です。また、心房細動は、心房が無秩序に興奮し、細かく震えるように収縮している状態です。

いずれの場合も、心臓のリズム(調律)が乱れ、動悸をおぼえます。

 

心臓の収縮力が変化する疾患ってどんなものがあるの?

心臓内に貯留する血液の量が増加すると、これを押し出すためにより強い力で収縮しなければならなくなります。この収縮力の増加が、動悸として感じられます。

心臓内に貯留する血液の量に変化をきたす疾患の代表例は、弁の機能異常である弁膜症です。

例えば、左心房と左心室の間にある僧そうぼう帽弁が、癒着によって拡張期に十分に開かなくなる、僧帽弁狭窄症という疾患があります。

僧帽弁狭窄症では、拡張期に左心房から左心室への血流が妨げられます。その結果、左心房に血液が残ります。収縮期には、肺から流れ込む血液がこれに加わり、左心房には通常に比べ、より多くの血液が溜まってしまうことになります。左心房は溜まった血液を押し出そうと収縮を強めるため、それを動悸として自覚するのです。

図3

弁膜症にはほかに、僧帽弁が完全に閉じなくなる僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁がうまく開かない大動脈弁狭窄症、大動脈弁が完全に閉じなくなる大動脈弁閉鎖不全症などがあります。それぞれ、心臓のどの部分の血液が、どのくらい増加するかが異なっています。

また、心奇形がある場合も、動悸の症状が現れます。右心室と左心室の間の壁である心室中隔に孔が空いている、心室中隔欠損という心奇形では、圧の高い左心室から右心室に、孔を通って血液が流れ込みます。そのため、右心室の拍出量が増え、動悸が起こります。

また、高血圧では、高い血圧に抵抗して全身に血液を送り出すことになります。このため、左心室は収縮力を高める必要があり、これが動悸を引き起こすことがあります。

 

心臓の疾患以外の動悸の原因は?

貧血では、血液に含まれる酸素の量が減少します。そのため、心拍数を増加させることによって酸素不足を補おうとし、その結果、頻脈になります。

バセドウ病では、交感神経の刺激を介して心機能が促進され、また亢進した基礎代謝に必要な酸素や栄養を供給するために心拍数が増加し、頻脈が起きます。

発熱時の心拍数の増加も、熱を産生するために代謝が亢進することによるものです。

 

動悸の観察のポイントは?

動悸は自覚症状であり、その原因は様々です。必ず脈をとり、脈拍数、脈のリズムや強さに変化はないかを観察します。

また、原因を探り、必要な治療につなげるために、次のことをチェックしましょう。

  • 動悸はいつ、どのように始まり、どのように終わるのか。
  • 動悸はどのくらい続くのか。たびたび繰り返すのか。
  • 動悸のほかに症状はあるか(例えば、貧血が疑われる時は、口唇の色や、手指が冷たくないかを確認します。バセドウ病が疑われる時には、眼球の突出や甲状腺の腫れがないかをみます)。
  • 心疾患などの既往歴や、動悸を起こすような薬を服用していないか。
  • 精神的なストレスがあるか。過度の飲酒やアルコール、カフェイン摂取はないか。

脈拍に異常があったり、心臓の病気が疑われる時は、原因疾患の診断のために心電図をとったり、心エコーなどの画像検査が行われます。

 

動悸のケアは?

心臓は命にかかわる部分であるだけに、動悸を感じた患者は不安な気持ちになりがちです。すると、ますます動悸が激しくなるという悪循環に陥りかねません。

このため、患者がリラックスできる環境のもとで、その訴えに耳を傾け、不安を取り除くことが大切です。

また、動悸がなぜ起こっているのかをわかりやすく説明することも、患者に安心感を与えます。体位の工夫が効果的な場合もあります。

COLUMN自動体外式除細動器(AED)

最近、駅の構内や学校内などで図4のような表示を見かけたことはありませんか。自動体外式除細動器(AED)とは、心臓に電気ショックを与えることにより、重篤な不整脈である心室細動を文字通り取り除く装置です。

心室細動によって心臓のポンプ機能が障害されると、全身の循環障害が起こり助かるチャンスは1分経過するごとに約10%ずつ失われ、10分後にはほとんどの人が死に至ります。

従って心室細動が起きたら、一刻も早く除細動を行う必要があります。このため、一般市民でも、AEDを使うことができます。まず、心電図をとって除細動が必要かどうかの判断を行い、除細動を含めた救命行為が簡単にできるように設計されています。ぜひ、講習を受けて、いざという時に使えるようにしておきましょう。

図4

 

⇒〔症状に関するQ&A一覧〕を見る


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『看護のための 症状Q&Aガイドブック』 (監修)岡田忍/2016年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

この連載

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