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2016年08月10日

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)に関するQ&A

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

今回は「炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)」に関するQ&Aです。

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

炎症性腸疾患ってどんな病気?

炎症性腸疾患は、再燃と寛解を繰り返す難治性の腸疾患です。潰瘍性大腸炎クローン病が代表的です。

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜をびまん性に(全体的に)侵し、びらんや潰瘍を形成します(図1)。病変は直腸から口側に向って連続して広がっていきます。病変は粘膜に局限していますが、長期経過例では悪性化することがあります。

潰瘍性大腸炎の病変部位は大腸に局限しますが、クローン病は、浮腫(ふしゅ)や線維化、縦走潰瘍(かいよう)、肉芽(にくげ)腫性病変が、口腔から肛門まで、消化管のどの部位にも発生します(図2)。また、潰瘍性大腸炎では粘膜のみが侵されますが、クローン病では全層が侵されます。腸管狭窄・閉塞を起こすこともあります。潰瘍性大腸炎とは異なり、悪性化する確率は低いです。

memo1クローン病の名の由来

1932年、ニューヨークのマウントサイナイ病院の内科医クローンによって初めて報告されたことから、クローン病と名付けられた。

表1潰瘍性大腸炎の病変

  潰瘍性大腸炎 クローン病
病変部位 大腸のみを侵す 口腔から肛門まで全腸管を侵す
最多症状 粘血便 腹痛、粘血便のない下痢、発熱
悪化性 高い 低い

(武田英二監:栄養学。新クイックマスター、p.163、医学芸術社、2007より改変)

図1潰瘍性大腸炎の病変

潰瘍性大腸炎の病変

(山田幸宏編著:看護のための病態ハンドブック。改訂版、p.226、医学芸術社、2007より改変)

 

図2クローン病の病変

クローン病の病変

(山田幸宏編著:看護のための病態ハンドブック。改訂版、p.229、医学芸術社、2007より改変)

 

潰瘍性大腸炎とクローン病は何が原因なの?

潰瘍性大腸炎とクローン病はいずれも、免疫異常、遺伝、アレルギー、感染などが関与しています。潰瘍性大腸炎は、自己免疫性疾患と考えられています。

潰瘍性大腸炎は、20〜40歳代に好発します。クローン病はそれよりも若い10歳代後半から20歳代に好発し、女性より男性に多く発生します。どちらの患者も増加傾向にあり、食生活の欧米化が関連していると考えられています。

memo2病変分布
潰瘍性大腸炎
  • 全大腸炎型:15%
  • 左側大腸炎型:40%
  • 直腸炎型:45%
  • 右側または区域性の大腸炎型:まれ
クローン病
  • 小腸型:30%
  • 小腸大腸型:40%
  • 大腸型:30%

 

潰瘍性大腸炎はどんな症状が出現するの?

潰瘍性大腸炎のおもな症状は、下痢、粘血便、血便です。また、食欲不振、体重減少、腹痛などが生じたり、重症例では、発熱、頻脈貧血などの全身症状が出現することがあります。

大腸では水分と電解質が吸収されますが、潰瘍性大腸炎ではびらんや潰瘍が形成されているために吸収力が低下し、下痢になります。

潰瘍性大腸炎は、下痢の回数などによって重症度が分類されています(表2)。

表2潰瘍性大腸炎の重症度分類(厚生労働省2015)

症 状 重 症 中等度 軽 症
①下痢 6回以上 重症と軽症との中間 4回以下
②顕血便 +++ +~-
③発熱 37.5℃以上
④頻脈 90/分以上
⑤貧血 Hb 10g/dL以下
赤沈 30mm(1時間値)以上 正常
・軽症③~⑤の「-」とは、37.5℃以上の発熱がない、90/分以上の頻脈 がない、Hb10g/dL以下の貧血がないという意味である
・重症とは、①および②のほかに、全身症状である③または④のいずれか を満たし、かつ6項目のうち4項目を満たすものとする
・軽症は6項目すべてを満たすものとする
・上記の重症と軽症の中間に当たるものを中等度とする

 

 

クローン病はどんな症状が出現するの?

クローン病の症状は腹痛、下痢、発熱、体重減少が出現します。

また、小腸から栄養素が吸収されないためと、病変部からタンパク質が漏洩するため、栄養障害が高頻度に認められます。腸閉塞を起こすことも多く、その場合は悪心・嘔吐が現れます。痔瘻(じろう)や肛門周囲膿瘍を合併することも、クローン病の特徴です。関節炎虹彩炎、結節性紅斑(こうはん)、胆石などを合併することがあります。

memo3結節性紅斑

皮下結節を伴う紅斑性の皮膚病変で、圧痛がある。下腿に多く見られる。

 

小腸や大腸の粘膜の状態はどのように調べるの?

小腸の粘膜の状態は、小腸内視鏡検査で調べます。これは、口あるいは肛門から内視鏡を挿入し、小腸粘膜の状態を直接観察する検査です。小腸は口からも肛門からも遠く、約6mもの長さがあるため、タブルバルーン内視鏡を用いて行う検査です。また、最近はカプセル内視鏡検査が行われています。

大腸の粘膜の状態は、大腸内視鏡検査や注腸造影検査で調べます。大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸粘膜の状態を直接観察する検査です。注腸造影検査は、造影剤(硫酸バリウム)を用いたX線検査です。炎症性腸疾患の診断に欠かせない、腸管の変形や潰瘍の形状を広い視野で確認することができます。また、クローン病に特徴的な裂溝も容易にわかります。

 

潰瘍性大腸炎はどんな治療が行われるの?

潰瘍性大腸炎の治療は薬物療法と食事療法(栄養療法)による保存的治療が基本です。大出血や穿孔を起こした場合や、中毒性巨大結腸症、また再燃を繰り返す場合は手術が必要となります。寛解を得て、寛解を維持することが治療の目標になります。

 

潰瘍性大腸炎の薬物療法にはどんな薬が使われるの?

潰瘍性大腸炎の薬物療法では炎症を抑えることを目的に、副腎皮質ステロイド薬、サラゾスルファピリジン(サラゾピリン®)、メサラジン(ペンタサ®、アサコール®免疫抑制薬などが用いられます。

副腎皮質ステロイド薬は、炎症を抑える作用は強いですが、再燃を予防する効果はありません。サラゾスルファピリジンは炎症を抑えるほか、再燃予防の効果も認められています。最近、免疫抑制剤としてタクロリムス(プログラフ®)、アザチオプリン(イムラン®)、メルカプトプリン(ロイケリン®)、シクロスポリン(ネオラール®、サンディミュン®)、分子標的治療薬としてインフリキシマブ(レミケード®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)などが使用されています。免疫抑制薬は難治性の場合に使用されます。

memo4中毒性巨大結腸症

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)に伴って、結腸が異常に拡張する重篤な病態である。

 

潰瘍性大腸炎の食事療法ってどうするの?

潰瘍性大腸炎の食事療法では重症例や活動期は絶食し、中心静脈栄養法を施行して高エネルギーを補給し、腸管の安静をはかります。

回復期は、脂質の過剰摂取を控え、高タンパク質・高エネルギー・低残渣食を基本とします。脂質を控えるのは、下痢を抑えるためです。

タンパク源は残渣の多い獣肉より、残渣の少ない魚肉が適しています。また、低残渣にするために、食物繊維の多い食品(海草類、ごぼう、たけのこなど)は避けます。

 

潰瘍性大腸炎の手術ってどうするの?

従来の潰瘍性大腸炎の手術は、ストーマを造設する直腸結腸全摘手術や、永久回腸瘻造設術が主流でした。現在では、回腸によって作った袋と肛門を吻合する回腸嚢肛門管吻合(ふんごう)術が主流になっています。

 

クローン病はどんな治療が行われるの?

クローン病のおもな治療法は栄養療法・食事療法です。また、サラゾスルファピリジン、メサラジン(ペンタサ®、アサコール®)、抗TNFの抗体〔インフリキシマブ(レミケード®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)〕などの薬物療法があります。腸閉塞や穿孔(せんこう)による腹膜炎を合併した場合は手術が必要になります。

 

クローン病の栄養療法、食事療法ってどうするの?

クローン病の栄養療法、食事療法は活動期に絶食し、成分栄養剤を用いた経腸栄養法が第一選択されます(表3表4表5)。成分栄養剤は、30〜40kcal/kgの補給が推奨されています。

成分栄養剤の脂肪の含有量はきわめて少ないために、必須脂肪酸欠乏症を予防するために、経静脈的に脂肪乳剤が補給されます。①下痢や出血が著しい場合、②肛門病変が著しく、排便が好ましくない場合、③栄養障害が著しい場合、などは中心静脈栄養法が施行されます。

寛解維持期は、25〜30kcal/kgの成分栄養剤を用いた経腸栄養法と、食事療法を組み合わせて施行されます。食事は、20〜30g/日以下の低脂肪食かつ低残渣食にします。また、病状の悪化につながる食品は摂取しないようにします(表3表4表5)。

memo5成分栄養剤

経腸栄養剤には、①自然食品・流動食、②半消化態栄養剤、③消化態栄養剤、④成分栄養剤の4種類がある。このなかで、栄養素が最も消化された状態で配合されているのが、成分栄養剤である。成分栄養剤では、糖質はデキストリン、タンパク質は結晶アミノ酸にまで分解(消化)されている。また、脂肪の含有量が最も少ない。

表3経腸栄養療法で用いられる成分栄養剤

  成分栄養剤
特徴 成分のほとんどを終末消化態にまで分解し、 吸収しやすくした栄養剤
商品名 エレンタール エレンタールP
タンパク質の原料 結晶アミノ酸 結晶アミノ酸
脂肪含有量 0.17 0.9
エネルギー/缶 300kcal(300mL中) 156kcal(156mL中)

表4経腸栄養療法で用いられる消化態栄養剤

  消化態栄養剤(ペプチド栄養剤)
特徴 タンパク源をジペプチドないしトリペプチドとして 含む栄養剤
タンパク質の原料 エンテルード ツインライン
商品名 タンパク水解物 乳タンパク加水分解物
脂肪含有量 1.25 2.8
エネルギー/缶 400kcal(400mL中) 400kcal(400mL中)

表5経腸栄養療法で用いられる半消化態栄養剤

  半消化態栄養剤
特徴 部分的に管腔内消化を受けた形で含む栄養剤。 脂肪含有量が多く、味覚や香りはよい
商品名 エンシュアリキッド クリニミール
タンパク質の原料 大豆タンパクカゼイン 乳カゼイン大豆タンパク
脂肪含有量 3.5 3.1
エネルギー/缶 250kcal(250mL中) 400kcal(400mL中)
商品名 べスピオン ハーモニックM
タンパク質の原料 カゼイン全粉乳 植物性タンパク、乳タンパク
脂肪含有量 3.4 3.0
エネルギー/缶 400kcal(400mL中) 250kcal(250mL中)

 

表6クローン病患者が避けたほうがよい食品

主食 玄米、中華そば、クロワッサン、揚げパン、ライ麦パン
副食 (主菜) 油揚げ、生揚げ、いか、たこ、カキ以外の貝類、佃煮、塩干物、油漬け缶詰、 牛肉、豚肉、ハム、ソーセージ、ベーコン、牛乳、生クリーム、アイスクリーム
副食 (副菜) 大豆、小豆、うずら豆の煮豆、ピーナッツ、カシューナッツ、アーモンド、 さつまいも、こんにゃく、ごぼう、れんこん、たけのこ、ふき、山菜、 セロリ、みょうが、もやし、うど、切り干し大根、とうもろこし、柿、 パイナップル、いちご、なし、キウイフルーツ、酸味の強い柑橘類、ひじき、 こんぶ、きのこ全般、ヘッド、ラード、揚げ物、バター
その他 洋菓子全般、スナック菓子、クッキー、チョコレート、つぶあん、豆菓子、 おかき、いり豆、アルコール、炭酸飲料、コーヒー、ココア、香辛料、 マヨネーズ、ドレッシング

(武田英二:臨床病態栄養学、p163、文光堂、2004より)

 

クローン病の薬物療法にはどんな薬が使用されるの?

クローン病の薬物療法は潰瘍性大腸炎と同様に、副腎皮質ステロイド薬やサラゾスルファピリジン、免疫抑制薬が用いられます。

現在、高い活動性が続く場合や、瘻孔(ろうこう)を合併した場合に効果がある抗TNFα抗体であるインフリキシマブ(レミケード®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)、セルトリズマブ(シムジア®)などが使用可能になり、抗体療法が行われています。

 

潰瘍性大腸炎とクローン病の看護のポイントは?

潰瘍性大腸炎とクローン病には、さまざまな治療があります。診断が確定されたとき、治療を開始したときなど、段階に応じた精神的ケアが大切です。

栄養療法や薬物療法への援助も必要です。病態に応じて、経腸栄養法や経静脈栄養法などの栄養療法や、薬物療法が実施されます。病状を把握したうえで、指示された療法を確実に実施できるように援助しましょう。

 

⇒〔病気のなぜ?〕記事一覧を見る


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

 

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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