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2016年08月03日

胃潰瘍・十二指腸潰瘍に関するQ&A

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

今回は「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」に関するQ&Aです。

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

胃潰瘍・十二指腸潰瘍ってどんな病気?

胃潰瘍十二指腸潰瘍や十二指腸の粘膜に潰瘍が形成された病態です(図1)。潰瘍とは、粘膜筋板を超えた組織欠損です。なお、粘膜層にとどまる欠損は、通常はびらんといいます。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍は自然治癒することがある一方、再燃を繰り返し、慢性的に経過することがよくあります。

図1胃潰瘍・十二指腸潰瘍の分類因

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の分類因

(山田幸宏編著:看護のための病態ハンドブック。改訂版、p.203、医学芸術社、2007より改変)

 

胃潰瘍・十二指腸潰瘍って何が原因なの?

胃潰瘍・十二指腸潰瘍が生じる原因は、粘膜を攻撃する因子と防御する因子のバランスが崩れ、粘膜組織が自己消化されることです。また、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が、潰瘍を発症するおもな原因であることが明確になってきています。

 

胃潰瘍・十二指腸潰瘍における攻撃因子と防御因子ってどんなものなの?

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の攻撃因子は塩酸やペプシン、防御因子は粘液です(図2)。胃酸はpH1.5〜2.0と強い酸性で、食物の繊維質を軟らかくするとともに、食物が体内で腐敗や発酵を起こさないように殺菌の役割を果たしています。

ペプシンは、ペプシノゲンが胃酸の作用によって変換した消化酵素で、タンパク質を分解しています。一方、粘液はアルカリ性で、塩酸やペプシンによって粘膜が自己消化されるのを防いでいます。

正常な状態では、攻撃因子と防御因子はバランスがとれています。ところが、塩酸やペプシンの分泌量が多くなったり、粘液の分泌量が少なくなると、粘膜が自己消化され、潰瘍が形成されます。

攻撃因子と防御因子のバランスの破綻には、ストレス、不眠、暴飲暴食、薬物などが関与しています。

胃潰瘍では塩酸の分泌は正常な場合が多く、防御因子が減弱しています。逆に十二指腸潰瘍では塩酸の分泌が亢進している場合が多く、攻撃因子が増強しています。

図2胃潰瘍・十二指腸潰瘍の攻撃因子と防御因子

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の攻撃因子と防御因子

(梅田佳子、岡記規子、安高深雪監:消化器系食物の胃への運搬と、貯蔵・粥状化。実習に生かすアセスメントのコツ、ナーシングカレッジ、11(4):69、2007より改変)

memo1胃液の分泌

塩酸、ペプシノゲン、粘液は、胃液の中に含まれている。胃液の分泌は、食物を食べる前から始まっている。食物を見たり臭いを嗅いだりすると、それが大脳に伝わって副交感神経が刺激され、胃粘膜の胃腺から反射的に分泌される。食物が胃に入ってくると、胃腺を刺激するガストリンという消化管ホルモンが分泌され、さらに胃液の分泌が促進される。

 

ピロリ菌ってどんなものなの?

ピロリ菌は1983年に発見されたグラム陰性桿菌です。ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は胃粘膜表層の細胞間隙に存在しています。ウレアーゼという尿素分解酵素を産生し、細胞間隙から分泌される胃液の尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解し、塩酸を中和して胃内に定着します。尿素から分解されたアンモニアなどが、粘膜を障害します。

 

ピロリ菌の感染はどうやって調べるの?

ピロリ菌の感染は尿素呼気試験で調べます。これは、患者に試験薬(同位元素の13Cで標識した尿素)を飲んでもらい、その後、呼気中の13Cで標識した二酸化炭素濃度を測定する非侵襲的な検査です。ピロリ菌に感染している場合は、ピロリ菌由来のウレアーゼにより尿素から分解された13Cで標識した二酸化炭素が血中に移動し、肺から呼気中に排泄されるため、呼気中の13Cで標識した二酸化炭素濃度が高くなります。

 

潰瘍の状態はどうやって調べるの?

潰瘍の状態は上部消化管造影検査や上部消化管内視鏡検査を行って調べます。上部消化管造影検査は、患者にバリウムを飲んでもらい、X線透視下で潰瘍の有無や程度を観察する検査です(図3)。 上部消化管内視鏡検査は、口腔腔から内視鏡を挿入し、先端に付いている超小型カメラで、上部消化管の様子を直接モニタ画面に映し出して観察する検査です。内視鏡検査のほうが、より詳細に観察でき、また組織を採取できるため、生検(バイオプシー)を行うことも可能です。

 

図3胃潰瘍に見られるX線ニッシェ像

胃潰瘍に見られるX 線ニッシェ像

memo2生検(バイオプシー)

確定診断や、疾病の予後・経過を判定するために、組織や臓器の一部を採取し、病理組織学的に検査することをいう。

 

胃潰瘍・十二指腸潰瘍はどんな症状が出現するの?

胃潰瘍・十二指腸潰瘍によく見られる症状は心窩部痛です。胃潰瘍では食後、十二指腸潰瘍では空腹時や夜間に現れることが特徴です。また、十二指腸潰瘍では、食物の摂取によって痛みが軽減することが多いです。その他、食欲不振、悪心、胸やけ、胃部の不快感などが現れます。

潰瘍が深かったり、血管の上に形成されていると出血し、吐血・下血が起こります。出血があると、貧血になっていることがあります(表1)。

表1出血部位による吐血と下血

疾患 上部胃腸管(消化管) 下部胃腸管(消化管)
食道静脈瘤 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 潰瘍性大腸炎
吐血 赤色 コーヒー残渣様 コーヒー残渣様 吐血は起こらない
下血 タール便(黒) タール便(黒) タール便(黒) 鮮血まじりの下痢や粘血便
特徴 静脈瘤の破綻により大量に出血する ヘモグロビンが胃酸によって酸化されるため、吐血はコーヒー残渣様になる 血便以外の症状に乏しい

(山田幸宏編著:看護のための病態ハンドブック。改訂版、p.205、医学芸術社、2007より改変)

memo3吐血と喀血

血は、胃腸管(消化管)からの出血が口や鼻から吐き出されることをいう。喀血は、呼吸器からの出血が口や鼻から吐き出されることである。きちんと区別する必要がある。

 

胃潰瘍・十二指腸潰瘍にはどんな治療が行われるの?

ピロリ菌感染の場合は、ピロリ菌の除菌を行います。また、安静、食事療法も必要となります。安静というのは意外かもしれませんが、潰瘍の形成には、精神的・身体的なストレスが関与しているため、心身を安静に保つことが原則です。

 

出血や穿孔があり、内科的治療では治癒しない場合は、手術の適応となります。最近では、内視鏡下で行われることも多いです。

 

 

胃潰瘍・十二指腸潰瘍における食事療法ってどうするの?

出血がない場合は、特別制限はありません。消化がよく、胃酸の分泌を刺激しない食品を摂取します。また、潰瘍の治癒促進のために、良質なタンパク質を含む高エネルギー食とします。長時間空腹にならないように、3食を規則正しく食べたり、1回の食事量を少なくし、回数を増やすのもよい食事方法です。胃粘膜を刺激するアルコールやコーヒー、炭酸飲料、香辛料、タバコなどは控えます。

出血がある場合は、絶食にして輸液を行うことがあります。出血が治まれば、流動食から開始し、三分粥、五分粥とすすめ、徐々に普通食に移行します。

 

胃潰瘍・十二指腸潰瘍における薬物療法にはどんな薬が使用されるの?

ピロリ菌に対しては、抗菌薬のアモキシシリンとクラリスロマイシン、およびプロトンポンプ阻害薬を併用する3剤併用療法が行われます。プロトンポンプ阻害薬が胃内pHを上昇させることにより、抗菌薬の活性が高まります。

また、攻撃因子を抑制するために、胃酸の分泌を抑制する制酸薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬が使用されます(表2)。防御因子を増強するために、粘膜保護・組織修復促進薬、粘液産生・分泌促進作用薬などが使用されます。

 

表2胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対するおもな治療薬

  一般名(商品名)
ヘリコバクター・ピロリ除菌治療薬
プロトンポンプ阻害薬
  • オメプラゾール(オメプラール®、オメプラゾン®
  • ランソプラゾール(タケプロン®
抗菌薬
        
  • クラリスロマイシン(クラリス®、クラリシッド®
  • アモキシシリン(サワシリン®
攻撃因子抑制薬
酸分泌抑制薬
■プロトンポンプ阻害薬
  • オメプラゾール(オメプラール®
  • ランソプラゾール(タケプロン®
  • ラベプラゾールナトリウム(パリエット®
■H2受容体拮抗薬
  • シメチジン(タガメット®
  • 塩酸ラニチジン(ザンタック®
  • フェモチジン(ガスター®
  • ニザンチジン(アシノン®
  • 塩酸ロキサチジンアセタート(アルタット®
  • ラフチジン(ストガー®、プロテカジン®
■選択的ムスカリン受容体拮抗薬
■抗ガストリン薬
  • プログルミド(プロミド®
  • セクレチン(セクレバン®
  • ウロガストン(ウロガン®
■抗コリン薬
  • 臭化メチルベナクチジウム(ファイナリン®
  • 臭化チメピジウム(セスデン®
  • 臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン®
  • 臭化プリフィニウム(パドリン®
  • 臭化プロトピウム(コリオパン®
酸中和薬
  • 炭酸水素ナトリウム
  • 酸化マグネシウム
  • 沈降炭酸カルシウム
  • 乾燥水酸化アルミニウムゲル(アルミゲン)
  • メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(アンガスト)
  • 合成ケイ酸アルミニウム(ノルモザン)
防御因子増強薬
粘膜抵抗強化薬
  • スクラルファート(アルサルミン®
  • ポラプレジンク(プロマック®
  • エカベナトリウム(ガストローム®
プロスタグランジン製剤
  • オルノプロスチル(ロノック®
  • エンプロスチル(カムリード®
  • ミソプロストール(サイトテック®
粘液産生・分泌促進薬
  • テプレノン(セルベックス®
  • プラウノトール(ケルナック®
胃粘膜微小循環改善薬
  • 塩酸セトラキサート(ノイエ®
  • ソファルコン(ソロン®

(山田幸宏編著:看護のための病態ハンドブック。改訂版、p.206、医学芸術社、2007より改変)

 

胃潰瘍・十二指腸潰瘍における看護のポイントは?

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の看護では、消化のよい食品を摂取することや、きちんと薬を飲むように指導することがポイントです。絶食になった患者には、絶食の必要性や、よくなれば何でも食べられることを説明し、精神面もサポートしましょう。

検査を受ける前は、患者の不安を少しでも軽減できるように、どのような検査なのかを十分に説明します。バリウムを飲む検査を受けた後は、バリウムを排出させるために下剤を与薬しますが、排出されるまで観察が必要です。

 

⇒〔病気のなぜ?〕記事一覧を見る


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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