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2016年09月08日

体温のモニタリング|術中モニタリング

『オペナース』2014年創刊号<術前・術後看護の視点>より抜粋。
体温のモニタリングについて解説します。

 

Point

  • 体温は手術室の環境や,麻酔や手術という侵襲によって影響を受けます。
  • 術式・体位に応じて,適切な体温測定部位を選択します。
  • 術中は体温の変動を観察し,異常がみられた場合,麻酔科医と協力して対処することが大切です。

青山延布子
(JCHO相模野病院 手術室)

 

〈目次〉

はじめに

手術室は室温24〜26℃,湿度40〜60%に設定されています。術式や術者により,室温を上下させて調整をすることもよくあります。患者さんは,緊張して入室してきます。また,半袖や薄手の手術着であるため,「寒い」とよくいわれます。手術着を脱衣しモニタを装着する過程で,肌を露出します。全身麻酔が導入され,末梢血管は拡張をはじめます。さらに呼吸状態を観察できるように前胸部を露出するため,体表面からの熱の放散が進みます。

体温測定は,低体温による影響を最小限にするために行います。また,悪性高熱症などの異常を早期に発見するためにも,体温は術中には必要なバイタルサインとなります。日本麻酔科学会のモニター指針では「麻酔中は体温のモニタリングをすることが望ましい」と書かれています。

近年,術中の体温保持には,温風式加温装置が用いられることが多くなってきました。また,室温を調整することで,体温低下の発生は少なくなっていると感じます。ただ,ひとたび低体温になってしまうと,体温の正常化は簡単ではありません。体温が低下しないように手術看護を実践することが,私たちに求められる役割といえます。

そこで本コラムでは,体温のモニタリングについて述べます。

 

体温変化の要因

体温の値を理解しましょう

人間の体温は通常,36.8±0.2℃の範囲に維持されています。その身体内部の温度を「中枢温」といい,深部温・核心温ともいいます。中枢温は,体温調節機能のある視床下部を循環している血液の温度です。一方「末梢温」とは,四肢の温度・身体の外側の温度であり,31〜35℃の範囲で変化します。皮膚表面の温度である「皮膚温」は,28〜35℃で変化します。

「手術室における低体温」とは,中枢温が35℃以下になった状態をいいます。35℃以下になると,身体にはさまざまな影響がみられます。患者さんが手術を終えて退室するときには,中枢温は36.0〜37.0℃であることが望まれます。

 

熱の移動や室温による体温の変化

熱は,患者さんの身体から周囲の環境へ①伝導,②放散,③対流,④蒸散の4つの物理的現象により移動しています。これらの現象について,図1に示します。

図1熱の移動(文献1)を参考に作成)

熱の移動(文献1)を参考に作成)

・室温が28〜30℃では,裸や薄着でも中枢温は変化しません。
・室温が22〜24℃では,術者の作業効率は阻害されません。

 

麻酔の影響による体温の低下

全身麻酔の患者さんは,体内の熱再分布が起こり,中枢温が下降しやすい状態です(再分布性低体温)。これらの熱再分布は,以下の特徴的な3つの相に分けられます(図2)。

図2術中の体温の低下

術中の体温の低下

 

第1相

全身麻酔の導入直後から,麻酔薬の血管拡張作用により血管が拡張し,中枢から末梢にむけて血流が増加します。そのため,中枢にあった熱がその血流と一緒に末梢へ移動します。その結果,中枢温は低下し,末梢温は上昇します。麻酔導入後1時間で中枢温は0.5〜1.5℃低下します。

 

第2相

その後,麻酔薬により代謝や中枢の体温調節が抑制されます。また,室温の影響や熱の放散により,体温はゆっくりと直線的に下降します。麻酔導入後,約3時間で約2℃低下します。

 

第3相

体温低下とともに血管収縮反応が起こるため,皮膚からの熱の喪失が減り,体温は下げ止まりの状態になります。最終的に中枢温は横ばいの状態で経過します。

***

視床下部には体温中枢がありますが,麻酔薬や鎮痛薬は視床下部にある交感神経をも抑制します。そのため,麻酔薬や鎮痛薬を投与された患者さんは,体温が低下しやすい状況になっています。体温中枢には,皮膚や神経を通して体温に関する情報が集められます。

その情報をもとに,視床下部から発汗・末梢血管収縮・シバリングといった指令が出されます。麻酔薬は,発汗が起こる体温を上昇させると同時に,末梢血管収縮とシバリングが起こる体温を低下させます(体温の閾値の変化)。そのため,自律的な体温の調整ができなくなります。

 

体温変化が身体へもたらす影響

低体温が患者さんの身体にもたらす影響としては,術中(表1)と術後(表2)の2つが挙げられます。

表1術中の影響

術中の影響

表2術後への影響

術後への影響

一方,発熱(体温の上昇)の原因としては,リネン・ドレープ類の被覆によるうつ熱,疾病(感染症・代謝疾患・アレルギーなど),悪性高熱症(後述)などが挙げられます。発熱が患者さんにもたらす影響は多岐にわたります。

まず,体温が上昇することで代謝が亢進し,酸素消費量が増加します。また,酸素運搬能が上昇するため,心拍出量・呼吸数が増加します。さらに,発熱は発汗を促すため,発汗と不感蒸泄により脱水傾向になります。とくに,1日平均1℃の体温上昇があった場合,1℃につき不感蒸泄が15%増加します。

 

術式・体位に応じた測定方法の選択

手術は,疾患ごとに手術部位・術式・麻酔方法・手術体位などが異なり,その患者さんに合った方法が選択されます。体温は一般の人でも測定する体の状態であり,手術を受ける患者さんにとっても,大切な観察ポイントとなります。

体温測定部位は,手術の妨げにならないこと,手術による影響が最小限であることが必要です。体温調節にかかわる中枢温を測定することが好ましく,測定の際には患者さんへの侵襲が少ない部位を選択します。

信頼できる測定部位としては,肺動脈温・咽頭温・鼓膜温が挙げられ,次に,直腸温・膀胱温・口腔温・腋窩温が挙げられます。表3に測定部位とその特徴を,表4に体位と測定部位をそれぞれ示しました。

表3測定部位とその特徴(○:長所 ×:短所)

測定部位とその特徴(○:長所 ×:短所)

 

表4主な体位とその際の測定部位

主な体位とその際の測定部位

以下に,手術の具体的な事例を挙げます。手術室の規模や手術科により,その手術室での最善の方法を考えて実践してください。

 

例1:砕石位で行う消化器外科の下腹部手術

体温測定は鼻咽頭温または食道温が選択されます。術野となる直腸温や術野の近くである膀胱温は,手術の影響を受けて低い値になるため,正確な体温は測れません。

保温できる部位が少ないため,下肢の被覆を行い,露出を避け,上肢〜前胸部に温風式加温装置を使用するとよいでしょう。腹腔内洗浄をする場合は,洗浄液を38〜40℃に温めて使用しましょう。

 

例2:脳神経外科・心臓血管外科手術

これらの手術では,選択的に低体温で手術を行う症例があります。低体温状態では,組織の代謝や酸素消費量が低下するため,心筋や脳を虚血から保護できるという利点があります。

低体温を選択する手術の場合は,手術内容を理解し,体温のモニタリングの徹底と復温のタイミングおよび方法を熟知することが大切です。脳神経外科手術では膀胱温または直腸温を,心臓外科手術では肺動脈温と膀胱温や直腸温を選択します。

 

例3:腹腔鏡手術

手術部位によって開脚位や砕石位になるため,術野に影響されにくい部位での体温測定を行います。上腹部では温度センサつき膀胱留置カテーテルによる膀胱温や鼻咽頭温が,下腹部では鼻咽頭温や食道温が選択されます。開腹手術に比べて術野が小さいため,術野からの熱の放散は少なくなります。

しかし,気腹に用いられる二酸化炭素ガスの影響により,体温が低下しやすくなります。また,砕石位の場合は,下肢は被覆し,上肢・前胸部に温風式加温装置を使用するとよいでしょう。

 

例4:保温器具や加温装置がない場合

加温装置がない場合は,保温が大切になります。また,加温装置の数が不足する場合は,長時間手術や効率的に保温できない手術,体温低下が予想される手術で優先的に使用します。低体温になる可能性が高い手術としては,小児・高齢者の手術,大きい開創をする手術,多量の輸液・輸血が行われる手術,仰臥位以外の手術が挙げられます。

術前から室温の調整をする,露出を避けて被覆する,被覆するタオルなどを温めておく,温かい輸液を使用する,術後ベッドを保温する,などの工夫をします。

 

加温装置

近年,使用されることが多くなった温風式加温装置の一商品です(図3)。体温を含むバイタルサインを,少なくとも10分ごとに監視するようにします。温風により患者さんを加温し,患者さんの体温の維持および回復を図るために使用します。32℃または38℃で加温をはじめ,患者さんの体温値や皮膚の状態に合わせて温度設定を調節します。

図3温風式加温装置

温風式加温装置

ベアーハガーTM 。他にもウォームタッチTM ・サーマケアTM などがあります。

 

保温庫(図4

図4保温庫

保温庫

 

各部屋に保温庫と保冷庫があります。保温庫は40℃に設定され,創洗浄で使用する生理食塩水や輸液が入り,温められています。保冷庫は5℃に設定されています。

 

術前から術後にかけての体温観察

術前の受け入れ準備

手術室に患者さんを受け入れる準備をします。

  1. 患者さんが入室する前から室温をやや高めに設定します。設定する温度は冷房27℃や暖房21℃など,季節によって調整します。
  2. 手術ベッドを温め,温タオルを準備します。
  3. 術野の消毒液を温めます。
  4. 輸液を温めます。長時間手術や,体温低下が予想される手術の場合は,輸液ルートの加温装置を準備します。

 

麻酔開始,手術開始の準備

麻酔が始まり,手術開始の準備をします。

  1. タオルなどを用いて皮膚の露出を最小限にします。
  2. 患者さんに触れて,四肢・四肢末梢における冷感・冷汗の有無を確認します。
  3. 体温測定部位を選択し,測定を始めます。
  4. 体温センサなどのコードが術野の妨げにならないか,また患者さんの身体の下にないか,などに注意します。
  5. 入室時(病棟出棟時)・手術開始直前の体温をそれぞれ記録します。
  6. 術者および,同室にいる医療従事者にとっても快適な室温に設定します。

 

手術中(図5

図5手術中の様子

手術中の様子

鼻咽頭温を測定しています。上肢〜前胸部に温風式加温装置を使用しています。

  1. 体温の変動を観察し,記録します。
  2. 体温に応じて,加温装置の調整を行います。
  3. 手術の妨げにならなければ,四肢に触れて,冷感・熱感・発汗などを確認します。
  4. 発汗やうつ熱が確認されれば,加温装置の温度設定を低くしたり停止したりして対処します。
  5. 体温低下や高熱になるようであれば,麻酔科医師と協力して対処します。

 

手術終了時

手術が終了します。

  1. 術中よりやや高めに室温を調整します。術中から体温が低下している場合は,閉創の段階で室温を上げておきます。
  2. 手術終了時の体温(最終体温)を測定し,記録します。
  3. 手術終了時の清拭は温タオルを使用し,水分を拭います。
  4. 皮膚の露出は最小限にします。
  5. 四肢末梢における冷感の有無を確認し,シバリングの有無を観察します。
  6. 退室までは保温および加温を行います。
  7. 退室時のベッドは温めておきます。

 

全身麻酔のリスク:悪性高熱症

全身麻酔の偶発症の1つです。発症には遺伝的要因が疑われており,麻酔薬がトリガーとなることが多いです。異常を早期発見するため,心電図・パルスオキシメータ・カプノグラムなどのモニタの波形や値を観察し,体温のモニタリングとともに観察しておくことが大切です。異常があれば,麻酔科医師と協力して対応します。

 

悪性高熱症の症状

麻酔導入直後から咬筋硬直(開口障害),呼気終末二酸化炭素濃度(EtCO2 )の上昇,頻脈頻呼吸(自発呼吸の出現)が起こります。その後,体温上昇,アシドーシス,動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下,肺胞気酸素飽和度(PaO2)の低下,不整脈が起こります。筋硬直が続き,赤褐色尿(ミオグロビン尿)になります。

体温は40℃以上であるか,あるいは38℃以上かつ15分に0.5℃以上または1時間に2℃以上の上昇が起こります。

 

悪性高熱症の対処

対処方法としては,吸入麻酔薬や筋弛緩薬などの麻酔薬を中止します。麻酔回路を交換し,純酸素による過換気にします。また,患者さんの身体を冷やします。ダントロレンナトリウム水和物(ダントリウム® )を投与し,尿の性状と量を観察します。手術は中止または早期終了とします。

 

おわりに

体温の低下は手術後における覚醒遅延の一因となり,シバリングを起こした患者さんが不快な思いをすることにもなります。手術に合った適切な方法で体温測定部位を選択し,体温を連続的にモニタリングして,異常の早期発見・対処をしていくことが,患者さんの術後の早期回復や不快感の回避につながります。

低体温の身体への影響と適切な測定部位・看護実践の方法を知識として理解し,大切な手術看護の1つとして実践してください。

 

 


[引用文献]

  • 1)菊池京子(編):手術看護の「一人前」レベルチェックブック−クリティカルラダー評価表を活用しよう.OPE NURSING,2009春季増刊:2009.

[参考文献]

  • 奥山美里ほか:体温管理と体液管理.OPE NURSING,27:2012.
  • 斉藤洋子:体温管理の基礎知識.OPE NURSING,26:2011.
  • 岡元和文(編):合併症疾患にみる周術期管理Q&A 研修医からの質問362.救急・集中治療,20:総合医学社,2008.
  • 数間恵子ほか(編):手術患者のQOLと看護.医学書院,1999.
  • 大江容子:手術患者のQOLと周術期管理(2014年3月閲覧)
  • 石崎 卓:周術期の体温管理

[Profile]
青山延布子(あおやま のぶこ)
JCHO相模野病院 手術室
1990年3月 労働福祉事業団 関東労災看護専門学校 卒業。同年4月 同 関東労災病院 入職。1993年8月 JA神奈川県厚生連 相模原協同病院入職。2012年4月 社会保険 相模野病院 入職。「手術看護認定看護師」資格取得は,2005年1期生です。患者さんを第一に考え,『安心・安全・安楽』を守ることを使命としています。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]オペナース2014創刊号

オペナース2014創刊号

P.69~「体温のモニタリング」

著作権について

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