1. 看護roo!>
  2. 看護・ケア>
  3. 透析スタッフ>
  4. バスキュラーアクセス作製の基本とその時期

2016年06月13日

バスキュラーアクセス作製の基本とその時期

『透析スタッフ』2014年第3号<これだけは知っておきたいバスキュラーアクセス管理>より抜粋。
バスキュラーアクセス作製の基本とその時期について解説します。

 

Point

  • バスキュラーアクセス(VA)は,血液透析施行に必要不可欠です。
  • 現時点で頻用される自家動脈・静脈を吻合した皮下動静脈瘻(AVF)は最も開存性に優れていますが,心機能への負担になることがあります。
  • 自家脈管,とくに静脈がAVFの造設に不適な状態の場合には,人工血管(グラフト:AVG)を使用せざるをえません。
  • AVFでは吻合部近傍に,AVGでは静脈とグラフトの吻合部およびその近傍に,狭窄が発生しがちです。
  • AVFやAVGの存在が著しく心機能の負担になっている場合には,VAとして動脈表在化法か血管内カテーテル留置法を採用せざるをえません。

大平整爾
(札幌北クリニック 院長)

 

〈目次〉

 

はじめに

末期慢性腎不全状態に対する腎機能代替療法(RRT)として,①透析療法(血液,腹膜),②腎移植(死体腎,生体腎),③保存的療法(食事,降圧薬,利尿薬など)があります。

日本では当該患者の95%が血液透析を選択し,治療が開始されます。

日本透析医学会(JSDT)統計資料によれば2012年12月末現在で維持透析患者数は30万9946人で,血液透析患者がその約97%を占めることを知ると,血液透析に必須のバスキュラーアクセス(vascular access;VA)を熟知することは透析スタッフにとってきわめて重要であることが認識できます。

VAの作製と修復作業は医師の専任的業務ですが,術前の表在静脈の温存・術後のVA観察と管理・VAの穿刺・穿刺後のVAケアなどは看護師や臨床工学技士にも委ねられている重要な領域です。VAに関連する業務は,チーム医療の重要な一環をなしています。

 

VAの作製と修復の操作に関わるインフォームドコンセント

末期慢性腎不全であるという確定診断が下され,RRT(renal replacement therapy;腎代替療法)が不可避だと判断された段階で,担当医は当該患者にRRTの必要性とその選択について説明します。この説明の場に看護師が同席して適宜言葉を差し挟むことが望ましいと考えます。

患者が理解・納得して維持血液透析療法(HD)を選択した場合は,HDそのものと,それに不可避のVAについての説明を加えることになります。

VA作製時における患者への説明事項を表1に掲げました。

表1VA作製時における患者への説明事項

VA作製時における患者への説明事項

 

説明は1度で済ませずに,数回に分けて理解と納得を得ることが大切です。

表1-10の合併症は表2のように多岐にわたりますが,HD開始前から患者を恐れさせ落胆させるような説明は得策ではなく,その患者のVAの状態をみながら,修復法について時期を見きわめてこまやかに適宜行う工夫が,透析スタッフに求められます。

表2VAに関連する合併症

VAに関連する合併症

 

図1は前腕末梢に作製した皮下動静脈瘻(AV-fistula;AVF)の年齢・性別・糖尿病性腎不全別の開存率を示していますが,適正に作製され適正に穿刺されてもAVFは経年的に荒廃して機能を失い,修復措置を要することもありうることを知らなければなりません。

図1前腕末梢部の初回シャントの開存率

前腕末梢部の初回シャントの開存率

若年群に比べると,高齢群と糖尿病群の開存率は明らかに劣ります。

 

VAを作製する時期

JSDTの『2011年版VAガイドライン:VA-GL』(1)によれば,その第2章GL-5に,expert opinionとして「eGFRが15 mL/分/1.73 m2以下(CKD病期4&5)と臨床症状を考慮し,VAの作製時期を判断する」ことが推奨されています。また,「溢水傾向を示しやすい糖尿病性腎不全では,より高値のeGFRでVAを作製することが望ましい」と追記されています。

VA-GL 2011年版は,「AVF(arteriovenous fistula;自己血管使用皮下動静脈瘻)では初回穿刺より最低でも2~4週間前に,AVG(arteriovenous graft;人工血管使用皮下動静脈瘻)では初回穿刺より3~4週間前に作製されることが望ましい」としています。

同じくJSDTの『維持血液透析ガイドライン:血液透析導入』(2)「ステートメント5:透析導入の準備」には,「透析導入の少なくとも1か月以上前のAVF,AVGの作製は,透析導入後の生命予後の観点から望ましい」と記されています。

透析導入が腎機能や症状のうえから早すぎたり遅すぎたりしないように配慮し,しかも作製したAVFやAVGが穿刺を要する時期に至って成熟(怒張)していることを最適とする指針といえましょう。

 

VA作製の基本

VA形態の選択

緊急にHDが必要な事態であれば,血管内カテーテル留置法によってHDを開始しなければなりません。このような状況を除き,予想されるHD導入まで1か月以上の時間的な余裕があると考えられる場合には,VAとして原則的にAVF,または次善策としてAVGが選択されます。

いずれにせよ,当該患者の上肢の動脈と皮下静脈を仔細に観察することが肝要です。

頻用されるAVFは前腕末梢において,典型的には橈骨動脈と橈側皮静脈との側・端吻合で作製されます。上肢の静脈は動脈に比べて異形が多いため,先に記したAVFの吻合によりどの静脈が怒張してくるかを予想しておくことが必要です(図2)。

図2上肢の動脈・静脈

上肢の動脈・静脈

AVF・AVGの作製,管理や修復に際しては,上肢の動脈と静脈の名称を記憶して正確に記録することが必要です。静脈には,動脈よりも異形が多くみられます。

動脈は静脈に比べて変異は少ないのですが,高齢者では動脈硬化のために前腕末梢で橈骨動脈の拍動を触知できないこともあります。このような症例では動脈の血流量が少なく,前腕末梢でのAVF作製は難しくなります。

高齢者に限りませんが,動脈・静脈の状態や随伴症状に加味して図3などから当該患者の予想される余命を勘案しながらVAの形式を選択することが肝要です。

図3透析患者の年齢別の平均余命

透析患者の年齢別の平均余命

透析患者の余命は同年齢層の一般人のおよそ半分だと考えられます。

 

VAの作製(手術)

いずれの形式のVAであっても,その短期的・長期的成績(開存率)に最も影響する因子は,①患者の脈管の状態(年齢,性別,基礎疾患,心血管合併症,血圧,肥満度,貧血度など),②術者の技量(部位,脈管の選択,吻合の口径と形式,術者の経験など)にあります。

①については,その状態を変えようがなく,患者の脈管に最も適合したVAの形式と部位とを選択することを心掛けることになります。

②については,独り立ちするまでに十分な学習と実地修練が医師には必須です。

ドイツのある血管外科(3)は,「術後早期の血栓形成を減少させる最善策は,熟練の術者を採用することだ」と至言を述べています。

 

VA作製直後のケア

AVFもAVGも動脈血流を短絡して静脈へ流入させる術式ですから,必然的に末梢虚血が生じます。通常はその末梢虚血(末梢への血流量の減少)を副血行路の血流が補うため,患者は若干の冷感を訴えるだけにとどまり,次第にこれに慣れてきます。

しかし,まれなことですが,術直後から著しい冷感と継続的な強い疼痛を訴えることがあり,この場合には単に鎮痛薬で対処するだけではなく,やむなく虚血の解除(吻合の閉鎖)を考えなければなりません。

AVFやAVG作製直後には血管音やスリルの強弱と性質・静脈の怒張度などの観察が重要になりますが,末梢虚血の症状にも注意する必要があるということです(図4)。

図4シャント造設後の末梢虚血

シャント造設後の末梢虚血

動脈の側に静脈の端を吻合して動脈血の一部を静脈へ流入させるシャントは、末梢部の血流を減少させます(虚血)。シャント造設後は,この虚血が重大な臨床症状を引き起こさないかどうかを観察する必要があります。

 

 穿刺までのケア

①末梢虚血症状の有無と程度,②動脈化静脈の血管音とスリルの聴取と触診(強度と性質),③術創部の感染の有無,④AVF,AVGの作製部位によって,作製部の四肢の運動の程度や関節の屈曲制限などを指導します。

シャント肢の中枢側にある関節を長時間曲げ続けることは,シャント血流を阻止して血栓形成(閉塞)につながるため避けなければなりません。

むろん,⑤動脈化静脈の怒張の程度をよく観察します。

 

 穿刺の開始(すなわち,HD療法の開始)

HDの開始に対して,多くの患者は極度に緊張しています。体重測定後に患者をベッドに迎え血圧を測る時点から,優しく思いやりのある言葉掛けが必要となります。

皮膚を厳密に消毒し,②穿刺部位を定め,③患者のVAに適した穿刺針を用いて,的確に穿刺を行います。

痛みを極度に恐れる患者に対しては極細の針で穿刺部に局所麻酔を加えるか,あらかじめリドカイン皮膚塗布薬(ペンレス)などで鎮痛の処置を行っておく必要があります。

 

HD施行中の注意点

VAから所定の血流量(200~300 mL/分)が確保できるか,その際に静脈圧は許容範囲内にあるか,VA肢に不快感や疼痛がないか,末梢虚血症状の増悪がないか,血圧・脈拍呼吸の変化はどうかなどを観察・記録します。

 

 穿刺針の抜去後の処置

HDが終了したら,穿刺針を抜いて止血操作を行います。針が刺されたのは静脈ですが,吻合により動脈血が流入しており,静脈は「動脈化」しています。

そのため,止血操作を的確にしないと驚くほどの出血が生じます。しかも止血操作は滅菌的に行う必要があります。

患者にもこのことをよく伝えておくことが肝要です。

 

AVFやAVGの長期的な観察・管理

毎回のHD施行時に,①穿刺性,②血流量,③静脈圧,④穿刺後の患者の訴えの有無,⑤抜針後の止血性などを観察し,静脈の狭窄などが疑われる場合には,適宜,超音波や血管造影の検査を行い修復法を検討します。

 

おわりに

HDでは,患者の脈管から血液を取り出し,ダイアライザーにより血液を浄化した後に患者の血管へ血液を再び戻す工夫をVAと呼びます。

この療法には必要不可欠な血管上の工夫であり,VAは透析患者の「ライフライン(生命線)またはアキレス腱」であるといわれています。VAを作製し観察・管理し必要に応じて修復する業務は,透析医療において医師・看護師・臨床工学技士がチームとして関わる最重要の項目の1つとみなされています。

透析スタッフはそれぞれの職域に応じたVA関連の知識と実技とを十分に修得することが強く望まれます。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)日本透析医学会:2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン.透析会誌.44:855-937,2011.
  • (2)日本透析医学会:維持血液透析ガイドライン:血液透析導入.透析会誌.46:1107-1155,2013.
  • (3)Hehrlein C: How do AV-fistulae lose function? The roles of haemodynamic, vascular remodeling and intimal hyperplasia. Nephrol Dial Transplant. 10: 1287-1290, 1995.
  • (4)大平整爾(編著):バスキュラーアクセスの治療と管理.東京医学社,2011.

[Profile]
大平整爾(おおひら せいじ)
札幌北クリニック 院長
1962年 北海道大学医学部医学科 卒業。1972~1997年 岩見沢市立総合病院 外科・透析部長,1997~2002年 日鋼記念病院 院長,2002年より札幌北クリニック 院長。2009年9月より 日本アクセス研究会 理事長。
主要著書:『バスキュラーアクセス診断学』『バスキュラーアクセス治療学』

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]透析スタッフ2014年第3号

透析スタッフ2014年第3号

P.5~「バスキュラーアクセス作製の基本とその時期」

著作権について

この連載

  • CKD(慢性腎臓病)の進行に伴う病態の変化と透析導入 [05/26up]

    『透析スタッフ』2014年第5号<透析導入時のケアポイント>より抜粋。 CKDの進行に伴う病態の変化と透析導入について解説します。 Point 慢性腎臓病(CKD)は進行性で不可逆性の腎障害です。 C... [ 記事を読む ]

  • 各腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)のポイントと長所・短所 [06/30up]

    『透析スタッフ』2014年第5号<透析導入時のケアポイント>より抜粋。 各腎代替療法のポイントと長所・短所について解説します。   Point 自施設で“行っていない”治療法(腹膜透析・腎移植)について... [ 記事を読む ]

  • バスキュラーアクセスの種類と特徴|透析ケア [03/21up]

    『透析スタッフ』2014年第3号<これだけは知っておきたい。バスキュラーアクセス管理>より抜粋。 バスキュラーアクセスの種類と特徴について解説します。 Point VAの種類は大きく,シャントと非シャントに分... [ 記事を読む ]

  • バスキュラーアクセス作製の基本とその時期 [06/13up]

    『透析スタッフ』2014年第3号<これだけは知っておきたいバスキュラーアクセス管理>より抜粋。 バスキュラーアクセス作製の基本とその時期について解説します。   Point バスキュラーアクセス(VA)...

関連記事

いちおし記事

NICUのままでいいのかモヤモヤ|看護師かげと白石の今週のモヤッと(14)

「やりがいはあるけど、将来を考えると…」と悩む3年目ナース。あなたならどうする? [ 記事を読む ]

循環器看護で大切なことって?

循環器看護のポイントをわかりやすく解説!便利な経過ごとの看護がわかる一覧表も! [ 記事を読む ]

人気トピック

もっと見る

看護師みんなのアンケート

2020年の抱負教えて!

投票数:
1467
実施期間:
2020年01月07日 2020年01月28日

インフルエンザにかかったら、有休?欠勤?

投票数:
1389
実施期間:
2020年01月10日 2020年01月31日

あなたの病院で成功した画期的な「働き方改革」はある?

投票数:
1297
実施期間:
2020年01月12日 2020年02月02日

実録!? 私はこう太った!!!!

投票数:
1286
実施期間:
2020年01月14日 2020年02月04日

チェックしてる「勉強垢」ってある?

投票数:
1002
実施期間:
2020年01月17日 2020年02月07日

あなたが作り出した「自分史上最低の料理」は?

投票数:
974
実施期間:
2020年01月21日 2020年02月11日

この冬スタートの医療ドラマ見る?

投票数:
1138
実施期間:
2020年01月24日 2020年02月14日
もっと見る

今日の看護クイズ 挑戦者896

◆整形の問題◆以下の感覚の中で、一般感覚に分類されるものはどれでしょうか?

  • 1.視覚
  • 2.平衡覚
  • 3.触覚
  • 4.味覚
今日のクイズに挑戦!