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2016年06月30日

各腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)のポイントと長所・短所

『透析スタッフ』2014年第5号<透析導入時のケアポイント>より抜粋。
各腎代替療法のポイントと長所・短所について解説します。

 

Point

  • 自施設で“行っていない”治療法(腹膜透析・腎移植)について知識を深めましょう。
  • 腎不全保存期と透析導入後の管理は,別々とは考えず“連動”していると考えるべきです。合併症発症や死亡率が最も高いのは導入期であり,導入前および導入直後からの“連動”した管理・指導の徹底が合併症発生や死亡率を低下させます。
  • 各腎代替療法の欠点はあくまで『欠点』であって『禁忌』ではありません。患者が望むならば『可能なかぎり』欠点を克服する努力を一緒に行うことが重要です。
  • 腎移植の適応は意外と広いものです。血液型が異なっていても,血が繋がっていなくても,透析を導入していなくても,糖尿病でも腎移植は可能です。とにかく患者に,腎移植を知っているか? 興味があるか? 聞いてみましょう。

谷澤雅彦
(聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 助教)

 

〈目次〉

 

はじめに

末期腎不全となり腎臓が行っている体液恒常性やその他の機能の代償が保てなくなると,腎代替療法(透析・移植)が必要となります。

各腎代替療法の情報提供に関しては全ての患者が平等に受ける権利があり,その後の実際の選択に関して,患者・御家族と共に医療従事者が医学的根拠や経験からアドバイスを行い決定していく(shared decision making)こととなります(図1)。

図1流動的な腎代替療法の実践

流動的な腎代替療法の実践

 

しかし実際には,透析関連医療従事者へのアンケート調査によりますと,施設で行うことが可能な治療方法(血液透析・腹膜透析・腎移植)の説明は十分に行っていますが,施設で行っていない治療方法(主に腎移植と腹膜透析)に関しての説明はきわめて不十分であるというデータが存在します(1)図2)。

図2各腎代替療法が可能な施設ごとの,末期腎不全患者への情報提供の充足度(文献1より改変)

各腎代替療法が可能な施設ごとの,末期腎不全患者への情報提供の充足度

HD:血液透析,PD:腹膜透析,RTx:腎移植

本コラムでは,明日から患者への説明に使える,一般的な透析療法(血液透析・腹膜透析),腎移植(生体腎移植・献腎移植)の適応と方法,各々の治療方法の長所・短所について解説していきます。

 

腎代替療法を導入するということは?

透析患者の心血管疾患を見逃さない

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease;CKD),とくに透析導入となる患者は,現在約半数が糖尿病を原疾患とし導入時平均年齢が69歳と高齢であるために,透析導入自体のリスクのみならず心血管疾患の高リスク群であることを認識しなければなりません(=まず心臓病・脳卒中・末梢動脈疾患の有無・リスクを確認する癖をつけましょう)。

 

HD導入期が最も危険

導入後数年のなかでは最も死亡率が高いのは導入後3ヵ月以内であり,導入期が最も注意を払う時期であることを認識するべきです。

筆者らの調査では,維持透析患者の生命予後が世界で群を抜いて良好なはずの日本の透析患者であっても,HD(Hemodialysis;血液透析)導入後3ヵ月以内の死亡割合(HD導入患者の7.1%が3ヵ月以内に死亡)の高さは欧米並みでした。

その他導入前のCKD管理(計画導入・自己血管内シャントでの導入を目指す・栄養指導・教育・ワクチンなど)も導入後生命予後に影響していますし,導入直後の集中的管理(貧血管理・カテーテルから早期にシャント作成・栄養指導・透析処方の検討・薬物調整・リハビリテーションなど)を行うことによって生命予後が改善するという研究も行われています(2)

患者の予後を改善させるために医師のみならず,透析に関わる看護師・技士・薬剤師・栄養士・理学療法士などの最も力を注ぐ期間といっても過言ではありません。

 

CKD保存期から透析導入後も連続した視点・総合的な視点で患者を診る

つまり,導入後は“透析のことだけ”を診るのではなく,CKD保存期にどのような治療・管理・指導が行われてきて,どのように患者が呼応(コンプライアンスアドヒアランス)していたのか,また導入後は“心血管疾患”および“感染症”のリスクが非常に高く,死亡率が最も高い期間であるために,よりきめ細やかな“心血管疾患や感染症を予防含めた透析の管理・指導”が重要となります。

 

日本における腎代替療法の傾向

日本透析医学会年末調査によると,2012年末で約31万人の方が透析療法を受けています。そのほとんどが血液透析(Hemodialysis;HD)であり,腹膜透析(Peritoneal Dialysis;PD)が占める割合は3.1%(約9,500人)と数年変わっておりません(3)

一方直接比較は難しいですが,腎移植(Renal Transplantation;RTx)を行い現在も腎臓が生着して生活している患者は約1万2,000人程度と推測されており,腹膜透析患者より患者数は多く,腎不全医療を行っていくなかで移植患者も無視できない数となってきています。

この明らかに偏った治療法の分布は日本だけなのでしょうか?

諸外国のHD/PD/RTx患者の総数は図3に示す通りであり(3)-(6),日本だけが明らかにHDの占める割合が多い事がわかると思います。

図3日本と世界各国との腎代替療法の割合の比較(文献(3)-(6)より作成)

日本と世界各国との腎代替療法の割合の比較

HD:血液透析,PD:腹膜透析,RTx:腎移植

この理由は,日本のHD患者の生命予後は世界で最もよいことが知られており,また移植数が圧倒的に少ないために維持HD患者の数が増加していくこと,透析医療(腎不全保存期から含め)へのアクセス・医療費の負担が諸外国と比較して圧倒的に少ないこと,図2で示したように医療者からのPDと移植の情報提供不足などが挙げられます。

 

各腎代替療法の適応・ポイント

次に各腎代替療法の適応や方法について説明していきます。

◎GFR 15~30 mL/分/1.73m2で腎代替療法のオプション提示
◎GFR<15 mL/分/1.73m2で臨床症状を総合的に判断して計画導入を行う

各治療方法は糸球体濾過量(Glomerular Filtration Rate;GFR)が“15~30 mL/分/1.73m2に至るまでにオプション提示と説明がなされ,GFR<15 mL/分/1.73m2となった場合には臨床症状を加味して計画的に透析導入を行うことが望ましい”と日本透析医学会の『維持血液透析ガイドライン:透析導入』および『腹膜透析ガイドライン』(7), (8)に明記されています。

実際の導入について適切なGFRは個々の病態や年齢によっても異なるために,強いエビデンスを持った数値はいまだに決められていませんが,HD・PDについては各々ガイドラインに“指標”が示されています。

移植に関しては,透析患者であればとくに時期の制約はありませんが,透析未導入で移植を行う“先行的腎移植(preemptive RTx)の際の適切なGFRの値もいまだ不明な点が多いところです。『CKD診療ガイドライン2013』(9)では,“先行的腎移植は生命予後を改善する可能性があるために推奨する”,という位置づけになっています。

 

血液透析

血液透析の適応・基準

『維持血液透析ガイドライン:透析導入』(7)によると,GFR<15 mL/分/1.73m2になった場合にはHD導入を考慮してもよいと記載されていますが,このように高いGFRで導入されることは実際には少ないはずです。

近年GFRが高い状態でのいわゆる“早期導入”は決して予後を改善することはないというエビデンスが蓄積されてきており,臨床症状や日常生活障害度によって“総合的に”決定されることが多く見受けられます。

日本からのデータではGFR<2 mL/分/1.73m2での導入は生命予後悪化の可能性が高いために(10),最低でもGFR 2 mL/分/1.73m2までには導入を行うべきであるとの推奨がガイドラインにも明記されています。実際の日本の導入時GFRは平均6.52 mL/分/1.73m2です。

HD導入までの流れを図4に示します。

図4GFRや症状に基づいたHD導入へのフローチャート(文献7より引用)

GFRや症状に基づいたHD導入へのフローチャート

*:多職種による包括的な医療を指す
**:高カリウム血症,うっ血性心不全の存在,高度アシドーシス,尿毒症による脳症,心膜炎など

血液透析導入時のポイント

透析導入期はもちろんのこと,維持HD中においても患者教育の継続は重要です。

欧米では,最も死亡の危険性が高いHD導入後90~120日間の集中的教育と管理(vascular accessケア・管理,栄養・内服・体液管理指導,至適透析管理,貧血などの合併症管理)の介入によって,非介入群と比較して有意に導入後早期の生命予後や至適透析効率の達成,栄養状態改善,貧血の改善,望ましいVA状態の保持率を改善したという報告があります(2)

併存合併症の管理としてとくに注目すべきものは,透析患者の死亡原因の第1,2位を占める心血管疾患と感染症です。心血管疾患については,とくに糖尿病性腎症由来のHD患者には注意を要し,古典的心血管リスクや透析関連リスク(副甲状腺機能亢進症・Ca/P管理,炎症など)の管理を徹底するべきでしょう。

また感染症に関しては血流感染のリスクが増大するカテーテルでのHD導入を避けるように導入前からの腎・透析専門医による管理と,ワクチン接種が重要です。

本来ならば,保存期CKD管理で行うべき事柄でありますが,残念ながら日本においては肺炎球菌やB型肝炎ワクチンは任意接種であり,透析導入期にはほとんど接種されていない現状があります。『エビデンスに基づくCKD診療ガイド2013』(9)では65歳以上のCKDには肺炎球菌ワクチンの接種を推奨しており,HD導入期に未接種であれば接種を行うべきと考えられます。

 

腹膜透析

近年の腹膜透析の傾向・特徴

◎PDファースト,インクリメンタルPD,PD+HD療法
◎PDは永遠には施行できない

透析導入後の残存腎機能低下が生命予後や心血管系疾患の合併症の発生率と関連があることが知られており,PDはHDよりも残存腎機能(≒自尿)を保持しやすい(11)という利点から,透析導入はPDから行う“PDファースト”という考え方が存在します。

また導入当初は,残存腎機能を充分に活用し,少ない量のPD液でPDを開始し段階的に増加させていく“インクリメンタルPD”という導入方法も近年一般化してきています。個人差はありますが,数年経過すると腹膜機能の低下から除水・溶質除去が少なくなり,また自尿も少なくなるとPDのみでは“透析不足”となります。

そこでまずは週1回のHDを併用して“HD+PD併用療法”を行い,その後のHD完全移行への準備として,また腹膜を週に1~2日休息させます。PDは永遠にできる治療ではなく,後述する合併症である被覆性腹膜硬化症(EPS)の発症を回避するために通常は5~6年程度でPDを終了しHDへ移行します。

 

腹膜透析の適応

◎PDを行うことができる患者は意外と多い

腹膜透析は在宅医療の利点を活かし,自己管理ができる患者,定職があり頻回通院が困難な患者,HD施設への通院困難(地理的問題・身体的問題など)な患者,また心臓への負担が少ない治療方法であるために心機能の低下した患者などがよい適応となるでしょう。

PDを行うことが不可能なケースとしては,腹部の広範な癒着などでPDを行う有効な腹腔内スペースを確保できない場合,腹部に治療すべき疾患が存在している場合,PD液貯留に伴い換気障害が増悪する場合(慢性閉塞性肺疾患など)や腰痛が著明に悪化する場合(椎間板ヘルニアなど)などが挙げられます。

その他,高齢・視力障害・手指の巧緻性低下(麻痺など)により日々のバッグ交換や清潔操作が困難と考えられる患者もPDを行うことが困難です。

逆に考えると,上記PD開始が難しいケースを除いてPD施行が可能である患者が意外と多いということを認識するべきです。

さらに,高齢者・視力障害・麻痺などの患者は介護者のサポートやデバイスの使用にて充分PDを行うことは十分可能です。PDを行うタイミングに関しては,『日本透析医学会:腹膜透析ガイドライン』(8)ではGFRが6 mL/分/1.73m2未満の場合は透析導入を推奨すると明記されています(委員会オピニオン)。

 

腹膜透析導入時のポイント

1.腹膜透析の種類

◎PDは患者の生活スタイルや腹膜の性能によってカスタマイズができる
◎腹膜透析=CAPDではない!
◎目標透析量(KT/V)・臨床症状(尿毒症症状・浮腫)・腹膜の性能(腹膜機能平衡試験;PET high/low)に対して,PD液の種類・量・方法(サイクル数・自動式)を,ライフスタイルに合わせてPDメニューを決める

『腹膜透析=CAPD』というイメージが定着しているようですが正確には違います。

CAPDとは『連続(持続)携行式腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis)』の略で,“手動(手で交換)”で“1日連続して”行う腹膜透析の施行方法の一種です。図5に示すのは手動と自動式(自動腹膜還流装置を使用)で分類したもので,図6は各々の方法を具体的に経時的に示したものです。

図5PDの種類(手動式あるいは自動式での分類)

PDの種類(手動式あるいは自動式での分類)

サイクラー(自動腹膜環流装置)を用いたPDを自動腹膜透析(automated peritoneal dialysis;APD)とよびます。

図6PDの種類(治療方法での分類)

PDの種類(治療方法での分類)

①連続(持続)携行式腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis)
②③連続(持続)周期的腹膜透析(continuous cyclic peritoneal dialysis)
④夜間間欠的腹膜透析(nocturnal/nightly(intermittent)peritoneal dialysis)
⑤昼間携行式腹膜透析(daytime ambulatory peritoneal dialysis)
⑥タイダル腹膜透析(tidal peritoneal dialysis)
※略語は日本透析医学会 透析医学用語集(12)より抜粋

ここでつまずくことが多いと思われますが,基本的な考え方は,①1日連続して行うか,腹腔内が空の時間ができるか(夜間を空にするか,日中を空にするか)?,②自動腹膜灌流装置を用いるか,手動か?の2点で分類するとわかりやすいと思います。

そもそも何故このように複数が存在するかというと,患者のライフスタイルに合わせるため,腹膜の性能が患者ごとで大きく異なるため,残存腎機能により必要なPD透析量が変わってくるためです。

つまり患者1人1人にカスタマイズできるようにさまざまな方法やPD液が開発されてきたためです。

あとは,1日にPD液をどれくらい使用するか(=主に溶質除去を規定:何L,何バッグ交換か),PD液の種類(=主に除水量を規定:低い/高いブドウ糖濃度,イコデキストリンPD液)を,臨床症状(浮腫,尿毒症症状等)・採血データ(貧血,Cr,BUN,電解質,β2ミクログロブリンなど)・目標透析量(weekly CCrやKT/Vという腹膜透析の透析量の指標)を考慮して決定していきます。

例:日中仕事でPD液バッグ交換ができない

1:残存腎機能が十分あり,体液管理も十分に行えている
→夜間のAPDだけを使用し,日中腹腔内は空の状態で行うNPD(図6-4)

2:体液過剰であり,残存腎機能も低下している
→夜間のAPD使用と日中腹腔内貯留を連続して行うCCPD(図6-2)

 

例:日中にバッグ交換が可能。夜間のAPDに抵抗がある

1:残存腎機能が十分あり,体液管理も十分に行えている
→日中の手動でのバッグ交換のみで,夜間は腹腔内空の状態:DAPD(図6-5)

2:体液過剰であり,残存腎機能も低下している
→日中に手動で2~3回程度バッグ交換,夜間長時間停滞型PD液を貯留して就寝:CAPD(図6-1)

 

※上記はもちろん一例であり,患者ごとに腹膜機能が異なるために,使用するPD液のブドウ糖濃度を変更したり,1回貯留時間を短く/長くしたり,長時間貯留型PD液を使用したり,患者ごとにカスタマイズしていきます。

 

2.生活環境の確認

PDを導入するにあたり,患者の生活環境を聴取し整えることは非常に重要です。

具体的には,介護者の有無,視力障害や手指巧緻性の確認,ペットの有無,衛生的な部屋の確保,PD液の在庫を保管する部屋の確保,自身でPDの準備を行うための認知機能や2Lバッグ(場合によりAPDの排液4~8L程度)を持てるだけの筋力の有無などです。時間的余裕があれば,介護者への指導,訪問看護師との連携,在庫を保管する部屋の確保などを行います。

PDは在宅治療であるために,より患者の生活背景や環境の情報が重要になり,医師以外の看護師やソーシャルワーカーの腕の見せ所ともいえます。

 

3.衛生指導・カテーテルケア

PD関連合併用では後述する感染性合併症が最も頻度が高く,非常に問題となる合併症であるために,衛生・カテーテルケアに関しては施設毎の徹底した指導が重要です。

現在のところ,エビデンスレベルの高い消毒方法やカテーテルケアの方法は決まったものはありませんが,PD準備前の手洗い,マスク着用,エアコンや空調に直接当たらないようにすること,カテーテル接続時には清潔操作を厳守することなど基本的なことが重要です。またカテーテル接続を機械で行う(紫外線式あるいは銅板加熱式)方法があり,清潔操作に自信がない場合や手指巧緻障害がある場合には有効な手段です。

カテーテルケアですが,患者自身での毎日の出口部観察と洗浄を行い,カテーテル固定の方法とテープかぶれを起こさないテープの選択などが重要です。ケアの方法については明確なエビデンスや基準はなく,各施設で決めた方法を徹底できるように指導しましょう。

 

4.腹膜透析特有の指導

PD手帳への記載方法,体重や注排液量の管理,カテーテル接続やAPDのプライミング,手指・環境の衛生管理,カテーテル出口部管理の指導を行います。また,カテーテル操作中のタッチコンタミネーションを起こした場合の対応や,夜間緊急時の対応は施設ごとで決めておくべきです。

食事に関しては,基本的に減塩やリン制限,蛋白摂取量はHDと同様ですが,PD液にはカリウムが含有されていないために,HDと同様の厳格なカリウム制限を指導してしまうと低カリウム血症を惹起する場合があります。低カリウム血症は不整脈を誘発したり,腹部の蠕動を低下させるために好ましくありません。

 

腹膜透析の合併症・問題点

PDの合併症は大きく分けて①感染性合併症,②非感染性合併症に分類できます。

とくにPDはカテーテルを介して腹腔と交通があり,かつ体外にカテーテルが出ているために,腹膜炎やカテーテル感染を起こしやすく,確実な清潔操作が求められます。

 

1.感染性合併症

[PD関連腹膜炎]
衛生管理やカテーテルケアの徹底,各種デバイスの発達によっても,ある一定頻度で腹膜炎が発症します。現在では平均すると1人の患者が73.5ヵ月PDを施行していれば1回腹膜炎を経験する程度にまで減少してきています(13)
症状はPD排液混濁,腹痛,発熱,悪心・嘔吐下痢などの消化器症状が主体です。治療は抗菌薬治療となりますが,治療抵抗性の場合などはカテーテル抜去を行うこともあります。PD関連腹膜炎は現在でもPDからHDへ移行する大きな原因の一つです。

 

[出口部感染/カテーテル感染]
カテーテル出口部から膿性の浸出物があり,発赤・腫脹・疼痛・肉芽・排膿などを伴います。日本の出口部感染の発生頻度は1人の患者が35.8ヵ月PDを施行していれば1回出口部感染を経験します(13)
予防は前述のようなカテーテルケアが重要です。治療は抗菌薬の局所あるいは内服治療を行い,難治性の場合は外科的治療を選択します。

 

2.非感染性合併症

[被覆性腹膜硬化症(EPS)]
主に長期PD患者に発生する可能性のある合併症で,その原因はPD液による腹膜劣化・尿毒症物質・PD関連腹膜炎が関与するといわれています。PD歴に従って発症率が上昇し,とくに8年以上で有意に発症率が上昇します。
治療はステロイド免疫抑制薬,外科的治療がありますが,予後が非常に悪いために,発症を予防することが重要で,長期にPDを行わないことと(通常5~6年程度),高濃度ブドウ糖PD液の使用を少なくするなどの対応が必要です。

 

[その他]
臍・鼠径ヘルニア,横隔膜交通症などがあり,腹腔内圧上昇に伴い発症し保存的加療や外科的治療が選択されます。

 

 腎移植

◎腎移植を受ける腎不全の患者を『レシピエント』,腎提供を行う方を『ドナー』と呼びます

日本の腎移植の傾向

現在日本では年間約1,600件の腎移植が行われており,ここ数年は毎年100件近く増加しています。しかし図2に示したとおり日本の腎代替療法に占める移植の割合は圧倒的に少ないのが現状です。近年の日本の腎移植の傾向は,①生体腎移植が増加:全体の約85%(≒献腎移植が増加しない),②血液型不適合腎移植が増加:全体の約30%,③先行的腎移植が増加:全体の約20%,④非血縁間移植(夫婦間移植)が増加:全体の約50%,となっています。

 

腎移植の種類

1.ドナーで分類

◎腎移植は生体腎移植と献腎移植に大きく分類できます(図7

図7腎移植の種類

腎移植の種類

 

生体腎移植は読んで字の如く生存しているドナーから,片腎を提供していただき移植を行います。献腎移植はお亡くなりになったドナーから腎臓を提供していただくもので脳死下腎移植と心停止下腎移植に分けられます。生体腎移植ドナーは学会の倫理指針にて,レシピエントとの関係が6親等以内の血族・配偶者・3親等以内の姻族に限られます。

献腎移植の場合は,レシピエントが日本臓器移植ネットワークへの登録が必要であり待機年数を中心とした点数制で,点数が高い患者から移植を受ける優先順位が決定していきます。

日本は慢性的に献腎ドナーが不足しており,献腎移植の平均待機年数は約15年と異常に長期化している現状があります(米国は2~3年程度)。今までは透析導入後しか献腎移植登録ができませんでしたが,2012年より『先行的献腎移植登録』が可能となり,透析未導入でも日本臓器移植ネットワークへ登録が可能となりました。

具体的には申請時から1年前後で腎代替療法が必要になると予測される進行性腎機能障害例で,19歳以上では推算GFR 15 mL/分/1.73m2未満,19歳未満と現在腎移植後で腎機能低下が進行してきた例では推算GFR 20 mL/分/1.73m2未満,というのが条件となります。

 

2.血液型で分類

血液型が異なっていても腎移植は可能です。

まったく輸血ができない間柄(A→B・O,B→A・O,AB→A・B・O)の組み合わせを『血液型不適合腎移植』と呼び特殊な処置(血漿交換やリツキシマブなど)が必要ですが腎移植は可能です。その他の組み合わせを『血液型適合腎移植』と『血液型不一致腎移植』と呼びます。

現在血液型不適合腎移植は約30%を占めています。患者がドナーとの血液型が異なることで,勝手に移植をあきらめているケースがいまだに見受けられますので,説明の際には『血液型は関係ない』と説明することが重要です。

 

3.透析の有無で分類

通常はHDもしくはPDを行っている透析患者が腎移植を行うことが多いのですが,近年では生命予後が良好であること,腎代替療法の情報提供が早くなった影響,シャントやPDカテーテルなどの整容の問題を回避するためなどから,透析を行わず保存期CKDから直接移植を行う『先行的腎移植(preemptive RTx)』が増加しています。現在では約20%が先行的腎移植で移植を行っています。

 

4.血縁関係が有るか否かで分類

移植において血液型と同様に重要なレシピエントとドナーとの“相性”を決めている遺伝子(とくに人ではHuman Leukocytic Antigen;HLA)が重要となります。

親・兄弟などをドナーとする移植の場合を『血縁間腎移植』と呼びます。しかし配偶者をドナーとする『夫婦間移植あるいは非血縁間腎移植』の場合は遺伝子の形(HLA)が全く異なっていることが多いですが,現在の良好な免疫抑制薬を使用することによって,生着率にほとんど差はなくなってきました。

 

腎移植の適応

1.レシピエント

[禁忌]
全身性感染症・活動性肝炎・悪性腫瘍に罹患している場合は禁忌となります。一方,年齢自体で移植の禁忌となることはありませんが,生命予後が10年未満などと予想される場合(80歳以上)は推奨されません。

 

[医学的条件]
禁忌となる原疾患はほとんどなく,多くの原疾患(糖尿病性腎症・腎硬化症・多発性嚢胞腎・IgA腎症など)では通常通りに移植が行われます。
免疫抑制薬の影響などにより,移植後の悪性腫瘍の発生率が高く,その進展を速める可能性があるため,術前に悪性腫瘍に罹患していないことの確認が必要です。悪性腫瘍治療後の場合の移植は禁忌ではありませんが,根治後の無再発期間が経験的に決められています。同様に,免疫抑制薬の使用によって感染症が悪化する可能性が高く,潜在性あるいは活動性の感染症を術前に除外しておく必要があります。

 

2.生体腎ドナー

◎生体ドナーの適応は原則健康な成人であることが条件となります

『健康な』とは,腎機能が良好で,悪性腫瘍・活動性感染症に罹患しておらず,コントロール不良な高血圧・糖尿病(内服でコントロール良好であれば適応禁忌とはならない)がないことが条件となります。年齢による禁忌はありませんが,70歳を超えるドナーからの腎提供は慎重に適応を検討すべきです。

また日本においては生体腎ドナーになりうるのは6親等以内の血族あるいは配偶者と3親等以内の姻族とされ,金銭授受や脅迫などによる腎提供の強制を防止するために戸籍による確認や,第三者(主に精神科医など)による自発性の有無の確認が望まれています。

 

腎移植で使用する薬

◎腎移植後は免疫抑制薬を生涯内服しなければなりません

免疫抑制療法は,副作用軽減とさまざまな免疫経路の抑制を目的に多剤併用療法を中心としています。現在はカルシニューリン阻害薬としてタクロリムスあるいはシクロスポリン,代謝拮抗薬としてミコフェノール酸モフェチルあるいはミゾリビン,ステロイドの3剤併用療法が主流となっています。近年ではステロイドの副作用回避のためのステロイド離脱プロトコールも試みられています。

 

腎移植の成績

近年の免疫抑制薬の発展は目覚ましく,移植の成績は非常に良好となっています。しかし,現在の免疫抑制薬を使用しても拒絶反応は10~20%のレシピエントが経験するとされていますが,早期に診断し的確に治療できれば奏功することが多いとされています。生体腎移植の場合1年・5年生着率は約97%・91%,1年・5年生存率は約99%・97%と非常に良好となってきています(14)。また平均生着期間は個人差がありますが,約15年程度とされています。

 

腎移植に関わる費用・医療経済

身体障害者1級と,①自立支援医療制度の更生医療あるいは②重度障害者医療費助成の制度によって,月数万円程度の支払いとなります(地方自治体によって異なります)。また生体ドナーは,術前の検査および手術にかかる費用はレシピエントの保険でまかなわれるために発生しません。

 

各腎代替療法の利点・欠点

各治療方法の利点・欠点を表1に示します。

表1各治療方法の利点欠点の比較(文献15を参考に著者作成)

各治療方法の利点欠点の比較

 

あくまで欠点は欠点であり,“禁忌”ではありません。患者によっては家族および訪問看護などのサポートのもと施行が可能になる場合もあります。自験例では糖尿病性腎症由来の腎不全で,かつ全盲の患者が大きなトラブルなくPDを行っている症例を経験しています。腎代替療法の選択の際には,患者および家族と十分に利点・欠点を理解し,利点を最大限生かし,欠点は克服(≒欠点を少なくして)できる様に工夫と熱意が重要と考えます。

 

おわりに

理想的な腎代替療法はHD・PD・移植が同じレベルで流動的に行われ,各々の利点を充分に活かすように(≒欠点を少なくして)選択され(図1),その目的は患者の生命予後・QOLが改善することにあると考えられます。

PDも腎移植も永遠に施行・生着する治療ではなく,最終的なゴールはHDになります。HDはほぼ全ての患者が行うことができますが,PD・腎移植に関しては全員が必ずしも受けられる治療ではなく,ある程度の制約があるものの,受けることができる患者に対しては,是非オプション提示をしていただきたいと思います。

忙しい臨床の現場では,目の前のことで精一杯であると思われますが,まずは患者に平等にHD・PD・移植の話をしてみる(ホップ)ことから始め,次に患者の希望があれば,PDもしくは移植を行っている施設へ患者を紹介する(ステップ)ことを担当の医師と相談してみましょう。

最終的にはPDおよび移植を行っている施設へ実際に見学(ジャンプ)に行き,より理解を深めるとよいでしょう。透析患者への関わりの幅が格段に広がると思います。

本コラムの内容を,明日から患者への情報提供に繋げてくだされば幸いです。

 

 


[引用・参考文献]

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  • (10)Yamagata K, et al.: Ideal timing and predialysis nephrology care duration for dialysis initiation: from analysis of Japanese dialysis initiation survey. Ther Apher Dial. 16: 54-62, 2012.
  • (11)Marrόn B, et al.: Benefits of preserving residual renal function in peritoneal dialysis. Kidney Int Suppl. 108: S42-51, 2008.
  • (12)日本透析医学会雑誌.40:957-1023,2007.(2014年6月閲覧)
  • (13)今田聰雄:CAPD関連腹膜炎・出口部感染の20年の軌跡と最新情報.腎と透析61別冊 腹膜透析2006:94-97,2006.
  • (14)日本移植学会広報委員会(編):臓器移植ファクトブック2013.(2014年6月閲覧)
  • (15)日本腎臓学会,日本透析医学会,日本移植学会,日本臨床腎移植学会:腎不全 治療選択とその実際(2012年版).(2014年6月閲覧)

[Profile]
谷澤雅彦(やざわ まさひこ)
聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 助教
2005年 聖マリアンナ医科大学卒業
2005年 聖マリアンナ医科大学 初期臨床研修センター
2007年 聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科入局
2011年 中部ろうさい病院 腎臓内科で水・電解質の奥の深さを知る
2012年 名古屋第二赤十字病院 移植・内分泌外科で腎移植の経験を積む
2013年 川崎市立多摩病院 腎臓・高血圧内科で腹膜透析の経験を積む
2014年より現職。
日本内科学会認定医・総合内科専門医,日本透析医学会専門医,日本腎臓学会専門医,日本臨床腎移植学会専門医,日本移植学会専門医

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]透析スタッフ 2014年第5号

『透析スタッフ』2014年第5号

P.18~「各腎代替療法のポイントと長短所」

著作権について

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今日の看護クイズ 挑戦者2148

◆転倒・転落のアセスメントの問題◆誤嚥性肺炎で入院となった83歳男性。末梢の持続点滴と経鼻での酸素投与中で、ポータブルトイレでの排泄の安静制限があります。入院前のADLは自立していましたが、前立腺肥大のため頻尿で、日中は8回、夜間2回程度の排尿がみられます。この患者さんの転倒・転落のアセスメントの対応として適切なものはどれでしょうか?

  • 1.夜間に十分な睡眠ができるように長時間作用型の睡眠薬を投与する。
  • 2.ベッドから立ち上がる際は、オーバーテーブルにつかまって立ち上がるよう指導する。
  • 3.夜間は一人で動くと危ないので身体抑制を行ってもよいか、本人とご家族に尋ねる。
  • 4.患者さんの排泄パターンを観察し、トイレに誘導する。
今日のクイズに挑戦!