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2016年05月19日

ショックを起こした患者への対応|ショック時の輸液療法

『循環器ナーシング』2013年10月号<学びなおしで疑問とサヨナラ! 輸液管理の基礎から実践まで>より抜粋。
ショックを起こした患者への対応(ショック時の輸液療法)について解説します。

 

Point

  • ショックとは:末梢組織への有効な血液量が減少することにより,臓器・組織の生理機能が障害される状態!
  • ショックをみつけたら,まず細胞外液補充液を急速輸液!
  • 初期輸液と並行してショックの病態を鑑別し,適切な輸液療法や必要な処置を行う!

井ノ上幸典
(新潟市民病院 救命救急・循環器病・脳卒中センター)

広瀬保夫
(新潟市民病院 救命救急・循環器病・脳卒中センター センター長)

 

〈目次〉

 

はじめに

「ショック」とは,急性循環不全の結果,末梢組織における酸素需要に対して,必要な酸素供給ができなくなる状態です。ショックが遷延すると,重要臓器の機能破綻を招き,急速に死に至る場合も多いため,ただちに治療を開始しショックからの離脱を図る必要があります。

蘇生チーム内で「この患者さんはショックなんだ!」という共通認識を持ち,迅速に対応することが大切です。

本コラムでは,主に救急外来でショックの患者に遭遇した場合の対応について述べていきます。

 

ショックに遭遇した場合の初期対応

ショックを疑う

ショックを見逃さないようにするためには,まずショックを疑うことから始めましょう。患者に対する視診と触診から始め,すぐにABC(airway,breathing,circulation)を評価することが大切です。

血圧や脈の異常だけでなく,古くから知られている「ショックの5徴」は循環の異常を察知するヒントになります(図1)。

図1ショックの5徴(5Ps)

ショックの5徴(5Ps)

 

すなわち,患者の顔色が蒼白だったり,大腿などに網状斑がみられたり,不隠や疲弊感があったり,冷汗が出ていたり,呼吸数が速かったりした場合,視診でショックを疑い,皮膚が冷たく湿っていて脈が弱く速いといったことを触診し,ショックと判断するわけです。

また,CRT(capillary refilling time:毛細血管再充満時間)も,救急外来で簡便に評価できます。床の圧迫後,毛細血管再充満に2秒以上かかる場合にショックを疑います。

もちろん,視診・触診と同時進行でパルスオキシメータ,心電図モニターをつけ,血圧を測定します。収縮期血圧80mmHg以下では組織還流が低下する可能性があり,平均血圧65mmHg以下では腎血流が低下し始めるかもしれません。

 

ショックと判断したら

ショックと判断したら,まず酸素を投与し,末梢静脈路を2ルート確保して,乳酸リンゲル液などの細胞外液補充液の急速輸液を開始します(MEMO1)。乳幼児や高齢者のショック遷延例,あるいは心停止では末梢静脈路の確保が困難なこともあり,その場合は骨髄内輸液を利用します。

この初期輸液は低血圧の遷延がもたらす不利な状況を回避するためのものであって,病態に基づいた治療ではないため,同時並行でショックの鑑別を行う必要があります。

ここでの初期輸液は,原因不明のショック患者に遭遇した場合の対応であり,鑑別がつき次第,個々の病態に応じた輸液治療へ移行します。

MEMO1静脈路を確保する部位

ショックの患者は,22ゲージ留置針ですら確保困難なことがあります。筆者は,患者の上肢を心臓より低くなるように下ろして,手背から穿刺を試みることもよくあります。仮に失敗したとしても,中枢側で安全に再トライできます。

 

循環動態によるショックの分類(文献1)

ショックは急性の全身性循環障害の結果,末梢組織における酸素の供給と需要のバランスが崩れ,必要な酸素需要に見合う酸素供給ができなくなった状態です。

平均動脈圧は①静脈還流量,②心収縮力,③末梢血管抵抗という3つの因子で規定されます(図2)。

図2心拍出量と酸素運搬量,平均動脈圧の関係

心拍出量と酸素運搬量,平均動脈圧の関係

 

つまり,ショックという循環動態が破綻した状態は,この3つの因子のいずれかまたは複数の異常と考えられます。図3のように,循環動態に基づいてショックを分類すると理解しやすいでしょう。

図3ショックの循環動態

ショックの循環動態

 

血液分布異常性ショック(図3B)

末梢血管抵抗の減弱によって,末梢血管が過剰に拡張した状態です。末梢血管で血液の貯留が起こり,相対的に循環血液量が減少するため血圧が維持できなくなり,ショックに至ります。感染性ショック,アナフィラキシーショック,神経原性ショックなどが含まれます。

 

循環血液量減少性ショック(図3C)

出血脱水などで循環血液量が減少し,静脈還流量が低下した結果,心拍出量が減少してショックに陥ります。循環血液量の30%程度までの静脈還流量の減少では,心拍数の増加と末梢血管抵抗の上昇による代償機転により,血圧を一定に保とうとする働きが生じます。

しかし,循環血液量の減少がさらに進行した場合はこの代償機構が破綻し,血圧が低下しショックに至ります。したがって,この代償機構が破綻する前にショックを早期に認知し,速やかに輸液療法を開始する必要があります。

 

心原性ショック(図3D)

心臓の一次的障害により心臓のポンプ機能が低下した状態です。末梢血管抵抗の上昇による代償機構が破綻すると,ショックに至ります。

 

心外閉塞・拘束性ショック(図3E)

胸腔内圧が過度に上昇する緊張性気胸,心拡張が強く制限される心タンポナーデ,肺血管抵抗が著しく上昇する肺血栓塞栓症に代表され,いずれも左室前負荷が減少してショックに陥ります。

 

ショック時の輸液療法

初期輸液の投与

外傷によるショックの90%は出血による循環血液量減少性ショックといわれているため,外傷患者でショックが疑われれば,まず初期輸液として39℃に加温した細胞外液補充液1000~2000mL(小児では20mL/kg)を急速投与します(MEMO2)。

この初期輸液の目的は,臓器・組織の好気性代謝を維持できるよう酸素運搬能を改善することにあります。乳酸リンゲル液に代表される細胞外液補充液は,維持輸液に比べ血管内に留まる割合が高いため,循環血液量の減少した病態に対し利用されます。救急の臨床現場では最も使用頻度の高い輸液製剤といえます(2)

 

心外閉塞・拘束性ショックとの鑑別

出血源の検索と同時に,心外閉塞・拘束性ショックを鑑別しておく必要があります。なぜなら,心外閉塞・拘束性ショックに対して急速輸液は静脈還流量の増大による一定の昇圧効果を得られますが,根本的治療とはいえず,心停止が切迫した非常に緊急性が高い状態だからです。

呼吸窮迫,患側の胸部膨隆,一側の呼吸音減弱,頸静脈怒脹,皮下気腫などの徴候から緊張性気胸と判断したら,ただちに胸腔ドレナージを行います。エコーで心嚢液の貯留を認めれば心タンポナーデを疑い,心嚢穿刺や経皮的心肺補助の導入を検討します。心外閉塞・拘束性ショックはその誘因を除去することにより,比較的速やかに重篤なショックから回復することができます。

 

出血源の検索

心外閉塞・拘束性ショックを除外できたら,出血源を検索します。

活動性の外出血があれば圧迫止血し,腹部エコーと胸部・骨盤部単純X線により大量血胸,腹腔内出血,骨盤骨折に伴う後腹膜出血の有無を調べます。

循環血液量の20%以下の出血であれば,通常は初期輸液により血圧が上昇して心拍数が低下し,その状態を維持できることが予想されます。

循環が安定しなかったり一次的であったりした場合は,輸血と緊急の止血手技が必要となります。止血されていない場合には,血圧上昇は出血を助長するため,確実な止血処置がなされるまでは,目標血圧は収縮期で80~90mmHg程度でよいとされます。

ショックに至るような出血源がないにもかかわらず血圧が低く,徐脈や下肢の対麻痺を認めた場合,脊髄損傷による神経原性ショックと考えられます。

血液分布異常性ショックであり,初期輸液後も低血圧が持続する場合は,輸液速度を維持量にして血管収縮薬を併用します。多くの場合,血圧低下は48時間以内に回復します。

MEMO2加温輸液,冷却輸液

低体温は,代謝性アシドーシス,凝固異常とともに外傷死の3徴とされます。初期輸液では,体温低下を最小限にするように加温した輸液を投与します。一方,重度の熱中症や蘇生後に脳低体温療法を行う患者には,4℃に冷却した輸液を使用します。

 

循環血液量の評価

内因性疾患においては,とくに感染症による血液分布異常性ショックをしばしば経験します。

血液分布異常性ショックでは,末梢血管抵抗の減弱と相対的な静脈還流量の減少が起こります。静脈還流量の減少に対しては細胞外液補充液を急速投与し,末梢血管抵抗の減弱に対しては血管収縮薬を使用します。輸液の投与速度は,平均動脈圧65mmHg以上,尿量0.5mL/kg/時以上を目標に,心拍数,エコーで観察される下大静脈径や左房径,動脈血中の乳酸値の変化などから循環血液量を評価し調節します。

また,パルスオキシメータや観血的動脈圧ラインの波形から,循環血液量や末梢血管抵抗を推測することもできます(図4)。

図4パルスオキシメータ・観血的動脈圧波形(正常時)

パルスオキシメータ・観血的動脈圧波形(正常時)

 

波形の立ち上がり角が緩やかであれば心収縮力の低下が,呼吸性の変動が強ければ循環血液量の減少が,重複波が消失していれば末梢血管抵抗の減弱が示唆されます(3)

近年,動脈圧ラインから得られる波形情報に基づいて,心拍出量や一回拍出量変化を測定できるフロートラックシステムが利用できるようになりました。

 

心原性ショックなどを合併している場合

循環血液量を適切に評価し輸液療法を行っても血行動態が改善しない場合,心原性ショックなどを合併している可能性があるため,エコーでの評価が必要です。

心原性ショックにおける輸液療法の役割は,適正な静脈還流量を維持することであり,他のショック病態のように急速輸液を行う局面は限られます。既往歴や救急隊からの情報から心不全による心原性ショックが疑われる場合は,急速輸液を行わないことも考慮されます。

一方,急性右室梗塞などの急性右心不全性ショックの場合は,細胞外液補充液1000~2000mLの急速輸液が第一選択となります。

 

輸液製剤の種類と投与速度

一般的に,輸液製剤の種類と投与速度は,循環血液量の増減,心機能,腎機能,電解質バランスなどを考慮して決めていきます。

初期のショックからの蘇生の段階においては,使用する製剤の種類は細胞外液補充液が最適です。そのなかでも,より細胞外液に近似された組成である乳酸リンゲル液,酢酸リンゲル液が頻用されます。

透析患者のように,カリウムを少しでも負荷したくない場合は,生理食塩液を用います。1号液は,ナトリウム濃度が中等度でカリウムを含まないため,腎機能や血性カリウム値が不明で明らかなショックには至っていない脱水状態に対して安全に使用できる輸液ですが,蘇生とショックの現場では使用が限られるでしょう。筆者は,ショックを離脱するまでは乳酸リンゲル液を使用し,少なくとも100mL/時以下の投与速度ですむようになってから,2号液あるいは3号液へ移行するようにしています。

 

おわりに

血行動態が破綻した救急患者に遭遇してしまうと,何をしてよいかわからなくなってしまうスタッフが少なからずいることでしょう。しかし,その患者がショックで,蘇生が必要だということが認識できれば,初期対応はそれほど複雑ではありません。

モニターをつけ,酸素を投与し,急速輸液を開始。そして,ショックの病態を考えます。破綻した循環の決定因子(静脈還流量,心収縮力,末梢血管抵抗)を補うように治療していけばよいのです。

 


[引用・参考文献]

  • (1)横手 龍:ショック.三宅康史(編):救急・ERノート3 症例から学ぶERの輸液―まず何を選び,どう変更するか.羊土社,pp64-76,2011.
  • (2)杉野達也:輸液療法.日本救急医学会(監):救急診療指針 改訂第4版.へるす出版,pp130-133,2011.
  • (3)松田直之:敗血症性ショック.稲田英一(編):麻酔科診療プラクティス18 周術期の輸液・輸血療法.文光堂,pp228-230,2005.

[Profile]
井ノ上幸典(いのうえ ゆきのり)
新潟市民病院 救命救急・循環器病・脳卒中センター
救急科専門医,麻酔科専門医。

広瀬保夫(ひろせ やすお)
新潟市民病院 救命救急・循環器病・脳卒中センター センター長
日本救急医学会指導医,日本内科学会総合内科専門医。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2013 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2013年10月号

循環器ナーシング2013年10月号

P.28~「蘇生とショックの現場から」

著作権について

この連載

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