肺癌の疾患解説

 

この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。

 

今回は、腫瘍性肺疾患である「肺癌」について解説します。

 

皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)

 

肺癌という病気にどんなイメージがありますか?

 

癌って聞くと、とても怖いイメージがあります。

 

そうですね。癌の中でも最も死亡数が多い病気ですし、治療も難しい病気ですからね。

 

やっぱり怖い病気なんですね。

 

癌は早期発見が大事ですし、病態の変化を早めに確認することが大切です。
まずは肺癌についての基礎知識を身につけてください。

 

〈目次〉

 

肺癌の基礎知識

肺癌(がん)とは、何らかの原因で気管や気管支、肺胞に発生する悪性腫瘍です(図1)。

 

肺癌の死亡率は、40歳代後半から増加し始め、高齢者ほど高くなります。年間約8万人が肺癌になり、7万人が死亡します。癌の中で最も死亡数が多い病気です。

 

図1肺癌のイメージ

 

肺癌のイメージ

 

右下肺に癌細胞がある例です。

 

肺癌の原因と病態生理

肺癌の原因の70%は、タバコです。その他の原因としては、受動喫煙や環境、食生活、放射線、薬品など、さまざまなものがあります。

 

肺癌は大きく分けて、非小細胞肺癌(扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌)と小細胞肺癌に分かれます。扁平上皮癌や小細胞肺癌は、タバコとの関連性がわかっています。

 

肺癌の症状

肺癌の患者さんに、特異的な症状はありません。そのため、健康診断で偶然発見される場合も多くあります。また、血痰(けったん)や嗄声(させい)、体重減少などをきっかけに診断され、肺癌に気付く場合もあります。

 

聴診時に気を付けるポイント

肺癌の患者さんの異常な呼吸音は、気道や気管が狭窄したり、閉塞したりすることが原因で生じている可能性があります。

 

X線検査の結果だけではわかりにくい病変でも、聴診所見が診断の助けになることもあるので(1)、聴診は必ず行いましょう。聴診を行う場合は、前胸部や背部をまんべんなく、しっかりと行いましょう図2)。

 

図2肺癌の患者さんに行うべき聴診の位置

 

肺癌の患者さんに行うべき聴診の位置

 

前胸部と背部ともにまんべんなく音を聴きましょう。

 

聴診の仕方は、「向かって左側→右側」(患者さんの右側→左側)の順番で、聴診する位置を交互に変えながら、下部の方向に降りていくように行っていきます。

 

ナースへのワンポイントアドバイス

肺癌の患者さんは、いつ呼吸困難が起こってもおかしくない状態です。そのため、日頃から、患者さんの呼吸状態について、注意深く観察する必要があります。

 

気道が狭窄したり、閉塞している患者さんの場合、聴診を行うことで、身体の異常に気付くことがあります。そのため、頸部を含めて、前胸部や背部など、すべての部位でしっかりと聴診しましょう。

 

Check Point

  • 肺癌の患者さんを聴診する場合、前胸部・背部ともにまんべんなくしっかりと聴こう。

 

次回は、実際の肺癌の患者さんの聴診音を聴いて、特徴をしっかりと覚えましょう。

 

[次回]

肺癌患者さんの聴診音

 

[関連記事]
  • ⇒『聴診スキル講座』の【総目次】を見る

 


 


[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授

 

[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授

 


Illustration:田中博志

 


SNSシェア

看護知識トップへ