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2016年05月16日

壊死性筋膜炎

『WOC Nursing』2015年9月号<創傷と細菌感染を考える~細菌感染を考慮した創傷管理>より抜粋。
壊死性筋膜炎について解説します。

Point

  • 壊死性筋膜炎の早期診断のポイントを説明できる
  • 壊死性筋膜炎の緊急デブリードマンについて説明できる
  • 壊死性軟部組織感染症の病態について説明できる

大慈弥裕之
(福岡大学医学部 形成外科学講座 主任教授)

〈目次〉

はじめに

壊死性筋膜炎は死亡率が30〜50%と高く,致死性の皮膚軟部組織細菌感染症であり,救命するには早期の診断と積極的な外科治療が重要です。本疾患を疑う場合には,緊急手術で試験切開し,創部の観察とデブリードマンを行います。

本コラムでは,壊死性筋膜炎の代表症例を提示し,本疾患の特徴について述べます。

 

壊死性筋膜炎の代表症例

〔症例〕 70歳代の女性

〔主訴〕

右上肢の疼痛と腫脹

〔既往歴〕

糖尿病

〔現病歴〕

3日前に虫刺されと思われる腫脹が右肘から前腕にかけて出現したため,近医の外科医院を受診し,抗菌薬を処方されました。同日に近医の皮膚科医院も受診し,虫刺されと診断されてラップ療法を受けました。1日前から症状が悪化したため,近くの外科病院に入院して抗菌薬の投与を受けたものの炎症症状が増悪したため,救命救急センターに搬送されました。

〔入院時身体所見〕

意識清明。体温37.1℃,脈拍数123/分,呼吸数28/分,血圧132/82 mmHg。

〔入院時血液検査〕

白血球数 7.5×103/μl,血色素量 13.7 g/dl,血小板数 11.3×104/μl,クレアチニンキナーゼ(CK)3,739 IU/L,CRP 6+,プロトロンビン時間 16.9秒,プロトロンビン時間国際標準比 1.34,活性化部分トロンボプラスチン時間 43.9秒,血糖値 375 mg/dl。

〔入院時画像所見〕

上肢X線写真でガス像は認めませんでした。

〔入院時局所所見〕

右上肢全体に腫脹と発赤があり,紫斑と水疱形成が散在し,上腕内側には皮膚壊死を認めました(図1)。

図1入院時の局所所見

入院時の局所所見

 

〔治療経過〕

入院当日

壊死性筋膜炎を疑い,緊急手術を行いました(図2)。全身麻酔下に右上肢の皮膚を切開し,皮下組織を観察しました。皮下脂肪組織と筋膜の変色を認め,膿性の滲出液の排出がみられました。病変は上肢全体に及んでおり,デブリードマンと洗浄を行い,創部は開放して手術を終了しました。全身の抗菌薬投与も実施しました。術中の膿培養ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)を検出しました。

図2入院当日の手術所見:右上腕伸側

入院当日の手術所見:右上腕伸側

 

入院翌日

上腕の発赤はさらに拡大し,肩関節内の膿貯留およびCRPの上昇を認めたため,再度手術を行い,右上肢離断術を施行しました(図3)。

図3入院翌日の手術所見

入院翌日の手術所見

 

切断した上肢を観察したところ,上肢全体に及ぶ筋膜周囲の組織融解,膿付着を認めました(図4)。

図4切断上肢の所見

切断上肢の所見

 

離断術以降

離断術後,炎症所見の低下と全身状態の改善がみられました(図5)。41日目に創閉鎖術を施行し,66日目に退院しました。

図5入院後3週目の創部所見

入院後3週目の創部所見

 

壊死性筋膜炎に関する考察

壊死性筋膜炎は死亡率の高い,きわめて重症な皮膚軟部組織の感染症です。壊死性筋膜炎では,感染が筋膜上を水平方向に拡大するため,内部の感染が皮膚の所見よりも広範囲に進展します。救命するには,緊急のデブリードマンと抗菌薬の全身投与が必要です。

壊死性筋膜炎やフルニエ壊疽,ガス壊疽は,近年では壊死性軟部組織感染症としてまとめて取り扱われることが多くなりました。

 

壊死性筋膜炎の特徴

壊死性筋膜炎の病歴・症状・検査所見

壊死性筋膜炎の病歴

壊死性筋膜炎は,軽微な外傷,あるいは褥瘡,糖尿病性壊疽,足白癬などの表在性の感染症が契機となり発症することが多い疾患です。糖尿病,肝機能障害,白血病などの悪性腫瘍や長期ステロイド投与中などの免疫機能低下といった基礎疾患を有する患者に発症することが多いです。

 

壊死性筋膜炎の症状

最初は紅斑が出現し,急激に水疱,紫斑,壊死が生じるとともに激しい痛みを伴います。これらは急速に拡大して敗血症性ショック,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation;DIC),多臓器不全に至り,死亡します。下肢に生じることが多いものの,体幹や上肢に生じる場合もあります(1)。

 

壊死性筋膜炎の検査所見

血液検査では,白血球増多,CRP上昇,CK高値,凝固能異常を生じます。壊死性軟部組織感染症のうち,ガス壊疽ではX線写真やCT像でガス像がみられます。

 

壊死性筋膜炎の病原菌

黄色ブドウ球菌,A群溶血性レンサ球菌,嫌気性菌,腸内細菌,Aeromonas hydrophila,Vibrio vulnificusなどが検出されます。A群溶血性レンサ球菌感染症,Aeromonas感染症,Vibrio vulnificus感染症では,劇症型のさらに重篤な軟部組織感染症となるため,留意します。

 

壊死性筋膜炎の診断

診断にあたっては,局所所見・全身状態の観察や血液検査,血糖値,肝機能,腎機能,DIC判定,胸部および局所のX線撮影を行います。細菌培養検査も併せて実施します。さらに,基礎疾患の精査も必要です。

局所所見として,急速に拡大する紅斑,水疱形成,紫斑,壊死がみられますが,初期には局所所見や血液所見に乏しいことも多く,早期診断は困難です。大切なのは,常に壊死性筋膜炎を含めた壊死性軟部組織感染症を疑うことです(2)。

疑わしい場合には,試験切開により創部を観察して診断します。その際には培養検査だけでなく,塗抹検査も有用です。グラム染色により細菌の有無・性状がわかり,また,炎症細胞を観察することもできます(図6)。

図6塗抹検査

塗抹検査

 

壊死性筋膜炎の鑑別診断

蜂窩織炎

皮下組織に及ぶ皮膚感染症ですが,筋肉や筋膜には波及しないのが特徴です。紅斑,腫脹,熱感,圧痛を生じます。

 

ガス壊疽

ガス産生性の軟部組織感染症であり,筋肉が主座となります。暗紫調の紅斑,握雪感,腐敗臭を認めます。また,X線写真でガス像を認めます。

 

壊死性筋膜炎の治療

壊死性筋膜炎を疑う場合には,緊急的に病変部を試験切開し,皮下組織の状態を観察します。皮下組織,筋膜周囲の病変を肉眼的に観察し,排膿,洗浄,デブリードマンを行います。創部は毎日観察し,創の感染がコントロールできるまで追加のデブリードマンを実施します(1),(3)。

同時に抗菌薬の全身投与を行います。最初は広域の抗菌薬を使用し,起炎菌が判明したら,感受性のある特異的なスペクトラムの狭いものに変更します。加えて,基礎疾患の治療や輸液療法,呼吸循環管理などの全身管理も行います。

進行性軟部組織壊死を認める場合,劇症型A群溶血性レンサ球菌感染症,Vibrio vulnificus感染症,Aeromonas感染症などの劇症型軟部組織感染症を念頭に置くことが重要です。劇症型A群溶血性レンサ球菌感染症では,急激にショック状態に陥り,多臓器不全から死に至る危険性があります。

 

おわりに

本コラムでは壊死性筋膜炎について述べました。

糖尿病や腎不全,血液悪性腫瘍など,免疫能低下のある患者の皮膚軟部組織感染症をみたら,常に壊死性軟部組織感染症を念頭に置いて,創傷管理と全身管理を行わなければなりません。壊死性筋膜炎を疑う場合には,迅速な診断と緊急デブリードマンが重要です。

 


[引用・参考文献]

  • (1)三浦千絵子・館 正弘:壊死性筋膜炎.形成外科,57(12):1373-1382,2014.
  • (2)中村晃一郎:壊死性筋膜炎 喝!! 逃げない・攻める皮膚科の救急医療.日皮会誌,124(13):2678-2679,2014.
  • (3)堀越裕歩:Ⅱ章 主要な臓器感染症 K.皮膚軟部組織感染症 壊死性筋膜炎.日医師会誌,143(特別号 2):S195-S197,2014.

[Profile]
大慈弥裕之(おおじみ ひろゆき)
福岡大学医学部 形成外科学講座 主任教授
1980年 福岡大学医学部 卒業。同年 防衛医科大学校 皮膚科 助手,1981年 北里大学病院 形成外科 レジデント,1990年 福岡大学病院 整形外科 形成外科 診療班 講師,1996年 福岡大学病院 形成外科 助教授。1999〜2000年 Brigham and Women's Hospital(米国ボストン)留学,2005年 福岡大学病院 形成外科 病院教授,2007年 福岡大学医学部 形成外科学講座 開講,主任教授に就任。2013年 福岡大学病院 副院長,現在に至る。日本形成外科学会 理事,日本美容外科学会 理事,日本抗加齢医学会 理事,日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 理事長,日本マイクロサージャリー学会 評議員。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2015 医学出版

[出典]WOC Nursing2015年9月号

P.88~「壊死性筋膜炎」

著作権について

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