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2016年04月05日

呼吸音が聴こえる仕組み|基礎編(4)

聴診器を使用する際のコツや、疾患ごとの聴診音のポイントについて、呼吸器内科専門医が解説します。
構成は、聴診器の使い方から呼吸器の構造を解説した【基礎編】と、疾患の解説と筆者が臨床で遭遇した症例の聴診音を解説した【実践編】の2部に分かれています。基礎編は全8回にまとめましたので、初学者はまずはここからスタートしてください。

〈前回の内容〉

気道と肺の構造|基礎編(3)

第4回目は、「呼吸音が聴こえる仕組み」についてのお話です。

 

皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科准教授)

 

これから解説する呼吸音が聴こえる仕組みは、少し複雑な話になります。

音の仕組み・・・何だかすごい難しそう。どんなことを勉強するんですか?

普段、聴診している呼吸音がどこで発生していて、何故こんなふうに聴こえるのか、といった内容です。

つまり、原因や理由の説明ですね。私もよく先輩から「何でこうするの?」って、行動理由を尋ねられて答えられないことがあります。
理由を理解することは大切ですので、頑張って覚えてみます!

大切な情報がいっぱいありますが、難しいと感じたら細かいところまで覚える必要はありません。
呼吸音の特徴や、何となく呼吸音はこういうものだということを理解してもらえれば良いです。

 

〈目次〉

 

呼吸音の正体は空気の振動音

私たちが聴診で聴いている呼吸音の正体は、一体なんでしょうか?

実は、呼吸音の正体は、呼吸で出入りしている空気の振動音です。呼吸によって流れている空気が、気道の内腔を通る際に、内腔の抵抗によって気流に乱れが生じて、音が発生しています。

 

気管の太さによって空気の流れは変わる

気道と肺の構造|基礎編(3)』で解説しましたが、気管(気道)は分岐を繰り返すたびに細くなっていきます。

呼吸によって気管に取り入れられた空気は、気管が太い部分では早く流れ、気管が細くなるにつれてゆっくりと流れます。詳細までは覚える必要はありませんが、何となくイメージできるレベルで覚えておいてください。

 

呼吸音が発生するのは気管支の第9分岐まで

呼吸音は、呼吸時の空気の振動で発生していますが、気道のすべての場所で発生しているわけではありません。実は、呼吸音が発生する場所は、気道の限られた部分でのみです。呼吸音は、口腔から第7~9分岐までの気管支でのみ発生します。この場所を「乱流領域」と呼びます。

乱流領域より末梢の第10分岐以降では、呼吸音は発生しません。これらの場所は「層流領域」や「分子拡散領域」と呼びます(図1)。

図1呼吸音が発生する場所と気管支の分岐の関係

呼吸音が発生する場所と気管支の分岐の関係

 

気体の流れがない分子拡散領域

分岐を繰り返した気管支で、呼吸音が発生しない肺胞道を分子拡散領域と呼びます。この肺胞道より先(末梢)では、ほとんど気体の流れはありません。この場所では、それぞれの分子自体が持っている拡散能力によって空気が移動しています。

 

目指せ! エキスパートナース呼吸音の強さと肺の関係

呼吸音は、「気流速度の二乗に比例」して大きくなります。そのため、大きく(強く)呼吸すると、聴こえる呼吸音は大きくなります

また、呼吸音は、「距離の二乗に反比例」して弱くなります。そのため、呼吸音の発生源が胸壁から遠ければ遠いほど、音は小さく聴こえます。さらに、肺は、高い音は伝わりにくく、低い音は伝わりやすいという特性があります。

このような呼吸の速さと呼吸音の発生源、肺の音の伝導性を知っておくと、呼吸音と肺の関係性がより理解できると思います。

 

Check Point

  • 呼吸音は、呼吸によって生じる振動音で、気管支の第7~9分岐までの乱流領域で発生する。それより末梢にある気管支では、音は発生しない。
  • 聴診の際に、大きく呼吸すると、呼吸音は大きく聴こえる。
  • 気管で生じた高い音は、肺実質に吸収されるため伝導されにくく、肺の末梢では低い音(肺胞呼吸音)が聴こえる。

 

〈次回〉

呼吸音と副雑音の分類|基礎編(5)

 

 


[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科講師

[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授


Illustration:田中博志


著作権について

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