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2016年06月27日

ベッドからトイレへの移動|排泄ケア

『WOC』2015年12月号<快適な排尿を取り戻す~おしっこのケア・最前線~>より抜粋。

ベッドからトイレへの移動について解説します。

Point

  • 患者本人の思いを知り,安全・安楽な排泄援助を行うことの大切さがわかる
  • ベッドからトイレへの移動の際に必要なことがわかる
  • 排尿日誌の活用法がわかる
  • 自立支援と介助者側の移乗動作について考えることができる

小澤恵美
(昭和伊南総合病院 看護部 外来主任,皮膚・排泄ケア認定看護師)

 

〈目次〉

 

はじめに

高齢者社会となり,入院している患者にも高齢者が多くなりました。高齢の患者では入院による日常生活動作(ADL)の低下に伴って,排泄動作も低下することが多いです。

ベッド上での生活が続く場合,患者から「トイレに自分で行けるようになりたい」という排泄に対する思いを多く聞きます。“トイレに行く”という患者の思いに沿えるような,その人に合った排泄方法や介助方法の考え方について,事例を踏まえて述べます。

 

本人の思いを知り,安全・安楽な排泄援助を考える

「やっと離床できる!」と喜んでトイレへ行こうとしても,起き上がることや立ち上がることがなかなかできず「おかしいな,こんなはずでは……」という患者も多く,1人でトイレに行こうとして転倒する事例も多く報告されています。

 

転倒/転落と排泄との関連

急性期

急性期病棟での転倒/転落患者の背景(図1)として,運動機能・自覚症状では筋力低下がみられる場合が最も多く(図1A),自立度では部分介助である(図1B)ことが挙げられます。

そして図1Cから,排泄機能の背景としては,トイレを使用する患者であることが最も多いことがわかります。その理由は,実際には運動機能が低下していても,羅患前の可動性能力のイメージで行動するためです。

この現状と認識のずれが,危険な移乗動作による転倒などを引き起こすといわれています(1)。

図1急性期病棟での転倒/転落患者の背景(文献1)より作成)

急性期病棟での転倒/転落患者の背景

 

慢性期

慢性期では,転倒・転落アセスメントシートによる評価において,転倒がなかった患者の場合でもその約88%は排泄の項目に何らかの問題を抱えており,転倒・転落のあった患者では約92%に排泄の項目の該当がありました(表1)(2)。

表1アセスメントシート各項目と転倒・転落発生との関連(文献2より作成)

アセスメントシート各項目と転倒・転落発生との関連

 

排泄に関連した転倒場面の状況をみると,トイレに向かう途中での転倒,夜間の転倒が多いことがわかります(表2)(3)。

表2排泄に関連した転倒場面の状況(文献3より引用)

 

このような排泄に関連する転倒を起こした人の排尿障害や排泄状況をみると,転倒の割合が高いのはおむつを使用している人でした(表3)(3)。

表3排泄に関連した転倒者の排尿障害と排泄状況(文献3より引用)

 

このように,排泄に関連した不安定な動作が多いと,転倒リスクが高まると考えられます(3)。

そこで入院前の排泄状況を知り,本人の思いを理解したうえで,安全・安楽でなるべく自立できている排泄動作を目指したいものです。

本人と家族がどうしたいのかを話し合い,大きな目標を立てることも大切ですが,まずは身近な目標から達成できるように本人・家族と多職種がかかわることが重要です。

 

ベッドからトイレへの移動に必要なこと

トイレに行きたい気持ちを叶えるために重要なことが,ベッドからトイレまでの移動です。この“移動”を行うために必要なことを改めて考えていきます。

まず,尿意を感じ,伝えることができるか,起き上がりの動作・座位保持ができるか,立位が維持できるか,移乗動作がどこまでできるか(車いすへの移動や歩行など),トイレが認識できるか,衣類を脱ぐことができるか,尿器や便器にうまく排尿できるか,後始末ができるか,衣類を整えることができるか,部屋に戻ってベッドへ寝ることができるか,といった患者の状況のアセスメントをすることが必要です。

アセスメント項目と対応のポイントを表4に示します。

表4排尿動作一連のアセスメント項目とポイント

 

表5には排泄ケアにおける各職種の役割を挙げました(4)。皆さんの施設でさらに何か追加できることがあると思います。ぜひ考えてみましょう。

表5排泄ケアにかかわる職種とその役割(文献4より引用)

排泄ケアにかかわる職種とその役割(文献4)より引用)

 

排尿日誌を生かして排尿パターンをつかむ!

排尿パターンを知るためには排尿日誌が必要です。高齢者の場合,尿意の不明であったり,訴えられなかったりするために間に合わず,失禁してしまう場合や,入院前から失禁がある場合も多く,自尊心や自信をなくすことがあります。

 

排泄介助

『EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン』(5)では下部尿路リハビリテーションの効果について『合併症を生じることなく尿失禁の頻度を減らすことができる』と記載されています。そのなかでも,排泄介助について説明します。

排泄介助の手法には下記の3つがあります。

  1. 時間排尿誘導
  2. 個々の患者の排尿パターンに合わせた排尿誘導
  3. 排尿習慣の再学習

これらの排泄介助をするためには,いつ・どんなときに失禁があるのかがわかる排尿日誌が必要です。

 

排尿日誌の活用

排尿日誌(図2)は日本排尿機能学会のホームページ(6)からもダウンロードできます。

排尿日誌,頻度・尿量記録,排尿時刻記録の3種類があるため,目的に合わせて記入してみましょう。

排尿日誌はさまざまな様式がありますが,何をみるための排尿日誌なのかを考えて選択することが重要です。1日の飲水と排尿のパターンや,1週間分の排尿パターンなど,排尿日誌を付けたら必ずアセスメントをして評価しましょう。

排尿パターンがわかると,本人に合ったトイレ誘導や転倒予防の実施につなげることができます。

図2排尿日誌

排尿日誌

 

自立支援と介助者側の移乗動作の未来

2030年には超高齢社会となり,3人に1人が65歳以上になることが予想されています。

今後の介護保険や医療,福祉とともにテクノロジーの分野においても取り組む課題が多いことから,経済産業省と厚生労働省が中心となり,日本再興戦略の1つに『ロボット介護機器開発5ヵ年計画について』(7)(図3)を掲げました。

計画のなかで,移乗介助を行う介助者のパワーアシストをする装着型の機器や,介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器,外出をサポートし,荷物などを安全に運搬できる歩行支援機器,排泄物の処理にロボット技術を用いたトイレなどの開発支援が求められていることからもわかるように,介助側に存在する問題も多いことがうかがえます。

図3ロボット介護機器開発5ヵ年計画について(文献7より作成)

ロボット介護機器開発5ヵ年計画について(文献7)より作成

 

介助側の高齢化や人材不足が問題となっているなかで,介助する人々の身体も大切にし,介助を安全に行えるように仕向ける取り組みも始まっています。高齢者が自立しやすいように,狭小空間での起立・着座時にかかる身体的負担を軽減するための小型動作支援デバイスの開発(8)が目指されています。便座からの立ち上がりを自立できるような角度について検討する実験(9)も実施されており,科学的な研究が進んでいます。

超高齢社会に対応するためには,物を使うことで患者がなるべく自立でき,介助者が安全安楽で継続しやすい排泄方法を開発していくことも必要です。

 

ベッドからトイレまでの移動を叶えるケアの実際

〔症例〕

80歳代の女性

〔主疾患〕

腰椎圧迫骨折

〔背景〕

長男家族と同居していました。発症前のADLはすべて自立していましたが,円背があり,前傾姿勢でした。また頻尿があり,日中は8回,夜間2回程度の排尿がみられました。

入院後,急性期病棟から回復期リハビリテーション病棟へ転棟しました。このときにはコルセットを付けての離床許可が出ていたものの,まだ離床していませんでした。介助下での尿器による排尿はできていましたが,患者と家族の希望は「自分でトイレに行くことができて自宅へ退院できる」というものでした。

〔アセスメント〕

患者からは「家にいるときはトイレが近くて……間に合わないこともある」という情報を得ました。起床と座位保持は見守りで可能です。立位保持は手すりにつかまることで可能でしたが,両手を離せないためにズボンや下着を脱ぐには介助が必要でした。

失禁への不安が大きかったため,可動域が制限されにくく動きやすいおむつ(図4)を選択し,使用しました。

図4TENAフレックス(ユニ・チャーム メンリッケ)

TENAフレックス(ユニ・チャーム メンリッケ)

股関節の動きを妨げない作りとなっている

 

〔トイレに行くための看護計画〕

本人と相談しながら,立位練習に並行して,離床できるように昼間は車いすでトイレに行くこととしました。夜は眠るために,昼間のトイレ動作が慣れるまではベッド上で尿器で行いたいという患者の意向を尊重しました。

本人は失禁することを非常に嫌がっていたため,短期目標を「失禁がなく,介助下で昼間はトイレ,夜は尿器で排尿できる」としました。

また,円背による前傾姿勢と,車いすへの移乗時の回旋動作に伴う「転びそう」という患者の不安を解消するために,回旋移乗が不要で,前面の介助バーで身体を支えられる移乗用リフト「乗助さん(図5)」を使用したところ,離床が進みました。

図5移乗用リフト「乗助さん」(イデアライフケア)

移乗用リフト「乗助さん」(イデアライフケア)

使用者本人は回旋動作がないため移乗時の不安が少なく,介助者の負担も少ない

〔看護計画の評価と改善〕

1週間後,日中は「乗助さん」を使用してトイレへの移乗をスムーズに行うことができ,立位も安定したことと,失禁がないことから(図6),布の下着へ変更しました。 そして,ズボンと下着の上げ下ろしもできるようになりました。

図6実際の排尿パターンチェック表

実際の排尿パターンチェック表

歩行練習も進みはじめ,夜間の排尿方法は尿器からポータブルトイレへ変更しました。ポータブルトイレを配置する際には,回旋を最小限にしてかつ靴を履かずに行えるように滑り止めマットを使用しました(図7)。

「ベッドから落ちそうなので柵を付けてほしい」と希望があったため,外しやすい短い柵を使用して,すぐに対応できるようにしました。

図7ベッドサイドに設置したポータブルトイレと滑り止めマット

ベッドサイドに設置したポータブルトイレと滑り止めマット

 

〔退院に向けた看護計画の評価と改善〕

自宅でのトイレ環境を考え,排泄動作の自立に向けて日中は歩行でトイレに行き,夜間は「乗助さん」でトイレに行くようになりました。「乗助さん」の前面バーによって円背の姿勢でも身体を支えられるため,1人でズボンなどの上げ下ろしができるようになりました。

病室からトイレまでの距離が自宅とほとんど同じであったため,夜間も歩行に移行し,排泄チェック表を見ながら自宅での生活もイメージしてもらいました。外泊でも問題なく過ごすことができ,排泄動作が自立したため,自宅へ退院しました。

 

おわりに

排泄ケアは人間の尊厳を守るケアです。疾患などで自分で行えていたあたりまえの排泄動作ができなくなり,やっとトイレに行けると思っても筋力低下などによるADLの低下がトイレまでの移動を困難にし,生活の質まで落とすことにつながります。

介助が必要な患者の排泄動作が少しでも自立できるように援助しながら,介助する側の心身も守る,安全で安心できる排泄ケアを提供しましょう。そのためにも排尿日誌の活用や排泄ケア用品の活用を多職種で共有したいものです。

在宅ケアへつなげられるような排泄ケアの提供を目指して,急性期からのかかわりを持ちましょう。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)鈴木祐介・大西丈二:1.病因,病態と転倒 4)急性期病棟における転倒リスク評価(特集:転倒危険者の早期発見から予防まで―最新のエビデンスから―).Geriatr Med,47(6):711-715,2009.
  • (2)宮野伊知郎・西永正典:1.病因,病態と転倒 5)慢性期病棟における転倒・転落防止策:アセスメントシートの評価(特集:転倒危険者の早期発見から予防まで―最新のエビデンスから―).Geriatr Med,47(6):717-720,2009.
  • (3)平松知子・正源寺美穂:転倒と排尿障害(特集:高齢者排尿障害のアセスメントと対処~適切な排尿ケアの普及・啓発のために~).WOC Nursing,2(8):66-73,2014.
  • (4)西村かおる:新・排泄ケアワークブック.中央法規,pp32-41,2013.
  • (5)泌尿器科領域の治療標準化に関する研究班(編):EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン.じほう,pp33-37,2004.
  • (6)日本排尿機能学会:排尿日誌(2015年11月閲覧)
  • (7)経済産業省・厚生労働省:ロボット介護機器開発5ヵ年計画について(2015年11月閲覧)
  • (8)井野秀一:水素吸蔵合金のアクチュエータ技術への応用.日本ロボット学会誌,31(5):477-480,2013.
  • (9)近井 学・小澤恵美・井野秀一ほか:便座からの立ち上がり動作に関する実験的検討.ヒューマンインタフェースシンポジウム2015講演論文集,pp357-360,2015.

[Profile]
小澤 恵美(おざわ えみ)
昭和伊南総合病院 看護部 外来主任,皮膚・排泄ケア認定看護師
1974年 生まれ。1993年 駒ケ根看護専門学校 卒業。同年 昭和伊南総合病院 勤務,2012年 皮膚・排泄ケア認定看護師資格 取得,2015年 山梨大学大学院 医学工学総合教育部 修士課程 看護学専攻。産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー 外来研究員,日本コンチネンス協会 理事,同協会 長野県支部 支部長。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2015 医学出版
[出典]WOC Nursing2015年12月号

WOC Nursing2015年12月号

P.35~「ベッドからトイレへの移動」

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