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2016年04月06日

反射の診察

『BRAIN』2012年第6号<“なんとなく”はもう卒業! 今日からわかる神経所見のとり方>より抜粋。
反射の診察について解説します。

Point

  • 反射は,簡単な道具で診察でき,①深部反射,②表在反射,③病的反射などがあります。
  • 反射所見から,神経疾患の局在診断で有用な情報を得ることができます。
  • 反射の検査は,正確な手技とともに患者さんをリラックスさせた状態で行うことが重要です。

鈴木重明
(慶應義塾大学医学部 神経内科 専任講師)

〈目次〉

 

はじめに

「反射」とは,感覚受容器からの刺激が反射弓を介し効果器を無意識に興奮させる現象で,臨床では①深部反射,②表在反射,③病的反射などがあります。

反射の最大の利点は,客観性があり,かつ簡単な道具を用いて実施可能なことです。また反射所見を正確にとり,かつ理論立てて考えることができれば,神経疾患の局在診断に有用な情報を得ることができます。

ハンマーは握りしめずにバランスのよい部分を持ち,適切な強さとスピードで手首のスナップをきかせながら叩打することが大切です(図1)。

図1ハンマーの使用法

ハンマーの使用法

 

反射の種類

深部反射(deep reflex)

正常人にもみられる基本的な反射で,「腱反射」ともいわれます。

深部反射をとる際には以下の点に注意します。

  1. 患者さんの緊張感,不安感を取り除き,リラツクスした状態で検査する。
  2. 刺激の位置,強さが適切である。
  3. 適切な体位・肢位をとらせ,刺激を加える筋に適度の伸展を加える。

 

下顎反射(jaw reflex)

咬筋の深部反射で,反射路は求心路,遠心路ともに三叉神経第3枝にあり,中枢はの三叉神経運動核にあります。

患者さんを軽く開口させ,下顎の真ん中に検者の第2指の掌側指先を水平にあてがい,指のDIP関節付近をハンマーで叩くと,両側咬筋の収縮で下顎が上昇する反射です(図2)。

図2下顎反射

下顎反射

 

上腕二頭筋反射(biceps reflex)

上腕二頭筋の固有反射で,反射中枢はC5・C6,反射弓を形成するのは筋皮神経です。

上腕を軽く外転し,前腕を軽く屈曲させ,上腕二頭筋の腱を検者の第1指で押さえたうえで,指をハンマーで叩くと,反射により前腕が屈曲します(図3)。

図3上腕二頭筋反射

上腕二頭筋反射

 

上腕三頭筋反射(triceps reflex)

上腕三頭筋の固有反射で,反射中枢はC6〜C8,末梢枝は橈骨神経に含まれます。

筋を軽く伸展させるために前腕を軽くつかんで肘を半屈位にし,肘頭の上の三頭筋腱を直接叩くと,前腕が伸展します(図4)。

図4上腕三頭筋反射

上腕三頭筋反射

 

腕橈骨筋反射(brachioradialis reflex)

腕橈骨筋に加えて,回外筋などの前腕伸筋群の固有反射であり,反射中枢はC5・C6,末梢枝は橈骨神経に含まれます。

前腕を肘で半屈位にして,回内・回外の中間位にします。橈骨遠位端を垂直にハンマーで叩くと,反射により前腕が回外,屈曲します(図5)。

図5腕橈骨筋反射

腕橈骨筋反射

 

膝蓋腱反射(quadriceps reflex)

別名「Knee Jerk」ともいい,大腿四頭筋の筋伸展反射で,反射中枢はL2〜L4,末梢枝は大腿神経に含まれます。

仰臥位では両膝を約120〜150゜に屈曲させ,膝蓋骨の下にある四頭筋の腱を叩きます。このとき大腿四頭筋に検者の左手を軽く当てておくと,その収縮が感じられます(図6)。

図6上腕三頭筋反射

上腕三頭筋反射

 

アキレス腱反射(Achilles reflex)

別名「Ankle Jerk」ともいい,下腿三頭筋の筋伸展反射で,反射中枢はL5〜S2(とくにS1),末梢枝は脛骨神経に含まれます。

仰臥位で下肢を軽く外転させ,膝関節を軽く曲げ,足を左手で持ち,足関節を背屈した位置でアキレス腱をハンマーで叩くと,足が底屈します(図7)。検足をもう一方の足の上に軽くのせるとハンマーの操作がしやすくなります。

図7アキレス腱反射

アキレス腱反射

 

手指屈筋反射(finger flexor reflex)

手指屈筋に認める深部反射で,それぞれ反射の誘発法を提唱した人の名で呼ばれていますが,その臨床的意義は同じです。

以前は病的反射として扱われていましたが,現在では深部反射に分類されています。手指屈筋の伸展反射で,反射中枢はC6〜Th1,末梢枝は正中神経に含まれます。錐体路障害では亢進し,一側のみに陽性の場合は病的意義があります。

患者さんの第3指をやや背屈させ,検者の第1指と第2指または第3指で患者さんの第3指末節を手掌側にはじくのが「ホフマン反射(Hoffmann's reflex)」,掌側面よりはじくのが「トレムナー反射(Trömner's reflex)」で,いずれも手指が屈曲すれば陽性です(図8)。

図8ホフマン反射,トレムナー反射

ホフマン反射,トレムナー反射

 

間代(clonus)

膝蓋腱反射あるいはアキレス腱反射が亢進している場合に,大腿四頭筋あるいは下腿三頭筋に持続的に緊張を加えると,これらの筋が律動的に収縮する現象がみられます。これを「間代」と呼び,反射が著明に亢進したことと同じ意義があります。数回の収縮しかみられない場合を「偽クローヌス(pseudoclonus)」と呼びます。

 

膝間代(patellar clonus)

患者さんの下肢を伸展させて,検者は第1指と第2指で患者さんの膝蓋骨をつかんで急激に強く下方に押し下げ,そのまま力を加えつづけると,膝蓋が連続的に上下に動きます(図9)。

図9膝間代

膝間代

 

足間代(ankle clonus)

仰臥位で膝を軽く屈曲させ,検者の左手で膝の内側を支え,検者の右手を足底にあてて急激に足を背屈させ,そのまま軽く力を加えつづけると,下腿三頭筋の間代性収縮が起こり,足が上下に連続的にけいれんします(図10)。

図10足間代

足間代

 

表在反射(superficial reflex)

皮膚または粘膜に加えた刺激により,筋が反射的に収縮する場合を「表在反射」といいます。

腹壁反射(abdominal reflex)

腹壁反射は上,中,下に分かれており,それぞれTh7〜Th9,Th9〜Th11,Th11〜L1の肋間神経を求心路とし,それぞれの高さの脊髄に中枢があります。

患者さんを仰臥位に寝かせてリラックスさせ,腹壁を先を鈍くしたピンやルレットでこすり,腹壁筋の収縮をみます。臍と肋骨縁との間を水平(上),臍の高さを水平(中),臍より下を水平(下)にそれぞれこすります(図11)。

図11腹壁反射

腹壁反射

 

病的反射(pathologic reflex)

正常では認められない反射であり,この反射の多くは錐体路障害で出現します。

バビンスキー徴候(反射)(Babinski sign〔reflex〕)

最も重要な病的反射で,第1趾の背屈現象と第2〜4趾の開扇現象からなります。求心路はL5〜S1,遠心路はL4・L5にあります。

患者さんを側臥位にして,足底の外側を踵から上に第3趾のつけ根付近まで,ゆっくりとこすります。第1趾の背屈がみられれば陽性です(図12)。

図12バビンスキー徴候

バビンスキー徴候

 

チャドック反射(Chaddock reflex)

バビンスキー反射の変法の1つです。足の外果の下を後ろから前へこすります。第1趾が背屈すれば陽性です(図13)。

図13チャドック反射

チャドック反射

 

反射の記載法

深部反射の記録は,図14のような反射の図に記載するのが一般的です。判定は6段階の符号で表します。

  1.   消失(増強法を行っても反射が誘発されない)
  2. ±  軽度減弱(増強法を行いはじめて反射が誘発される)
  3. +  正常
  4. ++  やや亢進
  5. +++  亢進(下肢の場合はpseudoclonusが出現)
  6. ++++  著明に亢進(下肢の場合はclonusが出現)

表在反射も「− 消失」,「± 減弱」,「+ 正常」と記載します。また病的反射に関しては,病的反射名を記載し,「+ 陽性」,「− 陰性」,「± 擬陽性」のいずれかを記載します。

図14反射の記載例

反射の記載例

①下顎反射,②上腕二頭筋反射,③上腕三頭筋反射,④腕橈骨筋反射,⑤膝蓋腱反射,⑥アキレス腱反射,⑦腹壁反射

 

おわりに

これまで説明してきた反射は,他の神経所見反射と合わせて,病巣部位を考えるうえで,きわめて重要です。

たとえば腱反射の亢進は,反射弓より高位で皮質脊髄路(別名,錐体路あるいは上位運動ニューロン)が障害されていると考えられます。一方,腱反射の消失は反射弓が障害されていることを意味し,末梢神経あるいは中枢の脊髄前核細胞のいずれかが障害されているものと考えます。

したがって,正確な手技で反射をとり病巣診断を行うことは,神経内科の診察の最も基本といえます。

 

 


[引用・参考文献]

  • 鈴木則宏(編):神経診察クローズアップ―正しい病巣診断のコツ.メジカルビュー社,2011.

 


[Profile]
鈴木 重明(すずき しげあき)
1993年 慶應義塾大学医学部卒業。1997年 慶應義塾大学医学部 助手,2007年 慶應義塾大学医学部 専任講師,現在に至る。専門は神経免疫疾患,とくに重症筋無力症

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2012 医学出版
[出典]BRAIN 2012年6月号

BRAIN 2012年6月号

P.558~「反射の診察」

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