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2017年01月11日

主膵管拡張は膵癌を疑う異常所見

画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。
今回は、「主膵管拡張は膵癌(膵がん)を疑う異常所見」についてのお話です。

 

加藤真吾
(横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室)

 

膵臓には、主膵管という管が通っていることを知っていますか?

管っていうことは、血管のように何かが通るためのものですか?

その通りです。あまり聞いたことが無い用語かもしれませんね。
主膵管は膵臓の中を通って、十二指腸に開口している管で、膵液が通る道です。

その管が拡張しているということは、また何かが詰まっているということですか?

正解! 肝内胆管拡張や腎盂拡張と同じ理屈ですね。
主膵管の拡張は、膵癌を見つけることのできる数少ない所見ですので、非常に重要です。

 

〈目次〉

 

主膵管が拡張している状態

主膵管拡張とは、膵臓の中を通っている細い管の主膵管が、通常時よりも拡張している状態です(図1)。

図1主膵管が拡張している様子

主膵管が拡張している様子

A:主膵管が拡張していない正常な場合、B:主膵管が拡張している状態。

 

通常、主膵管は拡張しておらず、「主膵管拡張なし」が正常な所見です。「主膵管拡張あり」は異常な所見で、主膵管の圧が高まっていることを指しています。

 

ココが大事!主膵管拡張は管内の圧が高くなった状態

主膵管拡張なし・・・正常

主膵管拡張あり・・・異常主膵管の圧が高まっている

 

エコー検査を行う必要がある患者

主膵管が拡張しているかどうかは、肝腎コントラストの確認と同様に、腹部のスクリーニングを行うエコー検査の中で、ルーチンで見る所見の一つです。そのため、主膵管拡張の有無を診る目的のためだけに、エコー検査を行うことは通常ありません

健康診断や他の目的で腹部エコー検査を施行した際に、偶発的にこの所見が見つかることがあります。

 

ココが大事!主膵管拡張は偶然見つかる

主膵管拡張は、健康診断のエコー検査で偶発的に見つかることがある。

 

主膵管拡張の疾患解説

主膵管拡張は早期膵癌発見の鍵

膵癌は、最も予後の悪い癌の一つです。膵癌に対する最も有効な治療法は外科的切除ですが、発見時には病気が進行していて、手術適応とならない場合が半数以上です。そのため、予後改善のためには、早期発見の割合を上げることが必要になりますが、残念ながら、有効な手段は確立されていません。

このような状況で、主膵管拡張は、膵癌の早期発見の契機となる数少ない手掛かりの一つです。

わが国における癌の部位別死亡数の第1位~5位は、2013年の統計で、肺、、大腸、膵臓、乳房となっています。これらの臓器の2011年度の死亡数と新規患者数は、表1のとおりです。

表1部位別に見た癌の死亡患者数

部位 新規患者数(人) 死亡者数(人)
111,858 70,293
132,033 49,830
大腸 124,921 45,744
膵臓 33,095 28,829
乳房 72,472 12,731

(出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がん登録・統計」.より)

 

この表を見ると、他の部位の癌に比べて、膵癌だけ新規患者数と死亡数の差が極端に少ないことがわかります。これは、膵癌と診断された多くの患者さんが、1年以内に死亡することを示しており、非常に予後が悪いということを意味しています。

 

主膵管の拡張は膵腫瘍が原因

主膵管は、消化液の一種である膵液を膵臓から十二指腸に分泌するための管です。主膵管の拡張は、主に膵腫瘍によって膵液の流れがせき止められることが原因で起こります(図2)。

図2腫瘍によって拡張した主膵管

膵腫瘍によって拡張した主膵管

膵腫瘍が主膵管の流れをせき止めています。

 

主膵管の拡張が認められた場合は、膵腫瘍の存在を疑って精査を進めることになります。

 

ココが大事!主膵管拡張は膵腫瘍のサイン

主膵管の拡張がある場合は、膵腫瘍の存在を疑う

 

膵管内乳頭状粘液性腫瘍(IPMN)は代表的な膵腫瘍

「膵癌」と表記すると、正確には膵臓にできた悪性腫瘍をすべて指します。しかし、一般的には、膵癌は、膵臓の悪性腫瘍の中でも最も頻度が高い膵管腺癌を指している場合が多いです。

この膵管腺癌の他に、膵臓にできる腫瘍として頻度の高いものとしては、膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;IPMN)があります(図3)。

図3主膵管型IPMNと分枝型IPMNの違い

主膵管型IPMNと分枝型IPMNの違い

A:主膵管型IPMN。乳頭状の腫瘍が主膵管にできています。
B:分枝型IPMN。乳頭状の腫瘍が嚢胞内にできています。

 

IPMNは、膵管の中で乳頭状に増殖する腫瘍です。粘液を産生することが特徴で、主膵管に腫瘍ができる主膵管型と、分枝膵管内に腫瘍ができる分枝型の2種類があります。IPMNは、良性から悪性までさまざまな段階がありますが、IPMNという名称はどの段階の腫瘍に対しても使用されます。

このうち、主膵管型IPMNは、主膵管全体が拡張するため、エコー検査やCT検査で主膵管が拡張しているとして発見されることがあります(図4)。

図4主膵管型IPMNのCT像

主膵管型IPMNのCT像

主膵管が太く、大きく拡張しているのがわかります。

 

一方、分枝型IPMNは、主膵管の拡張ではなく、主膵管から離れた場所に嚢胞があるとして発見されることがあります。

 

ココが大事!IPMNを見逃さない

IPMNはエコー検査で発見されることがある。

 

ナースへのアドバイス

主膵管拡張が見られる条件は限定的

主膵管の拡張は、膵癌を見つける手がかりとなる、とても有力な所見です。しかし、膵臓は腹部エコーで観察が難しい臓器です。そのため、この所見が認められるためには、いくつかの条件があります。

基本的に、膵臓のエコー検査では、尾部(左側)の観察は不能で、頭部(右側)~体部(中央)の一部が観察できる程度です。しかし、主膵管の拡張は、本当に膵癌ができていたとしても、膵頭部にできていて、かつ主膵管を閉塞させていないと起こりません。

つまり、膵尾部にできた癌や、膵臓部でも主膵管から離れていて主膵管を圧迫していない癌では、主膵管拡張は起こらないため、エコーで主膵管拡張が見られるためには、これらの条件を満たす必要があります

 

期待される超音波内視鏡による検査法

このような状況で、膵癌早期発見率の向上の鍵を握るのが、超音波内視鏡と言われています。

超音波内視鏡とは、胃カメラの先端に超音波発生装置が付いているもので、胃の中から超音波を当てることができます。このため、胃内の空気を気にすることなく、直接的に膵臓を見ることができます図5)。

図5超音波内視鏡による膵臓の検査

超音波内視鏡による膵臓の検査

内視鏡の先端部から膵臓に超音波(エコー)を当てて膵臓を見ています。

 

腹部超音波に比べて施行可能な施設が限られていますが、今後、重要度が増してくると考えられる検査です。

 

Check Point

  • 主膵管拡張は、膵癌を疑う所見です。
  • 主膵管拡張は、膵尾部癌や、主膵管から離れて主膵管を圧迫していない癌では起こりません。

 

次回は、実際に主膵管が拡張している患者さんのエコー写真を紹介します。

 

〈次回〉

主膵管拡張のエコー像

 

[関連記事]

  • ⇒『初めてのエコー(超音波)検査』の【総目次】を見る

 


[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室


Illustration:田中博志


著作権について

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